東方狂宴舞   作:ホッピングミキサー

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はい、今回は本編から外れ(業)様とのコラボ作品となっております
尚本作品は三部作となるのでそこのところはご了承下さい
では、extrashoot 前編 奇妙な来訪者お楽しみ下さい。


extrashoot 前編 奇妙な来訪者

これは未だ俺が能力をコントロール出来ずにフランの地下室を穴だらけにしていた頃の事だ。その日も壁に大穴を開け、メイド長に説教をされ修復出来るまで外で巡回していた時屋敷の外で妙なモノを見つけた。野良妖怪が何かを取り巻いている。何か言っているようだがここからじゃ聞き取ることは出来なさそうだ。

 

「退屈凌ぎにはなるかな…」

 

投げやりな口調とは裏腹に俺は目を輝かせてその喧騒の中に飛び込んだ。

俺の頭は『疑問』の二文字で埋められていた。本来この紅魔館には野良妖怪はおろか、並の妖怪は寄り付かない。いるとしても力量の差が分からない馬鹿が数える程いるだけだろう。それ程主人の、吸血鬼レミリア・スカーレットの妖力が大きい事を表しているのだが、今回のように雑魚妖怪が群れて現れる事は実に俺好みの予測外の出来事だ。徐々に現場に近づくにつれ野良妖怪の罵声や叫声に混じって聞き取れなかった会話が聞こえてきた。

 

「あー、道に迷ったんだけど素直に教えてくれるわけないよな?」

 

「お前馬鹿か!?目の前に転がってる餌に道教えても何にもなんねぇだろうが!」

 

「うーん…じゃあどうすっかなぁ」

 

驚いた。囲まれている男が物怖じしていない事にではない。あの手の妖怪は論理的な会話も何も餌を見つけたら兎に角突っ込むものだと思っていたが、ある程度の知能はあるようだ。にしてもあの男の格好、ここじゃ見ないものだな…このまま彼奴が喰われるのを見物していてもいいが、館の景観を損なうのは気分が悪いし素性も気になる。なら、ここはひとつ『客』として対応してしてやるか。

 

「テメェは俺たちの餌になんだっ「スダンッ」ア、ガッ…」

 

「へぇ、誰の餌になるのかなぁ?」

 

トカゲ頭"だった"妖怪は最後まで言葉を発する事はなかった。いや、"発する事が出来なかった"が正しいか…頭があったその場所に空いた大穴からは唖然、驚愕、混乱…憤りというのも見かけ色取り取りの表情を浮かべる妖怪達の顔が覗くことができる。その様は宛ら感情の博物館だ。覗き穴が邪魔に思い、目の前にある肉のオブジェを蹴り倒す。

俺を見た奴らの顔は困惑の白から一様に憤怒の赤へと変わる。そして…絶望の白へと戻る。

 

「……黒の悪魔」

 

「ん〜聞こえなかったかぁ?俺は『誰の餌になんのか?』って聞いたんだ…ちゃんと答えろよぉ。言う事を聞く良い子には俺も心変わりするかもしれないよ?」

 

「それは…「ズダンッ」ゲハッ」

 

有無を言わさぬ一撃。放たれた青白い銃弾は霊力の線を引きながら対象の肉を焼き潰し、拳大の穴を開ける。驚愕の表情を浮かべ鮮血を吐きながら倒れる奴を横目にさも楽しそうに言い放つ。

 

「はい、時間切れ〜。この館の敷地内で騒動起こした奴をハナから生かしておくつもりなんてねぇよバーカ」

 

敢えて周りに聞こえるように言ったがここまで効果があるとは思わなかった。あれ程粋がっていた奴らが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。単純な奴ら…テンプレ通りの行動に

寧ろ同情すら覚えながら走り去っていく一匹に銃口を向け引き金を引こうとした時銃口の前にあの男性が立ち塞がった。右手は銃身をしっかりと捉えておりちっとやそっとじゃ振りほどけそうにない。

 

「どけよ…狙えじゃねぇか」

 

「やり過ぎだ。これ以上殺す必要はないだろ

それに、逃げているとこを後ろから撃つのは幾ら何でも可哀想だ」

 

こいつ、さっきまでのヘロヘロしてた奴とは別人の様な鋭い目をしてやがる。それに重心を深く落とす事によって俺が振り解く事を出来なくしている…ははっ面白ぇな。肩を竦め握っているグリップから力を抜き、戦闘終了の意思を示す。握られていた手がゆっくりとバレルから離れていくが目は俺を見据え一切の不審な動きを封じていた。腰のホルスターに銃を収めたのを確認するとさっきまでの眼光は消え失せヘナヘナと男はその場にへたり込んだ。

