騒ぎを聞きつけて駆けつけた西村とAクラスのメンツは、明久達と突入してきた女子達の話を聞くと
「なるほどな、覗きか……」
と呟いた
すると、島田と姫路がいきり立った様子で
「そうよ! だから、とっととそこに居る犯人達を捕まえてください!」
「そして、厳しい処分を下してください!」
と西村に進言した
ちなみに、明久はそんな二人のことは無視することに決めたらしく、目を閉じて腕組みして黙っている
「翔子。先に言っておくが、俺は断じてやってない」
雄二がそう言うと、優子の隣に立っていた翔子は
「……信じる」
と言った
すると、それを聞いた小山が驚いた様子で
「ちょっと! 霧島さん! そんな簡単に信じていいの!?」
と言うと、翔子は視線を小山に向けて
「……好きな人のことは信じるべきだし、アリバイもある」
と言った
「アリバイですって?」
翔子の言葉を聞いて、小山は眉をひそめた
すると、西村が頷き
「そうだ……こいつらには、きちんとアリバイがある」
そう言うと、まずは雄二を見て
「坂本は合宿所に到着してから、学園長の挨拶があるまで、食堂で軽食を食べていた。これは、食堂の方々が確認している」
と言うと、続いて康太に視線を向けて
「土屋は乗り物酔いで体調を崩し、医務室に先ほどまで居た。これは、医務室の先生が証人だ」
と言った
そして最後に、明久に視線を向けて
「吉井は、いや吉井を含めたAクラスは渋滞に巻き込まれて予定よりも一時間半遅れて到着した後、俺と話し合っていた」
と言った
すると、島田が
「話し合いってなによ?」
と明久に視線を向けたが、明久は反応しない
それを見た優子は、明久が本気で怒っていることを察した
「吉井の右腕の付け根辺りを見てみろ」
西村の言葉を聞いて、突入してきた女子達は明久の腕を見た
そこには《特別監視員》と書かれた腕章があった
「特別監視員?」
姫路が首を傾げると、西村が
「そうだ。俺が信頼している生徒数人には、この合宿期間中限定で風紀を取り締まる役目と権限を与えた」
と言った
それを聞いた女子達は、その意味を察した
明久は西村から信頼されており、明久の一存で厳しい罰則すらありえると
「なお、この特別監視員は吉井の他に、桜庭、穂村、真田、如月、木下姉が該当する」
という西村の言葉を聞いて、突入してきた女子達は言われたメンバーの腕を見た
そこには確かに、明久と同じ腕章があった
が、島田と姫路が
「なんで吉井がそんな役割なのよ!」
「そうです! 覗きの犯人のくせに!」
と声を張り上げながら明久に飛びかかったが、二人は素早く設子と修史によって取り押さえられた
すると、ゆっくりと明久が目を開き
「西村先生……特別監視員として、島田と姫路の両名に対して、地下の特別反省房への収監を提案します」
と、提案した
明久の提案を聞いて、西村は一瞬驚くが、取り押さえられている島田と姫路の姿を見ると、溜め息を吐いて
「……確かに、反省の色もないな……許可する」
と、許可を出した
それを聞いた島田と姫路の二人は
「ちょっと! 特別反省房ってなによ!?」
「なんで、私達がそんな所に閉じ込められないといけないんですか!?」
といきり立ったように、声を張り上げた
それを聞いた西村は、溜め息混じりに
「貴様らが反省もせず、自分の非も認めないからだ……如月、真田、すまんが、そのまま連行してくれ」
と言った
頼まれた修史と設子の二人は頷くと、視線を明久に向けて不規則なまばたきをした
それはアイギスで使われている暗号で、モールス信号である
(少しの間、霧島を頼む)
(了解)
明久も同じ合図で返すと、修史と設子は島田と姫路を連行していった
特別反省房は、地下の大浴場に向かう階段のすぐ横にある扉から入れる
本来、この部屋はただの物置だったが、学園がこの建物を購入し改修した際に反省房へとその役割を変えた
修史と設子の二人は暴れる姫路と島田を引きずって、反省房の中へと放り込んだ
「ちょっと! 出しなさいよ!」
「後で酷いですよ!」
姫路と島田がそう喚くが、修史と設子は無視して
「少しは反応しろ」
と設子は言い、修史は
「明久の彼女は自分で選ぶから、俺は口出ししないと思っていたが……お前らはダメだな」
と言った
それを聞いた二人は
「どうしてよ!?」
「どうして、そんなことを言うんですか!?」
と喚いた
それを聞いた修史が
「明久はお前らのオモチャじゃねぇんだ……お前らが好きにする権利なんざねぇんだよ」
と言うと、ドアを閉じてから鍵を施錠した
この特別反省房の鍵は特別製で、ピッキングが不可能なものである
しかも、内側にドアノブが無いために内側からは開けられないのである
