幻想的な雰囲気を醸し出すその場所を探索していると長い石段の前で見知った一人の少女と出会う。少女はこちらに「なぜここにいるのか」と問うが、煉達は一体…
特徴的な白黒の装束を纏い相変わらず澱み
を知らない光を灯した目を見開き此方を見つ
める少女は霧雨魔理沙。以前が空が紅く染ま
る異変の際に敵として対峙し俺を破った魔法
使い…そして狂気に憑かれたフランを救う為
に身の危険を顧みずに戦ってくれた恩人でもある。
「なんでお前らが異変の発生地にいるんだ?
もしかして今回の異変もお前らが関係してんのか!?」
これまた盛大な勘違いをなさってらっしゃる。
常識的に考えて数分前にここに入ってきた奴が
犯人になるわけないだろ…こちらの頭が痛くな
るような理論だが自身の考えに絶対の自信があ
るのか警戒の姿勢を解こうとしない彼女に対し
て疲労感と共に以前会った時と変わらない純朴
さを感じ苦笑いを浮かべながら戦意の無さを示
す意味を込め両手を上げて制し臨戦態勢を解か
せる。先後ろにいるメイド長が不満気な視線で
此方を見ているが口を挟んでこないあたり俺を
信頼しているという事だろう。それに関しては
感謝の一言に尽きる目の前のこいつは敵に回す
と途轍もなく厄介なのは前回身をもって経験済
みだ。
「あのなぁ…もし俺達がこの異変の関係者なら
お前をこんな簡単に通してる訳ないだろ。それ
に発生地に1メイドと執事だけが仕える主を指
し置いて陣取っているなんておかしいだろ?こ
っちはむしろ被害者でいい迷惑を被ってんだよ。
しかもどっかの巫女が中々解決に動かない所為
で中々その問題が片付かない。だから俺達が自
力で解決しに来たんだ。分かったか?ここにい
るのはそういう訳」
俺の懇切丁寧にかみ砕いて説明をまるっきり理
解出来ていそうにない呆けた顔で聞いていた霧
雨だったがどうやら飲み込むのに時間が掛かっ
ていただけのようで、数分程の熟考の末理解し
たのか今までの懐疑的な目が冗談だったかの様
に綻び駆け足で俺達の眼前まで走り寄ってきた
かと思うとまるで友人と世間話でもするように
自分がここに来るまでの経緯を話し始めた。
内容が前後し正確に伝える気があるのかどうか
疑わしい霧雨の話を要約すると〝この終わらない
冬を異変だと考えた彼女は解決のため博麗の下を
訪れたらしい。しかし「面倒くさい」の一言で一
蹴されやる気のない表情で炬燵に籠る博麗に呆れ
た彼女は自分一人で自宅の前に落ちていた桜の花
弁を手掛かりにこの場所を突き止め今いる石段ま
で来た時此方に向かってくる俺達を見つけた”と
の事だった。
異変が起きた時点で解決者的ポジションにいる博
麗と霧雨が動いているとは踏んでいたので霧雨が一
人でいたことを不思議に思っていたのだが…人々の
希望である博麗の巫女が職務怠慢に走ったら駄目だ
ろう。しかしながら「面倒くさい」か…
「あの脇巫女…一人で悠々とサボりやがって。誰の
所為でこんな馬鹿げた気候が続いてると思ってんだ。
俺だって好き好んでこんなくそ寒いとこに来たくな
かったつーの…「何か言ったかしら?」ハウァッ!!
痛でででっ冗談、冗談だ!!」
「ハハハハッ」
誰にともなく発した俺のボヤキはどうやら隣にいる上
司に聞こえてしまったようで無防備な右の爪先を盛大
に踏まれた。あれは人間の反応速度を軽く超えていた
だろうと後に俺はメイド長の人間離れした攻撃?に恐
怖することになるのだが、それはまた別の話だ。
なんにしても足踏みにおいて底の高いヒールの様な
靴は最早凶器の域だ。今回は加減していたのかは分か
らないが下手したら俺の爪先に穴が開いていたことだ
ろう。そして何より奇声を上げ苦悶の表情で謝罪の言
葉を繰り返す俺と楽しそうに踏み続けるメイド長の姿
を交互に見てまるでコメディでも見るように笑う霧雨
には閉口するしかなかった。普段常識人のメイド長が
ボケに回ったら収拾がつかなくなるじゃないか。
俺の声無き叫びは痛みによる叫びに押し流されてい
った。
「さてと、そろそろこの異変を終わらせに行かないと
な!お前達も犯人じゃないなら手伝ってくれるんだろ?」
一頻り踏みつけて満足したのか満たされきった表情で
余韻に浸っているメイド長と蹲って悶絶する俺を背に
眼前に聳える石段を見据える霧雨の顔を見て正直驚いた。
いつものようにおちゃらけて異変も解決するのだと思
っていたがそこにいるのは先程まで繰り広げられてい
た茶番を見て一人爆笑していた少女ではなく、鋭く決
意に満ちているいい表情をした一人の魔法使いの姿だった。
なんだよ、そんな顔も出来んじゃないか。思った通り
只者じゃなかったようだな。恐らくこいつをこの顔に
しているのには単に異変を解決するのだけでなくこの
異変そのものが「博麗霊夢が投げた異変」であるとい
うことが関係しているのだろう。前にフランを抱えて
地下から出た時にレミリア嬢を倒した博麗を見て笑う
顔に僅かだが悔しそうに見えた。だから今回は自分が
異変を解決して見返そうという考えなのだろう。俺は
この時殆ど接点のない筈の彼女の心中をなぜだか簡単
に推測することが出来た。
やれやれ…お前にそんな顔されたらもう適当にする
