インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
やっとラウラ編が終わる…
もう少しで第一部完だ…
「行きます!」
アリサの声がアリーナに響き渡る。
それを皮切りにACそして織斑千冬は動き出す。
アリサと千冬が取った即席作戦は至って簡単、左右からの挟み撃ちである。
単純ではあるが完成されており、故に崩しにくい作戦。
片方に集中すれば片方がやって来る。
そういう作戦はアリサがリンクスの時から使い古された戦法である。
しかしそれでいて成功度が高いこれを、ACは冷静に対処してみせる。
最初にOBで左から突っ込んで来るアリサの月光を、
同じく月光で防ぎ、残った千冬のブレードをなんと脚部の足底部で受け止める。
いや受け止めるというより足の装甲に突き刺させたのだ。
「なに!?」
中身の操縦者のことをまるで考えていない行動に、千冬も多少動揺するがそこは元ブリュンヒルデ。
あの異常なパルスライフルの銃口が自身に向けられる前に、突き刺さっていることを利用して一気に切り上げる。
足底部は見事に縦に切り裂かれる、中身のラウラが小柄でなければ足を切っていたかもしれなかったが、それはそれと今は考えられる状況でもないとの判断だろう。
一方鍔迫り合い状態だったアリサもまた、開いているレーザー砲をACの腹部に押し当てる。
しかしやはりAC、足底部を引き裂かれながらも動じず、今度はポットの様な巨大なブースターから何かを射出する。
それと同時に2人には大量の攻撃警報が鳴り響く。
その打ち出されたものはオービットと呼ばれ、所謂セシリアと同じビットである。
「なんだと!?」
「これは…」
その二人の言葉が終わると同時にビットの総攻撃が始まる。
それは青い閃光の雨のようで、しかし間違いなく命を奪う光であった。
既に拘束状態を逃れていた千冬には回避は容易かったが、未だ鍔迫り合いを止められぬアリサは絶交の的であった。
PAはレーザー兵器は減衰させるのが限界で、実弾のように無効化はできない。
PAを貫通してきたレーザーは、減衰しているにも関わらずシールドエネルギーをゴリゴリと削っていく。
「っう!!」
流石に受けづければどうなるか予想が出来ていたアリサは、ACの腹をブーストで強化した前蹴りを放ち距離を突き放す。
しかしそれも予想内とでも言うように、ACは大きく身を引き、しかしビットはアリサに張り付くように配置する。
だがアリサ、これをQBすることによりギリギリで回避。
いくつか掠ったレーザーによりエネルギーが削れるが、無視できるものとして処理。
一方織斑千冬、蹴り飛ばされたACに追撃を与えんと打鉄とは思えない速度で切りかかる。
その一太刀は正しく神速、世界を取った一撃。
しかしそれも流石はAIと言ったところか、見えぬ一撃さえあっさりと、まるで宙に浮く紙のように交わし、寧ろ例のパルスライフルで反撃に出る。
だが世界を取った女はこの程度で捕えられるほど甘くはない。
それを理解していたのかいないのか
、パルスを放ちながら垂直ミサイルを撃ち込む。
その数4~6、誘導性もかなり高くパルスを回避した直後に必ず飛んでくる。
最初はミサイルを切り捨てて対処していたが、流石に繰り返していけばミサイル発射とパルス発射のタイムラグが無くなっていき殆ど交わせなくなってくる。
「っく、打鉄が!?私の反応速度に付いてこれてないのか…」
そして最後には唐突に打鉄からエラーの文字が大量に出はじめる。
理由は簡単だ、織斑千冬の凄まじい操作には打鉄では追いつけないのだ。
何時もならばこうは行かないが今は本気での命の取り合い故に、全力で言ったことが原因だった。
まさか最初からこれが狙いか!?織斑千冬は戦慄した。
人工知能であるはずのあのACに、そのまるで人間の心理を完全に突いてくるような行動に。
パターンがまるであるようで無いように見える行動に。
そして動けなくなった打鉄目掛けて、ACはパルスライフルを構えるが…
「私を忘れないでほしい…」
ライフルが切断される、それはアリサの月光だった。
だが切れたのはライフルだけだ、本体は無傷。
ACが一瞬の攻撃を受けたことによる硬直から復活するやいなや、アリサへと標的を変える。
そこからの行動は速かった。
ライフルを斬られたことなど気にもしていないというように右ブレードを展開し、左手をアリサに向ける。
すると今度はパルスの代わりに無数の弾丸が飛び出てくる。
チェーンガンだ、手首部に仕込んであったらしい。
「冗談…きついよ…」
パルスライフルとは違いPAで減衰は出来るが、忘れないで欲しい。
PAとは極端に説明すればコジマ粒子を膜状に展開することによって生まれるバリアである。
即ち連続での攻撃を受ければ禿げるのだ。
簡潔に伝えるならば、PAはマシンガンのような連射武器とは非常に相性が悪い。
そしてそのマシンガンの上位互換とも言えるチェーンガンとなるとその危険性は嫌でもわかるだろう。
更には止めと言わんばかりにビットまで射出してくる。
織斑一夏、シャルル・デュノアは撃墜。
織斑千冬は機体のオーバーロード。
ある種の万事休すであった。
だが、だからといって諦めるわけには行かない。
この状態で負けるものならば撃墜されてる2人が危険となる。
「AA、もう1発行ける?」
アリサは自問する。
シールドエネルギー残量とPAリチャージの完了が出来ているのかの確認を行う。
PAのチャージは完了、AAは打てるが打てば倒せなかった場合蜂の巣にされる可能性が跳ね上がる。
だがこれ以外に決定打があるのか、そう自問するもアリサにはこれ以外の打開案は無かった。
即座にQBを起こし、赤白い炎を吹きながら一気にACに迫る。
迎え撃つようにACの腹部が浮上する。
あの時私にゼロ距離で放とうとしたレーザー砲のようななにかだ。
アリサの思考の先に、打たれた場合の未来が見えるが言ってられないとばかりに更にQBを噴かす。
最早一かバチかの賭けであった。
「これで…倒れろっ!」
腹部の光が増し、AAの予備放出と混ざり世界が彩られ…
そしてアリーナに爆音が響き渡った…
気がつけば私は暗い闇のような空間に漂っていた。
何も無い、まるで宇宙のような空間。
しかし、だがそこには私以外にも一人いた。
ラウラだった…
まるで胎児のように丸くなり、外界からの情報を遮断している。
話しかける余地などない、そう思える中、私は何故か声をかけてあげたくなった。
そうして私が声をかける直前であった、彼女が口を開いたのは。
「なぜ、お前はそんなに強いんだ」
その声は闇のなか、強く確りと響いた。
その問に私は暫し黙り考える。
私が強いか…
私は強くなどない、そう伝えるべきなのかもしれない。
いやそう伝えるべきだ。
彼女の答えは、もう見えているはずだ。
ならその後押しをして上げるべきだろう。
彼女の金と赤の瞳をしかと見て、私は口を開いた。
「一人じゃ、なくなったから」
「なに?」
「力は強さじゃない…手段、強さは別…私はそれを知っている」
「なら、強さとはなんだ…力ではないならなんだ」
「それはもう…あなたは知っている」
そこまで答え、しかしまだ話し足りないその時に、私の意識が薄れ始める。
どうやらこの暗闇から抜け出すのかもしれない。
「どうやら、もう終わりのようだね…またねラウラ、また後で」
そこまで呟き、そして私の意識はそこで途絶えた。