一回戦が終わり、明久たちが教室に戻ってる途中だった
「おお! 明久たちよ! ここに居《お》ったか! 探したのじゃ!」
階段を下りてきたらしい秀吉が、明久たちに駆け寄ってきた
近くには、小燕が居た
「どうした、秀吉」
「なにがあったの?」
雄二と明久が問いかけると、秀吉は困った様子で
「うむ、実はな……営業妨害なのじゃ」
「「営業妨害?」」
秀吉の言葉に、明久達は怪訝そうな表情をした
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
全員が教室前に着くと、秀吉が中を覗き
「あの二人じゃ」
と、真ん中の席に陣取ってる二人の男子を指差した
片方はスキンヘッドが特徴で、もう片方はソフトモヒカンが特徴だった
「両方とも三年生ね。ソフトモヒカンなのが夏川俊平で、スキンヘッドが常村勇作」
有里は懐から出した手帳を見ながら、男子を特定した
それを聞いた明久は、溜め息を吐いて
「最上級生がなにやってんだか」
と、頭を振った
ちなみに、中では
「こんな不味いモン、食えるか!」
「接客も下手なんだよ! 責任者は誰だ!」
などと、二人は机に足を乗っけながら喚いている
それを見た明久は、視線を秀吉に向けて
「修兄と設姉は?」
明久は、あの二人が居たらあんな暴挙は許さない筈と思った
明久の質問に、秀吉は首を左右に振りながら
「修史は休憩で、真田は霧島と試合に行ってしまってのう……」
秀吉の言葉を聞いた明久は、額に手を当てて、上を見上げた
「あっちゃぁ……タイミング悪いなぁ」
「仕方ねぇ、俺が直々にあの常夏コンビをヤるか」
雄二はそう言いながら、腕まくりするが、それを有里が止めた
「なんだよ穂村」
「行く必要はないわよ」
有里の言葉に、雄二は頭上に?マークを浮かべて
「なんでだよ」
と聞くと、有里は教室内部に視線を向けて
「あれ」
と、指差した
全員が指の方向を見ると、そこには男性が居た
髪はオールバックでヒゲを生やしており、更にはサングラスを掛けた厳つい中年男性だった
その男性を見た明久は、ビシリと固まった
そして、男性は常夏コンビの机の近くに立つと
「おい、お前ら」
と、ドスの聞いた声で二人に声を掛けた
「あぁ? なんだオッサン」
「俺らになんか用か?」
二人は男性を睨みつけるが、男性は怯えずに
「私の息子たちが作った飯が、マズいだと?」
男性はそう言いながら拳を鳴らすと、二人の襟首を掴んで持ち上げた
「な!?」
「は、放せ!」
常夏コンビは暴れるが、男性の腕は小揺るぎもしない
「ちょっと、裏。行こうか」
そうして、男性は常夏コンビをドナドナしていった
それを雄二達(明久と有里は抜いて)は、呆然と見送った
「だ、誰だったんだ?」
雄二は男性が去った方向を見ながら、ポツリと呟いた
すると、明久は無言で教室に入って
「お客様。大変、お騒がせしました。ただいまいらっしゃるお客様に関しましては、二割引きで対応させていただきます」
と、恭しく頭を下げた
すると
「お構いなく!」
「これがマズいって、あいつら舌がおかしいんじゃないのか?」
「接客も、学生にしたらむしろ上々だろ」
「あ、ふわふわシフォンケーキお願いします!」
明久の言葉に、その場の客達はむしろ、嬉しいことを言ってくれた
すると明久は、雄二に近づいて
「ごめんね、雄二。勝手に二割引きとかしちゃって」
「いや、客入りはいいし売上も上々だから問題ない。むしろ、とっさの判断では上出来だ」
明久の謝罪に、雄二は手を振りながら告げると、明久に視線を向けて
「で、お前。あの男性のこと、知ってんだろ?」
と、聞いてきた
その言葉に、明久は少し黙ると
「うん、知ってる……」
ポツリと呟いてから、頷いた
「誰なんだよ」
雄二がそう聞くと
「明久と修史。そして、優の父親よ」
明久の代わりに有里が言うと、雄二は驚いた表情をして
「父親!? あれがか!?」
「そう、あれが……」
明久は遠い目をしながら、呟いた
(なんで居るんだろ? 詳しい日程は教えてないはずなのになぁ……)
明久は確かに、メイド服や執事服の発注を課長を通して行った
が、課長には清涼祭の詳しい日程は教えていなかったのである
教えたら、絶対に奇抜な格好で来るのが予想できていたからだ
修史から聞いた話だと、リーゼントにアロハシャツで来たことがあるらしい(その時修史は、スタンガンを押し付けて、気絶させたらしい)
明久はそれを未然に防ぐために、課長には清涼祭の詳しい日程を教えていなかったのである
(修兄や設姉じゃないだろうし……有里さんや小燕でもないし……誰だろう?)
教えた人物に覚えがない明久は、首をひねった
しかし、犯人は意外なところに居た
「まったく、神崎はどこで油を売ってるのかねぇ……アタシが呼んだんだから、さっさと来いってもんだよ。まったく……」