僕とSPと召喚獣   作:京勇樹

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大変お待たせしました
僕とSPと召喚獣、最終回です!



エピローグ 未来へ

「明久くん!」

 

優子は涙を滲ませながら、倒れている明久を呼んだ

 

だが、明久は動く気配すらない

 

そんな中、大野は興味ない様子で小型拳銃

 

デリンジャーの銃身を倒して、薬莢を捨てると新しい弾丸を装填しながら優子に近づき

 

「これで、終わりだ」

 

と言いながら、銃口を突き付け引き鉄を引こうとした

 

だが、そのタイミングでドアが勢い良く開いた

 

「優子、無事か!?」

 

「姉上、無茶しないでほしいのじゃ!!」

 

ドアの向こうから現れたのは、修史を筆頭としたアイギスメンバーと秀吉だった

 

「やっぱり、あなただったのね……大野真琴」

 

有里はそう言いながら、銃口を向けた

 

だが、優子が居るために引き鉄は引けなかった

 

「今来ても、遅いぞ……お前達の仲間ならば、そこでくたばってる」

 

大野がそう言ったことで、修史達は明久が倒れていることに気づいた

 

「なっ! 明久!?」

 

「明久!?」

 

修史達が明久が倒れていることに驚いている隙に、大野は優子の首に腕を回し、側頭部に銃口を突き付けた

 

その動きに慌てて修史達も銃口を向けるが、どうすることも出来なかった

 

「退かないと、この場で撃つぞ?」

 

大野の言葉に、修史達はどうすればいいのか迷っていた

 

すると、優子が涙混じりに

 

「お願い……撃って……お願いっ!」

 

と叫ぶように懇願するが、修史達には撃てる訳がなかった

 

「はっ! 本当に、アイギスは甘いな……」

 

大野はそう言いながら、ジリジリと動き出した

 

その光景に、誰もが逃げられるのか……と諦めかけた

 

まさに、その時だった

 

「逃がすかよっ!!」

 

突然、大野の背後で明久がそう言いながら立ち上がった

 

「なっ!? 貴様!?」

 

「明久!?」

 

全員が驚いている間に、明久は大野の銃を持ってる腕を捻り上げて銃を落とさせると、優子を突き飛ばし、足で膝裏を蹴り倒すと、すぐさま結束バンドで両腕を拘束した

 

「くそっ! 離せ!!」

 

大野は暴れるが、明久は無視して足も拘束した

 

「大野真琴……お前を捕縛する」

 

明久はそう宣言すると、驚いた表情で座り込んでいる優子に手を伸ばし

 

「終わったよ……優子さん」

 

と言いながら、微笑んだ

 

そんな明久を見上げながら、優子は呆然としていた

 

すると、修史達が駆け寄ってきて

 

「明久、お前、大丈夫なのか?」

 

「出血しているみたいだが……」

 

と修史と設子が問いかけると、明久は懐に手を入れて

 

「これですよ」

 

と言って取り出したのは、弾丸がめり込んだ一枚の金属製ネームプレートだった

 

「あっ……それ」

 

優子はそれを見て、固まった

 

なぜなら、それは如月グランドパークで二人おそろいで買ったネームプレートだったからだ

 

弾丸はちょうど、それのど真ん中にめり込んでいだのだ

 

「あいつの銃がデリンジャーで助かりましたよ」

 

明久は落ちているデリンジャーを見ながら、そう言った

 

デリンジャーは27口径の超小型拳銃である

 

デリンジャーは携帯性を重視して開発されたために、威力はかなり弱い

 

しかも、銃身の短さと螺旋定紋(ライフリング)も無いために、撃つ時は至近距離か密着状態を推奨されている

 

大野がデリンジャーを撃った時は、約9メートル程離れていた

 

これは、普通の拳銃ならば間違い無く即死と言っても過言ではない距離である

 

だが、デリンジャーでは威力が落ちるのに十分過ぎたのだ

 

