そこで彼に待ち受けるものとは…
今回は初の戦闘話です。暖かい目で見てください
俺の抱えるものに対する答えが知りたくて八雲紫の作り出した穴に飛び込んだ俺は、これから起こるであろう退屈しない非日常に高揚していた。重苦しい空間を抜けて光の下に出た俺は現在…走っていた。
「あのクソババァ、何がプレゼントだ。この銃、弾が一切装填されてないじゃねぇかよ!」
今の現状を説明するには少し時間を遡る必要がある。ほんの数時間前穴から抜けた俺の目の前に広がっていたのは見渡す限りの森林だった。
「八雲のやつ、適当に繋げやがって…こんなとこに突っ込まれたのが俺じゃなかったらパニックを起こしてるぞ…」
ため息交じりに辺りを見渡す。少し冷えるくらいで他に変わったところのない普通の森だ。自分の身近な気にナイフで傷をつけ、歩き出そうとした矢先に背中の方で何かが折れる乾いた音がした。音からして徐々に近づいてきているのが分かる。
「…獣か、人間か…それとも他の何かか。いずれにしてもこれでハッキリするぜ!」
振り向くと同時に落ちていたこぶし大の石をそいつの人間なら頭に位置する部分に向かって投げつけた。結果だけ言うと直撃だった。俺のはなった石は奴の額を切り裂き値が流れ出している。だが計算外だったのはそいつが人間でも獣でもなく名状し難いものだったことだろう。
「おいおいマジかよ…こんなのは幾ら何でも洒落になんないぞ」
俺の目の前にいたのは全長50メートルはあるであろう超大型の蜘蛛だった。俺の攻撃が予想外だったのか、しばらく動きを止めていた奴が長い脚を振り上げ襲って来た。
「クソッ‼︎蜘蛛ごときが舐めてんじゃねぇぞ」
俺は腰のホルスターから銃を抜き取りながら撃鉄を起こし奴の目に向かって引き金を引いた。
「カチンッ」
銃弾が目を貫くことは無く、俺にとって絶望を表す空虚な音が響いた。
最初に確認しておかなかった俺も悪いが弾が無い銃を渡した八雲に殺意が湧いた。俺は振り下ろされたれた脚を避け反対方向に向かって走り出した。そして冒頭に戻り現在も進行形で追われている。体力も限界に近づいてきた頃森が開け大きな湖に出た。見通しが良く先は湖。状況は最悪だ。隠れることもこれ以上逃げることもできなくなり初めて俺は死を恐怖した。
(こんなとこで蜘蛛なんかに俺は殺されるのか…これといって何かしたわけでもなく、ただ運が悪かっただけで…)
極限状態でそんな事を考えていると今まで考えてこなかったある事に気づかされる。余りにもバカらしくて思わず笑いがこみ上げてきた。
「ふっ、それって俺がいつも狙撃する時に犠牲者に向かって言う言葉じゃないか…撃たれた奴はこんな気持ちだったのかな?」
目を閉じ奴の脚が俺の体を貫く瞬間を待つ。恐怖で今にも気を失いそうなのに俺の顔は今までになく安らかだっただろう。これでもう気まぐれで人が死ぬことはないのだから。
だが、いつまでたっても貫いた痛みも衝撃もこない。一体どうしたのかとゆっくりと目を開けると見えたのは動かなくなった蜘蛛の体の横で佇むメイド(?)の姿だった。助かったという安堵感から余りにもミスマッチな光景を目に残しながら俺の意識は闇の中に沈んでいった。
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