インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
あのクラス別対抗戦から数週間後の休日。
私は今、篠ノ之束に連絡を取っていた。
理由は簡単、あの事件の事だ。
おそらく束さんは関係ないだろうけど、束さんなら犯人の目星が付いてるかもと思ったからだ。
「…ん、繋がった。束さん?」
[ハロハロはの字の半蔵門!束さんだよぉ!!]
…通話終了ボタンへ手が伸びる。
[あー!?待って待って切らないで!!]
「じゃあ、ふざけるのは止めて?」
[わかったわかった!これからは束さん、真面目モードで行くね!]
…ホントに真面目にやってくれているのだろうか?
そんな事を思いつつ、私は質問をした。
「まず1つ、違うと思うけど一応確認。IS学園にあの無人ISを送り込んだのは束さん?」
[違うよ]
即答だった。
[いくら私でもあんな殺す気満々のえげつないの3体は流石にしないよ!せいぜい送ったとしてもゴーレムⅠを一体程度だよ!]
「なら、送り込んだのは誰か…目星付いてる?」
ここで私は本題を斬り出す。
すると束さんは、少しの間ウ〜ンと唸ったあとに。
[ごめん、調べてみたんだけど流石の束さんもわからないんだ。あのIS擬き、私のISとはまるで構造が違うんだよ]
「違うって…どんな感じに?」
[んー、あーちゃんにわかりやすく言うと…あれはACに近いんだ]
その言葉に、私は言葉を失った。
ACに似ている?
「似ているというのは…構造?」
[うん、なんというか…あーちゃんの使うネクストじゃなくて、ノーマルの方に似てるんだ。束さんはあーちゃんの世界の人じゃないから完全にはわからないけど、おそらく基本フレームはAC…それもあーちゃんの世界より少し進んでいるタイプだと追う]
「進んでいる…どういうふうに?」
[えーとね…あーちゃんに教えてもらったACの技術を、少し応用した見たいな構造って言えばわかるかな?ISで言うと、あーちゃんの世界の技術を第三世代、その無人ISは四世代って感じかな?]
その言葉を聞いてだいたい把握した。
つまりあれは私の世界の技術を少し発展させ、それをISのように使えるようにしたモノというわけか。
「理解はしたよ…でも誰が?」
[それが困ってるんだよねぇ〜。この束さんでもあーちゃんの世界の技術は真似するの大変なのに、それを応用させているんだからさ。認めるのは癪だけど、下手すれば私よりも天才だよ?それ作った人。本当に人かどうか疑わしくなるくらい]
「なるほどね…わかった。束さんありがとうございました」
[いいっていいって!あーちゃんからの連絡なら、私はいつでもウェルカムだよぉ!!またのご連絡お待ちしてるよ〜!!]
そう言って、通話は切れた。
…天災篠ノ之束にここまで言わせる何者か。
なにか…もしかしたら…私はまた、イレギュラーとして、【首輪付き】として空を翔ぶことになる。
そんな、考えたくもない思いが頭を過ぎってしまった。
それに、結局聞きそびれたけど…千冬さんが言ったあの言葉…
【死神部隊】
あのACのようなISに乗っていた彼女は一体…
そんな時、私のいるこの部屋に朝日が差し込んできた。
そういえば、今日は休日なのに何も予定を考えていなかったな。
そんな朝日を見て、私はふと…
「どうかあの空を、また首輪を外して翔ばないことを祈ります」
そう呟いていた。
ここはどこだ…
私は確か、一夏を助けに。
誘拐された弟を助けに…
ああ、そうだった。
もう一夏は助けた後だったな…
じゃあなんで私は倒れているんだ?
頭や腹から血を流して、なんで私は今にも泣きそうな弟の顔を見ているんだ?
『ブリュンヒルデ…世界最強……この程度なのか?お前も、私を満足させれぬのか?』
声が聞こえる…
黒と赤の機体が見える…
龍のエンブレムが見える…
恐ろしい敵が見える…
死神が、私を見ている…
『J、無駄な会話は止めようか?はやく殺せ。可能性は、全て消去する』
もう一人、男の声がする。
死神が私に銃を向ける。
私は死ぬのか?
