ここまで協力してくださった(業)様には感謝以外の言葉が見当たりません。ではコラボ編最終回extrashoot 後編 霧の向こうお楽しみください
椎唄side
見様見真似で俺は弾幕を展開し、その美しさの優劣も加味して競う決闘のようなものとは聞いたことがあるが、これは最初から殺しにかかっているように思えた。純粋な弾幕遊戯を楽しみたかっただけだ。それなのにいきなりナイフで掻き切りに来た。手を抜けば即座に三途の川の船頭にお世話になることになるだろう。そのため、手は抜けず、姑息な手を使ってしまった。もっとも、短機関銃の銃口に器用に弾を進入させる技量だ。もし殺しにかかっていなくても、射撃技術のみを鑑みると相当な腕だ。
あの檻は力業で切り抜けたとてそれも相殺された。これで振り出しに戻った。しかし、爆煙がうまく俺の姿を隠してくれて、散弾銃で彼の不意をつけた。
殺意を向けてきたら此方も向けざるを得ない。もっとも、これは実弾ほどの威力はなくせいぜい気絶、失神させるほどしかない模擬弾だ。
その模擬弾を食らいうずくまる煉を見て近寄りそうになったがまだ”決闘中”だ。俺は文字通り一足一”銃”の間合いをとり、様子を見ることにした。
煉side
あ〜あ…やってくれたナァ。服が穴だらけジャナイカ。ぼやきながら冷静に現在の自分の状態を把握する。肺に傷が付いて空気が漏れたことによる呼吸機能の低下。右脇腹への攻撃による重度の打撲、腫れの具合からして肋骨も数本ダメになっているダロウネ…全く、本当ニ君は力の使い方ガなってナイ。そんなんだからあんな雑魚にいいように遊ばれるんダ。まぁ…こんな"玩具"を使ってるヨウジャ仕方ないカ。
骨が軋み、肉が裂ける歪な音をたてながら立ち上がり握っていたリボルバーを投げ捨る。
「さぁ、第二ラウンド突入ダヨ!先ずは『追いかけっこ』をして遊ンデホシイナ」
足に多少の力を込め相手の方に向かって軽くステップを踏む。歩行という概念すら頭に無いその行為はそれだけでボクがいた地面は抉り取られ身体を彼の眼前まで運ぶに充分だった。全く見えていなかったのかボクの放った拳はいとも簡単に鳩尾深くに打ち込まれ筋肉の捻れる感触が腕に伝わる。空気が震え、まるで自動車がぶつかったかのような音を立て彼の身体は踵で黒色の線を地面に残しながら吹き飛び館の壁に蜘蛛の巣状のひび割れを残して激突した後停止した。追撃をかける事は無い。何故なら彼の身体から引き抜いた腕に残るその感覚を体の細胞全てで堪能するのにボクは忙しいのだから。それに…
「そんな簡単に終ワラセチャウのは勿体無いと思ワナイ?」
「うっ、がはっげほっ。お前、一体…」
あぁぁぁ…右手に残る感覚が、その苦痛に満ちた表情が、滴り落ちるその紅い雫が。堪らない‼︎駄目だ駄目だ、まだ壊しちゃ…もっともっと楽しまないと。折角新しい玩具が来たんだ。今回こそ飽きるまで遊んで貰うんだからさ…
ふらふらと立ち上がり手に持つショットガンを消し目を閉じた時に勲章が光る。違う武装に変えるつもりだろう。光球と化した勲章から出てきたのはゲームで敵が持つような形をしたライフル、突撃銃というものだろう。
痛みに耐え腰だめに構える様子に歓喜の思いが抑えられない。そっか…未だ遊んでクレルンダネ‼︎
「クソッ、痛ぇ…」
申し訳程度のエイムで当たるはずもないが先程より移動スピードを上げたボクの姿は銃口が火を噴くよりも先に彼の真横に到達しボクの振り上げた足は彼の左腕を捉えていた。衝撃で回転する身体は宛らダンスを踊るかの様な優雅さを備えていた。楽しかった…『追いかけっこ』を最後まで遊んでくれたのは初めてで充実感が満ちていた。だからこそ次の遊びもやりたくなった。
「ぐはっ!…はぁ、はぁ」
「アハハッ、じゃあ次は『チャンバラ』で遊ンデ‼︎魔剣『ダーインスレイブ』」
魔方陣から生み出された黒色の剣を振り揺らめく紅いオーラを飛ばす。さぁ…続キヲシヨウカ椎唄クン。
椎唄side
この煉という執事と戦っていて気付いたのは二面性があり、今は裏の性格があり、それが恐ろしく狂気で満ちている。側には今日フランと呼ばれていた少女しかいない。他の面々を呼んでこいなんて言っても通じるか分からないだろう。
とにかく、今ここでしなければいけないのは二つ、手元の突撃銃の銃剣だけで今のものを裁いては狙う必要がある。最悪、白黒の魔法使いや紅白巫女のしていたように虚空から弾幕を展開するまで。
もう一つは、飛びっきり派手で豪快な弾幕を展開する。丁度、武器はたがえどもチャンバラ向けの物がある。
「そこまでチャンバラに付き合って欲しいならやってやらぁ!」
集陣、ファランクス!
