「市内臨界地区において、高レベルの召喚反応を確認!」
「解析急げ!」
「解析結果出ます!」
「召喚形式…
「ペンデュラム…召喚…!?」
舞網市情報管制室にて、未知なるモンスターの召喚方法が観測された。
現在モンスターの召喚は通常、アドバンス、融合、シンクロ、エクシーズの四つが主な召喚方法である。特殊条件を満たした場合にのみ召喚できる特殊召喚は一般の召喚に区別され計器に表示されるほどの影響力はない。ある事情からレオコーポレーション直轄のこの施設では主に融合、シンクロ、エクシーズの三つの召喚に関して監視の目を光らせている。
しかし今回確認された召喚方法は過去に存在しない新たな召喚方法である。他四つの召喚方法とは全く異なる反応から、便宜上ペンデュラム召喚と名付けた。
だが、異変はこれだけに留まらない。
「舞網市内にて、重力場の変動を確認!」
「何!?」
「一部の空間が決壊を観測! 発生地点特定! 場所は――」
「先程ペンデュラム召喚が観測された地点、スタジアム周辺です!」
「市内の監視カメラで現場を映せ!」
「了解! モニターに出ます!」
前方スクリーンにてスタジアムに取り付けられた監視カメラの映像が出た。幸か不幸か、スタジアム周辺は現在スタジアム内でデュエルが行われているからか無人である。
映し出された地点は客席からは死角になっているスタジアムの端。黒く澱んだ黒点はブラックホールを連想させ、見る見る膨れあがってく。やがて直径2m程の巨大な真円上に膨れあがると膨張を止めた。空間に穴が形成されたのだ。
するとそこから、人の腕が伸びた。
腕、肩、胴体、足、腰と次々に飛び出し――爆発したかのような眩い発光が見ていた者の目に突き刺さる。
「ぐわっ!」
「な、何だ…?」
発光による目眩ましから視力を回復させた係員は再びスクリーンを見つめた。そこには――民族衣装のようなツギハギの衣を身に纏った青年が立っていた。懐にA4サイズのスケッチブックを挟んでおり、しばらく周囲を伺っていた。明らかに、普通の人間ではない。
ぐるりと首を回し、観察。唐突に、監視カメラ越しに目があった。するとまるで監視しているこちらに気付いたかのように走り出し、監視カメラの撮影範囲から姿を消す。
「っ記録したな? データベースと照合し本人特定を急げ! 監視班はスタジアム内の監視カメラの追跡を続けろ!」
「了解!」
「
「ああ、内線を繋いでくれ」
この日、ペンデュラムと呼ばれる召喚方法と惹かれるように現れた謎の青年の存在が確認された。
レオコーポレーション本社の最上階、社長室にてレオコーポレーション最高責任者である赤馬零児が赤銅のマフラーを靡かせながら現れた。背後で秘書である中島が報告書を手に報告する。
「社長、少年の身元が判明しました。榊遊矢14歳、舞網市立第二中学の二年生です。デュエルクラスはジュニアユース。これまでの主な大会の成績はこちらに」
「勝率――5割程度か。デュエルはどうなっている」
「市内の遊勝塾というデュエル塾に通っているようです」
「遊勝塾? 榊遊矢…」
「はい、お気づきの通り榊遊矢はあの榊遊勝の息子です」
「三年前に行方不明になった榊遊勝の息子が、未知なる召喚方法を…すぐに彼の身辺を調べろ。ペンデュラム召喚に関する情報があれば、どんな些細な情報でも私に報告するんだ」
「はっ――それともう一件」
「何だ?」
中島はコントローラを手にスクリーンを操作した。榊遊矢に関する情報が記載されたページを消し、おそらく監視カメラからと思われる市内の風景が映し出された。そこには必ず、一人の青年の走る姿が映し出される。どうやら青年を監視しているらしい。
「現在の舞網市情報管制室からのモニターとリンクさせました」
「彼は?」