弟の目の前で死ぬのか?
またあの子に辛い思いをさせてしまうのか?
『了解した…ブリュンヒルデ、いや織斑千冬…もう少し、楽しみたかったぞ…【黒い鳥】の出来損ない』
「やめろおおおおお!!」
一夏!?
一夏が飛び出す、銃を向けたあの死神と私の間に。
やめろ、やめてくれ一夏。
そんなことをしたらお前は…
『J』
『…すまないが、障害も消去する』
死神が引き金を引いた。
1発の銃声に乗って、1発の鉛の弾丸が、私の弟の体を引き裂いて……
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
大きな声を叫びあげ、私は起き上がった…
「ハァハァ…夢、か?」
周囲にはいつもの私の部屋があった。
いつも通りの、私一人きりの部屋が。
いつもと違うのは、私自身が寝汗でベトベトだった事だ。
嫌な夢を、
「…クソ」
あの死神のエンブレムをしたアレにあったあのクラス対抗戦から、この夢ばかり見続けている。
あの日、あの忌々しい第二回モンドグロッソのあの日の夢を…
いや、もうさっさと忘れよう…あんな夢、いちいち気にしていたら気が滅入る。
いつも通り、そこら辺に脱ぎ散らかしたスーツに手を伸ばす。
だが、ふとカレンダーをみて…
「…そういえば今日は休日か……」
スーツから手を引いた。
「…飲むか…」
一人呟いて、冷蔵庫へ向かう。
一夏が知ったら怒鳴りそうだ。
だが今は、今だけは、一夏に会いたくないと思った。
「会ったら、泣いてしまいそうだよ…一夏…」
そう言って、取ったばかりの安い缶ビールの蓋を開けた。
俺、織斑一夏!
今、俺はすっげぇヤバイ状況に置かれてる。
ほんと洒落にならない状況。
何故かって…
「今日一夏は私と稽古をするんだ!」
「いいえ、一夏さんは私と今日はお買い物をするのですの!…ですよね一夏さん?」
「うぇ!?いや、それは、えっと…」
こういう状況だ。
どういう理由か朝起きて、飯食って、さあ今日は何しようかと悩んでいた時に。
「一夏、今日はお前の鈍った体をシゴいて元に戻すぞ!」
と箒がやって来て、そこに割り込むようにセシリアが…
「あら一夏さん?私とのお買い物の約束は?」
と言い出して…
というか俺、いつの間にセシリアと買い物の約束したんだ?
とにかく、何でか今2人はいがみあっているんだ。
今日は普通にゴロゴロするのも良いかなと思っていたから、出来れば箒の稽古は勘弁願いたい。
セシリアも別に俺じゃなくても買い物の付き添い人は他にいるだろうし…
はぁ、どうしてこうなった。
「一夏!」「一夏さん!」
「「どっちがいいんだ(いいんですよ!!)!!」」
「今日は放って置いてくえれぇ!!助けてくれぇ千冬姉、アリサァ!!」
「阿呆らし…ハッ!こ、これが正妻の余裕なのかしら!」
そんな時、大部遠くから鈴のそんな呟きな聞こえた気がした…
鈴、いるなら助けてくれよぉ…
そんな今日は、とっても晴天だった。
とある国・某所
「いや!来ないで、来ないでぇ!!」
1人のIS操縦者が、ズタボロのラファールに乗って必死で何かから逃げていた。
何かは、赤と黒の色をしたあるエンブレムをした全身装甲のISだった。
ただ、その体の一部は血で汚れていた。
無機質な機械光を照らして、ただ何の躊躇もなく無抵抗な女性の背を撃ち抜いていく。
終いには彼女のISのシールドエネルギーが底をついてしまった。
「あ、あ、あぁ…!!」
彼女へゆっくり近づく
それは彼女の前で止まり、そして眉間に一丁の銃口を突き付けた。
「お前で12人目…恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ」
その言葉を彼女が聞く事は無かった。