東方狂宴舞   作:ホッピングミキサー

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俺がここに来てあっという間に一年が過ぎようとしていた。
冬になり雪が積もりそして春…ここは未だに雪が降りしきっている。
新たな異変が起こっている中俺の前に久しく顔を見なかった女性が姿を現わす。
てな訳でshoot22 エンドレスウィンターお楽しみ下さい


春雪異変
shoot22 溶けない雪とお節介


拝啓、外の世界の皆様如何お過ごしでしょうか?講師として寺子屋に赴任してから俺の感じる時間は光のごとき速度で流れ夏の暑さは数日の内に消え失せ、雪が降り、もう四月…春になります。その間に色々なことがありました。ハロウィン、クリスマス、正月…

後者に於いては仮にも吸血鬼の屋敷でする事なのかと突っ込んだ事を覚えています。そして現在、窓を開けたらそこは雪国でした…

 

「いや、なんでだよっ!?」

 

冷え込んだ厨房に俺の声が響き皿を浮かべた桶の水が跳ねる。いくら不思議世界の幻想郷といえどもう4月も半ばに差し掛かっているにもかかわらず、雪解けは疎か春告げ妖精の声ひとつ聞こえないのは明らかに異常だ。

メイド長はこの現象を異変と踏んで博麗のところに行っているようで俺の突っ込みに答える声は無く、なんとも言えない空気の中俺は黙々と皿洗いに戻った。

普段紅魔館全体の運営はメイド長と俺の二人で分担し行っている。(尤も殆どメイド長の能力に頼っていると言ってもいいのだが)

メイド長が不在となると必然的に一人で全ての仕事をこなす必要がある。妖精メイド達へ指示を出し各部屋の清掃、全員分の洗濯、暖炉の清掃と薪の補充…莫大な量の仕事を済ませた頃には既に昼になっていた。

 

「や、やっと終わった…」

 

「あら、随分と弱っているようね」

 

厨房の調理台に突っ伏す俺の頭上から艶やかだが何処か胡散臭さが滲む声が降ってきた。

突っ伏した状態のまま上目遣いで前方を見ると案の定彼女はいた。調理台のやや上の空間を裂いたスキマに腰掛け扇子で優雅に口元を隠すその様は初めて会った時と同じ妖艶ながら得体の知れない威圧感を纏っていた。

 

「まぁな…あんたも久しいな八雲の。やけに眠そうだが、不眠症か?」

 

「冬の間は妖力を溜めるために休眠しているる筈なのよ…それにしてもここは眠い中頑張って来た客人に対して何のもてなしも無いのかしら?」

 

全く…唐突に来ておいてもてなせとは随分な言い分だ。そもそも空間を歪めて入ってくるようなふざけた奴を歓迎する奴は相当な好き者かその手の集団だけだろう。当然俺はその何方でも無いので一般的な反応をする事にする。上げていた視線を枕にしていた腕に戻し

対話を終了する意図を示す。

 

「悪いな、当館では正式な来館者以外を客としてもてなすつもりはないんだ。次からはちゃんと"玄関"から入って来るんだな。寝不足のご老体には送迎は必要か?なんならあんたの住まいまで「それ以上言うと口を縫い合わすわよ?」…モウシワケアリマセンデシタオネェサマ」

 

濃密な殺気を感じ仰ぎ見た八雲の表情は満面の笑み。それも屠殺場の豚でも見るような凍りついた笑みを浮かべていた。この笑みに文字通り釘付けにされたのはこれで二度目だなとどうでもいい事が思い起こされる。初めて会ったあの時もこんな感じに一瞬で力量差を突きつけられたんだったか…

何故か片言になり背筋を過度なほど伸ばした俺の眼前に溜息と共にジェルラミンケースが置かれた。

 

「…これは?」

 

「頑張ってる貴方に私からのプレゼントよ」

 

頑張ってる?俺が?意味がわからない。確かにここでの仕事に加えて寺子屋の仕事もこなしているがそれは最早日常となっているから頑張ってるってのとは違うんじゃないか?

首を傾げる俺に「分からないならそれでも良いわ」とだけ言いそれ以降はただ意味ありげに微笑むだけでその事についてそれ以上言及してくる事はなかった。

相変わらずこの女が考えている事はよく分からないが女性から贈り物を貰って気分を悪くする奴は少ないだろう。俺も漏れなくその一人であり有難く頂こうと手を伸ばしケースまで数センチまで迫った時突調理台如現れたスキマにケースは吸い込まれ伸ばしていた俺の手は虚しく空を切った。

 

「…なんの真似だ?俺にくれるんじゃないのかよ」

 

不満感を剥き出しに頭上で優雅に佇む八雲を睨みつけるが本人はどこ吹く風で飄々としており意に介している様子は全く無かった。

睨みつける俺と受け流す彼女の応酬が一頻り続き空気の密度が飽和に近づいてきた時クスクスという如何にも可笑しそうに笑う扇子を口元に添えた八雲の声によってその緊張は解かれた。

 

「ごめんなさいね、確かにこれは貴方に渡そうと思って用意した物よ。でもこれを受け取るのは私の話を聞いてからでも遅くはないでしょ?心配しなくても話を聞いてくれたらこれは貴方に渡すわ。貴方は話を聞くだけでいい…どう?悪くない条件だと思うのだけれど」

 

