shoot08やって参りましたよ。前回地下室の扉から聞こえてきた声は何だったのか…その全貌が今回明らかになります!
では shoot08 二つの狂気お楽しみ下さい!
全身に電流が流れた様な気がした。こんな外部と隔絶された様な場所にいる人間は俺の知る限り囚人か俺の様な危険人物対象だけの筈だ。頭の中に何もない白い部屋がフラッシュバックする。嫌な記憶を振り払うかのように頭を振った瞬間にある一つの単語に聞き覚えがある事に俺は気づいてしまう。
『危険人物』
レミリア嬢が口にした地下にいる外に出してはいけない"何か"…そいつの声だということに…
あの威厳溢れるレミリア嬢が開放を拒む程の人物。考えただけで背中に氷を放り込まれた様な寒気が俺を襲う。扉に耳を添えると微かな呼吸音が漏れ相手も扉に張り付いているのが分かる。俺が沈黙を続けていると冷たい扉から再び聞こえて来た声は明らかにこの地下室にはそぐわない少女の声だった。
「ねぇ、聞いてるんでしょ?貴方はだぁれ?」
「名前を聞くときは先ずは自分から名乗るべきじゃないか?」
全く…ここの住人はどうしてこうも自分が名乗るよりも先に相手の名を聞きたがるんだ。
まともに名乗った奴が今の所誰もいないぞ…
それにしてもこの独特な甘い声、子供のものには違わないが一体何故こんなところに…
俺が一人悶々としていると向こうからクスクスと笑い声が漏れてきた。
「何かおかしなことでも言ったか?」
「ううんただ、珍しいなぁって思って。あ、名前だったね…私はフラン。フランドール・スカーレット」
「フランドール・スカーレットね…」
ん?スカーレットつったらここの主と同じ姓じゃないか…偶然の一致か?いや、それにしては出来すぎている。ここは少しカマをかけてみるとするか。
「なぁ、フランドール。君にはお姉さんか妹はいないか?」
「……やっぱりお姉様の差金だったのね。ここに誰も入れるな、誰も出すなって言われたんでしょ?」
「…あぁ、そうだ」
全て見抜かれている。俺は直感的にそう感じた。感情を殺すことには慣れている筈なのにここに来て以来随分と俺の感覚も鈍ったもんだ。
「…やっぱりお姉様は私の事が嫌いなんだ。私の事ずっと見ようとしない!いつも『ここでおとなしくしていなさい』って言って私を仲間外れにするんだ!私は…外に出てみたいだけなのに…もっとみんなと一緒に遊びたいだけなのに…」
最後の言葉は涙で潰れて聞き取り難かったが、この子が何を訴えているのか何故か簡単に理解出来た。この子は、『俺と同じ』だ。
周囲から常に蔑みの目で見られ、理解を求める声も封殺され、針の筵を衣とする日常に生きてきた者…俺と同じ痛みを知る者。俺の興味はこれから起こるイベントにはもう無かった。この子の事がもっと知りたい。知ってこの子を光の下へ連れて行ってあげたい。俺の唯の自己満足かもしれない…それでも俺の様な奴をこれ以上増やしたくない。そう思うとレミリア嬢からの指示も彼方へと吹き飛んだ。扉に凭れ掛かり、銃をホルスターの中に戻す。話をするときにこんな物は必要ない。
「フラン、君の事をもっと教えてくれないか?君がこの地下室でどんな風に何を思って過ごしてきたか、俺に全部ぶつけてくればいい。ここにはレミリア嬢はいないんだから我慢する必要はないんだ」
「……うん」
その後俺とフランは様々な話をした。楽しいこと、面白いこと、悲しかったこと、辛かったこと…その時間は数分間だったのか数時間だったのか分からないが扉一枚を隔てた俺たちは本当の兄と妹の様に濃い時間を過ごしたような気がする。
