インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
5/15 見知らぬ誰かさんの誤字報告による、修正をしました。
薄れ行く意識の中、私は自分の世界を考えた。
ゲームのラスボスみたいな存在、それはこの世界その物。
それを倒したいとあがいていたORCAの皆。
それの一部だった企業連。
でも私はどちらでもない、どちらも滅ぼした。
実はラスボス何てものは、その時代が決めるものでも、私があのときラスボスだったのかもしれない。
案外悪くはないかも、自分の欲望の為だけに動いてきた私が最後になって、死ぬことによって人類の役に立つかもしれないのだから。
ああ、そんな傲慢な私には、水底がお似合いだろう。
このまま、水の底で……
……おかしい、いつまでたっても浸水してこない。
コックピット周辺は、さっきの戦闘でヒビが入っていたはず、水が入って来ないのはおかしい。
それになんだろう、この硬い地面の様なものは。
ここはアレサのコックピットの中のはず、なぜ私は横になっているの?
わからない、わからないならどうすればいいか…
目を開ければ良いんだ。
「う、うぅ……」
「うんあ、お~起きた起きた。束さん、君もう死んでるかと思ったよ~」
「うぁ……?」
奇妙な、聴いたことの無い人の声。
それが頭上から聞こえてきた。
それが私の瞼を開けるきっかけとなった。
そして、その視界には……
既に消えてしまった筈の、美しい海と森、空があった。
え……なにこれ…
嘘、でしょう…何故ある、こんなにも美しい景色が!?
「えっと~、混乱しているとこ悪いけど、スルーするの止めてくれないかな?」
そしてそこで、私はその声の主に顔を向けた。
まるで童謡に出てきそうな、珍妙なウサ耳を付けた、スタイル抜群の女。
私に向けて、それは疑問と好奇の目を向けていた。
それが、私と篠ノ之束との会合だった。
「なるほど、つまり君の世界はとんでもないことになってた訳だね~、そのネクストってやつのせいで」
しばらくして、私は彼女ど話をした。
まず、この世界がどのような世界か。
私のいた世界とどう違うのか。
まずこの世界にはコジマ粒子が存在せず、よってネクストも存在していない。
代わりに彼女『篠ノ之束』が開発、製作したインフィニット・ストラトス通称ISがある。
もとは宇宙へ行くためのマルチフォーマルスーツだったらしいが、今はもっぱら兵器として見られてしまってるらしい。
正直私には興味がない物だ。
まあ、彼女は私の話にとても興味があるようだけどね…
「へぇ!!そのトーラスって企業、束さんと気が合いそう!ねぇ、もっと教えてあーちゃん!」
ちなみにあーちゃんとは私、アリサ・ヴァン・カーチスのことらしい…勝手に渾名を付けられた。
「ごめん、これで私の記憶は全部」
「あ~そっか、それは残念…ところで、あーちゃん」
「なんだい?」
突然の束からの質問、私は彼女が何を聞きたいのか、聴いてみることにした。
その時、彼女の衝撃的発言に驚くことになるとは…全く思いも知らずに。
「あーちゃんのネクスト、作ってあげようか?」
「あーちゃん、調子はどうだい?」
「良好だよ…」
「ゴーレムやあーちゃんから聞き出した未知の知識から弾き出した機体構成、あーちゃん監修のもと作り出した擬似コジマ粒子、そしてあーちゃんの『首輪付き』としての実力…あーちゃんの話が全部本当なら、この数のゴーレム…凌げる筈だよね?」
あれから三日後、何を考えたのか束はネクストを模倣したISを作ってみたくなったらしく、かといってそんな得体の知れないものに自分が乗ってみたくなるわけないので、私を乗せてみたと言うわけだ。
確かに、私には戦いしか存在価値がない。
戦うためだけに生まれたような存在だ。
だから力を得ることは悪くはないのだが…まさか再現してくれるとはね、アレサを。
武装も、私が対ホワイト・グリントの為だけに揃えたものになっている。
ここまで、話を聞いただけで再現できるとは…やはり天災…末恐ろしい。
しかも驚くべきことは擬似コジマ粒子と言うものだ。
これはコジマ粒子に限りなく近い粒子で、オリジナルほどの威力や爆発力はないが、環境汚染を一切しないと言う、夢のような物質だ。
これが…あの世界にあったらな…
で、今私はこの再現アレサの性能テストをすることになっている。
私の話が本当なら、私がどれ程危険な存在かわかっているのであろう。
少なくとも一億以上の民間人を虐殺し、その後五対一で相手を一方的に蹂躙するその危険性を。
それを試してみたいのだろう。
今、この戦闘ドームには彼女が用意した試作無人ISゴーレムがざっと三十体いる。
これを全て撃破するのが目的らしい。
「はい、じゃあ、あーちゃん準備できたかな?」
「いつでも良いよ」
ISの知識や操作方法は全て彼女から教わった。
はっきりいって、ネクストと運用方法がかなり近かったお陰ですぐに飲み込めた。
あとは、それにどこまで私がやれるかだ。
「そんじゃあーちゃん、始めるよ?…三、ニ、一!」
束の言葉が終わると同時に、ゴーレムが一斉に動き出す。
まず、前方にいたゴーレム十体がビームを打ち出す。
すかさず
ビームが回避されるや否や、即座に前方十体が近接を仕掛けに来る。
後方残り二十体はビーム砲撃と言う、なかなかの連携攻撃を仕掛けてきた。
普通なら近接に意思を取られてる間に砲撃を受けるだろう。
普通の思考なら…あいにく、私の頭はイカれてる。
普通では無いことをやってのける。
ガトリング砲を掃射しながら距離を取らず、むしろ接近してくる十体に近接する。
内一体がビーム砲撃をしようとする。
この距離ならかわせないと判断したのだろうが、それは無意味だ。
ドヒャア!!
