今回は完全な日常回になります…が、ここで教育関連の読者様にお詫びさせていただきます。これは完全な個人の思想です!実際にある教育論とは何の関係もありません!
さて、保険を打ったところで、shoot18 休暇と教育論お楽しみ下さい
今日は羽休めを兼ねて人間の里にやって来たが異変での事は既に里中に知れ渡っているらしくこちらを見る視線が所構わず付き纏ってどうも落ち着かない。
「はぁ…久しぶりの外だってのに、こう見られてちゃ肩がこっちまうよ」
緩んだ手袋をはめ直しながらぼやく。
フランとの練習の成果なのか俺の能力はある程度制御できるようになったがまだまだ危険なことには変わりは無いのでパチュリーに一組の手袋を渡されている。これは高度な結界魔法を組み込んだ物らしくはめている者の能力を抑制するリミッターになるそうで、今回の休日も外でいる時はその手袋を常時着用する事を条件に許可が下りた様なものだ。
鬱々とした思考を巡らせていると腰に軽い衝撃があった。思わぬことに体勢を崩しふらつく。ジロジロ見られて正直辟易としていたところに起こった事に俺の張っていた何かに切れ目が入り俺は見えない襲撃者に鋭く怒鳴った。
「どこ見て歩いてんだ!殺されたいのか!?」
「ふぇぇ…ご、ごめんなさい‼︎」
ん?なんだかやけに若い、いや幼い声だな…視線を下げると里の子供だろうか、黒髪の綺麗な女の子が涙目になってへたり込んでいた。
少女の顔は最早欠壊寸前のダムの様に歪んでいる。まずい、まずいぞこれは…この状況を見れば誰もが『幼気な少女を泣かせる不審者』という図に見るだろう。そうなれば新参者の俺の立場が圧倒的に不利に働くのは必定
こんなとこで問題なんて起こしたら、レミリア嬢の顔に泥を塗ることになって俺の居場所が無くなってしまう。考えただけでも焦りが募り嫌な汗が背中を伝う。
絶望だ…まぁイラついていたとはいえ一時の感情に身を任せた俺の責任な訳だが…いや、ここで諦めるわけにいくか。なんとか解決策を模索するんだ。
「えっと…その悪かったな。怒鳴ったりして
驚かせちまった」
「ひっ、ひっぐ。ご、ごめんなさいぃ」
駄目だ。パニックになってこっちの言葉が届いていない。落ち着くまで待つしかないか…
偶然見つけた茶屋に座らせ只待つ。
「落ち着いたか?」
「はい…あの、ありがとうございます…」
「いや、泣かせたのは俺が悪いんだから礼を言われてもい困るんだがな…」
頭を掻きながらぶつかった時に散らばった書物をパラパラとめくっていて分かったが、これは恐らく教科書の様なものだろう。そういやレミリア嬢も人里に寺子屋が出来たとかなんとか言っていた気がする。だとしたらこの時間帯に生徒がうろついてるのはおかしいんじゃないか?
「で、なんで寺子屋に行ってないんだ?」
「‼︎…どうしてそれを」
「何簡単なこった。さっき見せてもらったが、この本は教科書だろ?そんなもん持って昼間っからうろうろしてんのは大抵サボりだと決まってんだよ。で、なんでだ?」
「……つまらないから」
蚊の鳴くような声で呟いた少女からはある種の諦めの色が見て取れた。『つまらない』その思いを溜め込み過ぎてこの子は逃げ出してしまったんだろう。自分の心を守るために。
分からなくはない、興味のない事をいくらやっても楽しくもなんともないからな。少女の頭に手を置き、笑顔で肯定してやる。
「そうか、つまらないか。確かに寺子屋なんて行ってても面白い事は無いなぁ…だったらさ、今日一日俺とデートしてくれよ。どうせ寺子屋サボるなら意味無くうろつくより楽しんだ方が得だ」
「えっ、怒らないの?勝手に寺子屋休んでるのに…」
「つまらないって奴に無理やり引っ張って行っても意味ないし、お前だって嫌だろ?」
コクンと頷く彼女の手を取り立たせる。ふらふらと立ち上がる様子を見ながら思う。やはりこの子も事情は違えど俺と似た者同士という事だろう。だったら尚更この子にはちゃんと寺子屋に行って欲しい。今日は其の為の一日だ。俺は未だ困惑の色が抜けていない彼女に笑顔で言う。
「今日は課外授業だ。寺子屋では教えてくれないことを教えてやるから楽しみにしとけ」
「はい!」
返事をした彼女は笑っていた。
それから彼女と様々なところを回り、人里に戻ってきた頃には陽も傾き遠くに見える山の峰が緋く照らし出されて神秘的な雰囲気を醸し出していた。先を行く彼女の後ろ姿を見て会った時と比べ彼女の顔は随分と明るくなったように思う。そろそろ潮時かな…
「先生、今日は本当にありがとうございました。こんなに楽しい授業は初めてです!」
「まだ授業は終わってないぞ?今日の授業を締めくくる為にある場所に行かなきゃならないからな」
首を傾げる彼女の手を引き、日暮れの道を歩く。途中で俺の行き先が分かったのか止まろうとするが構わず引っ張り歩かせる。今日一日でこの子は大きく成長した。もうつまらないと感じることは無いだろうと思う。だから俺は最後の場所にここを選んだ。
「ここって…」
「そう、お前が今日行かなかった寺子屋だ」
