東方狂宴舞   作:ホッピングミキサー

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はいはい、やって参りましたホッピングミキサーです!
中々バイトが決まらず金がやばいです…
今回はお祭り回なのでハッチャケております!
でも煉君はどうなのでしょうね…
ではshoot15 宴と契りお楽しみ下さい


shoot15 宴と契り

「また此処か…」

 

いつもと同じ黒一色に染められた世界に気づけば俺は立っていた。いつも見る悪夢は俺の心の闇が蓄積して作り出されたこの世界が心の均衡を保つ為に見せているものだと考えていたが今回はその世界におよそ似つかわしくない白いドレスを着た少女がちょこんと座っていた。俺はこの子を知っている筈だ…とても大切な事なのに何か重い物で蓋をされたように俺のこの子についての記憶は引き出すことは出来ず首を捻っていると俯きっぱなしだった少女が顔を上げ繊細なそれでいて殺意の篭った声で叫んだ。

 

「どうしてお前が幸せそうに生きているんだ!」

 

その時思い出した彼女その顔を俺は今後忘れる事が出来ないだろう。瞳孔が開き濁りきった目をしていたが間違いなくこの少女は秋の夜に俺が殺したあの女性の顔だったのだから。

 

 

「うわあぁ‼︎」

 

正しく絶叫といえる悲鳴とともに俺は飛び起きた。心臓の鼓動が早鐘のように鳴っているのが聞こえる。悪夢はいつものことだから慣れたと思っていたが、今回のは本当に参った。まさか彼女まで出てくるとは思わなかったし、夢で言われた事が頭の中で壊れたレコードのように何度も鳴り響いている。

 

「『どうして幸せな顔で生きている』か…」

 

口に出して反芻する。確かに殺された当人からしたら気持ちのいいものではないだろうし俺自身もどこかで忘れようとしていたのかもしれない。ベッドで頭を抱えていると扉の外

大広間の方が騒がしいのに気づいた。薄っすら流れてくる香ばしい匂いに思わず腹の虫が鳴く。

 

「そういや異変が始まってから何も食べてなかったな…俺の分が残ってりゃいいが、厳しいかな」

 

ベッドから這い出て自分が上半身裸で包帯まみれという状況に気づく。きっとまた十六夜さんがやってくれたんだろう…この世界に来てからこの状態になる事がやけに増えた気がする。包帯を外す際に腕をあげると脇腹に鈍い痛みが走るがそれ以外の傷はあらかた治っているようで包帯についていた血は全て乾いていた。常人では考えられない回復力、段々と自分が人間から外れていっている気がして笑えてきた。クローゼットに入っているシャツを着てネクタイを締める。最低限の身嗜みを整えて俺は大広間への扉を開いた。

 

 

「こいつは凄ぇな…色々と」

 

扉の先にあった景色は混沌そのものだった。解決者である巫女が酒瓶(ボトル)を振り回し

それにちょっかいをだした妖精数匹が瓶の直撃を受け妙な効果音と共に消え去り、霧雨はパチュリーと金髪の少女二人に絡まれ苦笑いを浮かべ、レミリア嬢は何故か涙目で十六夜さんに慰められており、その上空では青い服に氷の翼を付けた妖精とフランの弾幕が飛び交っている…こういう場合どこから先に突っ込めばいいんだ?

 

「目が覚めたのね。大変だったのよ?貴方は急に倒れるし霊夢には貴方についての説明を求められるしこの宴会の準備もしなくちゃいけなかったし…本当どうして貴方は肝心な時にいないのよ」

 

時間を止めて来たのだろう、振り向くと十六夜さんが腕を組んで隣に立っていた。レミリア嬢は元から赤い目を更に赤くさせて此方を睨んでおり、十六夜さんを俺に取られた事がご不満な様子だった。

 

「それについては申し訳なかった。あんたには世話になりっぱなしな気がするな…この借りは後日しっかりと返させて貰うよ」

 

「そうね、じゃあ宴会の片付けと貴方が壊した地下室の修繕をお願いしようかしら?

それと…お嬢様が呼んでいたわよ?この宴会が終わったら行きなさい。はい、これ」

 

十六夜さんから手渡されたワイングラスには白ワインが注がれており白葡萄の爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。香りを堪能していると十六夜さんがこちらに自分のグラスを向けてきた。

 

「今日は難しい事は考えずに楽しみなさい。

これは貴方の歓迎会でもあるのだから。ようこそ幻想郷へ煉さん」

 

「ふっ、此方こそ宜しくお願いします!十六夜メイド長」

 

カチン

 

グラスを合わせる音が心地いい。酒自体はあまり飲める方ではないがこの一杯は今迄飲んだどの酒よりも優しく、暖かい味がした。

 

 

そこから先はもう目が回るようだった。レミリア嬢と戦っていた巫女は博麗霊夢という名前らしく、なんでもこの幻想郷の治安維持を行っているそうだ。去り際に依頼の際には賽銭の奉納を求めると言っていたような気がするが、聞かなかったことにしよう。他にも霧雨に絡んでいた人形遣いのアリス・マーガトロイド、新聞記者の射命丸 文…様々な人物と知り合った。本当にみんないい奴ばかりで…その光の中に俺がいるのが信じられなかった。

 

 

「…終わらねぇ」

 

目の前に積まれた恐ろしい数の食器を改めて見た時はまた意識が飛びそうになった。何しろ洗っても洗っても減る気配が全くない。メイド長はヒロまで酔い潰れた客人の世話に行っちまっていないだから、いくら愚痴っても一人でやるしかない訳なんだが…そろそろ手の感覚が無くなってきそうだ。

四十枚目の皿を洗い終わった時ふと顔を上げると食堂のドアにもたれかかるように立つ主人の姿があった。

 

「大変そうね?本当なら片付けは全員でやる筈なのだけど、皆寝ちゃったし…疲れてる所悪いんだけど話があるから私の部屋に来てくれる?」

 

「いや、こういうのも新鮮で俺にとっちゃ貴重な経験さ。部屋に行くなら何か飲み物でも持って行こうか"お嬢"?」

 

レミリア嬢は薄く笑い、側にあるボトルサーバーに刺さる一本のワインを指差してから去っていった。さてさて…どうしたものかね?

