プール掃除 準備
清涼祭が終わって、数日後
ある一室で、西村が唸っていた
「うーむ……どうしたものか……」
彼の持っている一枚の紙には
〈屋外プール掃除、嘆願書〉
と書かれていた
確かに、もうすぐ季節は夏に入る
それを考えると、そろそろ掃除はしたいところだ
だが、いろいろと特殊なこの学園には業者に頼むほどの予算もなく、水泳部も大会が近いために、あまり重労働はやらせられない
それを考えると、取れる方法は一つだけだった
「はぁ……あいつには、やらせたくないんだが……」
西村は嘆息すると、部屋から出て、ある人物の場所へと向かった
場所は変わって、2年Aクラス教室
「プール掃除……ですか?」
明久は西村から渡された紙を見て、問い掛けた
「ああ……本来だったら、業者に頼むべきなんだろうが、学園の予算には余裕なんて無くてな……すまんな、本当はお前にも頼みたくないんだが……」
「大丈夫ですよ。それに、そのための観察処分者なんですから」
西村が申し訳なさそうに言うと、明久は笑顔で了承した
「すまんな……一人では終わらないだろうから、何人か手伝わせろ。それと、プール掃除が終わったら褒美として、プールで遊んでよし」
「それは、ありがとうございます」
西村からプールで遊ぶ許可を得た明久は、頭を下げた
「いや、これくらいしか出来んが、頑張ってくれ。では、頼むぞ」
「はい」
西村が去ると、明久は自分の机に座った
すると、周囲に数人集まり
「なんだったの、明久君?」
「なになに~?」
「……どうしたの?」
優子を筆頭に、愛子と翔子が来た
「ああ、西村先生からプール掃除を頼まれたんだ」
「プール掃除?」
「それって、屋外プールのこと?」
明久が事情を説明すると、二人は首を傾げた
ここ、文月学園にはプールが2つあるのだ
そして、今回掃除するのは屋外プールである
愛子は水泳部に所属してるので、それを知っていたようだ
「うん、まさに屋外プールだね。で、一人じゃ無理だから何人か連れてけだって」
「なるほどネー」
明久の言葉に愛子は納得するが、優子は首を傾げ
「でも、なんで明久君に掃除を? 普通は業者とかに頼むんじゃないの?」
と、明久に問い掛けた
すると明久は、苦笑いを浮かべ
「なんでも、あんまり予算に余裕がないみたいだし、まあ、僕は観察処分者だしね」
と言うと、それに翔子が続けて
「……観察処分者は先生からの命令を聞く義務がある」
と説明すると、優子が
「観察処分者も大変なのね……」
と、感心するように頷いた
すると、明久は頭を掻いて
「さてと、誰を誘おうかな……」
と呟くと
「なに言ってるのよ、明久くん」
「私達を誘わない手はないでしょ?」
「……手伝う」
と三人は、心外だとばかりに告げた
「ありがとう、三人とも」
明久が素直に頭を下げていると、扉が開き
「翔子、そろそろ帰るぞ」
「すまぬ、姉上。待たせたのじゃ」
雄二と秀吉が入ってきて、二人の後ろにはFクラスの何時ものメンバーが居た
すると雄二は、明久の持っていた紙に気づき
「プール掃除? 明久がか?」
「うん、観察処分者としてね」
雄二の問い掛けに明久が返すと、それに続いて
「でも、流石に、一人では無理だから何人か手伝うみたいね」
「しかも、終わったらプールで遊んでよし!」
優子と愛子が説明すると、雄二は数瞬考えて
「面白そうだから、俺も手伝うぜ」
「ワシも手伝うのじゃ」
雄二に続くように言うと、秀吉達の背後に居た有里達も手伝ってくれると言ってくれた
それを聞いた明久は、全員に感謝を述べると
「それじゃあ、明日の10時に屋外プールに集合で!」
「「「「「おう(うん)(うむ)!」」」」」
明久の号令に、全員片手を上げて答えた
翌日 土曜日 10時
明久と優子。秀吉と有里と小燕は先に到着して、談笑していた
すると、そのタイミングで
「悪い、遅れた」
「……準備に時間がかかった」
「おーっす!」
「すいません。遅れました」
雄二と翔子、そして、修史と設子が到着した
「ごめんね~。遅れた!」
そして、愛子も現れた
そこまでは良かった
だが……
「いい加減に離れなさい、美春!」
「嫌です! お姉さまは、私が守るんです!」
余計なオマケが付いていた
「なにあれ?」
「気付いたら、島田の腰に引っ付いてた」
明久が問いかけると、雄二が溜め息混じりに返した
しかも、島田の近くには小さな女の子も居た
その女の子は明久に気づくと、明久に向けて駆け出し
「優しいお兄さん!」
と、明久に飛びついた
「おっと! えっと君は……」
明久は女の子が飛びついた瞬間、軽く後ろに跳んで衝撃を殺してから、女の子の顔を見た
「ああ、思い出した! あのクマの人形の女の子か!」
「葉月は葉月です!」
明久の言葉に女の子、葉月ちゃんが心外そうに名乗ると
「なに、吉井。葉月と知り合いなの?」
腰から清水を引き剥がした島田が、明久に問い掛けた
「まあ、知ってるけど……この子は?」
「ウチの妹の葉月よ」
島田の言葉を聞いた明久は、葉月と島田を見比べて
「ああ、確かに似てる」
と呟いた
すると、島田が拳を握り締めて
「なぜかしらね、今、吉井を殴りたくなったわ」
「なんでさ」
と、明久が返したタイミングで
「すいませーん! 遅くなりました!」
「……遅れた」
と、姫路とムッツリーニが走ってきた
「これで全員だね。それじゃあ、プール掃除を始めようか!」
と、明久が鍵を開けて中に入った
ちなみに、なぜか……
「ねぇ、秀吉、優……」
「なんじゃ?」
「どうしました、明兄?」
「アレ……」
明久の指差した先には、【木下秀吉&桜庭優専用】とプラカードが掲げられた部屋があった
「なぜじゃ!?」
「なんで!?」
その部屋を見て、二人は絶望を含んだ声を上げた