見えた寺子屋は木目の壁は夕日の光によって山吹色に染められ、屋根は瓦が所々剥げかかっているが風情のある佇まいでその周りでは子供の賑やかな声が響いていた。生徒達に声をかけている長身の女性が恐らくここの教師なのだろう。さっきから手を握っている右手に震えが伝わって来ている。ここが正念場だな…目は見ずにはっきりと言う。
「俺からの最後の授業だ。今からあそこにいる先生の所に謝りに行ってこい。それで明日からはちゃんと寺子屋に行け」
「どうして!?先生は『無理に行かなくてもいい』って言ったのに!」
「『今日は無理に行かなくてもいい』とは言ったが『もう行かなくてもいい』とは言ってない。それに、一日観察して君はもう大丈夫だと俺が判断したんだ。安心しろ、俺も付いて行ってやるからよ」
おずおずと歩き出したのを確認し俺も後ろについて行く。丁度寺子屋との距離が半分ほど来た時教師がこちらに気づいたのか小走りに向かってきた。目の前で立ち止まったその女性は向こうから見ていた時とは違い随分と若若しく感じた。
「今日寺子屋に来なかったから心配していたんだぞ。休むときはせめて連絡をしてくれ」
「ご、ごめんなさい先生!今日はこの人に色々教えて貰っていたんです」
俺の方を見て異変の事を思い出したのか、俺の前にいた少女を後ろに隠しつつ鋭い目で睨みつけた。まぁ当然の反応だろう…ここに来て数週間の人間を信用する方がおかしい。それで言えばうちの館の連中はおかしな奴しかいないことになるな。場違いにもそんな事を考えていると警戒態勢をそのままに女教師が言った。
「君の所在はどうでもいい。しかし私の生徒に手を出さないで貰いたい」
まさにテンプレ通りの展開だ。ありきたり過ぎてつまらない。しかし誤解は解いておく必要があるか…ここで喧嘩を売っても何の得にもなりそうにないからな。
「何か誤解をしているようだが…俺はその子に何もしていないよ。只有意義なサボり方を教えてやっていただけさ」
「それが駄目だと言ってるんだ!なんだ『有意義なサボり方』って。ふざけてるのか?」
どうやらこの人は途轍もなくお堅い方のようだ。こんな様子じゃ登校拒否が出てくるのも無理ないな…これ以上俺が関わるのは野暮ってもんだが、一応釘だけは刺しておくか。
「後でその子に聞いてみな。あんたの授業は『つまらない』そうで、それがサボった理由だとよ」
「!?、そんな馬鹿な!?」
驚愕の表情をして背後にいる少女を振り返る
が少女は萎縮してしまって喋ることは出来そうになかった。そんな二人を無視して俺は続ける。
「確かに俺は家庭環境のせいで満足な教育を受けた覚えはない。あんたから見ればただサボっただけかもしれない。でもな先生、人間外に目を向ければ世界そのものが教室になるもんだ。俺にとっちゃこの幻想郷が教室で、ここにある全てが教科書なのさ。それをこの子にもわかって欲しかっただけであんたの教育論にどうこう言うつもりはない。だが頭の片隅にでも俺の言葉を留めておいて、二度とその子のような生徒を出さないでくれ」
彼女は喋らない。沈黙という名の壁が二人の間を隔て価値観の違いを見せつけていた。
「君の考え方は確かに一理ある。だが完全には認められない。私にとってはこの寺子屋が私の教室で本が教科書だからだ…だが、最後の事だけは約束しよう。私の名前は上白河 慧音、そこの寺子屋で教師をやっている者だ」
沈黙を通していた女性教師は只頷いた。それがどういう意味の頷きだったのかは分からない。だがかすかに聞こえた「私も教育者として未熟だったということか…」という呟きから彼女は本当の意味で素晴らしい教育者になるだろうと根拠もなくそう思った。いつしか彼女の目から警戒の色は消え、俺に向かって手を差し出していた。
「それで十分だ。俺の名前は幽鬼 煉、知っているかもしれないが紅魔館で執事をやっている。こっちこそ今日は迷惑かけたな」
差し出された手をこちらも笑顔で握り返す。その手は女性特有の柔らかさをしているが何処か芯の通った力強さも感じさせられる、暖かな手だった。彼女から手を離し、後ろの少女にも手を差し出す。今に思えばこの子のお陰で周囲の目も気にならなくなっていた。今日一日を充実させてくれたのはこの子のお陰といっても過言ではないだろう。
「先生!そういや私の名前を言ってませんでしたよね?私は風織 鈴音って言います。今日はありがとうございました。明日からちゃんと寺子屋に行きます!」
「あぁ、こちらこそ君のお陰で素晴らしい休日になったよ。風織だな?覚えておこう、また何かあったら呼びな。何時でも授業をしてやるよ」
ぽんぽんと頭を叩き、上白河先生に頭を下げ寺子屋を後にする。空を緋く照らしていた陽はもう殆ど沈み夜の紺を広げている。今日は空気が澄んでいるきっともう少ししたら大きな月が出てくるだろう。冷たいはずの風は心地良い涼風となって俺の体を撫でていった。
「そろそろ、約束を果たさないとな…」
穏やかな顔で俺は呟き、家族の待つ我が家への帰路についた。
如何だったでしょうか?中々教育って大変ですねぇ
ここでお知らせです!次回は本編から外れて他の作者さんとのコラボ作品を書きたいと思っています。私の作品に出しても構わないという寛大な方!感想欄に作品名と作者名を記入の元お願いいたします
では、また次回でお会いしましょう