なんてできなくなるじゃねぇかよ。まぁ借りを返すに
は丁度いいか。
「あぁ勿論だ。早いとここのくそったれな季節を終わ
らせないと授業が全然できないからな。協力でも何で
もしてやるさ。じゃあ早速協力してやるとするかな…
何時まで出待ちしてるつもりだ!?」
先が霞む石段の遥か上部を睨み付けながらそこにいる
であろう人物に問いかける。メイド長と戯れていた時
…いや、この冥界に入った時から既に感じていた気配。
八雲氏が持つ様な他を圧倒的な力で以って捻じ伏せる
大槌の如きものではなく、よく研がれた刃物を彷彿と
させるものだ。この首筋に剃刀をあてがわれているか
の様な感覚に懐かしさを覚え隣にいるメイド長を皮肉
の意味も込め一瞥すると彼女も同じ考えだったのか露
骨に眉を顰め鋭く此方を睨んでいるその眼は、
「よそ見せずに前を向いていろ」と語っていた。
へいへい、仰せのままに致しますよ十六夜メイド長様。
そんなに睨んでると折角の綺麗な顔が台無しですぜ?
俺が不機嫌そうに睨むメイド長に意味ありげな笑みを
送り続けおちょくって遊んでいるいる中颯爽と奴は現れ
た。
「また大勢でお越しですね…此処が何処だか分かってい
るのですか?此処は冥界…彼岸を渡った死者達の魂が集
う場所。貴方達の様な生者がいてはならない神聖な場所
です。即刻立ち去りなさい」
銀に近い白髪に対照的な黒いリボン。トップスと同色のス
カートをはためかせて仁王立ちする少女が声に導かれ顔を
上げた先にいた。
深草色のベストを重ねている白のブラウスから伸びる細
腕を組み、此方を見据える空色の瞳には静かだが明確な敵
意が見て取れた。
しかし何故だ、初対面で尚且つ敵意すら向けられていると
いうのに俺には彼女を抹殺すべき対象として見ることがで
きない。それどころか何か親近感に近いものを感じる自分
がいる。こんな感情は今まで経験したことがない…この感
情は一体何だ!?
突如として発生したイレギュラーは俺の頭の中からここ
に来た当初の目的などの理性的思考を塗り潰し零に還った
俺の心を迎えたのは理論的な決して分析結果ではなく
『こいつと殺りたい』
という理論もへったくれもない感情だった。
「…メイド長、悪いが霧雨を連れて先に行ってくれ」
「っ!?、何言ってるの!今こっちには人数という極上の戦術
的優位を得ているのよ!?みすみすここで戦力を分散させる必
要性なんてどこにもないじゃないわ。貴方死にたいの!?」
おおぅ…拒否されるだろうとは思ってはいたがここまでとはな。
普段冷静なメイド長がここまで取り乱すなんてそれだけ俺の身
を案じてくれているのだろう。それにメイド長が言っているこ
とは全て理論的で筋が通っている。
一般的に戦闘を行う際人数は多いほうが良いと思われがちだ
がそれは全員の力量がある程度の水準に達しており尚且つそれ
統率するだけの頭脳を持つ者がいる場合だけだ。自軍のパワー
バランスが拡散していた場合、全ての行動に数テンポのズレが
発生し戦術全体に問題が生じて最悪全滅する恐れもある。後者
も同じく統率が取れない戦術が正常に機能する訳がない。
しかしこの場には異変解決の専門家である霧雨がおりそれを支
えるブレーンとしてメイド長と俺もいる。定石から言ってもこ
こは全員で目の前の障害を排除するのが得策であり堅実に勝ち
たいのであればそうすべきだ…
だが、だからこそここで引くわけにはいかない。突如として
現れた表現不能の感情、感じるはずのない親近感そして…殺り
たいという激情。頭を埋め尽くす全ての解は目の前にいる白髪
の少女との戦闘の中にあると漠然とした自信があった。だから
敢えて飄々とした笑顔で切り返す。
「まさか。俺には『華々しく散りたい』なんて古風な自殺願望
なんて更々ないし簡単に倒されるつもりもないさ。それに戦術
論的にもメイド長の言っていることは正しいしそれを否定
するつもりもない」
「だったらっ!」
息巻く彼女を手で制し二の句を押し留める。
「それでも俺は一人でこいつと戦いたい。これが只の我儘だっ
てのは分かってる。それでもこの我儘だけは聞いて欲しいんだ。
…それに、部下の我儘を聞くのも上司の役目じゃないか?少しは
俺の事を信用しろよ」
「……魔理沙、私達は先に行きましょう」
「お、おい!そんなに引っ張んな!煉、絶対追いついて来いよっ!」
自らの間違いを自覚しているにも関わらず頑として意見を曲げよう
としない俺に呆れたのか霧雨の手を引き石段を駆け上がっていく。
これはかなりメイド長を怒らせたかもしれないな。すれ違う時あか
らさまに眼を合わせようとしねぇ。あぁ…これは帰ったら間違いな
くナイフの雨が降ってくるな…なんとか言い訳を考えとかないと。
早くも帰還後の事を考えている俺であったがそんな俺の相手をする
ほど相手も甘くなかった。
「……行かせると思いますか?」
「「っ!!」」
少し物思いにふけっている瞬間に白髪の少女は俺の前から消え失せ
駆け上がるメイド長達の前に移っていた。ここまで眼中から外され
て流石に唖然としたね。そりゃちょっと注意は散漫にはなってたか
もしれんがだからって目の前で対している男の前を素通りするか?
