インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
視点を戻し、織斑一夏。
俺は燃え盛る、かつて街だったものの中を突っ走る。
突入してみれば良くわかる。
辺り一面炎に包まれて、赤い何かがそこらじゅうに撒き散らされ、人が焼ける匂いがする。
人の悲鳴が轟き、でもそれさえ爆発音にかき消される。
地獄絵図とはこの事だった。
「くそ、何でこんな!!」
怒りが湧いてくる。
ここにいる人達が、一体何をしたっていうんだ。
ただ仕事を終えて、家路地に向かっていただけなのに、なんでこんな…こんなの。
「人の死に方じゃない…こんなの!」
爆発音と悲鳴はまだ続いている。
まだ無事の人もいるはずだ、助けないと。
そう思って速度を増していく。
すると目の前に1機のISが現れる。
先程降下していたISの一つだ。
『おいおい、もうお出ましか?早いな』
「お、男の声!?」
『お、この声ニュースで聞いた…てめえ織斑一夏か。学園のもんがもういるのかよ』
うんざりといった声でISは語る。
先へは通させてくれないみたいだ。
「どけよ、人がこのままじゃ死んじゃうだろう!!」
『死んでもらわないと困るから退けねぇんだよバーカ』
そう言って、男のISはライフルをこちらに向けて発砲してきた。
バスンッと轟音を何度もたてて、俺を殺そうと撃ちまくってくる。
当たるわけには行かない、同じように俺も回避を繰り出す。
『おいおい、さすが織斑千冬の弟様でさぁ…いい腕してんな坊主!!』
叫びながら男のISは急接近、わざわざ雪片の射程に入ってくれるのはありがたいけど…
強い!
この男、ISに乗ってる歴多いのか?
いやそんなことは無いはずだ、でなければ俺が【世界初のIS搭乗者】なんて言われないはず。
とすればまさか…
『あー、生身と違ってラグがあってうぜぇなぁ!』
やっぱりこいつ初心者か!
それでこの腕なのか…
それに恐怖しつつも、猛スピードで突っ込んでくる男。
その手にはパイルバンカーが持たれていた。
アレの威力はシャルとの模擬戦で散々味合わされた…
直撃はまずい!
だが、同時に零落白夜を打ち込むチャンス。
「うおおおお!!」
迫るパイルバンカーの恐怖を押しのけ、奴に突撃する。
男の方は正気かこいつと言った雰囲気を醸し出していたが、それでも突っ込んでくる。
お互いの武器が交差する超至近距離。
男のパイルバンカーが放たれる、俺はそれをギリギリ交わす。
射出された柱が顔を掠める。
顔面狙い、間違いなく【殺し】にかかっていたが、その程度じゃ…
「アリサが放ってた殺気に比べりゃ怖くない!!」
『ちぃ!?』
零落白夜を起動させ、男の土手っ腹に命中させる。
それは見事シールドエネルギーを蒸発させ、男のISを解除させた。
『何!?一撃で解除か!くそが』
「待てよ、話してもらうぞ、街をこんなにした理由を!」
俺は男を拘束しようとした。
しかしそれさえする暇もなく砲撃が俺に直撃した。
後頭部に当たったみたいだ、衝撃で視界が歪む。
『ありがてえ、俺は再起不能だ。報酬が惜しいが命は捨てられねぇ、任せたぞ!』
『さっさと行けよ負け犬、お前の報酬は俺が貰うぜ!』
また新しいIS、それもまた男。
ISはともかく男!?
「くそ、なんでこんなに男がISに!」
『てめえだけの特権は、もうないぜ織斑一夏!』
そう言いながら、背中らしき場所から腕を変形させる形で、巨大なブレードをそのISは作り出した。
明らかにあれは当たると不味い。
俺は本能的にそう思った。
『扱いずらいパーツだって話だが…最新型が負けるわけねぇだろぉぉぉ!!いくぞォォォォォ!!』
一夏とはぐれ、濛濛と黒煙が巻き上がる街で、私は一夏を探す。
あの馬鹿ここがどれだけ危ない場所か分かってるでしょうに!
