では、extrashoot 中編 武装創造 お楽しみ下さい
一日共に過ごし、観察した結果椎唄について分かったことが幾つかある。こいつのタンクトップについている勲章から何かしらの部隊に所属する軍人であり、今は一人旅の最中であること。軍人がふらふらしてて良いのかどうかは知らないがあの人間離れした動きや銃器に対する知識にも納得がいく。それで今俺はいつも通りフランと何故かついて来た椎唄と共にフランの部屋の横に作られた部屋で能力制御の訓練をしているのだが…
ドゴォォン
相も変わらず壁に対してトンネル掘り作業をしている訳で。つまりは全く進歩していないのだった。
「……駄目だ、全然出来ねぇ。このままじゃまたメイド長に大目玉食らうだけになっちまう」
「お兄様大丈夫だよっ!フランもまだ全然出来ないしお兄様の方が開ける穴の大きさが小さくなってるからきっともう少しで制御出来るようになるって!」
「ははは、フランちゃん…それはフォローになってないと思うぞ」
そう、椎唄の言う通り破壊の規模こそフランの方が大きいが制御の失敗数は圧倒的に俺の方が多い。それはスポンジの様に穴だらけになった壁を見れば分かる事だ。対してフランは壁の傷は大きいが最初と比べたら明らかに傷の数は減っており、それが成長している証拠となっている。『兄の俺が妹に出来ないところを見せる訳にはいかない』その思いが俺を焦らせ次に放った石は今迄とは比べられない大きさの穴を開け途中で砕けた。
「………やべ」
「ちょっと休憩しないか?」
「そうだな…」
フランの部屋に戻り予め用意しておいた紅茶を注ぎ全員が席についたことを見計らいカップに口を付ける。ほんのりと香るフランボワーズの甘酸っぱい香りが荒れていた俺の心を鎮めていく。全員が紅茶の余韻に浸っている時不意に目の前に座る椎唄が切り出した。
「確か幻想郷には『弾幕ごっこ』っていう遊戯戦闘があるって聞いたんだが…俺とやってみないか?」
「弾幕ごっこ!?じゃあフランが「いや、待ってくれ」え?」
驚いた…まさかこいつ自身から誘ってくるとは思ってもみなかった意気揚々と立ち上がろうとするフランを手で制する。フランが相手だと、まず椎唄に勝ち目が無くなる。それに俺も正直こいつとやりあってみたいと思っていたところだ。残っていた紅茶を飲み干し、
立ち上がる。
「弾幕ごっこ…やったことあんのか?」
「いいや、無い…見たことがあるだけだがルールは一通り分かっているつもりだ」
それだけ分かれば十分だ。後はヤル気があれば何も必要はない…何しろ弾幕ごっこは技術と感情のぶつかり合いなのだから。
「俺が相手をする。此処は狭い…表に出な。フラン、中庭に連れて行ってやってくれ」
「はーい。椎唄、こっちだよ」
二人が部屋から出て行った後、自室に戻り引き出しに入れてあったリボルバーを取り出し目の前に翳す。常に手入れをして輝く銃身に映る自らの顔にそっと語りかける。
「久方ぶりのヤリ合いだ…今日はとことん楽しもうな、相棒」
手の中に収まる一塊の鋼は喜びに震えるが如く鈍色の光を放っていた。
中庭に着いた時には椎唄は既には準備が終わっているのかフランに弾幕ごっこのルールを教えてもらっていた。聴き終わった時に俺が来ている事に気が付いたのか子供のように手を振り何時もの顔で言ってきた。
「お手柔らかにたのむよ、なにせこれが初めてだからな」
「保証は出来かねる…俺もこれで三回しかやったことがないんだ。加減が出来る方じゃない。余り遊び感覚でやってるとエライ目にあうかもしれないぞ」
「おぉ、怖い怖い」と相変わらず緊張感の無い表情で手を振る椎唄の武装は見たところ腰のオートマチック拳銃二丁だけの様に見える。装弾数、連射能力などの基本的なスペックでは圧倒的にこちらが不利だ…だが逆にあの銃さえ封じてしまえばこいつの戦力は大きく削がれる筈だ。だったら…
「じゃあ、戦るか!」
言うが早いか奴の懐目掛けて走る。奴がホルスターから銃を抜くのと俺が距離を詰めきるのはほぼ同時。銃を抜かずに突っ込んできた俺に驚いたのか一瞬動作が遅れた。その隙を狙い、銃を構えたまま硬直した腕を蹴り上げる。奴の手から銃が離れ二丁の黒い鉄塊は放射線を描きながら中庭の草の中に落ちていった事を確認し、蹴り足を軸に右手のナイフを軽動脈に狙いを定め横に振るおうとした。
「……終わりだ」
「あぁ!やべぇ…なんてなっ!」
ガチリッ
俺は目の前で起きている現象に驚愕した。勿論完全な勝利を確信していた訳ではない。こいつなら急所を外すことも可能だとは思っていた…だから先程の一撃を防がれた事に対しては然程驚いてはいない。問題なのは…『何も無かった空間』から突如新たな銃が出現しその銃口が俺の胸に向いている事だ。
「ッ!?SMG!?」
「ご名答、さぁ反撃開始だ!」
