本小説のタイトルを「DT次元からの来訪者」から「端末次元からの来訪者」に変更しました(4/17)
本編では第21回リミットレギュレーションが適用されます。多少のプレイングミスはご容赦下さい
※2015/4月の段階で発売されていないカードを扱っております。ご注意下さい
※2015/04/17訂正
※《ガスタ・グリフ》のプレイングミスを確認し修正を行いました
アクションフィールド:戦火の残滓
LDSの生徒である真澄と刃は何度もソリッドヴィジョンによるアクションデュエルを体験し、それを己の経験値として積み上げている。従ってアクションデュエルのデュエルフィールドに配置されたアクションカードの場所、及び効果を経験則から選び取り最善のデュエルを行うことで勝ち星を挙げてきた。特にLDSジュニアユースのエリート三人衆であれば真澄は《
「何、ここ…」
「《剣の墓場》…とは違うな」
だが今目の前に広がる光景は、荒れ果て荒廃した大地だった。そんなステージを経験した覚えはない――否、二人にはこのフィールドの存在を知らなかった。
しかし困惑する二人を余所に、ノアだけは一人感慨深そうに感心して頷いていた。
「……なるほど、三龍封印による大戦終結か…」
ノアだけは知っていた。
《ワーム》の撃退後に始まった《魔轟神》の侵略、《ジュラック・メテオ》が引き起こした《ジュラック・インパクト》による撃滅、《トリシューラ》の解放に伴う三龍の暴走、そして《神精霊》に昇華した《伝道師》の《煉獄の落とし穴》による封印。
これらは全てノアが後世に語り継ぐ為の資料として、そして《神》に伝えるための媒体として描き取り、観測し続けていた。
この戦争では《X-セイバー》《
この光景は誰が生み出したとか、悪かったとか、そういう問題ではない。戦争というのがどれほど残酷なものかを克明に表す光景だった。
「さぁ、始めようか」
ノア:LP4000
真澄:LP4000
刃:LP4000
「出鼻は挫かれたけど、デュエルは別! 先攻はいただくわ。ターンプレイヤーは私→アンタ→刃で一週、最初はドローフェイズとバトルフェイズをスキップ、二週目から始めさせて貰うわ」
「アンタって…ボクの名前はノアだよ。N、O、A、Hでノ・ア。ノートでもアーノルドでも無いからね」
「私は手札から《
「無視かよ、いつになく手厳しいな真澄」
煩いわね、と流石に呆れる刃に吐き捨てるように言い放つ。
「1つ目の効果で《ジェムナイト・オブシディア》をデッキから手札に加える! そして魔法カード《ジェムナイト・フュージョン》を発動! フィールド、または手札から《ジェムナイト》融合モンスターによって決められたモンスターを墓地に送りその融合モンスターを融合召喚する! ジェムナイトモンスターの《ジェムナイト・オブシディア》と炎族の《ジェムナイト・ガネット》を手札融合! 黒曜の輝きよ、紅の真実よ! 今紅蓮の光となりて現れよ! 融合召喚! 威風堂々たる灼熱の騎士! 《ジェムナイト・マディラ》!」
宙で黒曜と柘榴が渦に巻き込まれる。歪んだ融合フィールドの奥から火山の如く噴火の爆風が巻き起こり、その粉塵から石英で構成された一体の騎士が、灼熱に燃える剣を担いで現れた。マグマの熱で鍛え上げられた肉体はあらゆる攻撃を防ぎ、剣は炎を纏い一刀両断する。
《ジェムナイト・マディラ》
☆7/地/炎/ATK2200/DEF1950
「オブシディアが手札から融合素材となったのでガネットを墓地から攻撃表示で特殊召喚! そして墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動! このカードが墓地に存在する時、自分の墓地のジェムナイトと名のついたモンスター1体をゲームから除外する事でこのカードを手札に戻すことができるわ! 墓地のオブシディアを除外し回収!」
数珠の様に連ねた黒曜石の
これがジェムナイト・フュージョンの強みである。手札消費の激しい融合のディスアドバンテージを補う1つの完成された形として、墓地のカードを除外することで専用の融合魔法カードを半永久的に手札に戻すことができるのだ。
《ジェムナイト・ガネット》
☆4/地/炎/ATK1900/DEF 0
「そして再びジェムナイト・フィージョンを発動! 今度はフィールドのジェムナイトモンスターのガネットと手札の《ジェムナイト・サフィア》を融合! 紅の真実よ、蒼き瞬きよ! 今こそ蒼炎の彗星となりて、新たな輝きと共に生まれん! 融合召喚! 堅牢なる蒼穹! 《ジェムナイト・アクアマリナ》!」
同時にターン制限はない。今度は柘榴と蒼玉が破裂し、解け合うように魔石同士が融合を果たす。融合の渦からは明らかに攻撃的ではない、防御こそ神髄である巨大な楯を身につけた藍玉の騎士がマントをはためかせて登場した。
《ジェムナイト・アクアマリナ》
☆6/地/水/ATK1400/DEF2600
「私はカードを1枚セットしてターンエンド!」
真澄:LP4000/手札1
場:《ジェムナイト・マディラ》
《ジェムナイト・アクアマリナ》
伏せカード×1
「ボクのターン……」
ノアは真澄のフィールドに立つ《ジェムナイト》の戦士達を眺めて苦虫を噛み潰したような、なんとも言えない表情になってた。
(ジェムナイトかぁ…いい思い出無いなぁ)
カードとして働いている今目の前のジェムナイトこそ、堂々としていて裏表のない頼もしさだが、端末次元のジェムナイトは掘ったり掘られたりが趣味の腐った女共が喜びそうなホモショタオネェだった。本人達が無機物なくせにナマモノ好きというある意味最悪の組み合わせだ。ガスタの里のカムイやリチュアの里のアバンスを連れてくれば目の宝石をいつも以上に輝かせて歩み寄ってくるものだから尚更怖い。
自分たちが宝石というネタを利用して「掘られるアタシタチだけどは掘るのも好きヨ!」と酷く嫌悪感を催す告白は記憶に新しい。正直思い出したくもない記憶だった。
「カードを2枚セット、モンスターを1体裏守備表示でセットでターンエンド」
「えっ」
「…それだけかぁ? まさか手札事故か?」
ノアは答えない。だが手札を見てから能面のような表情を浮かべているところを見るに、あまりいい手札では無かったらしい。デュエリストには初手の運も自らの手で掴まねばならないのだ。
見えないところでは滝のような冷や汗を流しているが、二人には窮地でも冷静さを崩さないデュエリストと見られているようである。ノアの演技力は一級品だ。
(どうしよう、事故った)
ノア:LP4000/手札2
場:裏守備表示モンスター×1
伏せカード×2