その音と共に、私は消えるように翔ぶ。
なるほど、瞬間加速だけでなくQBまで付けてくれたか…
本当に驚いたものだ、となるとOBやPAも再現してくれているだろう。
すかさずガトリング砲をゴーレムに接射する。
ガルルルルッ!と独特の音と共に一気にゴーレムのシールドエネルギーが蒸発、そのまま蜂の巣にされた。
「あと…29」
残りのゴーレムがビーム砲撃を一斉に行う。
だがそんなもの当たるわけがない、私は知っているからだ。
あれに比べれば、この砲撃なぞ下手くそが乗ったノーマルのライフル程に恐れるに足らない。
むしろこの位置ならば、誤射を狙える…
そして私はわざと動きを止め、ゴーレムの真正面にたった。
気味が悪いゴーレムの複眼が怪しく輝く。
そして腕を持ち上げ、ビーム砲撃を開始した…が、当然私はそれを狙っており、打ち出されたビームは味方であるゴーレムを撃ち抜いた。
そして撃った反動で動けないゴーレムに零距離でレーザーライフルを発射。
これで二機同時撃破、あと27。
ここまで来ると、コジマ兵器も再現されているか気になってきた。
私は結構コジマ兵器には頼ってきた口だから、再現されているなら使ってみたい。
さて、どうなるか…
そうして私はコジマキャノンをチャージし始めた。
私、篠ノ之束は驚愕している。
たまには研究の息抜きに海に何か建設してみようかなと、秘密研究所から出てみると、海岸に女の子が倒れていた。
いつもなら、たかが凡人見捨てるのだけれども、なぜかその子は放っておく気になれなかった。
その子から、ちーちゃんこと織斑千冬に似た匂いを感じたからだろうか、とにかくその子だけは他人の気がしなかったのだ。
そして今、拾ってよかったと痛感する。
その子は私にとっての宝箱だった。
どうやらその子はにわかには信じがたいけど、別世界の人間だったのだ。
ネクスト、アーマードコア、アームズフォート、クレイドル、コジマ粒子、そして彼女『人類種の天敵』。
私の好奇はそれを知るたびに狂喜した。
こんな下らない、何もかも知り尽くした世界と違う、全く何も知らない世界の知識。
それを知ったことが途方なく嬉しかった。
だから、彼女にはお礼としてISを授けた。
彼女の世界の兵器、ネクストに限りなく近いISを。
正直、ネクストには驚かされた。
私の
最初は否定した、でも…作れば作るほどそのネクストがイカれた兵器なことが解っていって。
そんなイカれた兵器を、本当に人が操れるか疑わしくなってきて…彼女に乗ってもらった。
正直、ISとは言え可能な限りネクストを再現したものだ、体にかかる負担は通常のISをはるかに凌ぐ。
乗れるわけがない…そう思っていた。
機体のスペックだけなら、ゴーレムを三十体くらい余裕だが…果たして…
結果は、彼女の完勝だった。
ゴーレム三十体相手でも、かすり傷どころか一発も当てることが出来なかった。
まだゴーレムのAIが未完成なこともあるが、それ以上に彼女が強かった。
機体構成を完全に把握し、まるで手足のようにあの子を使いこなしていた。
後半なんて、肩についていた弾速がかなり遅いキャノンを使い、それを動きまくるゴーレムに当てたのだ。
その誘爆に巻き込まれ、接近していた7体のゴーレム全てが爆散。
最後に、彼女の話にあったAAとやらで、残っていた二十体を完全消滅で終わった。
「あ、あぁ…凄い、凄いよぉ…」
まるで三歳児の様なことをぼやきながら、私は興奮の最中だった。
同時に恐ろしくもあった。
少なくとも、自分の存在意義の為だけに、一億以上の民間人を虐殺した彼女が、どれ程強いかも分かってしまったからだ。
この弱い十五歳の少女に、もう一度そのような惨事を起こしては欲しくない。
そんなことをされれば、ちーちゃんはともかく私の妹の箒やちーちゃんの弟の一夏は一溜まりもない。
この時私は、彼女を、彼女『アリサ・ヴァン・カーチス』として育てることにした。
首輪付きとしてでなく、人類種の天敵としてでもなく、彼女自身の新たな存在価値を見いだしてあげるために。
だから、ちーちゃんには悪いけど、こんな子を育てるにはどんな場所が良いか、それを私は知っている。
だからこの場所に、彼女を預けることにした。
この場所ならば、安心できるからだ。
そう考え付いた私は、ポケットから携帯を取りだし、ある人へ電話をかけた。
私の、最愛の親友へ。
「もしもし、はろはーちーちゃん!ちょ、まって切らないで!ちょっと預かってほしい子がいるんだ!」