 

「あ〜怖かったぁ。撃たれたらどうしよかと思ったよ」

 

緊張感の無い腑抜けた表情で良かった良かったと言うこの男を感情の消えた目で見つめる。少ない情報を集め、統合し、分析する。

 

(何が怖かっただ…リボルバーの弱点である銃身を即座に掴み撃てなくするなんてその手の知識がないとまず不可能だ。それにあの体捌きにしても普通の人間には出来ない芸当であることに違いない。違う…こいつは明らかに他の人間とは違う!)

 

俄然興味の湧いた相手に手を差し伸べ、立ち上がらせる。一先ずこいつは『客』だ。執事としてきちんともてなす義務が俺にはある。

俺の関心事はその後ででもじっくり聴きだすとしよう。遠くでメイド長の呼ぶ声も聞こえているからついでに連れていけばいいだろう。襟を正し、タイを締め直す。

 

「すまないな、あれがうちのやり方なもんで怪我がなくて良かったよ。俺は幽鬼 煉、あそこにある紅魔館で執事をしている。内輪のゴタゴタに巻き込んじまった詫びとして、あんたを客としてもてなしたいんだが…」

 

「おっ、いいのか?なんか悪りぃな、道聞くだけのつもりだったんだが…あ、俺の名前は玖力椎唄 玖力ってんだ。宜しくな!」

 

 

「いなくなったと思ったら…いったい何考えてるの?」

 

意気揚々と屋敷に戻るとメイド長が門前でお出迎えではなさそうだな…目から光が消えている。こいつはかなりマズったかな?そう思った瞬間縦に走った腕の軌跡から白銀の線が迫る。

 

「うおっ、危ねっ!」

 

怒られるとは思っていた。息抜きしてくると言って出て行ってからかれこれ一時間以上は戻ってないんだから心配させたのは悪いと思う。だから怒られる事は仕方ないことだと考えていた。でも…ナイフが飛んでくるとは思っていなかった!迫る白刃を人差し指と中指で挟み込んで受け止める。

 

「チッ」

 

今舌打ちしたよな!?「チッ」って聞こえたぞ?今の一撃俺だったから避けれたものの後ろにいる椎唄に当たったらどうするつもりだったんだ…ほら見ろ、目が皿みたいになってんぞ。

 

「ようこそいらっしゃいました。この執事と同じく此処でメイド長をさせて頂いている十六夜 咲夜と言います。今日はご満足頂けるようもてなさせて頂きますので宜しくお願いしますね。それでは私は失礼致します」

 

俺を押し退け椎唄の前に立ったメイド長の動作は俺のそれとは違い正にパーフェクトメイドの呼び名に相応しい隙の無い物だった。それにあんな笑顔俺に対しては絶対に見せないものだしな…って椎唄もにやけてんじゃねぇよ!

 

「それではお客様、ご案内致しますよっと」

 

メイド長が消えた事を確認してから元から緩んでいる顔が更に緩んで大変な事になっている男の背中に蹴りを入れ、前につんのめっている男を放置しメイド長のナイフを手で弄びながら館の中に入った。

客室に案内する前にレミリア嬢のいる広間へ面通しに行く。流石の椎唄もそれぐらいの礼儀は持っていたようで特に質問してくることも無く素直について来た。

 

「この先が主人のいる広間だ。首を飛ばされたくなかったら大人しくしとけ」

 

「怖いねぇ、そいつは是非とも礼儀正しくしないといけねぇな…でも一体どんな姿なんだろう、楽しみだなぁ」

 

割と本気でこいつは今日は死ぬんじゃないかと思った。レミリア嬢の事だから客人を無下には扱わないだろうが…彼にも一城の主と顔をあわせるのにこいつ緊張感の無さは余りにも異常だ。初めて彼女に会った時のことを思い出す。抜き身の刃物の様な鋭い視線、対象を握り潰すかの様に発せられる強大なプレッシャー…どれをとっても常人に耐えられるものではない。凡ゆる外部からの刺激を拒絶するかのような大きく荘厳な扉を押し開ける。

 

「失礼しますぜお嬢」

 

開かれた扉が内部の風を切り裂き、外観と違わぬ紅い広間への道が現れる。その突き当たりにある玉座には威厳溢れる主人が座って…いない?

