東方狂宴舞   作:ホッピングミキサー

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はい、今回からは本編に復帰してメインストーリーを進めていきたいと思います!前回寺子屋の教師である上白沢慧音に会った煉君。
彼には何やら考えがあるようで…ではshoot19 果たされた約束お楽しみ下さい


shoot19 果たされた約束

「フランを寺子屋に行かせたらどうだろう」

 

「え、もう一度言ってくれるかしら?妹様を何って?」

 

夜、食事も終わり厨房でメイド長と共に皿洗いをしていた時ふと何気無しに呟いた一言だったのだが背後で作業をしていた彼女には余程衝撃的だったのか振り向いた時の顔がまるでコメディアニメの如く目が飛び出すのではないかと思うくらい目を見開いていた。暫くして自分が滑稽な顔で硬直している事に気付いたのか軽く咳払いの後改めて俺に問い直した。

「だから寺子屋に行かせてはどうかと言ってるんだ。勿論直ぐにとは言わないが495年間外の世界を知らずに生きてきたんだ…変わった世界を見せるって意味でも価値はあると思うんだ。明日異変の時の報酬を使ってフランと散歩に行った時に下見をしよう思うんだが…駄目か?」

 

「…この件に関しては私がどうこう言えるものじゃないわ。お嬢様に打診しておいてあげるから貴方は明日の事だけ考えておきなさい」

 

数秒考えた末ため息混じりに言ったがその声には嬉しげな雰囲気を含んでいることに気づいたがその事実は俺の心に留めておくことにしよう。礼を言おうと振り返った時そこにはメイド長の姿はなく、変わりに完璧に磨かれた食器類が積まれているだけだった。

 

 

「分かっているとは思うけどフランと貴方の能力はまだ安全という訳じゃないし簡単に制御出来る物じゃない。外にいる間にも万が一誰かに怪我でもさせたら私の…いえ、紅魔館そのものの面子に関わるわ。貴方は紅魔館という名前を背負っている事を心に留めておきなさい。それと、私達吸血鬼は日光にとても弱いからフランに直射日光はあまり当てないようにね」

 

外出の許可は意外な程あっさり取れた(やたらと注意事項があったのには辟易としたが…)が寺子屋の件は対照的に最後の最後まで渋られた。レミリア嬢曰く「責任をもつと言うなら眼に見える形で表せ」という事だそうだ。説得できなかった事を悔やんでいるのか申し訳なさそうな顔で俯くメイド長の顔が俺の心に鋭く刺さる。元はと言えば俺が言い出した我儘だ。俺が自力でなんとかしなければ意味がないしその責任もある。メイド長がそんな顔する必要なんてどこにも無いんだ。

 

「了解だ、それに関しては最大の注意を払わせて貰うよ…それじゃあそろそろ失礼しますぜ?今日はスケジュールが詰まってるのでね…行こうか?フラン」

 

「うんっ!」

 

渋顏のレミリア嬢に軽く会釈だけを残し簡素な白い日傘を左手に携えフランの頭をひと撫でして重苦しい外へ続く扉を開き飛び込んだ外は程よく暖かく、時折心地よい風が身体を通り抜けていった。

 

 

その後俺はフランを色んな場所に連れて行ってやった。新たな場所に行く度に見せる初めて見るもの全てに感動し新しい玩具を与えられた子供の様に目を輝かせはしゃぐその姿は地下室に閉じこもっていた紅い悪魔ではなく普通の少女となんら変わりは無く、並んで歩く様は宛ら本当の兄妹の様に思えるほどだった。それでも背中の羽が目立つのか周囲からの好奇の視線は途絶えることはなかったのだがフランはそれには気づいていないようで特に笑顔を崩すことなく付いてきてくれた。

 

「フラン、ちょっとだけ寄り道して行かないか?フランに見せたいものがあるんだ」

 

「え?別にいいけど…」

 