「次は俺のターン! 生憎手札事故だろうが容赦しないんでな、禁じ手を使わせて貰う! 俺は手札から《XX-セイバー ボガーナイト》を召喚! ボガーナイトの効果により、俺は手札からレベル4以下の《X-セイバー》と名のついたモンスターを1体特殊召喚することができる! 《XX-セイバー フラムナイト》を特殊召喚!さらに自分フィールド上に《X-セイバー》と名のつくモンスターが2体以上いるため、俺は手札から《XX-セイバー フォルトロール》を特殊召喚!」
《XX-セイバー ボガーナイト》
☆4/地/獣戦士/ATK1900/DEF1000
《XX-セイバー フラムナイト》
☆3/地/戦士/ATK1300/DEF1000
《XX-セイバー フォルトロール》
☆6/地/戦士/ATK2400/DEF1800
一気に3体のX-セイバー達がフィールドに出現した。どれもノアとは顔なじみである。特に部隊の中でも幼い少年兵ことフラムナイトは最近舞網市の同世代の少年少女とよく遊んでいるそうだ。確か、太いのと可愛いのと賢いのと遊んでいる、とのこと。
「俺はレベル6のフォルトロールに、レベル3のフラムナイトをチューニング! 白銀の鎧輝かせ、歯向かう者の希望を砕け! シンクロ召喚! 出でよ、レベル9!《XX-セイバー ガトムズ》!」
《XX-セイバー ガトムズ》
☆9/地/獣戦士/ATK3100/DEF2600
《総剣司令 ガトムズ》がXX-セイバーとなって帰ってきたガトムズがフィールドを揺るがした。手に持つ剣は巨大であるにも関わらず、敵の懐に潜り込み攻める術を失わせる技量を持つ技巧派の一人である。
「手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札の《XX-セイバー ダークソウル》を捨て、デッキからレベル1のモンスターを特殊召喚! 現れよ、《XX-セイバー レイジグラ》!」
《XX-セイバー レイジグラ》
☆1/地/獣戦士/ATK 200/DEF1000
刃を持ったカエルのようなX-セイバーの獣戦士がデッキから現れる。攻めのX-セイバーの中でも攻撃力が低い部類ではあるが、彼には他の戦士達にはない効果を持っている。
「レイジグラの召喚・特殊召喚成功時、自分の墓地の《X-セイバー》モンスター1体を対象として手札に加えることができる! 俺は墓地のフォルトロールを手札に加え、そして再び自分フィールド上に《X-セイバー》と名のつくモンスターが2体以上いるため、手札から回収したフォルトロールを特殊召喚! 更にフォルトロールの効果発動! 1ターンに1度、自分の墓地のレベル4以下の《X-セイバー》モンスター1体を特殊召喚する! 俺はワン・フォー・ワンのコストとして墓地へ送ったダークソウルを特殊召喚!」
《XX-セイバー ダークソウル》
☆3/地/獣/ATK 100/DEF 100
デスサイズを持つその戦士は獣というより悪魔に似た雰囲気を漂わせる。レイジグラのような即時性はないものの、自身が墓地に送られてこそそのデスサイズの真価を発揮する。
「一気にキめるぜ! ガトムズの効果発動! 自分フィールドの《X-セイバー》モンスター1体をリリースして相手の手札をランダムに1枚選んで捨てる! そしてこの効果に回数制限はない! ボガーナイト、ダークソウルをリリースし、ノアさんの残りの手札2枚ともハンデスだぁ!」
リリースされ光の粒子が蓄えられたガトムズの聖剣が牙を剥く。逆袈裟からの薙ぎ払いによる2連続の剣撃が空を裂き、残されたノアの手札2枚を墓地送りにした。これでノアは
誰かが言った、
「っしゃあ! フォルトロールが1枚だけだったが手札2枚削るくらいどうってこと無ぇな。伏せカードも召喚・効果発動に対するカウンターじゃ無さそうで安心したぜ! これで真澄のターン、俺たちのモンスターの総攻撃でデュエルエンド――」
「馬鹿! 刃、あなた何やってるの!?」
「――ぅええ!? どうしたんだよ、俺何か悪いことしたか!?」
「フィールドをよく見なさい!」
え、と刃はノアのフィールドを目を凝らしてよく見た。ガトムズの剣閃が巻き上げた土煙のその先で、不敵な笑みを浮かべるノアの目の前にモンスターが立ち塞がっていた。
《ガスタ・イグル》
☆1/風/鳥獣/ATK 200/DEF 400
「なんッ…で、モンスターが…!?」
「このカードさ」
「《ガスタ・グリフ》の仕業ね」
ノアが
「グリフは手札から墓地に送られた時、デッキから《ガスタ》と名の付くモンスターを1体特殊召喚できる。いやー《クイック・シンクロン》とか無かったから焦ったんだよね」
「なるほど《ガスタ》…確かリクルーターが豊富なカテゴリだったかしら。まんまとしてやられたわね、1体ずつリリースして様子を見ても良かったのに…これはあなたのミスよ」
「チッ。まさかそんなカードを使ってくる奴がいるなんて思わなかったぜ…! リリースされたダークソウルの効果発動、自分フィールドから墓地へ送られたターンのエンドフェイズ、デッキから《X-セイバー》モンスター1体を手札に加える。俺はフォルトロールを手札に加えてターンエンドだ!」
「成る程、アフターケアも万全か」
刃:LP4000/手札1(XX-セイバー フォルトロール)
場:《XX-セイバー フォルトロール》
《XX-セイバー ガトムズ》
《XX-セイバー レイジグラ》
「私のターン、ドロー! さて、このターンから攻撃可能よ。そして私は刃のモンスターも使って壁モンスターを蹴散らすことできる…」
とはいえ、真澄もこれで終わりだなんて微塵も考えてない。故に手加減などする余地もない、真っ向から正々堂々手段を選ばず全力で目の前の敵を排除する。それはLDS入塾試験以来の張り詰めた空気だった。
「刃が禁じ手を使うなら私も躊躇う理由はないわね! 私は永続魔法《ブリリアント・フュージョン》を発動! このカード発動時、自分のデッキから《ジェムナイト》融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を攻撃力・守備力を0にしてエクストラデッキから融合召喚することができる! 私はデッキから《ジェムナイト・ラピス》《ジェムナイト・ラズリー》《ジェムナイト・クリスタ》を素材として融合召喚する! 神秘の力秘めし碧き石よ! 煌めく玻璃の
《ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ》
☆10/地/岩石/ATK3400/DEF2000→ATK 0/DEF 0
