インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
財団による全世界への宣戦布告から3日。
世界は既に酷いことになっていた。
各国で、財団が販売し始めた【男性も、適正なしでも乗れるIS】や【その武装】は、戦争を求める傭兵たちが借金をしてまで買い漁り。
そのはけ口としてテロや紛争が起こり始めた。
ISが、完全な、誰でも使える兵器として売り出され始めた。
あのアメリカでさえ、もはや紛争が起きていない州はなかった。
その点日本は運が良かった。
女尊男卑が蔓延り、常にそういう動きをするものは、男女問わず監視されていた。
女が男を見張り、男が女を見張る。
互いが一切信頼していないからこそ、見かけ次第通報する。
皮肉にも女尊男卑が、テロ勃発を防いでいた。
そして私たちIS学園生とはというと…
「よし、専用機持ちは集まったな」
勿論、全員夏休みだろうが招集である。
一応セシリアと鈴は国に招集されたけど、私と一夏。
そしてシャルとラウラ、箒はこっち側に招集された。
IS学園の防衛はかなり高い。
内側からはともかく、外側からこれを叩くのはほぼ不可能と言われてる。
でも、束さんですら謎だった【女性しか使えない】を使えるようにする【財団】。
彼らにどこまで通用するか不安だ…
それとは別に、私は千冬さんに聞かなきゃならないことがあるしね。
一夏も同じことを聞きたそうだし。
多分、千冬さんはそれを私たちに教えるため、防衛も兼ねて招集したんだろう。
私たち四人を見やると、千冬さんは語り出す。
「いいか、これから話すことは…ずっと私が隠してきた真実だ。一夏でさえ忘れさせた記憶だ」
その言葉に反応する一夏。
忘れさせたとはどういうことなんだろう。
まったく同じことを一夏は聞き出した。
「忘れさせたってなんだよ千冬姉!」
「おり…いや今はいいか。そのままだ、お前に知られたくなかった真実だからだ。第2次モンドグロッソを覚えてるな」
そう言われて一夏は暗くなる。
たしか一夏が誘拐されて、それで千冬さんが試合を辞退、その後救援に向かってしまったという話だったはず。
ラウラから聞いた。
一夏も同じことを言ったが、千冬さんはそれに首を振った。
「そうだ公にはな、だがこれには裏と続きがあってな…」
そう、あの日。
一夏が攫われ、犯人が突きつけた要求は【私と戦うこと】という奇妙なものだった。
何にしても、私は大切な弟を捨てることは出来ず、試合を捨てて一夏を助けに行った。
そうして向かった先には、奴がいたんだ。
一夏を拘束して、あの赤と黒のISがいたんだ。
忘れもしない、あの死神を…
肩に剣を持った、グリフォンを描いたエンブレムを掲げたやつを…
『待っていたぞ、織斑千冬』
そこから私はその死神と戦いを繰り広げた…だがそれは戦いとは言えなかった。
私の剣がすべて見切られていた。
どれだけ振るっても届かない、あと少して常に、逆に奇妙な実体剣に切り飛ばされる。
奴は銃を持っていたのに、私に一切使わなかった。
それは、私が銃を持ってる相手との戦いになれてると知っていたからか、それとも使うまでもないと判断したのか…
何にしても、私はいいように死神に転がされ、一刀入れることなく敗北した。
人生初めての敗北であった。
『ブリュンヒルデ…世界最強……この程度なのか?お前も、私を満足させれぬのか?』
失望のような眼差しを、全身装甲越しに感じた。
完敗だった、何もできなかった。
『J、無駄な会話は止めようか?はやく殺せ。可能性は、全て消去する』
今でこそわかるが、あの時、あの死神の側から聞こえた男の声。
財団が私を殺せと命令する。
『了解した…ブリュンヒルデ、いや織斑千冬…もう少し、楽しみたかったぞ…【黒い鳥】の出来損ない』
ついに奴は銃を私に向けて、引き金をひこうとしていた。
「やめろおおおおお!!」
その時だった、一夏が私を庇ったのは。
少し死神に困惑が見えた気がしたのは気のせいか。
『J』
『…すまないが、障害も消去する』
財団の言葉で死神が銃を撃つ。
しかし私は最後の力を振り絞り、飛んでくる銃弾を気合で弾いた。
しかしその弾いた弾は一夏の頬をかすめて…
「そうだ、一夏。お前がモンドグロッソにて忘れさせたというのは、私が弾いたタマのせいだ。掠めた弾丸はIS用、もう数ミリズレていれば即死だったと医者に言われたよ」
そう千冬さんは答えてくれた。
この真実に、私たちよりも一夏本人が最も混乱していた。
裏を返せば、下手をしたら死んでいたわけだ。
しかも姉が自分を守ろうとした結果で。
それだけにあらず、弾いた弾のせいで記憶まで消える。
困惑しかないだろう。
「公では一夏の言った理由になった。非公式とはいえ、ブリュンヒルデが手足も出ずに負ける、それだけのフリーのIS乗りなどいたら困るからだ」
なるほど納得いった。
力を持ちすぎた個人は危険だ。
私がそうであったように、管理する者がいないなら排除される。
排除できなければどうなるかさっぱりわからない。
だから消す…か。
そして、ちょうど千冬さんの話が終わった頃だった。
ひとつの通信が横槍で入ってきた。
画面が空中に投影され、映し出されるのはエンブレム。
赤いハートを2本の杭が貫き砕いたようなエンブレム。
それが投影され、声が響き始める。
『あーあー、もしもし聞こえてますかー?私、つい先程雇われた【サラ・ドレス】と言いまーす!よろしくおねがいしまーす!!』
妙にふざけたような口調で、その音声は流れてきた。
それは、私たちにとっては衝撃で、千冬さんすら知らないことだった。
学園も、私たちの知らぬところで、戦争への準備をし始めていた…