 

「…もう一回よフラン!妹に負けたままじゃ紅魔館の主の名が廃るわ!」

 

「え〜、まだやるの?もう諦めなよぉ。お姉様弱いからフラン飽きちゃった」

 

「う、う〜…うわぁおぉぉしゃくや〜」

 

「はいはい。妹様!グッジョ…ゲフンゲフンお嬢様を苛めるのはおよしになってください」

 

扉を閉め直そうかと本気で思った。あれだけこいつにビビらせるような口調で演説したってのにその主は広間の中央で妹に負け泣かされているという状況…貫禄のかの字も感じられない光景に固まっているとこちらに気づいたのかフランが目を輝かせて俺の腹めがけて突っ込んで来た。

 

「うぐっ…やぁフラン、レミリア嬢と遊んでいたのか?」

 

抱きとめた時ボクサーのブローを受けたような衝撃が腹に感じたが顔には出さずに笑顔でフランの頭を撫でてやる。フランは無邪気な笑顔を浮かべ大袈裟な身振り手振りで感情を伝える。どうやらチェスをしていたようでモノクロの駒がテーブルに置かれている。

 

「うん、でもお姉様弱いんだもん…ねぇお兄様っ!フランと遊んで!」

 

「遊んでやりたいのはやまやまだが、今はレミリア嬢に用があってな。また後でな」

 

俺がそう諌めるとぷくーと頬を膨らませて無言で抗議する。こんな時は只優しく頭を撫でてやればむくれた表情をしながらも大人しく道を開けてくれる。テーブルで突っ伏す主に

近づき咳払いをする。

 

「レミリア嬢…カリスマを盛大にブレイクしているところ悪いが少しこっちを見てもらってもいいか?」

 

「ふぐっ…ひぐっ…何よぉ私は今貴方に構ってられるほどの余裕は無いのよぉ。それに誰よその後ろの男、そんな人間此処にはいなかったでしょ?」

 

「あぁ、こいつは外で野良妖怪に絡まれてるとこを拾ったんだ。一応うちの敷地内で起きた問題だから侘びの意味も込めて客としてもてなそうと思うんだが、レミリア嬢の許しがいると思ってな…ほらお前も自己紹介くらいしたらどうだ」

 

今迄蚊帳の外で気を抜いていたのか突然自分の事を出されたにも関わらずポカンとした表情を浮かべていたが背中を押すとよろける様に前に出て少し引き締まったとした表情になった。まぁ眠気眼の様なレミリア嬢と比べてなので相変わらずぼんやりした表情なのには変わらないのだが…

 

「あ?あぁ…彼が言った通り、外で道を聞こうとして襲われているところを助けて貰った椎唄 玖力ってモンだ。この幻想郷をぶらぶら旅してたら偶々此処に辿り着いたんだ」

 

いやぁ参った参ったと頭を掻きながら宣うこいつの顔をぼんやりと見るレミリア嬢の顔が一瞬は何時もより鋭くなった気がしたが余りにも一瞬の事でこの時の俺は気に止めることはなかった。ひとつ溜息を吐き、俺に視線を戻したレミリア嬢は如何にも面倒そうに、言った。

 

「不審な奴じゃなきゃ一々私に許可を取らなくてもいいわよ。来客の対応は貴方と咲夜に一任しているのだから。でもそうね…彼にはここに泊まっていってもらうことにしましょうか」

 

椎唄は最初こそ、そんなことしてもらっては悪いと渋っていたがレミリア嬢の「どうせ今日の宿のあてはないんでしょ?」という言葉で納得させられたようでそれ以降食い下がることなく大人しく引っ込んだ。どうやら今日のレミリア嬢はご機嫌が優れないようだ。さっきからさっさと出て行けという雰囲気が漂っている。ここは出直したほうがよさそうだな…

 

「それじゃあ俺達は失礼させて貰うが、何かあったら呼んでくれ」

 

軽く一礼をして俺達は大広間を後にした。

 

「…ふふっ、本当に面白い人間を拾ったのね」

 

そして誰もいなくなった広い空間にレミリア嬢の呟きがやけに大きく響いた。




如何だったでしょうか?できるだけ本編に沿って作りましたが…あまり自信がありません。(業)様には引き続き御協力をお願いすることとなりますがどうか宜しくお願いします。
では、また次回でお会いしましょう
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