ナイフから手を離し後ろに飛ぶ…そう思った時にはけたたましい破裂音と臙脂色のマズルフラッシュによって眼前の世界は埋め尽くされていた。二門の機械銃から放たれた弾幕をもろに受けた俺の体はゴム鞠の様に庭を転がり芝に痕を残して止まった。硝煙を吐き続けるサブマシンガンを構え直し、勝ち誇ったかのような笑みで地面に突っ伏す俺を見下ろしながら言った。
「言い忘れてたけど俺の能力は『あらゆる武器を生み出す程度の能力』なんで宜しく」
あらゆる武器を生み出す能力だと…そんな無茶苦茶な能力有りなのかよ。その能力があることによって奴の現存戦力が全く分からなった。『あらゆる武器』というくらいなのだから射程はほぼ全範囲を網羅していると考えてもいい。問題は幾つまで武器を生成出来るかだ…敵の動きを探るにもさっきのような近距離の攻撃は間違いなく的にされる。ボロボロになった服を見て銃弾一発には然程威力はない事を悟る。が、何分数が多い。今回はこの程度で済んだあんな高密度の弾幕をもう一度受けたらかなりのダメージになるだろう。
「痛ぇなぁ…実弾でない事に感謝だ」
「面白い事を言うなぁ人間相手に実弾を使うわけないじゃないか。そんな事をしたら死んじまうだろ?」
空になった弾倉を落とし、新しい物を差し込んでいる時でも飄々とした顔は崩れない。それは何時でも俺を倒せるという余裕の表れでもあり、それはこの状況から見ても矛盾は無い。しかし、奴は一つ思い違いをしている。確かに普通の人間なら拳銃一丁で短機関銃を二丁…いや、それ以上の武装を持った相手に勝つ気持ちは湧かないだろう。だがな…
「生憎俺は普通の人間じゃない、お前の見たことのない射撃法を見せてやるよ」
リボルバーを抜き、機関銃の引き鉄が引かれる前に銃口に青色の銃弾を打ち込む。出口を失ったエネルギーは機関銃内部で膨張し、外殻を破壊し外に流れる。
「ぐわっ‼︎」
「まだまだ!散弾『鈍色の牢獄』」
横たわっていた姿勢から横に飛び懐に入れてあったスペルを唱える。奴の周りに鉛色の弾幕が籠状に広がり行動の自由を奪う。こいつを破るにはマスタースパークの様な一点型の攻撃かこの網そのものを破る様な大規模な弾幕でないと不可能だ。残りの弾は三発リロードする時間があるとは思えない…これで決める!そう思い奴の頭に照準を合わせ引き鉄に指をかけた時鉛色の檻の中で僅かに奴が呟くのが聞こえた。
「独奏『迫撃夫婦と悪魔のサイレン』」
「!?なんだそりゃ!?」
今日一日で一体何度驚いただろうか…奴がスペルを唱えた途端檻の中に在ろう事か大砲を乗せた列車が現れ砲撃を始めた。檻は飴細工の如く一撃で穴が開き第二射が俺を狙い飛来する。そもそもあの狭い空間にそんなごついもんを出せる事に驚きだが今はそんなことに構ってられる余裕はない。檻を破ったことから飛来する光弾は少なくともマスタースパーク並みの威力を持っていることは確実。相殺するには魔理沙とやりあった時に使ったあのスペルしか無い。
「クソがっ!霊砲『マグナムブラスト』」
凄まじい爆音と共に幾重もの衝撃波が地を叩く。光弾は赤色の光線によって打ち消されたがスペルのノックバックで俺の身体は後ろに飛び、体勢を崩しながら着地する。舞い上がる砂埃が晴れた時、俺の目の前には厳つい列車砲も奴の姿も無かった。
「ッ!何処だ!?」
「此処だよ」
振り向いた時にはソードオフのショットガンが火を噴き、俺の身体は錐揉み状に宙を待っていた。先程の攻撃と地面に叩きつけられた衝撃で肋が数本砕けたかもしれない。呼吸の度に胸を突き刺すような鋭い痛みが襲う。だが収穫もあった…奴がショットガンを持つ前にシャツに付けてある勲章が光っているのが見えた。恐らく使う武器を勲章の形に変形し保存してあるのだろう…ならの残りの勲章の数からして、奴の持つ残りの武装は後五つ!
これで勝率は60%まで跳ね上がった。こんな所で倒れてはいられない、早く立たないと…
「うっ、ゲハッ!」
「おいっ!大丈夫か!?」
砕けた骨の一部が肺に刺さったのか、盛大に吐血する。異常を察して駆けつけてくる椎唄に大丈夫だと手で合図を送る。こんな中途半端な結果で勝たれても納得がいく訳がない。痛みを堪え立ち上がろうともがくが足に力が入らない。
「ち…くしょう…やっと勝てるかもしれないとこまで来たのによ。悔しいなぁ…勝ちたいなぁ」
朦朧とする意識が暗転する時俺はまたあの無邪気だが無機質な響きの声を聞いた。
『面白ソウナ事シテルネ!君が限界ならボクと交代してモラオウカナ』
俺は抵抗することも出来ず黒い世界に落ちていった。
如何だったでしょうか?コラボものはやはり難しいと感じてしまいますね。こっちの色が強すぎれば向こうの個性を潰してしまいますし、こっちが弱すぎれば別物の作品になってしまうし…いやはや、簡単ではなさそうです。
それと、最近戦い方がワンパターン化している気がするのでかなり心配です。こうしたらいいといったご意見は随時お待ちしています。
勿論感想もお待ちしておりますよ!
ではまた次回でお会いしましょう