インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活   作:しじる

43 / 60
推奨bgm Why Don't you came down


mission41 死神

それは、簪の家へのお泊まり会から三日後の話だった。

突然簪から電話がかかってきたんだ。

その時私は、ラウラと一緒にセラフの調整をしていた。

ラウラを認めたと言っても、セラフは元は無人機らしい。

当然人間が乗って動かすことは想定されてない。

その為、銀の福音戦以上の戦闘力を得るには、まずは調整が必要であった。

そんな調整のさなかであった。

 

「何簪…今私たち…」

 

言葉を返そうとした私は、続く簪の言葉に硬直した。

 

『お姉ちゃんが……お姉ちゃんが死にそうなの!!』

 

それを聞いて私たちはすぐ様飛び出した。

簪の姉こと生徒会長のことはあまり知らなくとも、簪の大切な姉であることは間違いなかった。

お泊まり会の時は険悪な感じだったけど、電話から聞こえるその声は、確かに安否を案ずる声であった。

 

「へ、生徒会長が!?」

 

半ば信じられない事だが事実のようで、私はラウラと共にすぐ様アリーナから飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更識楯無が生死を彷徨う数時間前。

 

 

更識楯無はある廃屋にいた。

それは近年ISの普及にて廃棄された、かつての兵器開発工場。

今は誰も居らず、政府の管轄下になったこの地に、更識楯無はある【依頼】でやって来ていた。

それは彼女のスマホに直接送られた【依頼】。

日本の防衛大臣の名前で送られたものだった。

 

【廃棄された兵器開発工場にて、謎の人影を見つけた。どこかの国の暗部やもしれない。危険性を考慮して、報酬はいつもの倍、かつ”前払い”させて頂く】

 

そう送られた【怪しげな人影の探索、及び状況次第では抹殺】の依頼。

対暗部用暗部の更識の名の元、この依頼は受けざるをえなかった。

 

(でも、こんなところで何をしていたのかしらね…)

 

驚く程に静かで、何も無いこの場所に、何を求めてそれが来たのか。

疑問を持つもゆっくりと、しかし確実に工場深部へと探索する。

しかし、妙に広がったエリアにて、楯無は反射的に後方へ跳ねる。

それに合わせて爆音、衝撃、爆発。

間一髪のところでIS【ミステリアス・レイディ】を展開し、危機をとりあえず脱する。

 

「何者?」

 

冷静さを保ち、自らを撃ったものを見つめる。

それはIS、黒とワインレッドに彩られ、肩にはハルバードを持った、尾が三本の獅子が描かれていた。

 

『更識刀奈(・・・)、目標など初めからない』

 

楯無ではなく、刀奈。

自身を、男の声(・・・)でそう呼ばれ、彼女は目を見開く。

なぜ自身のその名前を、そしてISになぜ男がと困惑するが、続く言葉で冷静を取り戻す。

 

『騙して悪いが……お前で27人目』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ』

 

殺気を感じ取り、彼女は大きく後退する。

先程まで彼女がいた場所は、謎のISの撃ち出したロケットによって爆散。

大量の石片が凶器となって飛び散るが、【ミステリアス・レイディ】から生み出される水によって阻まれる。

 

「私の命が欲しいわけ?そう簡単にはあげれないわよ!!」

 

水を纏った槍を手に持ち、敵に突撃する。

銃が効かないと悟ったか、敵もレーザーブレードを取り出し肉迫する。

水の槍と光の刃がかち合う。

その瞬間、楯無は悟った。

 

(こいつ、かなり強い!)

 

事実、次の瞬間には鍔迫り合いに競り負け、その光の刃が自身を焼こうと迫る。

そうはさせまいと、自らの手に蛇腹剣を粒子から取り出し切り返す。

しかしそれが当たることはなく、蛇腹剣は空を切り、敵は自身の頭上にいた。

そのままブーストを蒸し、自身を蹴るつもりだ。

そう考えた楯無、予想は当たり、楯無が前進し、敵は踏み抜きを外して背面を晒す。

 

「とったわ、【蒼流旋】!!」

 

間違いなく隙まみれの背中。

そこへ水を纏った槍を突き出し、撃破を狙う。

しかし敵は想像以上のことをしてくれた。

なんと自身の足元にロケットを打ち出したのだ。

結果反動と爆風の両方で機体が浮き上がり、槍は当たらず通り過ぎる。

自らの損害をまるで顧みない行動に、さすがの楯無の面食らう。

 

「えぇ!?」

 