「率直に申し上げますと――不明です。名前はおろか、戸籍すら掴めません。いいえ、存在していません」
「まさか…異次元からの来訪者か?」
「直後の状況を見るに、それがもっともかと」
重力場の変動による空間の変移。おそらく異次元との扉が開いたのではと映像から推測された。戸籍が無く身元が判明しない点から、この次元ではない別の場所から来たと考えるのが打倒である。
「彼の目的は?」
「不明です。発見以降監視カメラにて追跡を行っていますが、捕まえるのは容易ではありません」
「そうか…むっ、中島、映像を拡大してくれ」
話途中で、画面に映し出された青年の動きが止まった。零児はそれに気付き画面の拡大を促す。徐々に映し出される範囲が狭まり、暗がりで見えなかった青年の素顔が映し出された。
ふと、零児達と目が合う。
「!」
まるで監視カメラ越しにこちらの存在を確認したかのように思われた。逃走を止めた青年はスケッチブックを脇に抱え、腰に付けたホルダーを開く。ズボンのチェーンに繋がれたホルダーはバインダーのようで、ぺらぺらとページを捲り、あるページで止まると手を突っ込んだ。腕を引き戻すと、その手にはカードを挟んでいた。緑の枠、俗に言う《魔法カード》である。
「何をするつもりだ…?」
「まさか…」
二人が見つめる先で、青年は腕を伸ばしカードを頭上へ掲げた。途端発光が画面を支配し二人は光を遮るように眼前に手を突き出す。しばらくして発光が止み瞼を開けると、監視カメラの映像から青年の姿は消えていた。
「くっ、またか!」
「消えた…?」
「時折奇妙な術を使い、光による目眩ましの後で姿を消すのです。驚いたことに次に確認される場所は消えた監視カメラの前とは遠く離れた場所で発見されます」
「次は何処に移動したんだ?」
「現在確認中で―――」
ビキリ、眼前でスクリーンが不吉な音と共に起動を止めた。元の何も映さない黒に戻り、呆然とする零児と中島の姿だけが反射により映し出される。
否、映し出されたのは二人だけではなかった。
「何ッ!?」
スクリーンから、こちらに伸ばされる腕が生えていた。不吉な音とスクリーンの起動を止めた原因でほぼ間違い無いだろう。唐突の事態に鉄仮面を誇る二人が呆然とする中、腕がこじ開けるようにスクリーンの亀裂を広げて伸びてゆく。
ビキビキと耳障りな音が止み、そこには先程まで監視カメラに映し出されていた青年の姿があった。
「ふぅ、無事転移成功だがまさか壁の中だなんて。これぞまさに《予想GUY》」
《予想GUY》と描かれた魔法カードをホルダーに納めながら、青年は全身に引っかかっているスクリーンの機材を払いながら溜息付いていた。混乱から立ち直った中島は社長に害為すと思われる侵入者に向き直り、零児と二人との間に立ち塞がる。
「貴様っ何者だ!?」
「名前を聞くときはまず自分からじゃない? あぁ別に危害を加えるつもりはないんだ、ちょっと偉い人に会いたくてね」
「侵入者に名乗る名など――」
「危害を加えるつもりは無いんだな?」
「社長!」
牽制する中島の声を遮り、零児は青年からも見える位置に立った。スケッチブックを脇に抱えた青年は敵意がないことを示すように
「私の名は赤馬零児だ。彼は私の側近の中島」
「…ここは名字と名前ありきなのか…」
「ん?」
「なんでもない」
うーむと青年が顎に手を当てて唸った。なにか考えている仕草である。「そうだ」と思い付いたかのように指を鳴らした。
「ボクの名前は――ノアだ。
「とある事情?」
「そう」
こくりと頷き、ノアと名乗る青年は続ける。
「この次元で生まれたペンデュラムと呼ばれる召喚方法について、教えて頂きたい」
そろそろデュエルを書きたいです
ちなみに汎用カードは最低限、基本ターミナル縛りです(しろめ)
※ここにあったコメントは削除させて頂きました