インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
まだまだ行けるぜ、メルツェェェェル!!
あれから一夜明け、翌日。
私たちは現在浜辺でISのパック整備をしていた。
元々臨海学校はそれが目的なんだから、当たり前だけれども。
専用機持ち以外は今まで通りの練習をしてるけど、専用機は外付けパックを見ている。
例えばセシリアは高速戦闘を可能にするものだし、シャルロッテは純粋に武器の増加。
そしてラウラと私はと言うと…
「むぅ…どうすればいいのだこれは」
私はそもそもISであり、ACでもあるからパックは束さん無しだと出来ないので無しは当然。
しかし同じく束さん無しでは厳しい状態にラウラは陥ってた。
謎のACになってしまったシュバルツ・レーゲ。
あの戦闘の後、本国に回収されて色々調べたらしいけど、殆どがブラックボックス化していて見れず、しかもラウラ以外が触れないようになってたらしい。
幾らか専用機でも、メンテナンスように普通なら触られる。
しかし今回のそれは触ろうとすれば、意思を持ってるように拒絶。
私でも触ろうとすれば勝手に起動して、バルカンの銃口を向けられた。
そんなこんなで本国は解析を諦めざるをえなかった。
そして厄介払いとでも言うように、ラウラにこの変形したシュバルツ・レーゲを専用機にさせた。
その結果、ラウラはこのISに乗らざるをえなかったのだが…
「おお!?か、過敏に反応しすぎ…おおっつ、潰れる!?」
ご覧の通り、今までのISの常識を根底から覆すと言っても過言でないほど過敏なセンサーを持っており、しかも人が乗ることを想定してない動きをするため、乗ってるラウラがGで圧死しかけることもある。
ラウラが私と近い存在(厳密に言えば私は天然、ラウラは人工だが)だからそんなデタラメなGに耐えれるけど、普通の人間なら絶対防御ありきでも危険極まりない。
それに武装も大半がクセの凝り固まったようなものばかり。
特にオービットと腹部に搭載されてたアサルトキャノン。
そう、私に撃ち放とうとしていたあのキャノン砲。
コジマ粒子に指方性を持たせて圧縮発射する砲なんだけれど、それも発射時に搭乗者腹部に大きなダメージを与えるようで、殆ど使用禁止に近い扱いになってる。
オービットに至っては、停止結界を使ってたラウラさえ苦戦するようで、ここはセシリアに現在教えてもらってる(かなりしんどそうにしてたけど)
さらに私たちとの戦闘で使わなかった機能、変形。
こちらはどうやら変形時に間違いなく搭乗者が死ぬタイプらしく、欠陥としか言えなかったが。
もしこれがISでなければ、ACだったならば使っていただろう。
それにあとから分かったが、あの時のこの機体は全力ではなかったらしい。
ラウラ曰く「私という【足枷】が乗っていたから、私をすぐ圧死させないためにある程度ブーストを減らしていた」らしい。
流石に搭乗者が死ねばISは止まる。
それを防ぐためというが、もしそれを考慮しないであのACISが動いていたなら…
「考えたくない……」
実質四人がかりで挑んで辛勝だった。
結末なんて火を見るより明らかだ。
だけれど、逆を言えばだ。
努力すればラウラも超えるのは難しいが、あの動きを行うのは理論上できるということで…
「だぁぁ!!!!?」
…パック整備の必要が無いため生まれた暇時間、今必死に練習していた。
「ラウラ、大丈夫?」
「御姉様、大丈夫です……しかし、辛い…少し左に回避行動とすれば、吹っ飛ぶように左に行ってしまう。過敏だけならともかく、性能も良すぎる」
「……確かに」
ACとして考えても明らか異常なこの性能。
一体なんのためにこの機体はあるのだろうか。
謎に雁字搦めにされてる気分。
胸がモヤモヤとする。
そんな時、向こうの方が騒がしくなった。
確かあの辺は一夏と箒がいたはず。
「…ちょっと行ってくる」
「ああ、いってら…ぬぉが!?」
相変わらず苦戦するラウラを置いていくのは気が引けるが、好奇心に任せて、私はその場をあとにした。
結論からいえば、私は呆然とすることになった。
そこに付けば、不思議の国のアリス。
その絵本から飛び出したかのような服を着た、あの篠ノ之束が織斑千冬にヘッドロックを受けていたから。
…というか千冬さんも束さんも何してるの。
あ、束さんと目が合った。
「ああ!あーちゃん助けて、ちっひーが束さんの頭を潰そうとするぅ〜!」
「千…織斑先生、状況教えて…」
「あぁん酷い!」
嘆く束さんをスルーして、千冬さんに状況を説明してもらう。