陽も傾き、赤々とした夕日が里を染め上げた頃俺はフランに寄り道という名で寺子屋見学させようと考えた。未だフランには寺子屋に通わせる事を言っていない。俺が言えばフランは"俺の為"に喜んで寺子屋に行くだろう。だが、それでは何の意味もない。自分の目で見させ彼女自身に判断させようと考えた。

フランの小さな手を引き寺子屋のある方角に向かって歩いていると以前知り合った風織の事を思い出しなんだか嬉しくなる。その様子が伝わったのか隣を歩くフランが笑って聞いてきた。

 

「なんだかお兄様嬉しそうだね。何か良いことでもあったの?」

 

「ん?いやな、フランと1日過ごせて楽しかったなぁって思っただけさ…ほら着いたぞ。俺が最後に見せたかった場所『寺子屋』だ」

 

「寺子屋…人間の子供と妖怪が沢山いる…」

 

俺達が着いた時、丁度下校の時間と重なっていたようで大勢の子供が和気藹々と飛び出していた。彼らの表情は皆一様に明るく生気に満ちており、その中で友人に囲まれ一際輝いている顔は見知ったものだった。

風織 鈴音、俺が初めて受け持った(まぁ成り行きだが…)生徒であり、虚無を抱えていた人間。俺の行った課外授業で更生出来たかどうか不安だったが、鳥籠の中の鳥は自分の空を見つけられたようだ。自分を見る俺の視線に気づいたのか顔を綻ばせながらこちらに走ってきた。

 

「お久しぶりです、先生!あれから私先生が教えてくれたように身の回りで起きている事に目を配るようにしたら友達も出来たし、やりたい事も見つかって寺子屋が楽しくなったんです。先生には感謝しても仕切れません」

 

「俺は何もしてないよ。ただ遊んでいただけさ…それより聞きたいことがあるんだ。上白沢先生は今どこにいるか知ってるか?」

 

「先生ですか?確か職員室にいたと思いますけど…何かご用なんですか?」

 

「まぁそんなところだ。済まないが、俺が戻ってくるまでこいつの事を頼んでもいいか?」

 

「そうそう、気になっていたんですよ。誰なんですか?その子」

 

俺の後ろで状況の変化に取り残されたかのように目を白黒させているフランの背中を押し、前に出させる。唐突に前に押し出された事に不平の声を上げながらも風織に笑顔で挨拶しており、495年分のブランクがあるコミュニケーション能力も問題は無い事に安堵しながら未だに困惑の表情を浮かべる風織に両手を合わせ頭を下げる。

 

「色々聞きたい事があると思う。でも全部いっぺんに言えば間違いなくお前は理解出来なくなるだろうから重要な部分だけ言っておく。先ずその子は人間じゃない…妖怪だ。日光には弱いからこの日傘をさしてやってくれ

次に俺とこの子の関係だが、主人の妹とお世話役だ。それ以上でもそれ以下でもない。今言えるのはこれくらいだ…追い追い説明はするから頼まれてくれないか?」

 

頭を下げたまま片目で彼女の表情を伺うと慌てた表情で頭を上げるように諭していた。おずおずと頭を上げて聞く限り、後で説明する事を条件にどうやら俺の願いは聞き入れられたようで俺が戻ってくるまでフランの世話をしてくれるようだ。十分な説明も無しに知らない妖怪を預かるという彼女の純真さを汚さないようにフランにだけ含ませるように声を抑え忠告する。

 

「いいか?分かってるとは思うが、絶対に能力は使っちゃ駄目だからな」

 

「分かってるよ。フランいい子にできるもん」

 

頬を膨らませながらフランの頭を撫で校舎に向かって歩くきながら風織がフランの初めての友達になってくれないか考えていた。

 

 

子供達がいなくなり一切の声が無くなった寺子屋は水を打ったような静けさの中に自分の足音だけがやけに大きく響いており、まるで別世界にいるような感じがした。職員室という札が掛かった夕日で緋く染め上げられている木製の引き戸を開けると広い部屋の中一人彼女はいた。空色の髪が射し込む夕日を浴びて煌めき幻想的な雰囲気を漂わせながらこちらを見た彼女の目が驚愕で見開かれる。

 

