僕とSPと召喚獣   作:京勇樹

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俺には、これが限界でした
許してください


終わる戦い。そして……

午後八時四十分

 

合宿所の大広間では、覗き男子達と有志女子・Aクラス男子・先生連合が戦っていた

 

数においては、覗き男子達のほうが多い

 

だが、数の差を物ともせずに連合部隊は戦っていた

 

その理由は

 

「Aクラス男子、絶対に一人で戦うな! 最低でも、二人一組(ツーマンセル)を維持しろ! 有志女子部隊は先生達と組んで戦え! 特別監視員部隊は敵の横っ腹を横撃! 勢いを削げ!!」

 

雄二が指揮を執っていたからだ

 

かつて、最低辺のFクラスを格上に勝たした雄二の采配は、この場でも活かされた

 

人数で勝る覗き男子達に対し、半分程の人数で抑えている

 

「坂本! 久保の現国の点数がヤバいぞ!」

 

前線で戦っているAクラス男子の一人が、雄二に報告してきた

 

雄二は反射的に、久保の点数を確認した

 

現代国語

 

Aクラス 久保利光 56点

 

雄二は点数を確認すると、数瞬考えて

 

「春日崎先生、久保のフォローを! 久保、下がって補給しろ!」

 

と指示を出した

 

すると、後方でフィールドを展開していた雪乃が前に出て

 

「わかったわ。試獣召喚(サモン)!」

 

キーワードを唱えて、召喚獣を召喚した

 

「春日崎先生、すいません」

 

「任せなさい」

 

久保がすまなそうに頭を下げると、雪乃は微笑みながら久保を攻撃しようとした男子の召喚獣を倒した

 

現代国語

 

学年主任補佐 春日崎雪乃 697点

 

その点数は学年主任補佐なだけあり、高橋女史に匹敵していた

 

なお、高橋女史は補給テストに回っていて、その補佐に綾小路若菜が居る

 

「いっしゃあぁぁ!」

 

修史がブレードトンファーを振り回して穴を開けると

 

「遅いです!」

 

「切り捨てるよ!」

 

その穴を、設子と有里が広げて

 

「はあ!」

 

「破っ!」

 

優子と小燕の二人が、更に被害を拡大させる

 

それにより、覗き男子達の士気は低下して連携が乱れ出した

 

「このバカ共が! 俺の指示に従えっての!」

 

それをなんとか、根本が立て直そうとするが

 

「うるせぇ!」

 

「だったら、てめぇも戦え!」

 

根本の指示に従わず、各自が勝手に戦っており、挙句の果てには根本を前線に蹴りだした

 

「このっ……試獣召喚(サモン)!!」

 

根本は蹴りだした男子に文句を言おうとしたが、目の前に敵が現れたので慌てて召喚獣を召喚した

 

現代国語

 

Aクラス 真田設子 396点

 

VS

 

Bクラス代表 根本恭二 189点

 

さて、皆さんはお気づきだろうか

 

特別監視員部隊の中に、明久が居ないことを

 

この時、明久が居たのは地下だった

 

正確に言うならば、女子大浴場少し手前である

 

明久は名目上、最後の砦という扱いである

 

狭い一本道ならば、明久一人で十分ということらしい

 

だが、実際はと言うと

 

「このブタ野郎! よくもお姉様を、あんな薄汚い部屋に閉じ込めましたね!?」

 

「いやあ、彼女たちは自業自得だし」

 

カメラ設置者たる、清水美春と敵対していた

 

清水美春を呼び出した方法は、意外と簡単

 

彼女が仕掛けた盗聴器が有ると分かっていながら、明久が特別反省房の鍵を持っていて、しかも、一人でこの場所に居ると話すだけ

 

もちろん、表向きに明久が鍵を持ってると知っているのは西村と特別監視員のみ。となっている

 

「さあ、貴様があの部屋の鍵を持っているのは知ってます! とっとと寄越しなさい!」

 

人に物を頼む態度とは思えない口調で清水が言うと、明久は軽く首を傾げて

 

「はて? なんで、僕が特別反省房の鍵を持ってるって知ってるの?」

 

と問い掛けた

 

なお、この時に明久の右手は背後に回っている

 

「そんなの簡単です! 盗聴器で聞いたから……って、しまった!?」

 