中では島田と姫路の二人が大声を出しながらドアを叩くが、ドアは防音材と衝撃吸収材が使われているので、無駄だった
そして、修史と設子の二人は明久達の居る部屋へと向かった
そこでは、残ってる女子に対して西村が説教していた
内容としては、流言に惑わされて先生に言わずに勝手に行動するとはなんたることか
そういう時こそ、第一に先生に相談せよ
というものだった
注意された女子達は明久達に謝罪したのち、西村に補習室へと連れて行かれた
その後、明久達は西村が一段落ついて生徒達が割り振られた部屋に入ったのを確認すると、設子と小燕以外全員が集まった
話し合う議題はもちろん、早速起きてしまった覗き事件である
「見つかったのはこの小型カメラで、場所はここ」
と有里は言いながら、合宿所の階層毎に書かれた地図の女子大浴場の一角を指差した
「ふむ……この小型カメラは、アイギスでは使ってるのか?」
と西村は、修史に問い掛けた
西村は、修史が明久と同じアイギスのシールドナンバーと知っている
修史は西村から手渡された小型カメラを見ると
「……いえ。アイギスでは使ってないですが、メーカーは知ってます」
と言った
「どこだ?」
「AWATA社です。これは、去年発売された物ですね」
という修史の言葉を聞いて、西村は
「つまりは、最新型か……」
「ええ……本来ならば、学生が手に入れられる物じゃないんですが……」
西村の言葉を聞いて、修史はそう言った
すると、有里が
「とはいえ、ムッツリーニ君っていう前例が居るじゃない」
と言うと、西村が頷いて
「確かにな……故に、犯人は合宿所に居る学生と見ていいだろうな」
と断言した
その時、有里が手を上げて
「それと、カメラはもう一つ有ると思う」
「その根拠は?」
有里の発言に、優子が問い掛けた
「だって、見つけたのは入り口の裏返った籠の中よ? 誰かが使ったらすぐに分かるじゃない」
「確かに……あまりにも分かり易過ぎる……」
有里の言葉に明久は同意して、唸りだした
「まだもう一つのカメラの場所はわからないけど、それはあたしが見つける」
「了解。それじゃあ、後は犯人だけど……」
と明久が唸り出したら、有里が
「それなら、一人だけよ」
と言い、全員の驚愕の視線が有里に集まった
「分かるのか?」
「誰ですか?」
修史と明久が問い掛けると、有里は懐に手を入れて
「この子よ」
と、一枚の写真を机の上に置いた
「清水美晴か……」
写真を見て、西村は顎に手を当てた
「彼女、あたしの調べではかなりの百合っ子ね。しかも、ムッツリーニ君と同じことをしてるわ」
「それは知らなかったな……」
有里の言葉を聞いて、西村は低い声で唸った
康太と同じこと
つまりは、盗撮写真などを販売しているということだ
西村は教師として、それに気づかなかったことを恥じているようだ
「うーん……それじゃあ、課長に相談するか」
明久はそう言うと、持ってきていたカバンから通信機を取り出して
「こちらシールド14。本部、応答願います」
通信を始めた
『こちら本部。シールド14どうした?』
通信画面に現れたのは、見慣れたヒゲ面の課長だった
「実は、合宿所で問題が発生しまして……」
明久はそう言うと、発生したことを簡潔に纏めて教えた
『なるほど……覗きか……』
「はい……つきましては、犯人を特定したいので、電波探知機を貸していただきたいんです」
明久がそう言うと、課長は頷いて
『わかった。大至急、そちらに一式送ろう』
「ありがとうございます」
課長の言葉に明久が頭を下げると、課長は真剣な様子で
『ところで明久……優子ちゃんの下着』
「通信終わり」
明久はなにを言おうとしたのかを予想して、強制的に通信を終わらせた
その時、ドアが勢いよく開き
「大変です!」
「大変なのじゃ!!」
小燕と秀吉の二人が、慌てた様子で駆け込んできた
「どうした? 木下、桜庭」
「なにがあったの?」
西村と明久が問い掛けると、二人は息を整えてから
「Fクラスの男子たちが女子風呂に覗きに行くって!」
「雄二の制止を振り切って、駆けていったのじゃ!!」
二人の言葉に、その場に居た全員に衝撃が走った
「あの馬鹿共は!!」
「雄二は!?」
西村は歯噛みして、明久は二人に問い掛けた
「雄二ならば、椿原先生たちに援軍を頼みに行ったのじゃ!」
全員はその言葉を聞くと、立ち上がった
今回の合宿には、新しく赴任してきた教師陣も全員来ている
学園長曰く、召喚獣の扱いに慣れてほしいかららしい
それが今回は功を奏したようだ
「お前ら、全員で向かえ! 俺もすぐに行く!!」
「「「「「はい!!」」」」」
西村の号令に従い、明久たちは女子風呂防衛のために駈け出した