デッキから飛び出した碧と半透明なクリスタルが強烈な融和を果たし、巨大なダイヤモンドが生み出される。花が開くようにして現れたそれは、いままでの宝石の戦士達とは異なる女性型だ。だが女性型だからといってスティタスが低い訳ではない、むしろ宝石の騎士団の中では
「ただしこの効果で融合召喚したモンスターの攻撃力及び守備力は0となる」
「なるほど、破格のデッキ融合とは裏腹に当然のデメリットを抱えているというわけか」
確かに、ノアの視点からでもブリリアント・ダイヤの体は宝石の如く煌びやかだが、酷く脆い。美しさだけを求めた芸術品のような印象さえ感じられた。強制的な融合のデメリットはそう少なくないのだろう、錬成が甘い宝石ほど崩れやすく、価値が低いものだ。
「墓地に送られたラズリーのモンスター効果発動! このカードがカード効果で墓地に送られた場合、墓地から通常モンスター1体を手札に加える! 私は墓地のガネットを手札に加えるわ」
「行くわよ! ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤの効果発動! 1ターンに1度、自分フィールドの表側表示の《ジェムナイト》モンスター1体を選んで墓地へ送り、エクストラデッキから《ジェムナイト》融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する! 私はアクアマリナを墓地へ送りるわ! 現れよ! 全てを照らす至上の輝き!《ジェムナイトマスター・ダイヤ》!」
藍玉の騎士が光の粒子となって姿を消し、代わりに研磨されたダイヤが姿を現す。ブリリアント・ダイヤの
《ジェムナイトマスター・ダイヤ》
☆9/地/岩石/ATK2900/DEF2500
「そしてフィールドを離れたアクアマリナの効果発動! このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、相手フィールドのカード1枚を手札に戻す! 私が選択するのは、アンタの右側の伏せカード!」
「だからアンタじゃなくてノアだって! リバースカードオープン! 《緊急テレポート》! 手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する! 来い、《サイ・ガール》!」
ノアのフィールドの目の前に亜空間に通ずる
《サイ・ガール》
☆2/地/サイキック/ATK 500/DEF 300
アクアマリナのバウンスは空打ちとなり空を切る。見事に躱されてしまったことに真澄は悔しさに顔を歪めた。
「くっ……! ならば、リバースカードオープン! 罠カード《
《ジェムナイトレディ・ラピスラズリ》
☆5/地/岩石/ATK2400/DEF1000
今度はまたしても女性型のジェムナイトが姿を現す。いままで明かすことはなかったが、少なくとも女性型のジェムナイトはノアの記録には存在しなかった。というのも、表に出て姿を現していたジェムナイトは皆一族を守るために立ち上がった温厚な、それでいて仲間思いな騎士達だ。つまり戦う意志のあった連中しかノアは記録しておらず、里の奥底で引きこもっていたか、はたまた記録する前に落命してしまったかは不明である。
「ラピスラズリの効果発動! 1ターンに1度、デッキ・エクストラデッキから《ジェムナイト》モンスター1体を墓地へ送り、フィールドの特殊召喚されたモンスターの数×500ダメージを相手に与える! 私はエクストラデッキから《ジェムナイト・パーズ》を墓地へ送り、フィールドの特殊召喚された9体、つまり4500ポイントのダメージを相手に与える!」
「お、オーバーキルゥ…!? くっ…!」
いきなり致死量以上のダメージにノアの表情に焦りが走る。と同時に荒れ果て、荒廃したフィールドを駆け抜け、モニュメントを飛び乗って移動しながら起死回生のアクションカードを探す。
当然、そんな隙を見逃す二人ではない。
「刃!」
「おう!」
真澄と刃はそれぞれ別方向に走り出した。真澄はノアとはまったく別の方向へ、恐らく自分では追いつく走力は無いと判断したためだ。それにひきかえ、見た目からして運動が得意そうな刃はノアの背後を追った。目的は当然ノアのアクションカードの確保妨害。出来れば横から掠め取れれば、自身の戦力にも出来て一石二鳥だ。
だがここで予想外な事態に突入した。
「は、速ぇ! それになんだその俊敏さは!?」
「こと逃げに関しては次元一とも評価されている身でね、そう簡単には掴まらない」
モニュメントを一切の助走付けることなく飛び乗り、また着地から滑るように停止することなく駆け抜ける姿は俊敏としか言いようがなかった。例えるならばチーターなどの猫科に近い動きだ、重力や抵抗を一切感じさせることなく跳躍と着地、そこからの疾走を繰り返す。次第に遠ざかる背中は、ついにアクションカードをその手に掴んだ。
「獲った! アクション魔法《フレイム・ガード》発動! 効果ダメージ0にする!」
「仕留め損じた…! でも失敗したわね、あなたがアクションカードを探している時に私も探す時間くらいあったのよ、アクション魔法《ヴィクトリー・トッピング》を発動! フィールドのモンスター1体の攻撃力はターン終了時まで600アップする! 私はマスターダイヤを選択!」
考えていたことは真澄も同じ。ノアならばオーバーキルの効果ダメージをアクションカードで防ぐことを確信していた。故に、その一手上を行く戦術でノアを追い詰める。
《ジェムナイトマスター・ダイヤ》
ATK2900→3500
「またこの時、相手フィールドの守備表示モンスター1体を攻撃表示にできる! サイ・ガールを攻撃表示に変更!」
「やばっ」
防御態勢であったサイ・ガールが起き上がり臨戦態勢に入る。だが知っての通り自他共に認めるスティタスの低さが露見され、攻撃表示にされた本人も困惑気味にノアの顔を伺っている。なんで攻撃表示にしたんだ? と。
答えるならば「ボクは悪くない」。
「そしてマスターダイヤの効果発動! 墓地のレベル7以下の《ジェムナイト》融合モンスター1体を除外し、エンドフェイズまで除外したモンスターと同名カードとして扱い同じ効果を得る! ラピスラズリの効果で墓地へ送られたパーズを除外して2回攻撃と戦闘破壊した時に破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える効果を付加! そしてマスターダイヤの効果で墓地の《ジェム》と名の付くカードの枚数分攻撃力アップ! 墓地にあるジェムと名の付くカードはジェムナイト・フュージョン、サフィア、クリスタ、アクアマリナの合計4枚! よって400ポイントアップ!」