清水は言ってはイケないことを口走ったことを自覚して慌てるが、時は既に遅し

 

「うん……懇切丁寧な自爆をありがとう。きっちりと、録音させてもらったよ」

 

明久はそう言いながら、背後に回していた右手を出した

 

その手の中には、小型のボイスレコーダーが有った

 

「それを渡しなさい!」

 

そう言いながら清水が飛びかかるが、明久は軽く避けて

 

「まず、これでプライバシーの侵害が判明したね。まだ余罪があるだろうけど」

 

と言うと、明久は小型ボイスレコーダーをポケットにしまい込み

 

「それに、今回は僕もかなり頭に来てるんだよね……」

 

と言うと、清水を睨んだ

 

すると、清水はどこからか刃渡り15cmは有りそうな刃物を取り出し

 

「こうなったら、貴様を殺して、証拠を奪います!」

 

と言って、明久に向けてナイフを突きつけた

 

それを見た明久は、腰を低くして

 

「銃刀法違反と殺人未遂も追加かな……まあ、手加減する理由は無くなったね」

 

と言いながら、軽く構えた

 

「何をゴチャゴチャと……これで死になさい!」

 

明久の言葉がしゃくに障ったのか、清水はナイフを逆手に持って明久に飛びかかった

 

明久はそれを冷静に見極めると、左手の甲でナイフを受け流してから、右足による回し蹴りを清水の側頭部に叩き込んだ

 

その衝撃で、清水は壁に叩き付けられて気絶した

 

明久は清水に近づくと、両手両足を結束バンドで拘束した

 

「君みたいな自分勝手な人が、一番迷惑なんだよ。少しは反省してもらうよ」

 

明久はそう言うと、西村と連絡を取るために携帯を取り出した

 

「あ、西村先生ですか? 僕です。清水さんは捕縛しました。これから、特別反省房に放り込んで、すぐに応援に行きます。では」

 

明久は携帯をしまうと、清水の襟首を掴んで引きずりだした

 

そして、特別反省房のドアを開けた直後、姫路と島田の二人が飛びかかってきたが、清水を放り投げてぶつけると、すぐに鍵を締めた

 

「さってと、あとは覗き部隊の殲滅だな。まぁ、修兄と設姉が居るから大丈夫だろうけど」

 

明久はそう呟くと、仲間たちの下へと駈け出した

 

明久が到着した数分後、覗き部隊は全滅した

 

その後、男子たちは西村監視の下、反省文を書かされた

 

その間、明久達はお風呂に入ることになった

 

なお、明久は個室があてがわれた

 

理由は、推して知るべし

 

明久の全身の傷を、見せるわけにはいかないからだ

 

雄二や秀吉たちは知っているが、他の生徒たちは一切知らない

 

それなのに、全身の傷を見たら驚愕して騒ぎ出すのは目に見えている

 

それを考慮した西村が、明久用に個室をあてがったのだ

 

そして、明久が入浴していると

 

「お、おじゃまします……」

 

なぜか、優子が入ってきた

 

「なんでさぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

明久の驚愕はごもっともである

 

因みに、優子は体にタオルを巻いている(はい、そこ。残念がらない)

 

さらに言うと、この個室は中からも鍵を掛けられる仕組みになっているが、明久はまさか入ってくるとは微塵も思ってなかったので、掛けていなかった

 

すると、明久の驚愕を無視して、優子はタオルを取って

 

「せ、背中洗ってあげる……」

 

と、顔を赤くしながら言った

 

「ま、待ってね、優子さん……なんで、こんなことを?」

 

とりあえず、明久は優子がなぜこんな行動を取ったのか問い掛けた

 

すると、優子は恥ずかしそうに

 

「い、今まで守ってもらってたから……そのお礼に……」

 

顔をタオルで隠しながら、そう言った

 

「……優子さんが考えたの?」

 

明久がそう問い掛けると、優子は首を振って

 

「……穂村さんが教えてくれたの……」

 

「有里さーーーーん!?」

 

明久は、あとで元凶を殴ろうと心に誓った

 

しかも、出ようにも出口は優子の背後

 

(これは……積んだなぁ……)

 

明久は深々とため息を吐くと、優子に対して

 