この洗い物は数分で終わる量じゃないぞ…こういうときに限ってメイド長はなんでいないんだ!

 

「私がなんですって?上司に対してその口調はよろしくないんじゃないかしら?」

 

どうやら口に出ていたようだ。さっきから後ろ手に組まれた手に光るナイフが怖くて仕方ない。ビクつきながら先程のことを報告すると「こんなとこで油売ってないでさっさと行け」とのこと。半ばせっつかれるようにワイングラスを二つとクラッシュアイスで満たしたバケツにワインボトルを放り込み食堂から走り出た。メイド長が怖いと初めて感じた瞬間だった。

 

コンコン

 

「どなた?」

 

「レミリア嬢、煉です。入りますぜ?」

 

分厚い扉を開けると我が主が丸いテーブルに腰掛けてこちらを見据えていた。キャミソールに包まれた彼女の体は先程までのプレッシャーは一切感じられない華奢で弾力があり、見た目相応の幼い子供のようだった。

 

「ボケっとしてないで座ったらどう?」

 

中にも入らず入り口で硬直する俺を不思議に思ったのか、少し呆れ気味に自分の向かいの席を示して着席を促す。流石にレミリア嬢の体に見惚れていて忘れてましたとは言えないので素直に席につくことにする。時間も遅い事だしさっさと本題にいこう。主人に負担をかけるわけにもいかないからな。

 

「で、話とは一体何なんだ?」

 

「貴方も気づいてるんでしょう?フランの事よ…」

 

薄々気づいてはいた。だが気づかないふりをしていた。俺のお節介の所為で姉妹の中が更に悪くなっているかもしれないと考えると怖くなってくるから。結局俺はフランに何かを言うだけの価値も資格も無かった。未だに逃げ続けている俺には…

 

「ありがとう。貴方には感謝してもし足りないわ」

 

何が起こっているのか分からなかった。何故主は俺に頭を下げているのか、何故俺に感謝の言葉を述べているのか、そして…

 

「どうして…泣いているんだ?」

 

あれ程気丈な立ち振舞いをしていた彼女が声を殺して泣いている。そういや俺がレミリア嬢を怒鳴りつけた時もこんな風に泣いていたっけ…俺はとことん女を泣かせる事が多いようだ。俺が差し出したハンカチを受け取ったレミリア嬢は目を抑えながらゆっくりと話し出した。背負っている自らの"罪"を。

 

「あなたの言う通り私はあの子の…フランの能力を恐れ逃げ続けてきた。『家族の安全』っていう大義名分すら用意してね…あの子も家族なのに酷い話よね。でも、貴方は私達姉妹を縛り付けていた鎖を断ち切ってくれた。

貴方が寝ている間にフランと話をしたわ。 私に言いたかったこと、貴方と話したこと…色んな事を話してくれたわ。あの子がどれだけ辛かったか…寂しかったか。改めて思い知らされたわ。あんなに表情豊かで大きくなっていたのね」

 

「本当に…フランもそうだがあんたも強いな

俺にはあんたに感謝される程の価値はねぇよ。俺は少し背中を押しただけでそこから先解決したのはあんたら2人の力さ」

 

緩やかなウェーブのかかった青髪をクシャリと撫でる。柔らかな髪は指からスルスルと溢れ俺の手から離れていく。それを眺めていると頭の中にノイズが走り"白い少女"の笑顔が浮かぶ。俺は…そんな価値のある人間ではないよ。忘れないように反芻する。

 

「ねぇ…大丈夫?さっきからぼーっとする事が多いけど、やっぱり病み上がりにはキツかったかしら?」

 

「いや、なんでもない。処でこのワインは?

普通のやつとは違うだろ?」

 

リクエストのあったボトルは明らかにラベルが古い物で。簡単に開けられるものではないのは酒をあまり飲まない俺ですら容易に推測出来た。恐らく年代モノと呼ばれるものなのだろう。

 

「よく分かったわね、でも今日はこれを開けるに足だけの特別な日なのだから構やしないわ」

 

グラスに注がれた赤い液体は軽く回すと宴会で飲んだ白ワインとはまた異なった深みのある香りがした。グラスに映る自分の顔を眺めているとそういやワインを注ぐとき主がそれを行うと契約の意味があったことを思い出してはっとする。目の前を見ると優しい笑みでグラスを差し出すレミリア嬢の姿があった。

 

「貴方が何を抱えているのかは聞かないわ。でもどんな事があっても私達は貴方の味方だということを覚えておいて。これで貴方も正式に私の"家族"よ」

 

「……ありがとうな」

 

グラスを打ち合わせ、口をつけたワインは濃厚な葡萄の味の中に仄かな塩味が感じられた。

 




如何だったでしょうか?最近風邪気味で体力がガタ下がりしているので今回の後書きはここで締めたいと思います…申し訳ありません。
ではまた次回でお会いしましょう!
感想、意見お待ちしております
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