ともかくふっかけた勝負を無視されるのは気分のいいものじゃない。
メイド長からくすねていたナイフを指に挟み手首のスナップを効か
せながら当的する。
俺の手から放たれた一本の刃は前を走る霧雨とメイド長の首横ギ
リギリを掠め少女の眉間に深々と突き刺さ…らない!当たる寸前で
横に跳んだのだろう。先程までいた場所から数メートル左方に離れ
た場所で此方を睨んでいる。そうだ…これから俺と殺りあうんだか
らその目を離すな。
「邪魔させると思うか?」
「くっ!」
「なにぐずぐずしてる!さっさと…行ってください」
アクション映画張りにかっこよくキメようとキリッとした顔で二人
を見上げた時俺の顔が凍り付いた。メイド長がナイフと俺を交互に
冷たい目で見据えていたからだ。かっこつけが不発に終わった俺の
顔はさぞかし滑稽だっただろうさ。だがあのメイド長の眼を見たら
敬語にもなるだろうよ…その様はまるでピエロのようだが今一番に
俺が命の危機を感じたことはなかった。
十六夜side
魔理沙の手を引き一切立ち止まることなく石段を駆け上がる。
さっき煉が投げていたナイフ…あれは間違いなく私の物。最近
数が減っていると思っていたけど彼が持って行っていたんだろう。
それにしても…私のナイフ投げをコピーしたみたいだけどあれじゃ
話にならないわ。もう少しで私の髪が数本持っていかれるところだ
ったわよ。帰ったらきつく叱らないと…それにしても私が彼の前で
ナイフを投げるところを見せたことなんて数えるほどしかないのに…
それをあそこまでできるようになるなんて一体何時見ていたのかしら?
「どうしたんだ咲夜、顔が赤いぜ?」
「なっ、なんでもないわよ!」
先程迄引きずられるようについてきていた魔理沙が歩調を整えたのか
私のすぐ後ろまで近づき茶々を入れてきて私としたことが思わず随分
と取り乱した反応をしてしまった。完全で瀟洒が聞いて呆れる。
彼は私の部下でどれだけ強くなったとしてもまだまだ未熟で私が支え
てあげないと何もできない新米なんだから。それなのに…
『少しは俺を信頼しろよ』
彼の台詞が頭の中を何度もリピートされる。忘れようとするほどその
言葉は強く大きくなっていく。
新米の分際で随分と生意気な口を利くようになったわね。
目の端で後ろに続く石段を見る。もう随分と登ってきたようで彼の
姿は小さな点になっており輪郭すらはっきりとは見えない。そこで私
はそっと呟く。いつも彼には決して向けないような笑顔をその顔に映して。
「信頼なら初めからしてるわよ…馬鹿」
一人の少女が誰にともなく発した呟きは後ろからの鋭い破裂音によって
千切れ、誰の耳に届くこともなく宙に所在なく漂った。無論それは後方
で対峙する青年の耳に届くこともなかった。
shoot24 共闘?分断? 如何だったでしょうか?今回も趣旨が明後日の方向に吹っ飛んだ内容になってしまいました…もうね、ここまでくると文才の無さに諦めがついてきますね。
そんなことより今回の投稿が遅れてしまい真に申し訳ありませんでした!年末のバイト、課題レポート、その他諸々の雑務によって書く時間が削られまくりまくりで…来月も最低月に一本ペースの速度は保ちたいとは思っていますが…不明な部分が多いです。
感想、コメントどんどん募集しております。皆様の声援(?)が私の豆腐メンタルに染み渡るのです。
では皆さままた次回にお会いしましょうよいお年をお過ごしくださいませ。