インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
あれから数日、学年別トーナメント戦前日のこと。
私は何時ものように屋上でのんびり過ごしていた。
やっぱりここはいい。
暖かいし、風も気持ちいい。
この世界だからこそできる贅沢。
…幸せだ。
「おい」
そんな幸せを感じていた矢先、頭の上から声を掛けられた。
くいっと頭だけ向ける。
ラウラだ。
私の色素の抜けた
「なに?」
急に話しかけられ、幸せに浸っていた私としては、少しだけ不満だったけれど友達だ(向こうは違うだろうけど)。
そんなことで怒りはしないし、気にすることでもない。
むしろラウラから声をかけてくるなんて、驚きだった。
だけど、理由を聞いてすぐ納得した。
「私と明日のマッチを組め、友達なんだろ?」
「…別にいいよ、私で良いなら」
「そうか、では申請しておく」
会話終了。
今日のラウラとの会話はこれだけだった。
本当に、これだけで終わった。
この世界の普通なら、ここから色々な話題に発展していくんだろうけど、私にはこの世界での流行りはわからないし、ラウラが
正直手詰まりだった…いや、一つだけあった。
私にも出来る話題。
いや、でもこれは大分踏み入った話になるな。
多分拒否されるかもしれない。
…まあ今話すことでもないし、拒否されたところで絶対聞かないといけないわけじゃないしね。
でも大会か…この世界だからこそできるよね。
毎回毎回、前の世界を掛け合いに出すけど…それほどこの世界が平和で、綺麗だと思うから…
「ん…もう行こうかな」
1人ボソッと呟いて、私は屋上を後にした。
ちなみに途中でよった購買部でチョコレートパンが売れきれだったことに涙ぐんだのは私だけではないはず…
学年別トーナメント当日。
それぞれのタッグの控え室にて、私とラウラは座っていた。
お互いに語ることもなく、ただ静かに。
だけど、だからといってこの前なにも言わないということは無い。
第1回戦の相手は同じ1組の娘たち…名前は覚えてないや。
モブ子さんとモブ実さんでいいや…
自分でも酷いなぁと思うけど、まあ今はいい。
いくら絶対的に勝てるであろう相手であっても、油断はしてはいけない。
やるなら徹底的に。
この世界では、騙して悪いと言って殺しにくる人たちも今のところはいない。
だからこそ、やり過ぎなのかもしれないが、ここばっかりは譲れなかった。
そう、だから…私はだまり続けず、ラウラに作戦を持ちかけるのであった…
作戦内容を話してから数秒後。
「…悪くは無いが、そんな必要無い相手だろうに」
以外な事に、ラウラは真面目に私の意見を聞いてくれた。
そして、流石にしないでも勝てるだろうと言ってきたが、やはり私にはそれは無理だった。
「油断は…敗北につながる……一夏以外に負けたい?」
「何を馬鹿なことを、あのような奴に私が負けると思うのか?お前は強いだろうが、あいつは弱い…教官の汚点だ…だが、念の為というのもある、今回は聞こう」
流石に一夏の事を持ち出すと嫌に素直になった。
その執念には感服するけど、やっぱり殺すという発想に至って欲しくなかったな。
まあ、昔の私なら「あ、そう」で終わらしていたかもしれないけど。
でも、昔は昔。
だからこそ私は前の作戦に続いて、この作戦をラウラに提示したんだ。
即「ふざけてるのか!」と返されたけど、私は真面目に考えたんだ。
そもそも、ラウラにこの事も教えておきたかったし。
ISは確かに兵器にされてしまっているけど、元はこういうことも出来る夢の物だったてことを。
そしてやってきた第1回戦。
モブ子さんとモブ実さんは既にアリーナにいた。
恐らく直ぐにリタイアするかも知れないから、長くこのアリーナに居たかったんだろう。
