今あるのはこの剣士との戦いに対する欲求のみ。
痺れるような空気が張り巡る中少女が口を開く…
ではshoot25 白髪の剣士 お楽しみ下さい。
「……何故ですか?」
「あ?」
「貴方が一人でここに残った事です。先程お仲間の一人が仰っていたように全員でかかってきて頂いて結構でしたのに…」
初めて俺に対し口を開いた第一声は一重に俺が人数というアドバンテージを棄てここに残った事に対する疑問だった。全く…こいつはさっきの俺とメイド長の会話を聞いていなかったのか?同じ説明を何度もするのは好きじゃないんだがな…面倒臭さを隠さず頭を掻く。
「大した理由じゃねぇよ…そっちの方が面白そうだから一人で残っただけだ」
「面白そうだから?成る程、私の相手なぞ貴方一人で十分だと。貴方にとってこの戦いは遊びにもならないという事ですか…随分と舐められたものですね。今迄どうだったかは知りませんが私は絶対に甘く「御託はいい…早いとこ始めようぜ」…警告はしましたよ」
余程俺の動機が屈辱的だったのか静かにしかしはっきりとした怒気を孕んだ声で喋り続けようとする彼女に人差し指を突きつけ発せられようとする台詞を圧し潰す。
やれやれ…ここの連中はどうしてどいつもこいつも前置きが長いんだ。気に入らないのならさっさとかかってくればいいというのに…まぁいい、向こうもやっとやる気になってくれた様だしな。
腰に携えられ圧倒的な存在感を放っているふた振りの刀剣に手を掛け臨戦態勢を取る彼女を見据えながら同じく腰に差すリボルバーに手を掛けその状態で静止する。
改めて打刀の柄に手を置く彼女を観察すると立ち姿一つとっても全てが洗練され一切の隙が無く奇襲は不可能であることが瞬間的に分かる。
「拳銃と刀。常識的に考えて遠距離攻撃が可能なこちらが圧倒的に有利なのは明らかだ。獲物の特性に加えて俺の腕をもってすれば一瞬で勝負は決めることができるー」
外の世界にいた頃の俺ならば…いや、俺が紅魔館に拾われていなかったならば絶対的な自信で以って馬鹿みたいに直情的な攻撃に踏み切りそして、早々と倒されていただろう。だがメイド長、霧雨にフラン…今現在に至るまでに戦ってきた者たちの存在と経験が俺を思い留める。
恐らくこの勝負先に動いた方が殺られる…ならばここはひとつ賭けにでてみるか。
「おいおい、どうした?早くかかってこいよ。
そうだ、俺は優しいからレディファースト精神で先に抜かせてやるよ。それとも腰に下げてる大層な刀は威嚇用の飾りか?」
段々と少女の表情が険しくなっていくのが分かる。相当癇に障っているのか怒りを堪える為に握り締められた拳が震え口元は真一文字に結ばれている。常人なら、この辺で挑発は辞めるだろう。過ぎた挑発は自分の身を滅ぼすものだ。だが俺は目の前にいる少女の全力を見てみたい
しかしそれはこの幻想郷においても滅多に見られるものではない。何故なら本当の全力というものは殺意をもって初めて成り立つものであるからだ。だから俺は敢えて挑発を続ける。
「なんだよその顔は、気に入らないなら行動で示しな。ったく…これでよく冥界の主の従者が務まっていると感心しちまうよ。それともこんなんでも勤まるほど主が腑抜けなのか…どう思うよ?剣士気取りのお嬢ちゃーッ!!」
挑発を重ねようと俺が口にしようとしたその台詞は最後まで発せられる事はなく金属同士がぶつかり合う硬質な音に置き換えられた。白銀の刀身とそれを受け止めるリボルバーのバレルに驚愕に歪む俺とガラスの様に澄んだそれでいて感情が感じられない目をした少女の対局な両者の顔が映る。
おいおい、なんだよ今の…殆ど見えなかったぞ
俺の首に刀が添えられてるんだから切られそうなった事は分かる。それでも彼女と俺の間は数メートル以上は離れていた。それに加え高低差のあるこの足場で移動を行おうとすればなにかしらの予備動作が必要になってくる。
にも関わらずこいつはそれをすっ飛ばして一足で俺の懐に潜り込みやがった。あそこまでいけば歩法ではなく最早瞬間移動だ。
まぁそれも十分驚くべきことだが問題はそこじゃない。メイド長の側でよくいるからなのかまだ移動の軌跡を目で追えているからな…問題は彼女の放った斬撃が一切見えなかった事だ。先程の一撃でさえ後数コンマ反応が遅れていたら俺の首がflyawayしていただろう。
「お前、躊躇なく首飛ばしにかかりやがって…この世界では殺生は禁忌じゃなかったのかよ」
「…ここは冥界です。魂が一人増えたからといって別段気にする人なんていません。それにそれが貴方であると誰が認識するんですか?」
淡々と述べる彼女の表情に変化はなく、透き通るかの様に白い肌はプラスチックの様な無機質さを醸しており正しく能面の如き様相を呈しており刃と銃身を挟み吐息がかかる程に密着しているこの状況においても人間的な暖かみは一切感じてこない。
そうだ、この久しく感じてなかった緊迫感。命のやりとりのみで得られる冷たくも血を滾らせる高揚感。これがこの少女が持つ殺意を込めた全力か…良いね、ゾクゾクする。
目を閉じ雑然としている頭の中を空にする。暗闇と静寂の中頭に上っていた血流が末梢部分にも行き渡っていくのを感じていると乱れ気味だった呼吸も大分落ち着いてきた。ゆっくりと目を開けた時には先程まで俺の心に鳴り響いていた雑音は消え去りグリップを握りなおし笑みを浮かべる。
「違いない。まぁ俺はあの白玉達の仲間入りは御免被るがな!」
刀身を受け止めていた銃身を傾け支えを失いふらついた刃を受け流す。よく手入れをされた白銀の刃の上をややくすんだ色の鋼が滑り淡い色の火花を散らす。その勢いを殺さず流れる様に照門をがら空きになった胸元に合わせ躊躇なく引き金を引いた。
この一発が違う形で以前から抱いていた俺の望みを叶えることとなるのだがそれはまだ先の話だ。
バチンッ
太いゴムが千切れたかの様な音が響きその余韻が残る場所には銃を構えたまま棒立ちする俺と後ろに距離をとった少女の姿があった。
硝煙を未だ吐き続ける銃と荒い息を吐く俺を上段から見下ろす彼女の顔には大きな変化は無いように見えるが先程までの無機質さの中に「失望」の色が交じり浮かんでいた。
支えを失いぶれた剣先、ゼロ距離ともいえる対象との距離。必中させるに相応しい最高の条件で放った一発...