《ジェムナイトマスター・ダイヤ》
ATK3500→3900
「アクションカードアクションカード…うわっ!?」
再びアクションカードを取ろうと走り出すノアの周りを、真澄のジェムナイトと刃のX-セイバーの連合軍が覆い囲む。ソリッドヴィジョンは実体を持つため、スクラムを組んで覆い囲まれてしまってはアリ一匹でさえ通る隙間は存在しない。
アクションデュエルにおいて反則行為ではない。というのも、実体のあるモンスターを操り、利用しアクションカードでモンスター達を守ったりするエキサイトなデュエルこそ、アクションデュエルの醍醐味なのだ。一部には過激に相手プレイヤーを攻撃しアクションカードを奪い取る塾も存在しているとうが、それは人それぞれである。
だがこれはひどい。
「なんという卑劣な…それでもデュエリストか!」
「リアリストよ! もうアクションカードは取らせない、バトルフェイズ! マスター・ダイヤでサイ・ガールに攻撃! ダイヤモンドスラッシュ!」
「コピーする相手を間違えたね、リバースカードオープン! 《立ちはだかる強敵》!」
「なっ!?」
ノアの伏せカードから放たれた光がマスター・ダイヤに命中する。光を浴びたマスター・ダイヤはぎこちない動きながらも凶刃を振るう方向を強制的に変えさせられた。
「このカードは相手の攻撃宣言時に発動する事ができる! 自分フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、発動ターン相手は選択したモンスターしか攻撃対象にできず、全ての表側攻撃表示モンスターで選択したモンスターを攻撃しなければならない! ボクはイグルを選択!」
守備表示体勢のイグルにマスタ・ダイヤの凶刃が迫る。敢え無く一刀両断され、パーズの効果を受け継いだマスター・ダイヤの一撃が効果ダメージとしてノアに叩き込まれた。
ノア:LP4000→3800
「イグルが戦闘破壊されたとき、デッキから《ガスタ》と名の付いたチューナー以外のレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚する! ボクは《ガスタの静寂 カーム》を特殊召喚!」
《ガスタの静寂 カーム》
☆4/風/サイキック/ATK1700/ATK1100
墓地へ送られるイグルの風の残滓が新たな仲間を呼んだ。現れたるは神秘を内包する凪を冠する静寂。何度倒されようとも後援を呼び続けるのが《ガスタ》だ。
「マディラを墓地送りにしてコピーすればアクションカードだけでなくボクの罠カードも発動を阻止出来たのに、悔しいでょうねぇ」
「てめぇ!」
「お、落ち着けよ真澄。まだ2ターン目だ、次に俺がケリ付けりゃあいい」
「果たしてキミのターンが来るかな?」
「何だと?」
「…カードを1枚セット。さっき拾ったアクションカードを墓地に送ることで、ブリリアント・ダイヤのステータスを元に戻すわ。ターンエンド。同時に廃石融合で特殊召喚されたラピスラズリは破壊されるわ」
「緊急テレポートで特殊召喚したサイ・ガールは除外されるよ」
真澄:LP4000/手札1
場:《ジェムナイト・マディラ》
《ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ》ATK 0/DEF 0→ATK3400/DEF2000
《ジェムナイトマスター・ダイヤ》
《ブリリアント・フュージョン》
伏せカード×1
「ボクのターンドロー! ボクはカームの効果発動! 墓地の《ガスタ》と名の付いたカード2枚をデッキに戻して1枚ドローすることができる、墓地のグリフとイグルをデッキに戻して1枚ドロー」
これでドローカードは合わせて2枚。禁じ手のガトムズによるハンデスの裏をかかれた刃は悔しそうに奥歯を噛んでいた。
「更に裏守備表示モンスターを反転召喚。《ガスタの希望 カムイ》。カムイがリバースした時、デッキから《ガスタ》と名のつくチューナーを特殊召喚する。ボクは再びイグルを特殊召喚」
《ガスタの希望 カムイ》
☆4/風/サイキック/ATK 200/ATK1000
《ガスタ・イグル》
☆1/風/鳥獣/ATK 200/DEF 400
「更に墓地から《リ・バイブル》のモンスター効果発動。このカードが墓地に存在し、自分のエクストラデッキの枚数が相手よりも5枚以上少ない場合にライフを2000を払って墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したリ・バイブルはフィールドから離れたら除外される。今回お二人さんはフィールド共有みたいだし、合計のエクストラデッキ数はボクのよりも多そうだね」
「墓地からモンスター効果!?」
「あっ、俺がハンデスしたやつだ…」
ぎろりと真澄の鋭い眼光が刃に突き刺さる。つくづく刃のハンデスは裏目に出ているようだった。
ノア:LP3800→1800
《リ・バイブル》
☆1/地/サイキック/ATK 700/DEF 300
初期ライフの半分というコストを支払ったことで現れたモンスターはブックレット型のサイキック族。
「ボクはレベル4のカームとレベル2のカムイにレベル1のリ・バイブルをチューニング! 鳥獣と心を交わし、絆が生み出す突風で敵を
《ダイガスタ・イグルス》
☆7/風/サイキック/ATK2600/DEF1800
巨大化したイグルに乗ったカームが姿を現す。カードの絵柄では巨大化したイグルにウィンダールが乗ったイラストの筈だが、唯一ガスタの一族の中でエクストラデッキにその御身が姿を見せないカームがボイコットして今回無理矢理現れたらしい。本当は《ダイガスタ・エメラル》の甲冑を纏っているのがカーム本人なのだが、曰く「誰が着てるか分からないでしょ!」とのこと。
「っ、リバースカードオープン! 《デモンズ・チェーン》! フィールドの効果モンスター1体の攻撃を封じ、効果を無効にする! 私はイグルスを選択!」
だが、嗚呼無情。念願のシンクロモンスターとして出演を果たしたのもつかの間、真澄の永続罠から放たれた鎖に雁字搦めになってしまった。出落ちもいいところである。
「残念だったわね、せっかくの高レベルシンクロモンスターもこれじゃ満足に使えない」
「いいや? ボクは手札から《ミラクルシンクロ・フュージョン》を発動」
「フュージョン!? しかもシンクロモンスターを素材とした融合召喚ですって!?」
やったねカームちゃん! 無駄じゃなかったよ!