「久しぶりだな、上白沢先生」

 

「あぁ…私の生徒を籠絡して一日連れ回した執事。名前は確か幽鬼 煉だったか?」

 

「むっ…むぅ」

 

うげっ…まだあの時の事根に持ってんのかよ

ていうか殆ど初対面と変わらない人間に対して開口一番がその台詞はないんじゃないか?まぁ誤解される状況を作ったのは俺自身だから返す言葉も無いんだが…

しどろもどろになりながら反論の文句を考えていると不敵な笑みを浮かべていた女教師は不意にクスリと笑い柔らかな顔で俺の肩を叩きながら言った。

 

「悪い悪い、君に生徒を一人取られたようなものだからつい意地の悪い事をしたくなるんだ。許してくれ。本当に久しぶりだな…態々職員室まで来るなんて私に何か用か?」

 

「子供かあんたは…まぁいい、一人この寺子屋に入学させたい奴がいるんだ。その事であんたにお願いがあって来たんだ」

 

俺が発した『お願い』という単語が引っかかったのか、それとも手続きに時間がかかるのか分からないが目の前にある椅子に腰掛けるように促し自らも佇まいを正した。そこから先俺が一方的に喋っていたように思う。フランの素性や今迄の境遇、能力、異変…俺が知る限りの事を話している間彼女は唯黙って相槌すら打たずに俺の話を聞き、最後に「そうか」とだけ言った。はっきり言って普通の教師なら話を聞く限り危険極まりない妖怪を生徒として迎え入れる訳は無い。しかしこの寺子屋ならそんな生徒もフランも受け入れてくれるのではないか…そう思い相談に来たがやはり簡単には決められないか。張り詰めた空気が時間の感覚を圧迫し始めた頃不意に今迄押し黙っていた彼女の口からゆっくりと圧縮したかのように低く重い口調で話し始めた。

 

「…確かに此処では妖怪と人間の区別なく望む者は教育を受ける事が出来る。その体制は変わることは無いだろう…しかし、吸血鬼で『あらゆる物を破壊する程度の能力』という危険因子を持っている者をそう簡単に入れる事は他の生徒達の手前難しい。だが私としても生徒を区別はしたくない。そこで君に提案があるんだがー」

 

険しい顔で話し続けようとする彼女を手で制する。俺自身何故そう思ったのかは分からない。だが次に彼女が発する言葉が俺には容易に推測出来た。

 

「俺に監視をしておけと言いたいんだろ?」

 

「あぁ…そうだ。言い方は悪いが彼女が問題を起こした時制止出来るだけの人物がいなければ生徒達が安心して学べないからな」

 

成る程…レミリア嬢が渋っていた訳はこれか。吸血鬼という恐怖のレッテルはどこへ行っても付き纏う。フランが怖れや恐怖といった眼差しで見られることを見越していたのだろう。その上で行かせるのであれば目に見える形で責任をとれと言ったのか。それならすべき事は一つだな。

 

「理解している。そこでフランを入学させる件とは別にたのみかある。俺をここの教師として雇ってくれないか?それならフランの監視にもなるだろー「それは助かる!是非ここで生徒達に教えてやってくれっ!」…お、おう分かったから落ち着こう。な?」

 

ここに来る前迄に覚悟は決まっていた。唯俺の様な余所者が教鞭をとり生徒達を導く場所に立ち入る事を彼女が認めるかどうか…それが問題だったがどうやら只の杞憂だったようで握り潰さん限りの力で俺の肩を掴みながら迫る彼女の顔を見ていると一人で右往左往していた自分が馬鹿らしくなり硬直していた表情筋が緩み、締まりのない顔になっていった。

 

「それじゃあ後の事はたのむよ上白沢先生」

 

ゆっくりと肩を掴む両手を外しながら頭を下げると我にかえったのか素早く手を離し目の前で数秒間遊ばせた後片手を差し出し微笑んだ。

 

「任せておけ、私が責任を持って迎え入れよう。後、堅苦しいのは苦手でな、慧音先生とでも呼んでくれ。これからよろしく頼むぞ!