人助けはあいつのいいところだけど…
「それで死んだら許さないからね…一夏!」
逃げゆく人々が見える。
どうやら私は街の外側に来てしまったみたい。
殆どの建物が崩壊して、道が分からなかったからこんなところに来ちゃった。
とすれば一夏なら真逆の中心部!
「あぁもう、反対側じゃない!!」
苛立ちが湧いてくるけど言ってる場合じゃない。
一夏が危ない、急がないと。
そう焦るあたしの前にそいつらは現れた。
ビルの上に2機のIS。
先程ヘリから降下していた30機の奴らだ!
『お、お客さんだぜ相棒』
『もうか?もうちょい楽したかったんだがな』
そいつらはビルから何かを打ち下ろしていたみたいで、私に気付くやいなやこちらに視線を合わせる。
亀のエンブレムとカジキのエンブレム、それぞれを持ったIS。
片方は巨大な盾と狙撃用キャノン砲、もう片方は両手にマシンガンを持っていた。
『そんじゃ逝ってこい相棒、適当に援護してやる』
『へーへー、いっつも俺は損な役回りでさぁ』
『そんなこと言ってると当てるぞ?』
『…お前がその程度なら、とっくの昔に降りてるさこんな役』
そう言いながら、カジキのエンブレムをしたIS…めんどくさい!カジキと亀でいいや!
カジキがマシンガンを撃ちながら突っ込んでくる。
私はそれを避けながら、かつ亀の狙撃を避けていく。
こんなところで時間なんか取ってられないのに!
「邪魔よあんたたち!!」
龍咆を撃ちつつ、私も接近する。
でも龍咆は全て避けられている。
しかしあいつら、弾丸が見えてないのにどうして龍咆を交わせるのよ!?
『視線でモロバレだせお嬢』
「くっ!」
ついに接近されて、カジキがマシンガンを投げ捨てて、槍のようなものを粒子化させる。
尖端に爆薬のようなものが付けられていて、突かれたらかなりダメージを受けそう…
でも!
「懐ぉ!!」
槍が突き出されると同時に飛び出し、カジキに抱きつく。
槍は空を切り、カジキは攻撃ができない。
『が!?このまな板、離せよ!?』
「誰がまな板だぁ!!!」
こいつ言ってはならんことを!!
よし殺そう!!
絶対殺す、絶対殺す!
捕まる場所を変えて、やつの足を掴みぶん回す。
所謂ジャイアントスイングだ。
『ぬぉあああ!?』
『おいおい相棒大丈夫か!?』
「ブッ殺す!!」
その勢いでぶん投げ、最大出力の龍咆を、脳天にぶち当てる。
吹っ飛ぶ衝撃は強くなり、そのまま亀に直撃。
逃げ遅れた亀を巻き込みビルの端へ。
『ぬぉぉ…あのお嬢』
『伸びてないでどけ相棒、ヤバいぞ!』
「うらぁぁ!!」
『あらぁ!?』
『ぉぉおおおおお!?』
双天牙月を連結させ、いつものように回し投擲ではなく、槍のように投擲する。
見事にまっすぐぶれなく飛んだ双天牙月は、固まった2機に直撃し、両者をビルから転落させるのであった。
「はぁはぁ…」
それを確認して、私は……自分の胸を見る。
やっぱり、IS学園にいるみんなよりちっさい…
いやラウラよりは!ラウラよりはあるはず!!
それでも…
「やっぱり一夏も、おっきい方がいいのかなぁ…はっ!」
何考えてるんだ私は、早く一夏を探さないと!