墓地送りと比べれば遙かに再利用が難しい除外ゾーン送りにカームの涙が止まらない。その涙がノアの残酷な扱いによるものだとは本人も気付いていまい。袖を濡らすカームと唯の大きい鳥になったガルド(イグルス)が除外の渦に巻き込まれる。
「墓地のカームとフィールドのイグルスを除外融合! 天翔る怪鳥よ! 神聖なる静寂の乙女よ! 今こそ1つとなりて、人智を超えし究極生物を生み出さん! 融合召喚! レベル10! 《アルティメットサイキッカー》!」
――曰く、《神》は二種類ある。
一つは《高神》。
常に聖なる場所から皆を見守る唯一無二にして絶対なる存在であり、姿を見せることなくいかなる時も変わらぬ秩序を齎す存在。
そしてもう一つは《来訪神》。
遠い所から、まるで二つある世界を結ぶかのように、大量の《死》を引き連れ姿を顕にする存在。嵐を巻き起こし多くの《死》を齎し、けれど同時に子孫を増やす。多大な死を齎す一方、豊穣と奇跡を齎し、既存の秩序を破壊する存在。それは多くの場合明確なイメージを持ち合わせ、《グロテスク》で《美しい》奇怪な面容が多く見られる――
《アルティメットサイキッカー》
☆10/光/サイキック/ATK2900/DEF1700
とても2体からの融合モンスターとは思えないような風貌のモンスターが融合の渦を飛び出し上空に出現した。巨大な体躯、怒り狂ったような形相、鋭利な爪・棘・角、蛇状の下半身。その姿は古の盗賊王が持っていた邪悪なる精霊と酷似しており、それ故に悪の障気を感じさせる。
「シンクロだけじゃなく融合まで…!」
「でけぇ…! だが、いくらデカくったって攻撃力3100のガトムズには及ばねぇぜ」
「それはどうかな?」
ぴ、とアクションカードが挟まっていた指を差し出す。いつのまに、と思われるが融合召喚によるアルティメットサイキッカーの出現に驚いていた隙に回収していただけである。これぞミスディレクション。
「アクション魔法《ティンクル・コメット》を発動。フィールドのモンスター1体を対象として攻撃力をエンドフェイズまで1000ダウンし相手に500ダメージを与える。ボクはフォルトロールと刃クンを選択!」
《XX-セイバー フォルトロール》
ATK2400→1400
「フォルトロールを!? うぉっ!」
流星がフォルトロールと刃に襲いかかる。剣を楯に直撃を回避したが、戦力の減少は免れず、刃もライフを削らされた。
刃:LP4000→3500
「バトルフェイズ! イグルでレイジグラに攻撃!
「レイジグラとは同じ攻撃力! 相打ちか!」
鳥と蛙が衝突を起こし小規模ながら爆発が生じる。そして前のターンでもあったように薫風が辺りを包み、先程の光景の焼き増しのようにカームがデッキから現れた。
《ガスタの静寂 カーム》
☆4/風/サイキック/ATK1700/ATK1100
「イグルが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキからチューナー以外のレベル4以下の《ガスタ》と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる! 再びカームを特殊召喚し、バトル! カームで弱体化したフォルトロールに攻撃! エレクトリコ・サイキック!」
「ぐっ…」
カームの杖から放たれた
刃:LP3500→3200
「アルティメットサイキッカーでガトムズに攻撃! 更にこの瞬間手札から速攻魔法《決闘融合-バトル・フュージョン》を発動!」
「なっ!?」
本来であれば返り討ちにあう攻撃力の差。だがバトルフェイズ中に発動したノアの魔法カードがキーとなり、アルティメットサイキッカーの全身に暴力的なエネルギーが迸った。リミッターの外れたアルティメットサイキッカーの
何故か移動中のノアには当たらない仕様。だがこれではノアが避けているのか雷が避けているのか分からない。
「このカードは自分フィールドの融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に発動できる! その自分のモンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップ!」
《アルティメットサイキッカー》
ATK2900→6000
低く、それでいて聞く者に恐怖を抱かせるおぞましい雄叫びが響き渡る。夥しいまでの
「攻撃力6000…!?」
「跡形もなく蹴散らせ! 究極最古式念導波!」
「ぐっ…! ぐわぁあああああああああ!!」
無数の落雷と化した
刃:LP3200→ 300
あれ、こんな出力出たっけ。
サイキック族ゆえに除外空間を行き来するアルティメットサイキッカーらとはそれなりの付き合いあるのは認める。だがここまで出力がデカイのは一重にノア自身のせいではなくアルティメットサイキッカー本人が無駄にハッスルしてるだけなのだと思いたい。
「お、調子いいな。アクション魔法《大火筒》発動! 戦闘で破壊された相手モンスター1体の攻撃力の半分のダメージを相手に与える! ガトムズの3100の半分、1550のダメージを受けて貰おう」
刃:LP 300→ 0
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
ライフが0になったにも関わらず無反応なのは何故だろうか、刃が飛んでいった方へ視線を寄越すとツンツン頭が見事なアフロヘアーになって気絶していた。アワレナリ! ヤイバ=サン!
「アルティメットサイキッカーには守備表示のモンスターを戦闘破壊したときの貫通効果と破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復するライフゲイン効果がある。よってガトムズの攻撃力である3100ポイント回復!」
ノア:LP1800→4900
「流石シンクロモンスターを素材とした融合モンスターだわ、持っている効果も強力ね…」
アクションフィールドの端でアフロになって焼き焦げたまま気絶している刃を見て、怖々と呟く。けっしてああはなりたくないと、真澄は打倒アルティメットサイキッカーを心に誓った。ようは倒せればいいのだ、そうすればアフロヘアーで敗北という惨めな姿にならずに済む。
「バトルフェイズ終了に伴い、アルティメットサイキッカーの攻撃力は元に戻る…ホラ、いい加減落ち着きなよ」
ノアが宙から垂れ落ちている尻尾に肘鉄を叩き込む。グホァア! と苦悶の声を上げたアルティメットサイキッカー、弱点だったのかそれともノアの力が強すぎたのか、鬼のような形相を更に歪ませると全身に迸っていた
《アルティメットサイキッカー》ATK6000→2900
「メイン2、カームの効果発動! 前に発動させたカームとは別のカームだから1ターンに1度の誓約は無効になってるよ」
禁止牢に囚われているサイキック族の永久戦犯こと《メンタルマスター》とのコンボは強烈である。あのメロンパン頭はサイキックデッキでなくても特殊召喚しやすい点からカームと組み合わせた無限ループコンボが開発されたことがあった、彼は一体いつ帰ってくるのだろうか。
「墓地のカムイとイグルをデッキに戻して1枚ドロー……手札から魔法カード《サイコ・フィール・ゾーン》を発動! このカードはゲームから除外されている自分のサイキック族のチューナー1体とチューナー以外のサイキック族モンスター1体を墓地に戻し、そのレベルの合計と同じレベルのサイキック族のシンクロモンスター1体をエクストラデッキから表側守備表示で特殊召喚する!」
「ッ、除外されているモンスター同士のシンクロですって!?」
除外ゾーンから乗り手を失ったイグルスと前のターンで出落ちしたサイ・ガールが飛び出す。奥に緑の髪の巫女が出ようと頑張っていたようだが、ノアが足蹴にして押し返した。勝手に除外ゾーンからの特殊召喚はルール違反です。それズルじゃん! と言われないように!