「とりあえず、腰にタオル巻きたいから、向こう向いててくれる?」

 

とお願いした

 

優子はすぐさま、後ろを向いた

 

明久は優子が振り向いたのを確認すると、腰にタオルを巻いてから椅子に座った

 

「それじゃあ、お願いします……」

 

明久がそう言ったので、優子の背中洗いタイムは始まった

 

数分後

 

「本当に……傷だらけね……」

 

優子は明久の背中を洗いながら、そう呟いた

 

「まぁ、あの空港テロの傷痕だよ」

 

明久がそう言うと、優子はある傷に指を這わせて

 

「それだけじゃないわよね……これ、切り傷だし、こっちは丸いから……銃創かしら?」

 

と、呟いた

 

優子の呟きを聞いて、明久は驚いた

 

「凄いや。よくわかったね」

 

「切り傷は、昔に保健委員をやった時に見たことがあるもの。銃創はなんとなくだけどね」

 

優子はそう言うと、明久の背中に指を這わせ続けた

 

「本当に、傷だらけ……」

 

優子はそう言うと、明久の背中に額を当てた

 

「優子さん?」

 

優子の行動を不思議に思い、明久が問い掛けると

 

「明久くんは……どうして、そんなに傷だらけになりながらも、守り続けるの……?」

 

優子がそう問い掛けてきた

 

「それは……もう誰にも、あんな思いをしてほしくないから……」

 

明久がそう言うと、優子は頷いて

 

「それは知ってる……けど、明久くん……後悔してるんじゃないかな。自分だけが生き残ったことを」

 

優子のその言葉に、明久は瞠目した

 

「別に、後悔するのが悪いとは言わないけど……それで明久くんが傷ついて倒れたら、亡くなった明久くんのご家族はどう思うかしら……」

 

優子のその言葉に、明久はなにも言えなかった

 

「少なくとも、あたしは悲しい……明久くんが居るのが、当たり前になってるから明久くんが居なくなったら、悲しい……」

 

「優子さん……」

 

明久が背後に振り向くと同時に、優子は顔を上げて

 

「だから、明久くん……少しは自分を大事にしてよ……」

 

涙を滲ませながら、そう言った

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

翌日

 

合宿も終わり、全員は帰ることとなった

 

とはいえ、姫路、島田、清水の三名は保護者を呼び出して直接引き渡しである

 

三人の詳しい処分は、追って通達される手はずである

 

そして、明久と優子がそろって歩いていると

 

「吉井、すまんが補習室のプリントを運ぶのを手伝ってくれるか?」

 

姿は見えないが、背後の曲がり角から西村の声が聞こえた

 

「はい、わかりました。すぐに向います!」

 

明久がそう返答すると、曲がり角の床にあった影が消えた

 

「仕方ないか……優子さん、修兄たちと一緒に居てね。僕は補習室に行くから」

 

明久はそう言うと、補習室の方へと向かった

 

優子は明久を見送ると、明久が呼んだのだろう。迎えに来た修史と一緒に、バスの止まってる場所へと向かった

 

そして、優子はバスの近くに来て固まった

 

「西村先生……先ほど、明久くんを呼んでませんでしたか?」

 

そこには、明久を呼んだはずの西村が居た

 

「吉井を? 俺は知らんぞ?」

 

西村の態度は、完全に知らないというものだった

 

「待って……それじゃあ、さっきのは!?」

 

優子は嫌な予感がして、走り出した

 

背後から修史の呼ぶ声が聞こえたが、優子は無視して走り続けた

 

(なんで? 嫌な予感が止まらない……)

 

優子は何人かの生徒とぶつかるが、止まらずに走り続けた

 

そして補習室の前に到着すると、優子はドアを勢いよく開けた

 

その直後、優子の鼻を鉄の匂いが満たした

 

「明久くん……?」

 

補習室の中は暗く、奥まで見えなかった

 

優子が呼ぶが、返事はない

 

優子は手探りでスイッチを探し、押した

 

その直後、優子の視界に信じたくない光景が入った

 

「あ、明久くん……?」

 

部屋の奥では、全身血まみれになった明久が

 

「明久くん?」

 

自身の血で出来た血だまりの中に

 

「明久くん!!」

 

倒れていた

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