話を聞いてみると本当に俺と同じだという事が改めて分かった。あらゆる物を破壊するフランとあらゆる物を撃ち抜いてきた俺。狂気の悪魔と冷血の狙撃手。種族は違えど同じ痛みを知る二人の間に強い絆が生まれたことは今更語るまでもないだろう…冷たい壁と空気に満ちたこの地下室もその瞬間だけは日の光が降り注ぐ暖かな場所へと様変わりしていた。
だが、暖かな瞬間はすぐに終わる。熱した鉄が徐々に冷めて硬くなっていくように…
トゴォン
地上から侵入者がこちらに向かっているのが分かる。何か乗り物に乗っているのかかなりの速度だ。
(確か上の図書館はパチュリーが守っていた筈だが…やられたのか?はぁ〜なんでまた態々こんなとこまで御出でになるかねぇ…)
出した溜息が硬い石造りの壁に染み込んで後にはただ虚しい空気だけが残った。聞こえてくる爆発音の感覚が段々と近くなってくる。ここにやってくるのも時間の問題だろう。俺は自分の頬を張り、さっきまでの浮ついた感情を消して後ろにいる『家族』に声をかける。
「もうじきここに”お客様"がやってくる。俺はここで丁重におもてなしさせて貰うが、君を出してやるわけにはいかん。でも全部終わったら一緒に外に出よう。それでレミリア嬢に文句の一つでも言ってやれ」
「………」
沈黙。やはり495年分の壁は簡単には崩せないのかあれ程饒舌だったフランが急に押し黙った。本来なら自分から出るように待ってやるべきなんだろうが今は何しろ時間がない。よって俺は少々強引な手に出ることにした。
「逃げるな!レミリア嬢から、何よりも自分から!」
「でも…やっぱり怖いよ。また私がみんなを傷つけるんじゃないかって、お姉様をまた困らせるんじゃないかって…」
成る程な…自分の中にある狂気が怖いのか。俺と同じ…いや、俺はフランより弱いな。その狂気に呑まれて今迄抗うことをしてこなかったのだから…だからこそ俺は目の前にいるこいつを放ってはおけないのかもしれない。自分が出来なかった可能性を持っている存在が眩しくてそれに引き寄せられるのだろう。光に吸い寄せられる羽虫の様に…
「…フラン、抗う事をやめた俺には君に説教する資格はないのかもしれない。でも、だからこそ言わせてもらう。ここで逃げたら一生後悔することになるぞ。逃げて逃げて辛い事を見ようとせずに楽な方へ…それを続けた結果はロクなもんじゃない。だから今は逃げるな!大丈夫、もし君の中の狂気が現れたら俺が撃ち抜いてやるよ。心配すんな」
ちっぽけな羽虫も他の仲間に経験を伝える事が出来る。狂気を抱えるこの少女に狂気の扱い方を教える事が俺には出来る。もう人が壊れていくのを見たくはない。壁の向こうからそれ以上の応答は無かったが、俺の意思がフランに響いたことが漠然とだが分かったような気がした。
「なんだよここ…やけに暗いな。ジメジメしてるし嫌な場所だぜ」
おっと、もうお客様が来なさったようだ。服に付いた埃を払い、襟を正す。『お客様をもてなす時は最高の状態で』十六夜メイド長からの教えが体の芯まで刷り込まれているようで何の違和感も無く作業をこなす自分に苦笑いを浮かべながらネクタイを締め直し扉の前に立つ。この先には絶対に入れるわけにはいかない…そしてフランの為にも負けることは許されない。目の前に現れた白黒の衣装を身に纏った少女を見据え、俺は用意していた台詞を口にする。
「申し訳御座いませんが、当館は許可なしの立ち入りはお断りさせていただいております」
如何だったでしょうか?
ストックが完全に切れたので次回は少々遅くなることが予想されますがそれでも読んでくださる方はよろしくお願いします。
少しでも早く上げれるように努力はしますが…
では、次回でお会いしましょう