「ボクは除外されているレベル2のサイ・ガールにレベル7のイグルスをチューニング! ニューロンの申し子よ、次元の狭間を乗り越え限界を超越せよ! シンクロ召喚! レベル9!《メンタルオーバー・デーモン》!」
《メンタルオーバー・デーモン》
☆9/闇/サイキック/ATK3300/DEF3000
鎧を身に纏ったアルティメットサイキッカーのような巨大な体躯が空間を割って現れた。総合ステータスは刃のガトムズを優に上回る、現状レベル9のシンクロモンスターの中では最高値を誇っている。
「メンタルオーバー・デーモンの効果発動。1ターンに1度、自分の墓地に存在するサイキック族モンスター1体を選択してゲームから除外する事ができる。ボクは再びサイ・ガールを除外してターンエンド」
「この瞬間、ブリリアント・フュージョンの効果で特殊召喚されたブリリアント・ダイヤのステータスは0になるわ」
《ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ》ATK3400/DEF2000→ATK 0/DEF 0
ノア:LP4900/手札0
場:《ガスタの静寂 カーム》
《アルティメットサイキッカー》
《メンタルオーバー・デーモン》
「私のターン、ドロー………」
真澄はドローしたカードを見つつ、手札越しにノアに視線を寄越した。
牽制、していた。
意味が分からない。
「……」
「リーリー」
いや、分かってはいる。
ブリリアント・フュージョンのデッキ融合という破格の召喚と引き替えにステータスは全て0という相応のデメリットが付随している。そのデメリットを解除し再び宝石達の輝きを取り戻す為に必要な魔法カード、もといアクション魔法カード。それの入手を阻止すべく、ノアは真澄に牽制し行動を制限させていた。
カバディになんか決して見えない。見えないと言ったら見えない。
(墓地のジェムナイト・フュージョンは何度でも回収可能。手札コストには申し分ない)
2対1だったから延命できたようなものだと、真澄は戦々恐々していた。事実、目の前で普段北斗と共に鎬を削るLDSのシンクロ部門のエリートである刃を手玉に取り、ワンターンキルを決めたのだ。警戒しないわけがない。
(このターンで決着付けないと、敗色濃厚ね)
盤上は真澄の方が堅い。だが何が起こるか分からないのがデュエルモンスターズだ、ちょっとしたきっかけでピンチがチャンスに、チャンスがピンチに早変わりすることだってある。慎重にいくに超したこと無い。
まず、ガスタの静寂 カーム。
現在墓地に《ガスタ》と名の付くモンスターが少ない今となっては唯の棒立ちである。そこまで驚異はない。
次に、アルティメットサイキッカー。
効果破壊耐性と攻撃力2900というアタッカーとしては十分な値を持つ。貫通とライフゲインの2つの効果を有するこのモンスターは、それこそサイキック族の頂点と言っても過言ではなかった。
最後に、メンタルオーバー・デーモン。
シンクロに関しては刃の《X-セイバー》以外あまり覚えがないが、守備力3000と早々に突破できる値ではないことはよく分かる。
「墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動! 墓地のラピスラズリを除外し回収! そしてそのまま墓地へ送ることでブリリアント・ダイヤのステータスを元に戻す!」
ブリリアント・フュージョンによって荒削りに造られたブリリアント・ダイヤの体が輝きを取り戻す。「貴女の目、くすんでいるわ」と言わせない輝きは思わず目を覆ってしまいたくなる。
《ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ》
ATK 0/DEF 0→ATK3400/DEF2000
「私はブリリアント・ダイヤの効果発動! 1ターンに1度、自分フィールドの表側表示の《ジェムナイト》モンスター1体を選んで墓地へ送り、エクストラデッキから《ジェムナイト》融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する! マディラを墓地へ送りる! 現れよ、七色の騎士!《ジェムナイト・プリズムオーラ》!」
《ジェムナイト・プリズムオーラ》
☆7/地/雷/ATK2450/DEF1400→ATK 0/DEF 0
「墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動! 墓地のアクアマリナを除外し回収! そしてプリズムオーラの効果発動! 1ターンに1度、手札から《ジェムナイト》カード1枚を墓地へ送りフィールドの表側表示のカードを破壊する! 私は回収したジェムナイト・フュージョンを墓地へ送りメンタルオーバー・デーモンを破壊!」
「効果破壊で高い守備力を突破してきたか…! うぉ!?」
攻撃力を持たないながらも、投擲された鋭い馬上槍は守備表示体勢のメンタルオーバー・デーモンを貫き爆発四散させた。だが何らかの方法で攻略されることは想定済みだったのか、特に驚くこと無く処理を済ませる。
「メンタルオーバー・デーモンがフィールド上から墓地へ送られた時、このカードの効果で除外したモンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する! サイ・ガールを…攻撃表示で特殊召喚!」
《サイ・ガール》
☆2/地/サイキック/ATK 500/DEF 300
除外ゾーンから再びサイ・ガールが出現する。だが前回はフィールドを介さない墓地送りだったから効果が無かったが、今回は違う。サイ・ガールに隠された効果としてその前段階、ノアのデッキにステッキが叩き付けられた。その弾みで飛び出たデッキトップはサイ・ガールの手で除外ゾーンに飛ばされる。
「更にゲームから除外されていたサイ・ガールが特殊召喚に成功した時、自分のデッキの一番上のカードを裏側表示でゲームから除外する! そしてサイ・ガールがフィールド上から墓地へ送られた時、除外した自分のカードを手札に加える!」
「たった1枚の手札を稼ぐのに随分必死ね! でもアンタがそのカードを手にしたとき、果たしてターンが回ってくるかしら?」
刃のハンデスのお陰で手札の大切さを知ったノアだったが、真澄からすればターンを渡さなければ手札が増えようが関係ないのだ。
「ラズリーの効果で回収したガネットを通常召喚! そして最後の手札。これが正真正銘、私の全力全開よ! 魔法カード《パーティカル・フュージョン》発動! 自分フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、《ジェムナイト》と名のついたその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する! 私はガネットとプリズムオーラを融合! 紅の真実よ! 七色の水晶よ! 光渦巻きて新たな輝きとともに一つにならん! 融合召喚! 現れよ! 紅玉の勝利者! 《ジェムナイト・ルビーズ》!」
《ジェムナイト・ルビーズ》
☆6/地/炎/ATK2500/DEF1300
