プール掃除と言っても、文月学園のプール掃除は一般の学校とは違うだろう
なにせ、試作機とは言え循環式濾過装置が使用されているので、プールの水は透明に保たれている
とは言え、落ちてきたゴミなどがあるので、中に入ってそれを巨大な網で掻き出したり、プールサイドの掃除をしなければいけない
これがなかなか重労働で、分担としては、女子がプールのゴミの掻き出し
男子がプールサイドの掃除となった
そして三時間後、プール掃除が一段落したので、お昼となった
すると、明久が三段重ねの重箱を持ってきて
「はい。手軽な物だけど、用意してきたよ」
とビニールシートの上に置いて、フタを開けた
「「「「「おぉ!」」」」」
中を見た全員の口から、感嘆の声が漏れた
中には、おにぎりや唐揚げ。野菜春巻きなどがバランスよく入っている
しかも、食べやすさを意識したらしく、全て一口サイズだった
「では、どうぞ」
と明久が言うと、全員は手を合わせて
「「「「「いただきます」」」」」
と言ってから、食べ始めた
明久の料理を食べ慣れている、木下姉弟は
「やっぱり、明久君の料理は美味しいわね」
「相変わらずの腕前じゃな」
と感心した様子で頷き、有里と小燕は
「さすがの気遣いね……」
「お見事です」
と、明久の気遣いに感心していた
そして、初めて食べた雄二と翔子は固まり
「……これ、マジで明久が作ったんか?」
「……プロ並み」
と驚愕していて、島田と姫路は両手を突いて
「……負けた」
「……女としてのプライドがボロボロです」
と、落ち込んでいた
修史と設子の二人は何も言わずに、美味しそうに食べている
そして、明久が用意した料理を全員が食べ終わったタイミングで
「そういえば私……デザートを作ってきたんです!」
と姫路が、タッパーをビニールシートの上に置いた
それを見た瞬間、姫路のケミカルクッキングを知ってるメンバーは固まり、知らないはずの修史と設子ですら体が強張った
直感でソレが危険だと、わかったのだろう
姫路は全員の反応に気付かず、タッパーのフタを開けながら
「三個だけですが、どうぞ」
と言って、薦めた直後に明久が腕を掴んで
「姫路さん……一つ確認したいんだけど、大丈夫だよね?」
と問い掛けると、姫路は鼻息荒く
「大丈夫です! 今回は硫酸を入れてみました!」
と宣言した
その言葉を聞いた明久は、右手で姫路の顎を掴んで強制的に開けさせると、左手でデザートのワッフルを掴み
「自分で食え!!」
と、姫路の口の中に突っ込んだ
その直後、姫路は痙攣してからグッタリとなった
それを見た秀吉が
「因果応報、自業自得……かのぅ……」
と呟いた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
十数分後、未だに気を失っている姫路はベンチに寝かせて、明久達はプールで遊んでいた
男子は競泳や潜水でのタイム勝負
女子は水中バレーとなっていた
だが、男子陣の視線は女子の方に向けられていた
理由は単純
そのバレーの勝負が、途中から凄まじいことになっていたからだ
このバレー勝負はペア戦であり、現在は
島田&清水ペア対翔子&設子ペアである
最初は翔子&設子ペアが優勢だった
理由としては、清水がわざとミスを連発していたからだ
しかし、島田が言った
「これ以上手を抜いたら……今度から清水さんって呼ぶからね……」
この言葉がトリガーとなり、清水は本気になった
するとそれに乗じて、設子も本気を出した
その結果、まるで某庭球王子のような試合が展開された
清水が直角に落ちるサーブを放てば、それを設子が蛇のように返球した
その応酬を見た秀吉は
「どうやったら、あのような試合になるのじゃ!?」
と驚愕していた
そんな試合が展開されていたが、途中でビーチボールが割れてしまったので無効試合となった
そして、全員で談笑していた時だった
トイレから葉月ちゃんが戻ってきて、プールサイドを走っていた
それを見た設子が
「葉月ちゃーん、走ったら危ないですよ?」
と設子が注意したら、葉月ちゃんは笑顔で
「大丈夫でーす!」
と、言った直後
葉月ちゃんの足が滑り、宙を舞った
そして直線上には、葉月ちゃんに背中を向けた明久が居た
明久は葉月ちゃんに気づいておらず、全員が指摘しようとした時には既に遅く
「あうっ!」
「うわっ!?」
葉月ちゃんの伸ばしていた手が、明久のパーカーの襟を掴んだ
咄嗟のことに明久は対応しきれず、二人は倒れた
「大丈夫か!?」
「怪我はないか!!」
倒れた二人の周りに全員が集まり、葉月は島田が起こして、明久は雄二が手を差し伸べた
「もう! だから、危ないって言ってたのに!」
「ごめんなさいです……」
島田と葉月がそんなやり取りをしてる中、雄二達の方は静かだった
それを不思議に思った島田達が視線を向けると、二人は目を見開いた
倒れていた明久は雄二の助けにより、上半身を起こしていたが、着ていたパーカーが脱げてしまいソレを露わにした
それは、上半身を覆う夥しい数の傷痕だった
それを見た雄二達は、その傷痕が国際空港爆破テロによる傷痕だと察した
明久はなぜ雄二達が黙ってるのか不思議に思っていると、修史が
「明久、パーカーが脱げてる」
と指摘した
すると明久は、脱げたパーカーを慌てて羽織って
「あ、アハハハ……醜いモノを見せて、ごめんね」
と苦笑いした
すると、優子が明久に抱きついて
「醜いわけ、ないじゃない……それは、明久君が一生懸命に生きた証拠なんだもの……」
と、優しそうに語った
それを聞いた明久は、一瞬驚くが
「あり……がとう……」
と声を震わせた
なお、その光景を見た島田と復活していた姫路が明久を攻撃しようとしていたが、それは修史と設子によって止められた
その後、明久達は再びプールで泳いでいたが、度重なる出血から復活したムッツリーニが秀吉の上半身を見て鼻血を再び噴出させ、秀吉が落ち込んでいた
ムッツリーニの鼻血の処理も終わり、午後五時を回った所でプール遊びを止めた明久達は、冷えた体を温めるために近場の温泉施設に向かった
すると、そこで西村に出会った
どうやら、自宅の給湯器が壊れたらしい
明久はこれ幸いにと、プール掃除を終えたことを報告して、ついでにプール遊びで起きたことを教えた
すると西村は、額に手を当てて
「合宿での木下と桜庭の風呂は、別にする必要があるな……」
と呟いた