「一夏ぁー!!」
あの大きなブレードを装備したISを、すれ違い様に切り倒し、解除。
逃げ出す男、追いかけ問い詰める俺。
下手すりゃこっちが悪役ぽいが、そんなことも構ってられなかった。
俺は男を捕まえ問いただす。
「何でこんなことを!」
『知るか、俺は雇われただけさ。目に映るものぶっ壊せってな』
「誰がそんな!」
『財団さ、知らねぇのか?』
財団、財団ってどの財団だよ!
男の言葉に苛立ちが湧くが、それは一瞬で消えることになった。
男が消し飛んだのだ。
真っ赤な霧が俺の視界を覆う。
目の前に出来た肉塊に、思考がかき消される。
「ぇ……」
俺の真っ白になった思考なんてつゆ知らず、そいつは俺の側に降りてきた。
それあの時、クラス対抗戦の時に出てきたあのISと同じカラーリング。
肩に尾が3つ生えた獅子が、ハルバードを持ったエンブレム。
それを掲げたIS。
そいつのショットガンが煙を吹いていた。
『お喋りめ…』
「お前…」
『織斑一夏、お前で28人目』
『恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ』
男の声で語るそいつは、肩にあったロケット砲を打ち出す。
俺はそれを本能的に交わして、そいつに近づく。
許せなかった、なんの躊躇もなく人を殺せるこいつが。
アリサとは違う、感情もなく殺すこいつが。
奴も俺が近づくのを見て、ショットガンをしまい、レーザーブレードを取り出す。
そしてあっという間にお互い切合う距離に迫り、雪片とレーザーブレードが鍔迫り合いを起こす。
零落白夜はまだ使わない、今使ってレーザーブレードをかき消しても、かわされる気がしたんだ。
3、4と剣と剣がぶち当たる。
引いて銃を出したら切られる。
そんな脅迫じみた考えが自然と浮かぶ。
まだだ、まだ零落白夜は使うな。
5回目の鍔迫り合い、獅子のISが蹴り上げを行う。
俺の脇腹を狙ってた。
それを俺は空いた手で抑える。
衝撃で手が震える、絶対防御で防げない衝撃が痛みになる。
でも俺は、こいつには負けたくないと思ったんだ。
ガッチリと逃げられないように足を脇に固定する。
獅子のISがショットガンを粒子化する。
選択肢を誤ったな、そう俺は思った。
ほぼ本能だった、何故この時俺がこの選択を選べたか分からなかった。
でもこの選択以外を選んでたら、多分殺されていた。
そんな強い思いの元、俺は零落白夜を起動させ、レーザーブレードをかき消してそのショットガンを切り飛ばした。
「うおおおおおおおお!!!」
そのまま一刀、出力調整なんか頭になかった。
まっすぐ唐竹割りを繰り出し、目の前のそれを切り伏せた。
真っ二つになったそれからは、血の代わりにオイルのようななにかが吹き出し、俺の体を黒く染めた。
そして、それが地に伏せてから俺は気づいた。
…結果的に無人だったが、もし中に人がいたら…
「う、おえぇ!!」
想像して吐く、何故無人機だったのか。
そんな思考より、下手をしていたら人を殺していた。
それがたまらなく怖くて、正当防衛とは思えなかった。
「はぁ、はぁ…やったんだな…俺は」
改めて目の前に転がる、人と思っていた物を見る。
間違いなく無人機であった。
血の代わりに吹き出す黒がその証明であった。
『Nがやられた……選別の素養はありそうだ』
『3番機ダウン……素質あり、可能性と認識』
『ンフフフフ……因果なものだな、あの女の弟がか…』
『彼女の…弟か……』
『アハハハ!何にしても、面白くなってきたねぇ!!』
燃えゆく街の上空、複数の武装ヘリに吊られたIS。
それぞれが、それを見て言葉を漏らす。
そう、戦いは始まったばかりであった。
『あれは今は置いておけ、そろそろ来るよ』
財団が全機に連絡する。
それと同時に、地平線の彼方から複数のISが姿を現す。
日本の自衛隊、そのIS部隊だった。
『さて、傭兵たちの中にも候補者がいるか…じっくりと見てみようじゃないか…』