柘榴石と水晶が溶け、ジェムナイト2体による融合モンスターの中でも高い攻撃力を持ち、自己強化効果と貫通効果を併せ持つ騎士が降り立つ。
「パーティカル・フュージョンの効果で融合召喚に成功した時、墓地のこのカードをゲームから除外しその融合召喚に使用した《ジェムナイト》と名のついた融合素材モンスター1体を選択し、エンドフェイズ時まで選択したモンスターの攻撃力分アップする! パーティカル・フュージョンを除外し、私はプリズムオーラを選択!」
墓地ゾーンのプリズムオーラの輝きがルビーズの核石に吸収される。受け継がれたプリズムオーラのパワーがルビーズの攻撃力を倍近い値にまで上昇させた。
《ジェムナイト・ルビーズ》
ATK2500→4950
「マスターダイヤの効果発動! ブリリアント・ダイヤの効果で墓地へ送られたマディラを除外してダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動させない効果を付加! そしてマスターダイヤの効果で墓地の《ジェム》と名の付くカードの枚数分攻撃力アップ! 墓地にあるジェムと名の付くカードはジェムナイト・フュージョン、クリスタ、サフィア、ガネット、プリズムオーラの合計5枚! よって500ポイントアップ!」
《ジェムナイトマスター・ダイヤ》
ATK2900→3400
「バトルフェイズ! マスター・ダイヤでアルティメットサイキッカーに攻撃! ダイヤモンドスラッシュ!」
「ぐわあああああああああ!!」
遂にサイキック式超生物がマスター・ダイヤの大剣の前に倒れる。一刀両断されたアルティメットサイキッカーは真っ二つにされてなお一矢報いようとマスター・ダイヤに手を伸ばすが、悲しいかな圧倒的な攻撃力という名の差の前には無力だ。容赦ないマスター・ダイヤの足が顔面を踏みつぶし、完全に消失させた。むごい。
ノア:LP4900→4400
「ブリリアント・ダイヤでサイ・ガールに攻撃! クレイジーダイヤモンド!」
「サイ・ガール!」
別に相棒ではないけど思わず「AIBO!」と叫びたくなる衝動に駆られた。何故だ。
破壊されたサイ・ガールは最後の力を振り絞ってステッキを回し、除外ゾーンから1枚のカードをノアに送る。
ノア:LP4400→1500
「サイ・ガールの効果で、除外されていたカードを手札に加える…!」
「もう遅いわ! ルビーズでカームに攻撃! クリムゾンブレード!」
「よっしゃ! これでフィニッシュ!」
刃くん起きてたんだ。
一瞬外野に意識が向くが、それが功を奏した。アフロヘアーになった刃とノアの間に隆起した岩盤に、見つかりにくいよう周囲の色と同化していたアクションカードがあったのだ。これ絶対取らせる気ないだろ、と悪質なカードの配置に毒づきながら風の如く走り抜けアクションカードを手に取る。
「アクション魔法《大脱出》! バトルフェイズを終了する!」
その名の通りまさに間一髪。
「え?」
ガコン、と突如カームの足場が観音扉の様に開かれ奈落の真っ逆さままで落ちる。そのお陰でルビーズは攻撃を空振り、攻撃対象がいなくなってしまいバトルは終了となった。同時に上空からカームが落下、今日のカームの運勢は最低値なようだ。後で料理の手伝いをしてやろう。
「ヒュ~危なかった…」
「チッ、首皮1枚で繋がったわね…」
「ちょっと待って、今舌打ちした? いけないなぁ女性が舌打ちなんかしちゃあ」
「何でもないわ、ターンエンドよ。そしてルビーズの攻撃力も元に戻るわ」
真澄:LP4000/手札0
場:《ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ》
《ジェムナイトマスター・ダイヤ》
《ジェムナイト・ルビーズ》ATK4950→2500
《ブリリアント・フュージョン》
「…ボクの、ファイナルターン! ドロー!」
「おお、ファイナルターン宣言たぁ大見得切るじゃねぇか」
というより、これで決まらなければ逆転が難しいからだ。先程だってバトルフェイズ終了のアクションカードだったから良かったが、明らかに真澄は息の根を止めようと虎視眈々だった。怖い。
「手札から速攻魔法《緊急テレポート》発動! デッキからレベル2サイキック族、《クレボンス》を特殊召喚!」
《クレボンス》
☆2/闇/サイキック/ATK1200/DEF 400
見た目的にもイケイケなサイキック族モンスターが現れた。アルゴリズムで表示された眼鏡は万物を見通す千里眼そのもの。女子軍団のスカートの色からスリーサイズまで分かってしまうから女友達が出来ないのが悩みだそうだ。
「レベル4のカームにレベル2のファルコをチューニング! 守護の風を纏いし風雲児よ、あらゆる攻撃を跳ね返せ! シンクロ召喚! レベル6!《ダイガスタ・スフィアード》!」
《ダイガスタ・スフィアード》
☆6/風/サイキック/ATK2000/DEF1300
機械天使《ヴァイロン》とのシンクロで得た絶対防御の力を持つスフィアードが現れた。今回はマッチョ美人リーズではなくマイペース天使ことカームさんが素材元だからか、まるでどこぞのリリカルでマジカルな魔法少女にコスプレしたようで目の保養になる。まどかでマギカな魔法少女? ゆゆゆな勇者? そんなの知りません。
「スフィアードのシンクロ召喚成功時、墓地の《ガスタ》と名のついたカード1枚を選択して手札に加える事ができる。ボクはカームを手札に戻し、そして召喚」
《ガスタの静寂 カーム》
☆4/風/サイキック/ATK1700/ATK1100
再び現れるカームさん。心なしか肩で息していた。おかしいな、過労死の称号はメンタルマスターが現役の時だけだったのに。
「事実上ディスアドバンテージは帳消しってわけね…でも攻撃力2000? そんなんじゃ私のモンスター達は倒せないわよ?」
「モンスターを倒せなくても真澄クンを倒せればいいのさ。バトルフェイズ! スフィアードでマスター・ダイヤに攻撃!」
「攻撃力の低いモンスターで攻撃!?」
杖を構えたスフィアードがマスター・ダイヤに猛突する。だが当然ながら攻撃力差は歴然であり、決死の突撃はあえなく跳ね返される。
「ジャンジャジャ~ン、更にアクション魔法《エクストリーム・ソード》発動! フィールドのモンスター1体の攻撃力をバトルフェイズ中のみ1000アップさせる! これをなんとマスター・ダイヤに使わせてもらうよぉ!」
《ジェムナイトマスター・ダイヤ》
ATK3400→4400
(なぜか)悪ノリなノアさん降臨。背後で胡散臭い敬礼ポーズをする亡霊が見えるのは気のせいだと思いたい。
確かにアクションカードに自分か相手のモンスターの指定は書かれていないが、普通は相手のモンスターの強化に使ったりしない。だがそこにノアの狙いはある。
「スフィアードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の《ガスタ》と名のついたモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける!」
「なんですって!?」
「また、スフィアードは戦闘では破壊されない! リフレクション・エア!」
真澄:LP4000→2400
