インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活   作:しじる

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mission35 似たもの同士【アリサとラウラ】

飛び立った御姉様を追いかけたい気持ちを抑えて、私たちは教官と篠ノ之束の話を聞くことにした。

それは、御姉様にまつわる、重大な話らしい。

 

「まずみんなに聞くよ、【平行世界】って信じる?」

 

篠ノ之束がいきなり訳の分からないことを言い出す。

いつもなら一蹴する言葉、しかし篠ノ之束の目は真剣そのものだった。

 

「信じるか信じないかは問わない、だがこれから話すことは真実だ。そして私と束だけが知る秘密だ」

 

教官も同じように、これ以上ないほどに真剣な表情で言葉を出す。

そこから語られる物語は、文字通り心が裂けそうなほど酷いものであった。

年端も行かない少女が、身を売り生計を立て、やがては傭兵となり、様々な人々を殺していく。

それが御姉様の事だと気づくのにはあまり時間はかからなかった。

だからあの時、御姉様は力だけの無意味さを知っていたんだ…

だから私に告げたかったのか?

私のようになるなと…

そう考えているうちに、物語の機転が語られ始めた。

それは、御姉様が【怪物】になってしまうきっかけ。

 

「そうして、そいつはある男の話に乗るんだ。そいつは【クレイドル】を落とさないかと持ちかけた。そいつは暫く悩みに悩んだ後、共に過ごした相方の声を無視して、乗ったんだ」

 

私も含める皆が息を呑む。

だってそうだろう。

地上を捨てたとはいえ無実の、それも民間人の乗ってる方舟を破壊すると。

それは【殺す】ことと何ら変わらない。

7000メートル上空から墜落したら、ほぼ間違いなく死んでしまう。

御姉様はその話に乗ってしまったのか。

 

「でも、なんでですの!?」

 

セシリアが声を上げる。

彼女だけでない、この場にいる皆が聞きたかった。

その解答は…一人の少女の孤独を意味していた。

 

「……『必要とされたかったから』だそうだ。戦争の火種になって、ずっと…ずっと戦っていたかったからだと」

 

それを聞いて、私は胸が苦しくなった。

他のやつは分からない、だが私にはわかる。

私もそうだったからだ。

私ももしかしたら、御姉様のようになっていたのかもしれない。

御姉様…貴女は、私と一緒だったんだ。

生まれや育ちは違っても、同じ【独り】だったんだ。

 

「そうやって、そいつは【人類種の天敵】と呼ばれ、ある時は【黒い鳥】と呼ばれたらしい」

 

それだけ伝えて、教官は口を塞ぐ。

静寂があたりに伝わる。

最初に話し出したのは…私だった。

いや、話すというよりも動き出した。

 

「…どこへ行く」

 

教官から声が届く。

私は振り返ることなく教官に伝える。

 

「御姉様の元へ」

 

「死ぬぞ、今のアイツはあの時に戻った。強さも桁違いだ、歴戦の名将5人を真正面から纏めて相手にして圧勝してるんだぞ?」

 

「それでも…行きます。教官、命令でも、聞けません」

 

行かなければいけない、私は御姉様の元へ行かなければならない。

もしその話が本当なら、御姉様はまだ…戻ってこられる。

まだ戻ってこれる場所がある。

 

「御姉様は、【独り】じゃない。【一人】なんだ…私たち【一人一人】なんだ!」

 

そうだ、御姉様はまた寂しさに埋もれてるんだ。

今行かなくていつ行くんだ!

 

「御姉様は【獣】じゃない!【人間】だ!」

 

パンッと乾いた音が私の頬に刺さる。

それは教官の平手打ちだった。

皆が唖然となり、私も一瞬あっけに取られた。

だけれども、その意味はすぐに分かった。

教官の目が伝えていた。

 

「頭は冴えたか?」

 

「…はい!」

 

「……行ってこい」

 

「お、織斑先生!!」

 

皆の声を待たず、私は飛び出した。

浜辺へと飛び出し、あのISを起動する。

篠ノ之束の調整があっても、相変わらず操作が難しいコイツ。

しかしなぜが今日は素直に動いた。

そして、こんな声が頭に響いた。

 

『あれは秩序を乱すもの、お前はそれを守るのか?』

 

「秩序?それが御姉様を守るのか?守らないだろう…御姉様を守れるのは秩序じゃない、同じ【人】だ。人だけだ」

 

声に反論する、声は続けて語り出す。

 

『それがお前の法か?お前の意志か?』

 

「あぁ、そうだ!」

 

『……あれはイレギュラーではないのか?』

 

「人類種の天敵がそうだと言うならそうだろうが、例えそうだとしても、御姉様は御姉様だ。私の知ってる御姉様は、いつも不思議で、ふわふわしていて、チョコレートを妙に愛していて、誰よりも強くて……誰よりも弱い人だ。だから私が支えるんだ、私が御姉様に支えられたように!!」

 

あらん限りの声を張り、それに叫ぶ。

それに反応してか、声は暫し沈黙をし、そしてこう語った。

 

『…再試験…イレギュラーとしての該当項目無し……排除対象登録解除、イレギュラー認定取り消し。【人】として認定』

 

「お、お前…」

 

まだコイツは御姉様を消そうとしてたのか…

それに冷汗をかくも、続く言葉で私は希望を持つ。

 

『人である以上、秩序の下、護らなければならない』

 

「…!ありがとう!!」

 

『セラフ』

 

声がなにか呟く。

私はそれに聞き返すと、声は…いや、私の【IS】は答えた。

 

『ナインボール・セラフ。私は秩序を護る者』

 

「セラフ…」

 

『プログラム、修正開始』

 

あの時のようにセラフが声を出す。

しかし、今度は前のように蝕まれる感覚ではない。

馴染んでいく感覚だ。

まるで最初から、私はこの姿だったのかと思うほど自然に、馴染んでいく。

 

『ターゲット、再登録。戦闘システム…グリーン』

 

視界の端に、銀の福音のモデルが表示され、ターゲットと登録される。

 

『…全システム、チェック終了』

 

言葉が終われば一気に体が軽くなる。

羽の様とはこの事か。

声はそれを最後に聞こえなくなる。

準備完了ということだろう。

 

「…御姉様、今行きます!」

 

ブースターを蒸す、すると今まで出せなかった猛スピードで発進する。

一瞬意識が飛びかけたが、それくらい出なければ御姉様に追いつけない。

凄まじい力を手に入れてしまったと、改めて戦慄しながらも、私は御姉様の元へと飛んでいくのであった…

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