そのまま逆に背面を取られてしまい、全ブーストを蒸した敵の蹴りが突き刺さる。

それは柔軟であり頑丈である水のヴェールを貫通し、彼女の背中へと強烈な打撃を与える。

 

「がっ!やるわね!」

 

背面をとられたが、焦ることはなく振り返り、槍を突き出す。

それはしかし敵は紙一重に交わし、またも蹴りを繰り出す。

馬鹿の一つ覚えにも見えるが、逆にこれが【一番通用する】と判断したのだろう。

先とは違う角度で、しかし確かに楯無のほんの僅かな隙をぬって打ち込む。

鉄がぶち当たる音が、誰もいない工場に響く。

絶対防御でも防ぎきれない打撃ダメージが、楯無の内蔵を痛めていく。

 

「ぐぅ!!くっ!」

 

どれだけ楯無が攻撃しても、どれだけ巧みに攻撃しても、敵は容易くそれを交わしてしまう。

そして執拗に、隙を見つけては蹴り抜いていく。

しかもなるべく同じ箇所を、的確に、機械のように正確に。

鉄の音と一緒に、楯無は自身の肉が潰されていく音が分かっていた。

 

「だけれど、これで【十分撒けた】」

 

しかし希望はまだある。

先程から防御にまわり、水のヴェールは大量に当たりに飛び散った。

しかし飛び散った水…否ナノマシンは消えた訳では無い。

 

「ねぇ貴方…【水蒸気爆発】って知ってるかしら!」

 

霧散したナノマシンが一気に蒸発し、生まれた爆発は全てに致命的打撃を与える。

清き激情(クリア・パッション)】、楯無の持つ技の中でも、かなりの高火力になるもので、条件が厳しくはあるがそれを持ってしても高い破壊力を持つ。

それを直撃した敵は、頭部や胸部が破損し、さらには吹っ飛び、壁面に叩きつけられた。

誰がどう見ても、ISの絶対防御ありでも即死であった。

 

「ふぅ…はぁ…危なかったわ……あれだけの腕前、何者…」

 

そこから楯無の言葉が続くことは無かった。

先程壁面に叩きつけられ、装甲の大半が吹っ飛んだはずのISが、何事も無かったかのように(・・・・・・・・)動き出し、完全に油断していた楯無の胸に、重量と速度の乗った蹴りを打ち込んだのだ。

その1発を、水のヴェールに覆われていない時、しかもシールドエネルギーがカラ寸前に、急所に貰ってしまった。

中途半端に絶対防御が発動し、蹴り潰されることは無かったが、衝撃は殺されず、そのまま瓦礫の山に突撃。

あまりの激痛に、意識があっという間にブラックアウトする。

トドメと言わんばかりに、敵はショットガンを突きつけるが、その前に何かを検知したのかそのまま去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様、お嬢様?!」

 

「楯無様!?誰が救援を!楯無様が!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が病院にたどり着いた時には、簪は抱きついてきた。

その瞳は涙に溢れていて、生徒会長が危険な状態であると語っていた。

何がどうなってこうなったか、誰もわからないらしい。

つまりこんなふうになってしまった理由は、今眠りについてる生徒会長以外誰もわからない。

本当に、何があったのだろう。

そんなことを考える間のなく、直後手術室の使用中ライトが消える。

中から、更識直属の医療者が出てくる。

 

「先生、お姉ちゃんは!!」

 

簪が真っ先に向かい問う。

それに対して、医療者の顔は暗い。

まさか…

 

「処置が間に合い、命に別状はありませんでしたが……」

 

まずそこは安心できた。

簪もそこは素直に嬉しかったが、【が】という言葉が不安を煽る。

【が】?【が】って何…何があったの。

 

「……みてもらった方が早いでしょう」

 

そうしてストレッチャーに乗って出てくる生徒会長。

1部を除いて、今にも動き出しそうに治っていた。

とても死にそうとは思えなかった。

そこは医療者の腕もあるのだろう。

そう、それでも【1部】を除いてなのだ。

その1部が、嫌にでも目を引く。

左足だ。

生徒会長の、膝から下。

無いのだ(・・・・・)

あるべきものがないのだ。

 

「先生…これは……」

 

「…ここに来た時には既に…ありませんでした(・・・・・・・・)

 

その言葉に、何も言えなくなる。

それはあまりにも残酷な真実。

更識楯無は死んだ。

人としてではなく、1人の【選手】として死んだ。

その事に、私たちは何も言うことは出来なかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石に更識を生かしたのは不味かったかな、N」

 

『申し訳ない』

 

「いや、いいよ…これはこれで面白いことに出来る。そろそろだと思ってたしね。そう、派手にお披露目といこうじゃないか!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。