チャンバラにしては槍と不釣り合いだが、狂気とランデブーするにはこれほどやらねば此方が肉塊になるだけだ。
「さぁ、裁いてみな!」
まずはファランクスを一投、どう出るか。
煉side
彼が投げてきたのは無数の槍の塊だった。どれも異様に長く一本でも刺さったら抜くのは一苦労しそうなものだった。豪雨の如く降り注ぐ槍を先程よりも更に加速し避け地面を削り取りながら方向を変えて彼の元へ突っ込む。
「そんな大きな攻撃、避けル二決まってるジャン!それでお終いナノ?」
首を飛ばすべく魔剣を振り上げた時彼が笑っている事に気が付いた。そして気付いた時には背中に猛烈な熱と衝撃が走り俺の歩みを止めた。そしてその数秒後じわりじわりと痛みが滲み出してくる。振り返ると先程避けた槍の残骸の中から光球が浮かび上がっておりこちらに向かって飛んできている。成る程ね…さっきの攻撃はこれか。飛んできた方向からしてこの弾幕は目標を追尾する特性を持つ所謂『ホーミング弾』というやつだろう。背中の痛みがボクの気持ちを高揚させているのがわかる。彼は今まで遊んできたどの人とも違う…直ぐに壊れないしそれに、戦いが…
「とっても楽シイ‼︎モットモット遊ンデヨ、お兄サン!」
「……」
彼は無言だったがボクにとってそんなことは問題じゃなかった。ただボクがこの戦いを楽しめればそれで良かった。
後ろにステップを踏み一旦距離を取りながら次々と飛んでくる弾を避ける。球自体は低速なので避けるのは容易い。だが誘導弾なだけに避けたそばから戻ってくる。槍を避けた時と同じくステップで避けようと移動先を見据えた時初めて驚愕という感情が起きた。一投目と同じく無数の槍がまるで予知したかの如くボクの方に向かって飛んできていたのだ。並みの人間がボクの動きを目で追えるわけがない…考えられないがこちらの動きを予測して放ったとしか考えられない。だとしたらこのまま避け続ければこちらの回避場所が無くなるのは必定、かといって剣で撃ち落としていたら誘導弾に当たる。そして思案の末ボクは単純な答えに辿り着いた。
「弾幕に当たらないと考えなければいいじゃないか…」
右手で剣を握り直し降り注ぐ鋼の雨を見据える。ここまで充実する遊びは初めてかもしれない…殆どの人はボクの遊びには最初の遊びもロクに出来ない様な事ばっかりだったから
『最後まで遊んでくれる』それが堪らなく嬉しい!
ズギャギャギャ
降り注ぐ槍を剣でへし折り、潰し、切りおとしていく。周囲の槍が皮膚を切り裂き槍の中央から飛んでくる誘導弾が肉を焼いていくが気にせず致命傷になりうる槍だけを捌いていく。一体どれ程の時間捌いただろう刃の豪雨が上がった時、無数の槍が屹立する大地には血だらけの姿でそれでも尚笑いを浮かべているボクの姿があった。
「強いネ…でもコレで最後ダヨ。ボクもソロソロ限界だから次は遊びナシで攻撃する…お兄さん…楽しかったよ。断罪『冥神の断頭台』」
使い物にならなくなった剣を投げ捨て最後のスペルを唱えると同時に展開された漆黒の魔方陣から生み出された大鎌を構える。このスペルはボクそのものをイメージして作った物でその斬撃は全てを刈り尽くす。何人もその剥奪の刃から逃れる術は、無い。驚愕を通り越して表情が消えた彼の顔を真っ直ぐ見据え
大鎌を振り被る。
ボクは彼を嘲笑わない、それ程彼の力は強大だった。そしてボクは忘れることはないだろう…ボクに認めさせた人間のことを。振り下ろすと同時に『絶望』という赤黒い斬撃状の弾幕が放たれた。
椎唄side
完全に殺めるつもりだ。俺はそう感性が働きかけるのを感じた。しかし先のものよりは弾幕として表現されている分良心的ではある。さて、どう動くか…相手も事実上スペルカードも最後の一枚を切った、こちらも切れるカードは一枚だけ。試作段階であるものの、自分の中で一番豪快で気に入っている弾幕でこの勝負を締めよう。
「お気に入りは壊さず取っておくものじゃないのか?”one of a kind”!」
俺が宣言するや否や、金属のフレームが剥き出しになった強化外骨が体を覆い、それに銃身が束になった機関砲、戦車砲、小型爆雷投射機、大きな杭を火薬で撃ち出すパイルバンカーがかちりかちりと音を立てて装着されていく。
