東方狂宴舞   作:ホッピングミキサー

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はいはい、やって参りました第6話!
前回で満身創痍の状態になってしまった煉君、彼は一体どうなってしまうのか。途中出てきた奴は誰なのか…続きは本編で!
ではshoot06 狂宴 終幕からの日常 お楽しみ下さい


shoot06 狂宴 終幕からの日常

 

「ちょっと!ここまだ埃が残ってるじゃないの‼︎」

 

「へーい」

 

「ほら、ここもくすんでるわよ!」

 

「……」

 

「返事は‼︎」

 

「っはい‼︎…ったく」

 

最早最初の色すら分からなくなる位に黒く染まった雑巾を同じく黒ずむ水が張られたバケツに放り込む。数回揉み洗いを繰り返し水から引き上げるも汚れが落ちている感じはせず唯汚水が滴るだけだった。

 

「あー…一回捨てるしかないかぁ」

 

雑巾を放り込んだバケツを抱えた俺は強く糊が効いた執事服のネクタイを軽く緩めながら殺されかけていた俺が此処でこうして働く事になった流れを辿った。

 

 

「じゃあ…死になさい」

 

死ぬ前に見る光景はゆっくりとしたものになるというのは本当だったようで、流れ出る自分の血で赤く染まった視界に対照的な色の銀のナイフが写りこんだ時その切っ先が俺の喉笛に向かって走る軌跡すらもはっきりと捉えることが出来た。切っ先が数センチ前まで来た時俺は柄にもなく神に祈った。俺の様な呪われた人間がもう生まれてこないように。もう新たな犠牲者が出ないように…そして出来るなら苦しまずに逝けるように。

 

パァン

 

 

俺が覚悟を決め目を閉じた瞬間今迄何度聞いたか分からない破裂音と微かな硝煙の匂いがした。

 

「そこまでよ…咲夜、彼を放しなさい」

 

「承知いたしました。お嬢様」

 

体を押さえつけていた力が消え、首に迫っていた殺気も無くなったのを不思議に思い薄く目を開けると先程まで俺を押さえつけていた十六夜さんが離れた所から澄ましたような顔で此方を見ており、今迄無干渉だったレミリア嬢が硝煙を吐く俺の銃を小さな手の中で弄り回して楽しげに笑っている光景が広がっていた。

 

「ふぅん…銃も中々乙な物ね。安心しなさい、もう貴方の血を奪おうなんて考えてないわ。でも、これは暫く預かっておくわね…心配しなくても必ず貴方に返すわ…咲夜」

 

もしやと思い俺が辛うじて動く首を横に向けるとやはりすぐ横にいた十六夜さんの姿は既に無く、レミリア嬢の隣で俺の銃を来る時腰に巻いていたベルトと共にぶら下げていた。

 

「成る程な、今迄の魔法みたいに消えていたのはあんたの能力を使っていたのか…確か『時間を操る程度の能力』だっけか?」

 

「えぇその通りよ…お嬢様、お願いがあります」

 

そう言って俺を見る彼女の目はいつかの暖かい笑みを浮かべていたが、直ぐに凜とした氷の様な表情に戻ると傍にいる主に頭を垂れた。その時俺は何か嫌な予感がしていたが軋む身体は微動だにできず結局芋主の如くその場に蹲っていることしか出来なかった。

 

「先の戦闘で館の彼方此方が破損してしまいました。復旧作業の間私のサポーターとして『執事』を一人雇いたいのですが…」

 

「ふふっ、許可するわ。雇用のことは貴女に一任しているしね」

 

十六夜さんの意図がわかっているのか小さな吸血鬼の主はクスクスと笑い、十六夜さんは少し困った顔で会釈を返していた。この極端に少ない会話で新しい住人へのやり取りが行われていたことは言うまでもない。たった一人を除いては…

 

「…すまない、話が見えてこないんだが」

 

一頻り笑った後レミリア嬢は俺に指を突きつけ…

 

「貴方、明日から此処で働きなさい」

 

爆弾を落としてきた…

 

 

ここまでが俺が此処で働くことになった経緯だが…今考えてみても殺そうとした相手を自分の館内で滞在させるどころか職を与えて住人にしてしまうとは…とても正気の沙汰とは思えない事だ。濁りきったバケツの水を捨て真新しい水と入れ替える。

 

「何つまらない顔してるのよ」

 

「あぁ…レミリア嬢か。いや何、少々考え事をいていただけさ」

 

鏡のように澄んだ水に映る俺の顔の横からレミリア嬢の端整な顔が写り込む。その顔は少しばかり曇っているように見えるたがその僅かな翳りは直ぐに消え、何時もの威厳のある顔に戻り俺に微笑んだ。

 

「珍しいわね、貴方が考え事なんて。咲夜からはとても優秀だと聞いているのだけどー」

 

「貴女こそ、何か悩んでいるように見えるが?」

 

その時俺が見た顔は忘れられないものとなった。彼女の顔が鳩が豆鉄砲を…いや、鳩がガトリングガンを受けたように硬直していたのだ。

 

「ふふふっ、よく分かったわね。これでもポーカーフェースは得意な方なのだけど…」

 

「まぁなんだ…そんな気がしたからな。如何したんだ?あんたが表情を変えてまで悩むなんて、珍しいじゃないか。俺はあんたの部下なんだぜ?もっと頼ってくれよ」

 

溶けた鉛のように重く粘度の高い沈黙が一体どれだけ続いたかわからなくなった時、気付いた時には俺は柄にもなく長い間喋り続けた。人とこんなにも長い間話したのは久しぶりかもしれない。レミリア嬢は俺の発した一言一言を味わう様に聞いていたが喋り続けようとする俺の唇に人差し指を当てて制すると

今度は自分の番とでも言うようにゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「ありがとう…じゃあ二つあるうちの一つの問題を貴方に任せることにするわ。近々空が赤く染まることになるからそれを止めようとやって来る者を貴方が止めて欲しいの」

 

「了解だ…それで、もう一つの方は俺では無理なのか?」

 

「えぇ、貴方には荷が重すぎるし…それにこの問題は私が片を付けないといけないことだから…それと」

 

「いてっ」

 

俺の口元に添えられていた人差し指が不意に跳ね上げられ鼻を小突かれ、思わず蹌踉めく姿を見て楽しそうに笑うと、

 

「その他人行儀な言葉遣いを止めなさい。私達はもう家族なんだから」

 

そう言った彼女の顔は吸血鬼の主としての威厳溢れた顔ではなく、とても可愛らしい見た目相応の少女の様な顔をしていた。

 

『家族』誰かにそう言われたのはいつぶりだろうか…冷え切って乾燥した俺の心に暖かな風が吹き込むのが分かる。

 

「…ありがとうよ、レミリア」

 

去っていく彼女の後ろ姿を真っ直ぐな目で見据え、俺は呟くとともに一つの決意を固めた。

 

(俺の家族に降ってくる火の粉は俺が全部受け止め、払い、掻っ消してやる…相手がたとえどんな奴でも…血と硝煙に塗れた俺の世界に咲いたこの花を枯れさせやしない!)

 

見上げた空はいつもより青く、そして高く感じた。今日はいつにも増して暖かな日になりそうだ。

 

 




如何だったでしょうか、正直ここまで続くとは考えていなかったのでストックが無くなってしまいました…
なので次回は時間がかかるかもしれませんがご了承ください。

こんな感じにしてほしい、こんなのを出してほしいなどの要望がありましたらどんどん書いてくださいね。
ではまた次回!
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