神栄 碧と暗殺教室   作:invisible

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そこまで長くならないであろう、督界編スタートです。



第162話 対面の時間

 

 

夜、神栄が1人でスーパーへ買い物に行った帰りに警官に声をかけられた。決して何か犯罪を犯したというわけではなく、ただの注意喚起だった。

どうやら、最近全身黒い服を着た人が市内をウロウロしているらしい。実際に事件を起こしたわけではないが、その人から出てくるオーラはあまり良いものではなく、いつか誰かを殺すような、そんな殺気があるとのことだった。

身長は神栄と同じくらいで、若干痩せ型、顔などはフードを被っているため全くわからず、何か情報が手に入ったらすぐに教えて欲しいと言われた後、警官は神栄を帰してくれた。

 

「物騒だな……最近」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

次の日、いつも通り学校が終わり、帰る準備をしていると、殺せんせーはこれまたいつも通り何処かへと行ってしまった。

 

「暗殺しろという割には、その本人がいないってどうなんだろうな」

「今に越したことじゃないでしょ。俺たち帰るけど、神栄も一緒に帰る?」

カルマの周りにはいつものメンバー+寺坂がおり、なんだか賑やかそうなメンバーになっていた。

「すまんな。ちょっと用事があるから1人で帰るわ」

「珍しいね。神栄が用事なんて。神崎さんと帰らないほどの用なら仕方ないね〜。浮気とかはやめたほうがいいよ〜」

「絶対にしないし、出来ねーよ」

 

 

E組を後にして、市街地に向かうとこの時間にしては珍しく人がいない。

いつもなら近所のおばちゃんが世間話をしているはずの時間帯なのだが、それが全くない。きっと昨日警官から聞いたニュースが市全体に広まったのだろう。

「だからって…こんなに極端にいなくならなくてもいいじゃないか。1人はさみしいよ」

 

『問題ないですよ神栄さん!私がいます!』

「律さぁん……ありがとうございます」

人外なのはもう問題ではない。誰かいるだけで嬉しい。これは結構よくあることだ。

 

 

 

「……あ?」

前方約100メートルに人を発見。明らかここの街の人ではない。なぜなら、その人はただこちらを見続けているからだ。キョロキョロ辺りを見渡す事なく、ただこちらを見ている。

 

「…………」

何事もなかったかのように歩き続ける。スピードを落とすことなく、いつも通り歩く。

『……神栄、さん?』

 

距離が近くなっていくにつれ神栄は、前方から来ている人が、例の黒ずくめなのではないかと思い始めてきた。

相手の顔は見えないし、何か危ない気配を感じる。

これは、ビンゴかもしれない。

 

 

「…………」

2人がすれ違った瞬間、神栄は振り返り黒ずくめの手を掴む。

「……何か、用かな?」

 

黒ずくめの手にはナイフがあり、神栄はそれを間一髪避ける。

「…………」

 

黒ずくめは一旦距離を置き、体勢を立て直す………と思いきや、両腕をだらんと下にさげている。

 

「挑発のつもりか…?」

『神栄さん…!腕から血が……!!』

 

 

「………あ?」

「……」

黒ずくめは少しにやけているのか、顔を覆うフードが擦れる音が聞こえた。

 

 

「なんだと?確実に避けたはずなのに……!?」

自分の腕を確認しようと腕に視線を向けた途端、黒ずくめは第二撃をするべくこちらに向かう。

「チッ……!鬱陶しい!!」

神栄は血まみれの腕にかぶりつき、血を吸う。

口いっぱいに血を含むと、それを黒ずくめの顔面めがけて噴射する。

「2つの意味で汚いが、逃げるが勝ちだ。クソが!」

 

ケータイをしまい、血まみれの腕を抑えながら神栄は走って逃げる。

黒ずくめは目に血が入ってしまい周りが見えなくなり、その場でしばらくうずくまっていた。

「……へへへ、これが兄さんの戦い方か。面白いなぁ….。けど、僕の勝ちだね」

 

黒ずくめはぬっ…と立ち上がると壁に寄りかかりながら神栄とは逆方向へ歩いていった。

 

 

 

 

「はぁ……はぁ…。なんで刺せた…?確実に手を掴んだはずなのに…」

『私でもよくわかりませんでした……。ですが、あの方、かなりの手練れです。それと、なんとなく違和感もありました…』

「違和感?どんな違和感だ?」

『いえ…特に気にすることでもない気がするんですが、第二撃の仕方がまるで神栄さんの動きそのもののように思えてしまって…。随分と似ていたんです。一歩目の足の出し方、その時のナイフの扱い方。どれを取っても神栄さんでしたので……』

 

本来感じることのない違和感。律にはそれを感じ取っていたと言うのだろうか。

しかし、普通に考えてそんなことはありえない。

偶然、相手の動きが自分のようになってしまった。と考えるしか今のところない。

 

「わからんな。まだどの問題にも絶対的な証拠がないし、誰がいつ、何のために俺を襲撃してきたなんか、中学生の俺がわかるわけないだろうし、とりあえず経過観察しかない。俺は今完全に後手に回っているが、見つけ次第奴を倒す」

 

 

『とりあえず怪我の治療をしないと…。神崎さんを呼びます!』

「やめろ!絶対有希子を呼ぶな。絶対……呼ぶな」

『何でですか!?早く治療しないと……!』

「今までにない厄介事に、有希子を巻き込みたくない。今回は1人で済ませたい。前みたいに、みんなを巻き込むのはもう嫌なんだ。みんなが真剣に暗殺に取り組んでる中、邪魔をしたくない。俺が起こした事件なんだ。俺がカタをつけなきゃいけない、だろ?」

『ですが……!』

「こんなもんすぐ治る。心配すんな。明日には何事もなかったかのようにしてやるから。それと、この事は誰にも言うなよ。殺せんせーにも、有希子にも」

 

『………はい』

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

その日の夜、とある研究所では柳沢がコーヒーを飲みながら実験室に設置されているカメラを見ていた。カメラにはフードを取った黒ずくめが座っている様子が映されていた。

 

「……決行は明日だ。今回の接触で全ての条件が整った。あの超生物も、あの無能女の弟も、全て死ぬ日……!そして、新たな弟が完成する!いや……弟でも何でもないな。真の督界が生まれる日…か。実に楽しみだ」

 

「…明日は、世界が変わる日。僕が、督界 蒼としてここにいられる日。神栄 碧ではなく、この僕が……!!!

────兄さんを殺して、本当の自分を手に入れる日……!!!!!」

 

 

 

 

 

 

一方、神栄は自宅で腕の治療をしていた。

「嘘だろ……?腕が……全く使えない、だと!?」

改めて、自分が完全に後手に回ってしまっているということに気づかされる。

 

そして、彼の死のタイムリミットまで、残り1日をきった。

 

 






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