向こうが耐えれば負けるが、逆に音を上げさせればこちらの勝ちだ。
体を逸らし、強化外骨格によって強化された跳躍力で弾幕を避け短機関銃で煉に牽制射撃を行いつつ間合いを詰めた。
短機関銃の牽制射撃に狼狽えるのが垣間見える。それでも彼の弾幕は俺の首を狙ってくる。それでも弾幕は続けざまに展開していく。何もない空間から煉の周囲に小型爆雷を複数投下する。彼は爆煙の中に消えたが、まだ終わったわけではない。ガトリング砲を唸らせてさらに足止めを加える。ただ避けることの容易な妖しく光る弾幕が脇をかすめていく。
「まだ盛るぞ。しっかり耐えろよ?」
そうつぶやくと煙幕手榴弾を爆煙の中に放り込む。これにより飛んでくる弾幕が近距離でやっと認識できるほどにまで見えなくなる。容赦はいらない、ホルスターに収まっていた2丁の大型拳銃を抜いて側面に回り込みつつまたもや虚空から迫撃砲弾の雨を降らせる。今回は迫撃砲とはいえ爆発力も控えめでなるべく紅魔の庭を荒らさないように配慮してある。
わずかに小休止を取ると強化外骨格に装着された装備が音を立てて同時に安全装置を外す。
「吶喊(とっかん)!」
自力で飛びながら目標に機関銃、狙撃砲の弾幕をぶちまける。まだ波状の弾幕が飛んでくるあたり終わってはないみたいだ。
弾が切れると、俺は外骨格に装着されたすべての装備を自動で外し、彼に突撃した。
煉side
彼の姿は正しく雄叫びを上げる鋼鉄の野獣の如き様相を呈していた。立ち込める白煙の中飛び交う弾幕を右手の大鎌で捌きつつ斬撃を飛ばすが向こうの攻撃が止まらないことから当たっている気配はない。
「グッ、ガッ」
捌ききれなくなった弾幕が体を掠め皮膚を焼く。このままじゃこちらが先にネタ切れになる…次で仕留めないと、やられる。ボクの視界が赤で染まり始めた頃先程まで白煙の向こうから雨霰と飛んできていた攻撃が止み重厚な金属が地面に落ちる音が聞こえた。白い視界に薄っすらシルエットが映る。足音からしてこちらに突っ込んできているのだろう。斬撃を放つ手を止め、左手をシルエットの頭上に合わせ掲げる。もう無駄な斬撃は必要ない…このスペルは最後の大技が肝になっている。掲げた左手から血が滴り落ちると同時に高らかに叫ぶ。
「これで最後ダ、切リ飛バセッ断頭刃!」
振り下ろした左手と同調する様に落ちて来た肉厚な黒き凶刃が白煙諸共シルエットを切り裂く。この視界でも両断されたことが確信できる程圧倒的な手応えがあった。思わず歓喜の笑みがこぼれる。しかし、その笑みは飛び込んできたものを見で驚愕へと変わった。
「そんな…確かに首を落とす手応えがあったノニ!」
白煙が晴れたその場所にはボクの眼前に人差し指を突きつける首を落としたはずの彼の姿があった。確かに手応えはあった…それにもかかわらず彼の首には小さな切り傷一つ付いておらずその目は生命に満ちた光を湛えている。一体何故…視線を彼の背後に移した時そこに答えがあった。
「…そういうコトカ。ミスったナァ」
「当たってたら結構危なかったぞ…」
彼の後ろで追従する兵装の残骸の戦車砲が中央から寸断され転がっていた。あの時感じた手応えはこれだったのか…白煙のせいで距離感が鈍ったようで刃が落ちた時には彼の体は通過した後だったみたいだ。指を突きつけられてはいるが只それだけだ。右手の鎌を一振りすれば彼の腕を切り落とす事も出来る…彼にはこの戦闘はあくまで『弾幕ごっこ』だという意識があり、尚且つボクのスピードにはついてこれていない。ここで腕を飛ばし回り込んで首を跳ねればボクの勝ちだ。
「君さ、突きつけるなら銃を離しちゃダメだよ…特にボクみたいなのとやりあう時はさ」
「銃が無くとも、弾は飛ばせるさ」
ボクが右手を一捻りすればその首が瞬時に地に着くこの状況ですら彼の目には諦めの色は浮かばない。眼光は鋭くボクを射抜くように捉え、一切の恐怖を感じていないかのようだった。本当…面白い人間ダナァ。初めてダヨここまでボクから逃げる事を考えないなんてサ。手首を軽く捻り、大鎌を反転させ振り被る。彼の目が鋭さを増し突きつける指に力が入っていくのが見て取れる。