スフィアードの杖から放出される
「そしてボクのフィールドにはもう1体ガスタと名の付くモンスターがいる…カームでマスター・ダイヤに攻撃! エレクトリコ・サイキック!」
「くぅ…! 私の負けね…!」
真澄:LP2400→ 0
Duel End
Winner NOAH
「ノア、最後のドローカードは何だったのよ?」
アクションデュエルフィールドが元に戻り、ノアは倒れていた真澄を引き上げると訪ねられた。
「これ」
ノアはぺろりとデッキトップを捲り戻してしまったカードを見せる。モンスターカード、しかもそれを見た瞬間アフロヘアー・刃が嫌そうな顔をした。
「ガスタ・グリフ…その鳥に好かれてるのかしらね」
「自爆特攻要員じゃないから他に嫌われてるだけじゃないかなぁ」
ガルド=自爆要員。
イグル=自爆要員。
ファルコ=ゴッドバードアタック要員。
鳥の連中には碌な扱いをしていないのか、そういえば最近毛並みが崩れてきたことを思い出した。後でブラッシングしてやろう。
「ところで今ノアって呼んでくれた?」
「呼んでない」
「嬉しいなぁ~ツンがデレる瞬間って醍醐味だよねぇ~」
「だれがツンデレよ!」
「近い将来、真澄クンも自分がツンデレだと自覚…オゥフ!」
容赦ない無言の腹パンがノアを襲った。鳩尾に食い込んだ拳はノアの体をデュエルコートの壁へと叩き付ける。それでいてなお少し紅く染まった真澄の耳が見れてグッジョブ! と思っているノアは十分おかしい。
腹パンした本人はもうデュエルコートから飛び出してしまったらしく、代わりにアフロヘアーになった刃が苦笑しながらノアに謝った。
「ま、真澄に関しては許してやってくれ。ああ見えて嬉しいんだと思うぜ? LSD内でも俺等二人以外とはつるまないし、実力伯仲する相手もいないだろうしな」
「まぁ…そうだろうね。本人全然正直じゃ無さそうだし、『THE! 孤高のエリート!』ってタイトルロゴ付くくらいだし。ハイこれ」
「その表現は何となく分かるようでわからねぇ…ん? これ何だ?」
「欲しがってたモンスターエクシーズ」
「いいのかよ!? うわ、このランク3のX-セイバーなんか超デッキに合うじゃねぇか! それに…エメラル? でも《ガスタ》名称だけど…通常モンスターの蘇生とか、真澄のデッキにマッチしてやがる!」
「キミタチには否が応でも強くなって貰わないとねぇ…ま、精々ボクを倒せるよう励みたまえよ」
「うわ、上から目線かよ…でもありがとな、真澄にも渡しておいてやるぜ。アンタとの絆の証ってよ」
「それやめたほうがいい、余計受け取らなくなるから」
「だな。サンキュ、ノアさん」
存外好感触のようだった。これからもっと強くなって、できれば無残な死を遂げて欲しくないと願い、ノアは去っていく刃の背中を見送る。
「どうです?」
『……拝見させて貰いました。確かにジュニアユースのエリートでは不合格かもしれませんね』
「わかって頂けたようでなにより」
デュエルコートの壁面に設置されたパネルに赤馬日美香の顔が映る。今は海外にいるが彼女だが、常設されたカメラから最後までデュエルを見ていたようだ。
『…こちらの実力不足は認めざる得ませんね。それに今回のアクションフィールド…あれはまさか』
「さて、なんのことでしょうね」
『まぁ、殊更問い詰める内容でもありませんし今回は見送りましょう』
「ありがとうございます。息子さん二人とも、どうでしたか?」
『えっ?』
「気付かれたか」
デュエルコートの出入り口の暗がりから、いつものマフラーを棚引かせる零児社長が拍手しながら現れた。そしてノアはデュエルコートに隣接した理事長室側のガラス窓に手を振る。常人には遠くて見えにくいかもしれないが、並外れた視力を持つノアの目には零児の弟と思われる零羅がためらいがちに手を振っているが見えた。
「デュエリストたる者、デュエルとあらば見に行かない理由は存在しない」
「なるほど」
『零児さん、彼のデュエルをどう評価します?』
「現在のプロチームに入っても通用する実力。素晴らしいデュエルだった…まさかシンクロだけでなく融合まで使うとは」
『そう…今日は本当にありがとう。帰国してから、改めてお礼を言わせて貰うわ』
「構いませんよ、それより交渉頑張ってください」
『ええ、それでは零児さんまた』
そう別れを告げてパネルから日美香の顔が消えて通信が切れた。零児は壁に背凭れ座り込むノアを引っ張って起き上がらせると、好戦的な眼差しを向けつつ核心を突くようなことを言った。
「だがやろうと思えばもう一つの召喚もできたのだろう?」
零児の目は誤魔化せないようだった。ノアは苦笑しつつ、ホルダーを改造したデュエルディスクのエクストラデッキが収納された場所から1枚のカードを取り出す。
ランク2の風属性モンスターエクシーズ。名は《ダイガスタ・フェニクス》。
「ペンデュラム召喚に加え、融合・シンクロ・エクシーズの3つの召喚が行えば」
「おや、奇遇だねぇ零児。ボクも同じこと考えてたよ」
「早速私のデッキに3つの召喚方法を可能にするギミックを取り入れ、各モンスターも考えよう」
「やっぱり展開力は大事だと思うんだよね、3つの召喚方法を扱える原型たる《ガスタ》はあくまでもリクルーターによる受け身の展開でしかない。今つくってる《DD》はスケール1と10だからどのランクも作ることは出来る。融合は名称指定だからレベルは関係ないとして、問題はシンクロとエクシーズの兼ね合いだなぁ」
「出来れば墓地から釣り上げるモンスターとのレベルは合わせたいな」
「融合かシンクロか、どちらにせよ軽い条件で墓地のモンスターを釣り上げれば大丈夫だと思う」
「だがペンデュラムとの兼ね合いを考えるとサーチは不可欠だな、なるべく早く手札に呼び込みたい」
「やっぱりそこか。それは――社長だから、『これで契約は無効になった(キリッ)』みたいな決め台詞が言えそうなデメリット解消カードがあるといいかも」
青年達のカード制作は続く。
これが後の赤馬零児の〝
同時に、全次元では《クリフォート》《EM》に次いで3番目である。
【カミングアウト】DDDは《ガスタ》の《クリフォート》の要素を詰め込んだデッキだったのでした。真澄さんは反射ダメージの前に屈する宿命なのです…
召喚の口上に関してはアニメのものをほとんど用いていますが多少自分好みに改良しております、ご容赦下さい
本文でも語られてますが、スケッチされたモンスター群のカード化は個体差があり、いまだ《セフィラ》に関してはカード化されてない仕様になってます(殻醒フラグ)
ちなみにリアルでは現在ガスタデッキは音響戦士と組み合わせたりピリカでデブリ・ドラゴンを釣ってクリアウィングを…融合!? 俺の名はユーゴだ! 自力で脱出を!?
何かご指摘ありましたら感想の方までお願いします
※執筆終盤、ブリリアント・フュージョンが発動時のみデッキ融合だったのを忘れて次のターンもデッキ融合してたのを見て焦った。チートや、チーターや!
追記 ヲーの翼神竜(球体ヴァージョン)OCG化を誰が予想しただろうか…ミエルちゃんやアユちゃんのカードもOCG化とか、デストーイといいRRといいアニメカテゴリへのファンサービスがとどまるところを知りませんね