これなら冗談の様な剣速を持つ目の前の剣士を倒す事はできないにしろ手傷の一つは与える自信があったし、そうであるべきだと考えていた今思ってみるとこの不思議世界幻想郷で常識を持ち出したことがナンセンスだ。しかもここは冥界という不可思議空間。そこの門番が外の世界の普通が通じる訳がない。俺の甘ったれた予想は案の定彼女の背後で青い残滓を残し霧散している霊力の残り香から見て取れる様に儚く掻き消されることとなった。
「もう大抵のことじゃ驚かないつもりでいたんだが…それは予想外だ。霊力で作った物とはいえ至近距離からの銃弾を避けるでもなく、普通切るかね」
「あれだけ見得をきったというのにこの程度のものですか…期待外れ、いえこれなら貴方を警戒するほどでもありませんでしたね。今武器を収めこの件から身を引くと言うなら命までは取りません。ですので早くこの場からー」
俺と俺の持つ銃を一瞥し興味を失ったかの様に淡々と話す彼女にを手で押し留めその手で顔を覆い込み上げる笑いを堪える。
そうだよなぁ…俺の目の前にいるのは冥界の門番だ。あんな軽い攻撃じゃ全然響かないよなぁ
だがよ「命を取られたくなければ手を引け」だ?冗談じゃない。
打ち出された霊弾を切断する程の業物。その刃が俺の命を落とす為だけに躍動するだなんて、そんな滾る機会を瑞瑞捨てる訳ないだろ。それに刀もそうだが目の前に立つ白髪の少女はやはり途轍もない使い手だ。やはり業物には凄腕の剣士がよく似合う、そんな奴が相手なら命を賭ける価値はある。
クックックッと笑い続ける俺を訝る少女を見やり未だ収まりきらない笑いを堪えながら話す。
「ククッあぁ、悪い悪い。残念ながら俺は手を引く気はない…それにお前だって分かってんだろ?俺がその手の脅しじゃ動かない事くらい」
「先程の打ち合いで理解されたと思ったのですが…貴方、一度でも私の攻撃が見えましたか?その段階の貴方では勝ち目は万に一つありませんよ。それでもまだ続けるというのですか?」
先程の一戦を思い返せば思い返す程自分が今生きている事が不思議でならない。あんな攻撃よく直感だけで避けれたと自分でも己の勘の良さに驚く。彼女の攻撃は不可視ともいえる剣速に加え寸分の狂いのない俺の急所を狙った斬撃でその軌道は当に演舞の如き流麗な…ん?ちょっと待て、演舞?不自然なまでのブレの一切ない攻撃…決まった攻撃...決まった動き?
成る程、そういうカラクリか。
「お前の言う通り俺にはお前の攻撃は一切見えてはいないさ。次の一撃でさえ躱せるかどうか怪しい…だが収穫もあった。気づいてないのか?あれだけ頑なに抜かなかった二本目を抜いてるって事にさ。これでやっとお互い本気でやり合えるだろ」
俺に指摘されて初めて気が付いたのか、ハッとした表情で己の左手に握られている小太刀を見つめほんの一瞬悔しげな表情でこちらを睨んだ後直ぐに元の表情に戻り一つの溜息の後ゆっくりと言った。
「……どうしても引いては貰えないのですね。分かりました、では私も全力をもって貴方を排除させて頂きます。貴方がどの様な奥の手を隠しているのかは知りませんが関係ありません。この妖怪が鍛えた楼観剣に切れぬものなど、あんまりない!」
「そこは言い切れよ!」という突っ込みが喉まで出かかったがここでそれを言うのは無粋というものだろう。コートに隠れているショルダーホルスターから新たに取り出した一丁の銃は変わらず光さえも飲み込む様な黒色の中に鈍く重い光を湛えそれには俺を優しく包み込むが如き抱擁感があった。
「それじゃ、第二ラウンドといこうか」
如何だったでしょうか?本当は年明けには上げようと思っていたのですがテストやバイトなどのなんやかんやが重なりここまでズルズルと延びてしまいました。
それにしても…少しばかり書いていないだけでここまで酷くなるとは
暫くはこんな感じのグダグダが続く危険性がありますが温かく見守っていただけると幸いです。
作者が歓喜しますので皆様のコメント、感想お待ちしております。