どこか硬質な感じのするビルから吹き込む冷たい風を受けて思わず口許が引き締まる。どれだけ経ってもこの瞬間だけは慣れない。俺は自分の手に収まっている”それ”をひと撫ですると、まるで呼応するように俺の心に声が響いてくる。『その手で命を撃ちぬけ』と『お前に力を与えてやる』と…
装弾は既に終わっている。俺はまるで機械人形の様に淡々と引き鉄に指をかけ、今日の犠牲者に向かって十字を切ると、コトリと落とすように引き金を引いた。その瞬間雲ひとつ無い青空に乾いた銃声が響き、カラッとした空気に僅かに硝煙の臭いが立ち込めた。
「…恨むなら運が悪かった自分を恨むんだな」
俺は悲鳴で埋め尽くされた眼下に広がる光景を一瞥すると静かに呟きながらボルトを引き、薬莢を排出する。飛び出した真鍮色の薬莢に映る顔は感情というものが排斥された酷く空虚な顔だった。
「中々面白い能力ね…でも、連れて行くにはもう少し見てみないといけないわね…なにしろ彼がしているのは幻想郷では最大の禁忌だから…」
彼が労わるように青白い硝煙が上がる古いライフルをケースに直している上空で妖艶で、それでいてどこか胡散臭さが滲む笑みを浮かべた女性が虚空に消えていった。彼女がいたはずの空間は真っ黒い穴が空いていたがそれもすぐに無くなり、元の何のへんてつもないどこにでもある青空に戻っていた。この現象は後に新聞などで取り上げられるのだが、それはまた後の話としよう。
もし俺がこの時彼女の存在に気づいていればもっと違った結末になっていたのかもしれない。いや、そもそも普通とは違う俺なんかが介入しようと考えた時点で運命は決まってしまったのかもしれない。血の様に赤く染まった空を眺めては俺は今日何度目になるか分からない溜め息を付く。
「はぁ...どうしてこうなっちまったんだろう」
周りではかなりの数の爆発音が聞こえ、消えていることから『正義のみかた』が敵を蹴散らしながら此方に近づいてきていることが分かる。俺のいるこの部屋にたどり着くまで大した時間はかからないだろう。
「本当...悪役体質だよな」
腰の銃を引き抜き、正面にある扉に向かって構える。後ろにある扉を庇うように立つ姿は武蔵坊弁慶を彷彿とさせた。そんな中正面の扉が消し飛び『正義のみかた』が姿を表した。
「お出ましか...」
俺は再び溜め息を付いた。
何故俺がこんなことをしているのかを知るためには今から俺がこの世界に来たときまで話を遡らないといけない...少し長くなるが聞いてもらおうか。悪役の仕事はそれからでもいいだろう
如何だったでしょうか?やはり長い間書いていなかったのでかなりぐだぐだとしたものになってしまったかもしれません。
次からは『幻想への突入編』となります。いったい彼の身に何が起こったのか、それは次回です
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