煉先生」

 

「こちらこそ、宜しくお願いしますぜ慧音先生」

 

握った彼女の手は以前の時より暖かく感じた。

 

 

慧音先生に頭を下げ寺子屋を出た時にはもうすっかり陽も落ち緋かった空も藍色に染まりかかっており、随分と時間が経っていたことを感じさせた。

門の前で律儀に待つ風織を見た時にはもう帰っていると思っていただけに心底驚いた。

遅くなった詫びを入れる時にはフランにも頭を下げさせ礼を言わせる。こういう基本的が出来る事が大切だと俺は考えている。

 

「それでは先生!また会えて良かったです。それでは失礼します」

 

「あぁ、送ってやれなくて悪いが気おつけて帰れよ」

 

パタパタと走っていく少女の後姿を見ながら

横で嬉しそうな顔をしているフランに問いかける。

 

「風織と一緒にいてどうだった?」

 

「凄く楽しかったよ!色んな事教えてくれたしフランの事を怖がらないし。また会いたいなぁ」

 

風織よ…何があったかはしらんがつかみは十二分に上手くいったみたいだぞ。あと一押しってところかな。

 

「なぁフラン、お前さえよければ寺子屋に通ってみないか?そうすれば風織と毎日会えるぞ?」

 

「本当!?でも、お姉様が人間の里には降りちゃいけないって…」

 

 

光が差すように輝いたフランの顔は次の瞬間には暗い影が落ち悲しげな表情を浮かんだ。

レミリア嬢もフランを思うが故の行動だろうが今のフランには明らかに逆効果だ。守るのではなく縛り付ける効果しか発揮していない。互いの事を考えて行動した結果お互いを締め合う結果になっている状況に苦笑いを浮かべ俺が教師としてフランの監督するから大丈夫だろうと言うと、先程までの消沈が嘘のように歓喜の声をあげた。自分が寺子屋に通える事より俺が担当教師だということに喜んでいるのが少しズレているが、本人が喜んでいるのでよしとする。

 

「これから寺子屋では先生と呼べよ?」

 

「うん!色んな事を教えてね、先生!」

 

手を繋いで歩く二人を上り始めた月が照らす中、首に当たる夜風とは別のこそばゆい様な奇妙な感覚を覚えながら俺の手を握る小さな手を離さないように握り返した。

 

 

館に戻り後フランを寝かせた後彼女の寺子屋入校と俺自身の着任をレミリア嬢に報告しようと大広間の扉を開けるとそこには今迄待っていたのか腕を組み舟を漕いで玉座に座る主の姿があった。

 

「まったく、こんな所で寝てると風邪引きますぜ…ん?なんだこりゃ」

 

ポツリと置かれたテーブルの上に置かれた御丁寧に包装までされている箱の山。一番上の箱には一枚の書き置きがあった。

 

『執事長へ

これは私からの就職祝いよ。紅魔の名

に恥じないように励みなさい

レミリア・スカーレット』

 

綺麗な包装紙を解いてみると、中には寺子屋教員用の教材一式と新しいスーツが一組入っておりそれを見た時理解した。そしてそれを言葉にして呟いた。

 

「全部お見通しだったって事か…貴女も人が悪いな。全て有難く貰っておくよ」

 

贈り物を一旦置き、玉座に座るレミリア嬢を起こさないように優しく抱える。その体はフランと同じく軽く仄かな体温の暖かみが服を伝って感じられる。空中で腕を揺らすそれは紛れもなく人間と同じもので彼女が吸血鬼であることを忘れさせる程だった。

寝室のベッドに寝かせこれからの自分の計画を立てる。審議中…結論『一日で基礎的教育学を頭に詰め込む必須』=『徹夜\(^o^)/』

 

「…明日大丈夫かなぁ?」

 

夜はまだまだ長そうだ…

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか?今回を期に暫く投稿を休止しようと考えているので長めの内容になってしまいました。
テストが終われば再開しますので失踪はしません。
ですのでこれからもよろしくお願いします。ではまた次回にお会いしましょう
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