そんな雰囲気がヒシヒシ感じられるもの。
「いきなり専用機持ちとやらされる私らって、ほんと貧乏くじ引いたよねぇ…はぁ」
「やるしか無いわよモブ実、専用機無しでもやれる所を見せてやるのよ!!」
負けるとわかっていても、そのやる気は満々みたいだね。
そうさ、そうじゃないと少しつまらない。
それに、ラウラにISの真価を教えるにはこれくらいいい子達が相手じゃないと難しい。
本当に、今回の組み合わせには救われた。
「それじゃあラウラ、行こう」
「貴様に言われずともだ…」
その言葉とともにブザーが鳴り響く。
最初に飛び出したのはモブ子さんだった。
彼女のISはラファール、バランスと取れたいい機体。
彼女の狙いは私みたい。
いや、打鉄に乗ったモブ実さんも私狙いだね。
一人確実に落とすってことだね、いい作戦。
もし同じ性能でって言われたら、こちら側はかなり厳しい作戦だ。
でも、それを逆手に取って私は作戦1を建ててあった。
「こちらにもいるのだぞ?」
「わきゃぁ!!やっぱそう上手く行かなーい!!」
ラウラの打ち出したレールガンが、打鉄の実態シールドにぶち当たり派手な閃光と爆音を打ち鳴らす。
体勢が崩れたモブ実さんは、これにて半強制的にラウラと闘うことに。
そして残ったラファールことモブ子さんが私と戦う事になるけど…
「あ、え、ちょ!見えない見えない!!」
瞬間加速を織り交ぜた高速起動で、巨体である私の
このまま5連装ガトリングか、レーザーガンて終わらせてもいいんだけど、それはラウラに教えることが出来ない。
だからこそ、一瞬だけ私はスピードを落とした…
それにつられて、ほぼ反射神経だけでモブ実さんがミサイルを引っ張りたし、打ち出す。
「それを待ってた」
私はあえてミサイルを撃墜せずに上空まで引きつける…そしてそこで
「わぁ…」
「綺麗…花火みたい」
「…………」
果たして、吐き出されたフレアは螺旋を描きながら落ちていき、ミサイルもそれにつられて落ちていく。
それは1輪の太華のようで、美しく艶やか花を作る。
やがてミサイルは爆ぜ、だがそれさえも華麗に見えた。
案の定観客ほか、モブ実さん1行…そしてラウラも一瞬だけ見とれた。
だけどラウラは直ぐに頭を降った後復帰し。
「ふざけたことをっ!」
そう呟いた後、すぐ様攻撃を再開した。
呆気にとられていたモブ子さんはそれを直激。
モブ実さんも『月光』で私が切りかかりに行く。
「千冬さんの見様見真似だけど…!」
「ちょ、おま、きゃああああああ!!!?」
一線、ただの一線だけど。
瞬間加速と月光の火力の乗った横斬りなんて、専用機でも無理なのに量産ISが耐えれるわけがなくて…
それと同時に向こうも決着がついたようで。
『試合終了!!ボーデヴィッヒ&カーチスペア勝利!!』
なぜ私はあの時見とれた。
戦いの最中、私はなぜあの様なものに見とれた。
自身の声に自問する。
強さこそがすべてのはずだ、美しさなどいらぬはずだ。
喜びなどいらぬはずだ。
事実、私はそうやって戦ってきた。
にも関わらず、私は先の試合であの作戦の成功によって生まれた螺旋の華に見とれた。
作戦は、最初の一人狙いをさせないための散開からの迎撃、最後のがミサイルを全て吐かせて且つ相手の実力を出させて勝つという、作戦とも言えない理由の解らない物だった。
だが…
本当になぜ私はあれに見とれた…下らないと切り捨てれば良かったあれに何故?
それだけが木霊し、そして…あの最後の一線に教官を重ねて見えた…
「…まさかな」
「ラウラ、お疲れ様」
人が考えている時にやってきたその本人。
だがもうどうでも良かった。
決勝戦まで織斑が来ればそれでよし、来なければ私が手を下す必要すらなかった弱者であったと…
いや、最早それさえももう考えられなかった。
なぜこいつに教官を重ねたのか…疑問でしかなかった。