如月グランドパーク その1
プール掃除が終わった一週間後
雄二と翔子の二人は、如月グランドパークに来ていた
何故かと言うと、文化祭で入手したチケット
プレミアムグランドオープンチケットの指定日だからである
そして、二人がゲートを潜り抜けてチケットを係員に見せると二人に断ってから背を向けて
「私だ……プランΩを発動する」
と、何やら不穏当なことを発言した
それを聞き逃さなかった雄二は、その係員に向けて
「おいこら、プランΩってなんだ? つか、その声は須川だろ?」
と問い掛けた
すると、係員こと須川は、大げさに肩をすくめて
「オーウ、ワタシニハ日本語ハムツカシイでーす!」
と、エセ外国人を装った
須川のあまりの白々しい態度に、雄二が溜め息を吐きながら額に手を当てていると
「お客様ー、このチケットはプレミアムグランドオープンチケットなので、結婚式体験ができまーす!」
と、須川が言った
その言葉を聞いて、雄二はそういえばと思い出した
文化祭で、召喚獣大会に出る際に学園長がそのような噂を聞いたと言っていたのを、雄二は今の今まですっかり忘れていた
それを思い出した雄二は、数瞬考えると
「いや、断る」
と告げた
すると須川は、なおも
「お願いしまーすよー! やってみてくださーい」
と言うが、雄二は腕組みしながら顔を逸らして
「やなこった、めんどくさい」
と拒否すると、須川は顔を近づけて
「これ以上拒否すると……お前の家に腐ったザリガニを送りつけるぞ?」
と言った途端、雄二は顔を青ざめて
「待て、それだけはやめろ!!」
と、声を張り上げた
雄二が声を張り上げたのには、訳がある
それは、雄二の母親は天然なのだ
ゆえに、そんなものが送りつけられたら、母親は伊勢エビと勘違いして食卓に並べるだろう
そうなったら、坂本家は全滅である
だから坂本家では、可能な限り、雄二か父親が料理をするようにしている
「では、参加しまーすかー?」
と須川が小馬鹿にした様子で聞くと、雄二は不承不承といった様子で
「わぁったよ……参加してやる……」
と承諾した
すると須川は、嬉しそうな顔で
「おー! ありがとうございまーす! それでは最初に、写真撮影をしたいと思いまーす!」
と言うと、襟のピンマイクにカメラを持ってきてくださいと呟いた
「写真撮影?」
「はい、体験をしていただいた方達の写真を撮影して、それを写真館に展示するんでーす!」
雄二の問い掛けに須川がそう答えると、雄二は溜め息混じりに
「なんつー公開処刑だよ……」
と雄二が呟いたタイミングで、帽子を目深まで被った係員が手にデジタルカメラを持って駆け寄ってきた
「おーう! あなたが持ってきてくれましたか!」
と須川は喜んだ様子でデジタルカメラを受け取ったが、雄二は持ってきた人物を見てから、翔子に視線を向けて
「翔子……すまん」
と謝ると、雄二は翔子のスカートを見えるか見えないかギリギリまでめくった
その直後、新たに来た係員が懐から新しいデジタルカメラを素早く取り出して構えた
それを見た雄二は、嘆息すると
「やっぱり、ムッツリーニか」
と呟いた
すると、ムッツリーニと須川は首を振りながら
「違いまーす! 彼女はエリザベス・花子(23歳)独身女性でーす! 決して、ムッツリーニとかいう変態ではありませーん!」
「お前らは、堂々と性別や年齢で嘘をつくな!」
須川の言葉に雄二が突っ込んでいると、翔子がスカートを押さえながら
「……雄二のエッチ……」
と呟いていた
その後、写真撮影して持ってきたカードを見て、雄二が突っ込んでいたが、その横を明久と優子が通り過ぎていたことに、雄二達は気づいていなかった
明久と優子も文化祭で貰ったチケット、プレミアムチケットで来たのである
そして、二人を見送った係員は懐から携帯を取り出すと
「俺だ……SとHに対象が来たと伝えろ……」
と、何やら不穏当なことを電話の向こうの相手に告げた
明久と優子はゲートを超えると、パンフレットを見ながら歩いていた
「最初はどこに行こうか」
「そうね……」
と二人して考えていると、どこからか走ってくる音が聞こえてきた
二人が視線を向けると、その方向から如月グランドパークのマスコットが走ってきていたが、その背後には黒いオーラが吹き出していた
その光景を見た二人が首を傾げていたら、二体のマスコット(?)は明久達の前で止まり
「吉井くーん……O☆HA☆NA☆SHI☆があります……」
「吉井ー……ボッキリとO☆SHI☆O☆KI☆が必要みたいね……」
その声を聞いて、明久達は中身が誰かわかった
「姫路さんに、島田さん?」
「何やってるの、あなた達……」
明久達が中身の姫路と島田に問い掛けるが、二人は無視して
「ウチらを無視して、そんな女と来るなんて……」
「O☆HA☆NA☆SHI☆です!」
と言って、飛びかかってきた
それを見た明久が優子の前で構えた時、空気の抜けるような音が二回聞こえて、姫路と島田は地面に倒れた
その光景を見た明久は、音のした方向を見た
少し離れた所に清掃用具を持った二人の係員、修史と設子が居た
よく見ると、二人が持っている長柄の箒の先端から白い煙、硝煙が漂っていた
(あ、アイギス謹製の仕込み銃か)
アイギスでは護衛のために、様々な見た目の道具を開発している
修史と設子が持っているのは、まさにソレだった
修史と設子は倒れている二人の襟首を掴むと、修史が
「明久……お前はそろそろ、自分の幸せも考えろよ」
と言うと、島田と姫路を引きずっていった
そして言われた明久は、優子の視線のが向けられるなか、ただただ、口をつぐんでいた