千冬さんも困惑した表情で話してくれた。
なんでも箒の誕生日らしく、束さんが専用機をプレゼントしに来たらしい。
それでそのついでに色々ドタバタしてたと。
「へぇ…」
「あー!そうそう、あーちゃんにも用があるんだ!」
「え、私?」
まさかのシフトチェンジに、少し困惑する。
そんなことつゆ知らずと言った様子で、束ねさんが指を鳴らせば、人参型のロケットが降ってくる。
轟音とともに着陸した(というか墜落した)ロケットは、やがてゆっくりと開き、中を覗かせた。
「じゃーん!!あーちゃんの拡張パック、やっと出来たよ!!」
その中身を見て、私は懐かしさと同時に嫌な顔になっただろう。
中には、元の世界で色々お世話になった【アレ】かあった。
「束さん…これ」
それしか言えなかった。
当たり前だ、まさかこれを作るなんて。
【VOB】、ACを高速突入させるための外付けブースター。
しかしその正体はもはやACを弾頭にしたロケット。
高G耐性のある私でも、移動時何度か死にかけたり、途中で爆散したり、捨て駒のように使われた時にも装着してたりと、ろくな思い出のない品。
まともな思い出なんて、あのアームズフォートに突っ込んだ時くら…いやあれも大概かな。
「ごめんね…これはすぐ作れたけど、束さんでも武器とかはできなかったよ」
少し申し訳なさそうに謝る束さん。
いやいやVOBをすぐ作るって言うのも大概だと思うよ。
流石天災と言ったところかな、でも流石に話伝いで武器は厳しいみたい。
いや、話伝いでアレサやVOBも…やめよう、堂々巡りだ。
「あ、それから最近仲良い娘いるでしょ?その娘も連れてきて!」
その言葉に反応したのは千冬さんだ。
驚愕と言った表情で束さんを見る。
「ラウラのこと?」
一応確認を取るように束さんに聞く。
すると満面の笑みでうんと答えてくれた。
なんでまたラウラに興味を持ったのか疑問だけど、言われた通りにラウラを連れてくることにした。
ラウラには篠ノ之束さんが呼んでると伝えれば、疑問の顔になりつつ付いてきてくれた。
「それじゃあラウラウ、IS見せてー!」
「ら、ラウラウ?は、はい」
そう言ってラウラは例のISを起動する。
すると束さんは高速で何かをし始める。
速すぎて何をしてるのかさっぱり分からないけど、しばらくしてその正体がわかった。
「ふふふーん!実物さえあればねー!」
その言葉を最後に、束さんが何かするのをやめる。
するとラウラが驚いた表情になり、空へと舞い上がる。
「おお!!動く、ちゃんと私の感覚で動くぞ!?」
…驚いた、まさかあの短時間で、あの拒絶するISを調整したの。
「そこは天災束さんですからー、敵対反応を消すなんて容易いのだ!エッヘン!!」
バルンと自身の胸を揺らしながら答える。
「これで【私の方】もできそうだよ」
少し気になる発言をする束さん。
そう呟いた後、私の方を振り向いて、束さんは何かを言おうとする。
…なんだろう、凄い嫌な予感が……
「ねえあーちゃん、私と戦わない?」
最初その言葉を聞いた時は、私の耳がおかしくなったのかと思った。
私以外の皆も、様々な反応ではあったけど、皆が驚愕していた。
「何…束さん」
開いた口が塞がらないとはこの事かな。
未だに満面の笑みを浮かべる束さん、正直今の状態だと不気味。
そんな束さんが口を開く。
「知りたいんだ、あーちゃんが【今】、どこまで戦えるか。【首輪】を外さずにどこまでやれるのか」
【首輪】、その単語に私は反応した。
もしかして束さん、私が【私】に戻ることを懸念してくれてるのか。
それを裏付けるかのように、束さんの表情は真剣そのもの。
初めて見た束さんの真面目な顔だった。
「わかった…でも束さんもISに乗るの?」
「もちろん!まあ…あーちゃんがよく知ってるのに乗るけど」
またも気になる言葉を残して、束さんは1歩下がる。
既に周りは大騒ぎに近い状態だ。
なんせあの篠ノ之束が【戦う】と口にしたんだから。
もちろん千冬さんも猛反対と言った様子で、今にも口に出そうとしてた。
「ごめん、千冬さん。反対しないで」
私は咄嗟に声が出た。
何を言ってるだと千冬さんの怒号に近い言葉が響く。
それでも私はそれにNOと答えた。
「必要な……事だから」
「……わかった」
それについに千冬さんが折れた。
一夏も心配そうに私を見てる。
だけれど、心配しないでと伝えた。
「束さん、いいよ…やろう?」
「よっしゃ!じゃあ早速やろうか!!」
そう言って、束さんは私の手を取って、浜辺へと走り出すのだった。
私と束さんの、奇妙な戦闘は、こうして始まろうとしていた…