「この状況でもボクから逃げ出そうとしなかったのは君が初めてダヨ。それは中々できるものじゃナイ…でもね、勇敢と自棄は違うヨ
」
「知ってた。人並み以上の教養は受けてるからな。」
「そうなんダ…興味無いけどネ!」
あっけらかんと答える彼の首に向けて刃を走らせる。彼に予備動作をさせる暇さえ与えない程の速度で振るわれた禍刃は空気を切り裂き彼の首スレスレに黒色の線を引いた後ろの城壁を切り取った。キョトンとした表情を浮かべる彼を尻目に大鎌を放り投げて戦闘終了意思を示す。
「名残惜しいけどこれくらいでお開きにシヨウカ。あぁ〜楽しカッタァ。ここまで緊迫する遊びは初めて味わったヨ。久方ぶりに生きている感覚を味わえた…そんな君をここで壊すのは勿体無い。お気に入りの玩具は最後まで楽しまないと…ネッ!」
後ろに飛び落ちていた自分の銃を拾い上げ、
中に入っていた薬莢を二つ抜き出し片方を黒の魔力で包み込んだ後彼に渡した。彼の掌に横たわる艶のない無機質な黒の薬莢は傍らの白銀のものから漂う美しさとはまた別の見るものを惹きつける雰囲気を漂わせていた。
「この白い薬莢は煉君から、黒いのはボクから君へのお礼ダヨ。旅先でボク達の事を思い出してくれたら嬉しいナ…なぁんて甘い事ボクは言わないヨ。君が今生きているのはボクの一時の気紛れダ。この二色の薬莢は契約サ。ボクという存在を君の魂に刻み込む為ノネ…次に会った時ハ間違いなく、徹底的に、容赦無く君を壊し、引き裂き、食い潰ス。覚悟しておいてネ」
表情筋が固まった彼を背に手を振りながら歩き出す。周りに立ち込めてきた白く濃密な霧が身体に纏わりつき、徐々に身体の感覚が鈍っていく。
「暫くはボクは出てこれないカナァ…まぁいいか」
呟くと共に身体の感覚がなくなり、ボクは自分の居場所へと戻った。そして僕達の人格は入れ替わる。
「お兄様、起きて」
誰かが俺を呼ぶ声が聞こえる。筋でも違えたのか背中が猛烈に痛い。ゆっくりと目を開けるとフランが笑顔でこちらを覗き込んでいた。寝起きではっきりしない頭を奮い起こし
この状況に至るまでの過程を思い出そうとする。
「…そうだ、確かフランと能力を制御する特訓をしていて休憩がてらに外に出たらあいつが妖怪に襲われててそれを助けて…そうだ!
あいつは?あの後どうなったんだ?」
矢継ぎ早に問う俺に気圧されながら彼女は困惑の表情を浮かべ逆に問うた。
「えっ…ちょっと待って、お兄様一体何の話をしてるの?お兄様が外に出たっきり中々戻ってこないから心配になってフランが探しに来たらお兄様が寝てるのが見えたから起こしたんだよ?それにここにはお兄様以外誰もいなかったけど『あいつ』って誰の事?」
「おいおい…フランも一緒にいたじゃないか
忘れたのか?ほら、あいつの名前…」
そこまで言って俺はふと思い直す。
あれ?"あいつって誰だっけ?"
この紅魔館で俺とメイド長以外の人間がいる訳がないじゃないか。いれば気づかない訳がないんだ…そういや俺は寝ていたって言っていたな。夢でも見てたのか?そうだそうに違いない…そう思うと自然と顔がほころんでいった。その変化に気がついたのかフランが首を傾げて聞いてきた。
「どうしたの?急に笑って。あいつって誰?
教えてよ」
「いや、どうやら俺の思い違いだったみたいだ。ここに俺以外の男なんて存在しないんだからな。
ただ久しぶりにいい夢を見れて嬉しくてなつい顔が緩んじまっただけだ。さて、そろそろ帰るか」
かなり長い間寝ていたようで空には沈みかけの夕日が赤い館を照らし出していた。相変わらず困惑の表情を浮かべる少女の頭に手を置き館の方面に歩き出す。頬を撫でる風は何時もより少し優しい感じがした。
如何だったでしょうか?最後は殆ど無理矢理終わらせた感が否めないのがありますが初めてにしてはよくできたと思いますです。
ただ、業様のキャラを潰していないか心配ではありますが…
ここで登場した椎唄については(業)様、くるくる雛様の『東方紅妖記』で詳しく記されているので其方も要チェックdeathよ!
次回からは本編に帰ってきますのでお楽しみに!ではまた次回でお会いしましょう