我慢のきかない子供に言い聞かせるような話し方は癪にさわるものがあるが、こちらにも思い当たる言動がいくつかあるので不満はあるが言及はしない。それに、八雲が今迄いたスキマから出て俺と対面する位置にある椅子に腰かけたという事は真剣な話があるという事だ。あの八雲が態度を変えてまで俺に話す内容に純粋な興味が湧いた。頬杖を付きながらそれでも視線は彼女の目から外さないように見据える。

 

「……話を聞くだけだぞ」

 

「充分よ」それだけ言った後彼女は淡々と語り始めた。

八雲によれば今起こっているこの現象は俺が思っていた通り異変であり、その異変は八雲の古くからの友人である『西行寺 幽々子』によって引き起こされているということで、冥界の主でありあまり外界との関わりを持ちたがらない彼女がなんのためにここまで大規模な異変を起こしたのかは分からないと言う。そこでその調査も兼ねて俺にもこの異変の解決に手を貸して欲しいという。

異変関連の話題を振られた時からそんな感じはしていたがやはりそうだったか。しかしあの八雲の友人だと聞いた瞬間から只者じゃないとは思っていたがまさか冥界の主とは…つくづく幻想郷の自由性には驚かされる

しかし『冥界の主』、『死へ導く程度の能力』か…

 

「…これで私の話は終わりよ。約束通りこれは貴方に渡しておくわ。貴方が『見知らぬ誰かの為に力を振るう』なんて非合理的な事好まないのは知っているけど…貴方自身の為にもこの異変解決に乗り出して欲しいの」

 

珍しくしおらしくなった八雲を無視し俺は黙って渡されたジェラルミンケースを開く。中には一挺の自動拳銃が鎮座しており白塗りの箱とは対照的な吸い込まれそうな程深く無機質な黒の銃身が特徴的だった。手に取ってみると不自然な程手によく馴染みまるで古くから使ってきたような妙な感覚を覚えた。一頻り弄くり回しているとそれを眺めていた八雲が口を開いた。

 

「貴方好みにカスタムしたつもりよ。その銃 は人間はおろか並の妖怪にすら手に余る…正に貴方にしか扱えない代物ね」

そこまで聞いて俺に一つの疑問が生まれた。

 

『八雲はここまでの逸品を一体何処から仕入れてくるのか』

 

だが生まれた疑問は次の瞬間には消え去る。今の俺には全く関係のない事であり害悪になり得ないものの真実を態々探る必要はない。まぁ聞いたとしてもいいようにはぐらかされるだけなのだろうが…

スライドを引き、薬室を確認しながら徐に口を開く。

 

「成る程…此奴は良い銃だ。こんだけの物があれば冥界でもなんとかやっていけるだろ。あぁ、勘違いすんじゃねぇぞ?俺は冥界の主とやらに興味があるだけだ。異変なんて知ったこっちゃない」

 

俺がそう言った瞬間あれ程しおらしくなっていた八雲の顔が元の胡散臭い笑顔に戻り軽く扇子を振りスキマを出現させると「冥界へはもうすぐ帰ってくる貴方の上司に連れて行ってもらいなさい」とだけ言って目玉だらけの不気味な空間に消えていった。

 

「私が留守の間随分とのんびりしていたようね」

 

余りに早い状況の変化に脳がついていかずポカンとした表情のまま立ち尽くしていると先程までとは違った美しさを持つ声が聞こえた。

後方に目を向けるとそこには男物のマフラーとコートを片手に俺を睨みつけるメイド長の姿がありその瞬間八雲の去り際の笑顔の意味が分かった。

 

「あのBBA…ハナからそのつもりだったって事かよ」

 

「?何言ってるのかわからないけど外出の支度をしなさい。今から私と一緒に「冥界に出向いて異変解決…だろ?」え、えぇ」

 

最初っから俺はあんたの手の中で転げ回っていたって事か…いいぜ、今回はあんたの思惑通り踊ってやる。だが、ただ操手の言う通りに踊るなんてつまらない事は俺はするつもりはない。どうせ踊らされるならより盛大により過激に舞台を盛り上げてやろうじゃねぇか

漆黒の銃を手の中でクルリと回し不敵な笑みを浮かべながら人差し指を窓越しの冬の空に突きつける。

「さてと…長すぎる冬に終止符を撃ち込みに行きますか!」

 

「…張り切るのは良いけど貴方空を飛べるのかしら?」

 

「……飛べない」

 

あぁ…この流れは今迄何度も経験したことがあるぞ?だがあそこまでかっこつけた上で何時もの台詞はキツイ。頼むメイド長今回は違う気の利いた台詞を言ってくれ!そんな期待を込めてメイド長を見つめると溜息を一つ吐き言った。

 

「じゃあまた私が抱えていかないといけないわね…早く飛び方を覚えて欲しいわ。貴方結構重いから」

 

俺はただ頭を下げるしかなかった。

 




如何だったでしょうか?とうとう新章に突入しましたよ!
新しい武器を得た煉くんはどの様に立ち振る舞うのか?
そして冥界の主、西行寺 幽々子とは一体何者で何故異変を起こしたのか…その答えは続編をお待ちくださいませ!

更新遅れて申し訳ありませんでした!学園祭の準備やらなんやらでてが回らなかったのです…次回はもう少しペースアップを心掛けますので今後ともよろしくお願いします。
感想、御意見もどしどしお待ちしております!ではまた次回でお会いしましょう
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