その結果、発射された弾丸はネームプレートにめり込むだけで済んだのだ

 

とはいえ、ネームプレートが無かったり、少しでもネームプレートがズレていたら助からなかっただろう

 

「じゃあ、その血は?」

 

「ああ、傷口が開いちゃったんですよ」

 

有里からの問い掛けに、明久が答えた直後

 

修史が明久の肩をガッシリと掴んだ

 

「明久……お前、病院を脱走したんだってなぁ?」

 

修史の言葉を聞いて、明久は固まった

 

「病院の先生から、緊急の通信が来たんだが……」

 

「逃走!」

 

修史が最後まで言い切る前に、明久は逃げようとした

 

だが、そう簡単にはいかなかった

 

「逃がさんよ、明久」

 

「ワイヤー!?」

 

設子が一瞬にして、明久をワイヤーで拘束したのである

 

そして、設子は修史にワイヤーの端を渡した

 

修史はワイヤーの端を握ると、ニヤリとした笑みを浮かべて

 

「では、ドナドナの刑に処する」

 

と言うと、明久を引きずり出した

 

明久はワイヤーで縛られた時点で諦めたらしく、無抵抗で引きずられていき、有里と設子の二人が大野の脇に手を入れて運んだ

 

この後、明久は病院に連れ戻されて医者に説教された

 

なお、なぜ修史達があの場に来たのかと言うと、まず秀吉が自宅に優子が居ないことに気づいて有里に連絡

 

その後、有里がムッツリーニから優子が文月学園に居るという情報を入手したのである

 

ちなみに、なぜムッツリーニが知っていたのかというと、優子の制服に発信機が付けられていたのだ

 

最後に優子は、一人で行動したことを修史に怒られた

 

そして、二日後の夕方

 

明久は一人病室で、ぼんやりと夕焼け空を眺めていた

 

その時、ドアがノックされた

 

「どうぞー」

 

明久が入るように促すと、入ってきたのは優子だった

 

「あ、優子さん……」

 

「怪我、大丈夫?」

 

優子が問い掛けると、明久は頷いて

 

「まあ、一回縫合したのが銃撃で開いただけだから」

 

と言った

 

大野の銃撃を受けた時の出血の理由

 

それは、銃弾はネームプレートによって止められたがその時の衝撃で縫合されていた傷口が開いたのだ

 

明久は痛みで気絶しそうになりながらも、咄嗟にそれを利用することにしたのだ

 

しかも、ナイスタイミングで修史達も駆けつけた

 

ゆえに、明久はチャンスを待ったのだ

 

大野の意識と視線が、自身から完全に外れるのを

 

それがまさに、あのタイミングだったのだ

 

大野の視線は修史達に向けられて、もう少しで逃げられると意識も緩んだあの瞬間を明久は待っていたのだ

 

そして、明久の目論見は見事に成功して大野を捕まえられたのだ

 

「無事で良かった……」

 

明久の説明を聞いて、優子は涙声で呟いた

 

「優子さん……」

 

「あたしのせいで、明久くんが死んじゃったら、どうしようって……」

 

優子のあの嘆願は、明久を死なせたと思った優子の言葉だった

 

せめて、自分もろとも大野を撃ち殺してと

 

「ごめんね、心配かけて……」

 

明久は謝りながら、優子を抱き寄せた

 

抱き寄せられた優子は、明久の胸元で静かに泣き続けた

 

数分後、泣き止んだ優子は息を整えると

 

「ねぇ、明久くん……あの時の言葉は……本当?」

 

と問い掛けた

 

それは、優子を助けるために現れた時に言った言葉

 

「うん、本当だよ……」

 

明久が頷くと、優子は嬉しさからか涙が滲み出るがそれを指で拭い

 

「ねぇ、もう一回聞かせて?」

 

と言った

 

すると明久は、恥ずかしそうに頬を掻いて

 

「改めて言うとなると、かなり恥ずかしいね……」

 

