前回フランをフルボッコにした煉君、意識が戻った彼はどうするのか?
ではshoot14 収束お楽しみ下さい
いつからだろう…俺の周りから"人間"の姿が消えたのは。いつからだろう…俺の世界の色が赤一色になってしまったのは。いつからだろう…生きる事に"喜び"を感じなくなったのは…
『お前さえいなければ』
『お前なんか必要とされてないんだよ』
『死んでしまえ』
何度も聞いたその罵声も次の日には消える。
人間は利己主義で下らない生き物だ。あれ程否定していた俺を殺される寸前で掌を返した様に持ち上げてくる。何度も繰り返されるその行為に俺の人間に対する興味も薄れていく。殺して、殺して、殺して…何百と繰り返した行為の果てに俺の中にもう一人の自分が生まれた。そして月が明るい秋の夜…俺は"彼女"を殺した。
「…どんな戦い方したらこんな事になんだよ
此処だけ台風が通過したみたいになってんぞ」
目を覚ました時真っ先に目に飛び込んできたのは、凄惨たる状態になった地下室だった。
壁のあちらこちらには巨大な鉄球を叩きつけたかのようなクレーターが空いている。他にも床が抉れていたり損傷個所は多いが天井に大穴が開けられていた時は暫く開いた口が塞がらなかった。
「クソッ、あいつ無茶苦茶やりやがって。後で怒られんのは俺だってのに…それよりフランは大丈夫なのか?霧雨も探さねぇといけないし…」
足元で倒れているフランを背負い少し歩くと
霧雨は案外簡単に見つかった。俺が最後に見た場所から然程離れていない壁にもたれて顔を伏せていたが俺が肩を揺さぶると意識が戻ったようでゆっくりと瞼を開いた。
「結構寝てたみたいだな…あいつはどうなったんだ?」
「フランか?お前の横で寝てるだろ?」
魔理沙の横に寝かせているフランを指さすと少し安心した表情をした後、俺に今迄で一番の笑顔を向けてきた。あいつの事だ、跡形もなく消しとばしている可能性も考えられたが"俺が作ったスペル"が無くなっていることから今回は俺の言うことを聞いてくれたみたいだ。今にも『今回は特別、キミは甘いヨ』
みたいな軽口が聞こえてきそうだが、今回は本当に助かった。俺が苦笑いを浮かべていると霧雨が真剣な顔で俺に詰め寄ってきた。やはりこいつは只の喧しい奴じゃないようだ。
「で、こいつはなんでこんなとこにいるんだ?」
「どうして話さなきゃならねぇんだ?さっきはフランを止めるために仕方なく共闘しただけだ。侵入者のお前に話してやる義理はねぇよ。それに言ったろ、身内の事に首突っ込むなって」
そうだ、負けたとはいえこいつはこの館とは何の関係もない他人だ。根本的に関係のない人間にペラペラと家庭事情を話す訳にはいかない。それに、俺はこいつの事を完全には信用してない。こいつも俺が殺した奴らと同じ人間だ。いつ裏切られるか分からない、警戒は解かないほうがいい。
「一緒に闘ったってだけでもう無関係じゃないぜ。お前がこいつの身内なら関係者である私も聞く権利はあると思うんだが、どうだ?」
はぁ…この魔法使いは命のやり取りをした(まぁ今回は違うが)相手も気にかけるってのか。とんだ甘ったれの考えだが、こいつの目には相変わらず濁った色は見えず澄んだ色をしてやがる。結んだ縁はたとえほつれたとしても最終的には繋がっているということか…
気づけばあれ程信用していなかった人間に
俺は目の前の魔法使いにフランと話した全ての事を話していた。姉によって495年間この地下室に閉じ込められていること、自分の中にいる狂気を恐れ外に出たことがないこと、そして俺も同じ痛みを抱えていること…そう、全てを。 その間霧雨は只何も言わず聞いてくれていたが俺が一通り話し終えるのを見ると、急に立ち上がり言い放った。
「よし!じゃあそのレミリアってのに会いにいってフランを出してやるように言ってくるぜ!」
「待てっ、そいつはフラン自身でやらせるべきだ。こいつに説教しちまったからな…『姉から、自分から逃げるな』って。それにこいつをここから出す言い訳は思いついてるんだ」
そう、逃げてたら辛いことも起きない代わりに何処にも進めずに後々必ず後悔する事となる。厳しいようだが、これが現実だ。俺と同じ過ちはこの子にはして欲しくない。背負った時も感じたがフランの体は驚く程軽く、先程まで恐ろしい攻撃を行っていたとは考えられない無垢な顔で眠っていた。
「さて、俺はこれからフランを地上に連れて行ってやるがあんたはどうするんだ?」
「私も付いていくことにするぜ。私のツレが上で戦っている筈だからな」
そういや侵入者は二人だったな…レミリア嬢に限って負けることはないだろうが怪我をしていないか心配だ。眠っているフランを起こさないように背負い、落とさないように腰のあたりで手を組む。霧雨も箒を支えに立ち上がるがダメージが残っているのか両足が小刻みに震えている。それを見ていると少々悪戯心が起こってきた。
「お前も背負ってやろうか?」
「気持ちは嬉しいが、先客がいるから遠慮しておくぜ、背負えそうにないからな」
「じゃあ前は空いてるな…"お姫様抱っこ"で走ってやるよ」
「!?」
笑顔のまま固まってしまった魔法使いに冗談だと伝えると帽子を深くかぶりさっさと先に登って行ってしまった。どうやったら箒を杖にしながら階段をあの速度で上がれるのか教えて欲しい。
「おーい、悪かったから待ってくれよ〜」
さっき見えた深くかぶった帽子から覗く彼女の顔はほんのりと赤みが差していた事で気付いた強気な魔法使いも女の子らしいところがあるということは俺の胸の中にしまっておこう。そんな事を考えながら俺は階段を駆け上がっていった。
約束は守った、次はフランの番だぞ!