と言うと、大きく深呼吸してから

 

「……僕、吉井明久は……あなた、木下優子さんが……大好きです……こんな僕で良ければ、付き合ってください」

 

と言うと、優子ははにかみながら

 

「はい……喜んで」

 

と返した

 

その後、二人は見つめ合うと自然と近づいて抱き合った

 

そして、二人の顔は少しずつ近づいていき、唇が重なった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして、時は流れて……

 

「遅い! やる気あんの!? 五周追加!!」

 

「「「ちくしょー!!」」」

 

アイギス私有地の訓練場では、明久の怒号と新人達の悲鳴が上がった

 

あれからの事を話すと、明久達は無事、護衛対象を護りきり無事に卒業した

 

なお、大野は設子と小燕の必死の説得により、ファランクスの機密情報を提供

 

それを基に、アイギスは他の探偵企業や警備会社などと連携して日本から再び、ファランクスを追い出すことに成功

 

更には、ファランクスに施設を提供していた汚職政治家な逮捕などにも繋がった

 

卒業後明久は、表向き用にアイギスに優子と共に就職した

 

なお、雄二は正式に翔子との婚約を決定

 

しかも、霧島財閥の関連企業に就職してメキメキと頭角を表して、若くしてとある企画の責任者に抜擢された

 

秀吉は有名な劇団に入って数ヶ月後にとある大物監督の目に留まり、俳優としてデビュー

 

今では、若手では一番有名な俳優として引っ張りだことなり、様々なドラマに出演

 

近く映画にも出る予定である

 

しかし、今でも度々男から告白されることがあるらしい

 

その度に、明久に泣きの電話をしてくるのが定番と化している

 

ムッツリーニこと康太は、神崎恭一郎からのヘッドハンティングによりアイギスに就職

 

今では、アイギス随一の諜報員として活躍している

 

そして、アイギスでは神崎恭一郎が課長から日本支部の責任者に抜擢され、代わりに修史が課長になり、それを設子が補佐している

 

だが、度々修史と神崎がくだらない口論からなる喧嘩をしているのが目撃されており、もはやアイギスの日常風景となっている

 

有里と小燕は引き続き、ガードとして活動している

 

そして、明久は新人達の教官とガードを兼任

 

明久が育てている新人達は、未来の卵だ

 

そして、優子は……

 

「明久、お義兄さん……じゃなかった、課長が呼んでるわよ」

 

と言いながら近寄ってきたのは、アイギスのサポートメンバーになった優子である

 

そんな優子の左手薬指には、キラリと輝く指輪があった

 

卒業後少しして、明久と優子は結婚

 

優子の現在の名前は《吉井優子》となっている

 

「ん、了解……」

 

優子の言葉に明久は頷くと、新人達に対して

 

「全員、走り終わったら休憩に入ってよし! ただし、サボったら休憩は無し!」

 

と告げると、優子に

 

「それと、優子はあまり動かないでよ……何のためにコレがあるのさ」

 

と言いながら、耳に付けてあるヘッドセットを軽く叩いた

 

「直接、明久に言いに来たかったのよ……ダメだった?」

 

明久の言葉に優子がそう言うと、明久は苦笑しながら

 

「ダメじゃないけど、お腹の子供には気をつけてよね」

 

と言った

 

そう、最近になってわかったのだが、優子のお腹の中には新しい命が宿っているのだ

 

「それで、課長はなんだって?」

 

「さあ……直接話すって言ってたから、任務じゃないかしら?」

 

明久からの問い掛けに、優子は首を傾げながら答えた

 

「そっか……それじゃあ、行きますか」

 

「ええ」

 

明久が手を差し出すと、優子は微笑みながらその手を握った

 

そして、二人揃って歩き出した

 

新しい未来へ向けて……

 

 




これにて、僕とSPと召喚獣の本編はおしまいです
ですが、作者の気まぐれや皆さんの要望があれば、おまけを投稿する予定です

それでは、これにて閉幕です

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