いつ終わるかわからない階段を登り、図書館から大広間の扉を開けた時俺の目に映ったのは…紅白の巫女装束を着て面倒臭そうな表情をした少女とボロボロになった主の姿だった。そうか、終わっちまったのか…地下で長い間いたせいで気づかなかったがもう紅い霧は晴れちまったみたいだな。
「何?あんたもこの異変の関係者?残念だけどもう解決しちゃったからあんたの出る幕はないわよ」
「てめぇに用はねぇよ、生憎用があるのはお前がボコったここの主の方でね。ちょっとの間黙ってろ。大丈夫ですかい?レミリア嬢」
ドレスは彼方此方を破れ、顔は煤で塗れた主はそれでも威厳のある表情で俺の方を仰ぎ見たが俺の背中にあるものを見た瞬間燻んだ赤色をしたその目は大きく見開かれた。
「どうしてその子がいるの?貴方に課した命は"地下室に誰も入れるな、そして出すな"だったはずよ?」
「確かに、一つ目の任務はそこにいる霧雨によって失敗したが二つ目については命どうり遂行させて貰った。水臭いじゃないか、妹がいるなら俺にも紹介してくれればいいのによ」
"妹"という単語が彼女の琴線に触れたのか、先程までの威厳は消え去り俺の肩に爪を立て空気が震える程の声で吠えた。
「貴方に何が分かる!この子の能力はあらゆる物を破壊する。物だろうが人だろうが、家族だろうが!だから地下室に入れておいたのに、どうして余計な事をするの!」
やはりな、この子が抱えているものは狂気だけじゃないとは思っていたが制御できない自分の能力だったのか。確かにあらゆる物を破壊する力は危険だ。ここの主なら家族の安全を考えるのは当然かもしれない…でもな、
「だったら!なんでフランのことはその家族の中に入れられないんだ!確かに制御できない力は危険かもしれない、だったら制御できるようにサポートしてやればいいだろうが。フランは言ってたよ、『自分の力で周りの人を傷つけるのが怖い』ってな。恐がる妹をほっといて姉が逃げたら意味無いじゃねぇか!」
胸倉を掴みあげ、息がかかるまで顔を寄せ言葉の拳で殴りつける。俺の言っていることは只の綺麗事なのかもしれない。でも頭の中がぐちゃぐちゃになって言い表せない感情が込み上げてきてこの臆病者の主に何か言ってやらなければいけない気がした。
「じゃあ、どうすればよかったか教えてよ…
どうすればフランと家族みんなと仲良くできたか教えてよ!」
俺の胸を叩くその拳は軽く、見上げる水気を帯びた瞳は体に伴った少女の様な儚さを醸していた。トストスと叩き続ける小さな手を覆い隠すように胸倉を掴んでいた手をそのまま背中に回し優しく抱きしめ背中を摩ってやる。その体は少し力を込めると折れてしまうほどに華奢でこの細い体で主としては勿論のこと姉としての重圧に耐えてきたのかと思うと少し心が痛んだ。
「簡単な事じゃねぇか…余計な事を考えずに二人で話してみればいいんだ。お互い言いたい事を吐き出しゃ昔みたいに暮らせるさ。俺が背負ってるこの子はあんたの言う不安定な狂気じゃない、大切な妹なんだから」
しばらくして俺から離れた主の顔は目の下が赤く腫れてはいるがいつも通りの威厳に満ちた表情に戻っていた。やはり一城の主はそういう顔が似合っている。
「さてレミリア嬢、任務を遂行した報酬を頂きたいのだが?」
「そうね…言ってみなさい」
背中で眠るフランを一瞥し向き直る。こんな事をしなくても俺が求めるものはもうもらえることが確定しているようなもんだが、念のため駄目押しをしておこう。この不器用な姉妹にはそれで丁度いいだろう。
「一つはフランと必ず話し合ってこれからは仲良く暮らすこと。もう一つは一度でいいからフランを外に連れ出してやって欲しいんだ」
「貴方…本当に変わったわね、何だか丸くなった感じがするわ」
「そうか?だとしたらフランに感謝しないとな…この子のお陰で少しは人間らしさを取り戻せた気がする。フランの外出の件考えといてくれよ?約束なんだ」
「話は終わったかしら?長すぎて眠くなってきちゃったわ。それにここは客にお茶も出さないのかしら?」
さて、そろそろ待たせている巫女さんにも何かしらのもてなしをしないといけないな。俺の主人に刃を向け、傷つけた。それだけで俺の腸は煮え繰してんだ…五体満足で返すわけにはいかない。
「あぁ…お前は何時もより特別なおもてなしをしてやるよ!…って、あれ?」
フランを下ろし立ち上がろうとした時周りの景色が歪み、色が抜けていった。瞼が重くなり意識が薄れていく。レミリア嬢が巫女さんを押し退け何かを叫びながら駆け寄ってくるが何を言っているか分からない。あぁ、眠い…全くこの不器用な姉妹の仲裁には骨が折れるな…満身創痍だが、それでも満ち足りた気持ちで俺の意識は闇の底に沈んでいった。
如何だったでしょうか?今回はちょいと長めになってしまいました。
次回はストックが無くなったので遅れ気味になるかもしれませんが、宜しくお願いします!
後、活動記録にも書いた通り紅魔郷が終わればコラボ作品を書こうかと考えておりますのでもし、使わせて頂ける方がいればコメントお願いします。
感想や意見も大歓迎ですので、ガンガン書いていってくださいね〜
ではまた次回にお会いしましょう