インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活   作:しじる

54 / 60
城之内死す並のネタバレタイトル…


mission52 風が運んだ木蓮の花

アリサ一行が嗤うISを撃破し、アラクネのパイロットを無事保護していたころ。

更識家では重大な会議が開かれていた。

それは現更識楯無こと更識刀奈が、実質戦えぬ身になったため、その名を誰かが継ぎ直さなければならなくなったからだ。

当主、先代更識楯無は簪を推したかった。

しかし、娘の刀奈は、簪がこの世界に関わることを恐れていた。

そのためこれを抑え、父としてか、更識の者としてか。

その思考に板挟みになっていた。

のほほんさんの父親も、更識家を支えてきた布仏家として推すべきか、自身の娘の友人を危険に放り込むか…

それに苦悩していた。

簪は、お世辞にも刀奈程の腕はない。

たしかに優れた力はあるにはあるが、当主として出すには危険であった。

だが他のものはというと、他のものにもこれといった光り物はない。

一般人からすれば超人とも呼べる者達だが、楯無の名を継ぐ以上、この家で最強出なくてはならないのだ。

刀奈同等の者は、この家にはおらず、それより上は、ギリギリで簪しかいなかった。

そして、家のものが苦悩するように、簪自身も苦悩していた。

それは悲しみと後悔。

未だ目覚めぬ姉を見て、その失った脚のことをどう説明すればいいのか。

そして、今まできつく当たってしまったこと。

それへの謝罪など…

伝えたいことと、説明すること、それぞれが雁字搦めになり、彼女の心は潰れそうであった。

 

「……外へ行こう…」

 

ふと思い、簪は外へと、何も持たずにフラフラと向かう。

このまま家に篭っていても、余計辛いだけと思ったからだ。

そう考え、簪は何も考えず、当てもなく外へとでる。

暫しして、公園にたどり着く。

そこは昔、まだ簪が刀奈のことを、すごいお姉ちゃんと認めていた頃だ。

その頃、よく本音達と一緒に遊びに来た。

そう思い出し、ベンチに座る。

 

「………どうしてこうなっちゃったの」

 

瞳から涙が溢れ出る。

俯き、声が漏れる。

どうしようもない悲しみは、余計に大きくなってしまった。

もうこのまま消えてしまいたい。

罪悪感と後悔、そしてプレッシャーに彼女が押しつぶされそうになった時、ふっと風が吹いた。

 

 

 

その風は、1枚の花弁を、簪の前に届けた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…蒼い……木蓮の花?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隣、いいかしら?」

 

ふと声をかけられる。

それに驚き、だが涙を拭いて前を見る。

するとそこには女性がいた。

鋭く、だがどこか優しさが垣間見える、美しい蒼の瞳を持つ。

そして艶の良い黒髪は綺麗に、短く整えられていて、道行く誰もが見返りそうな美貌であった。

しかし、その雰囲気はどこか彼女(・・)に似ていると簪は思った。

 

「…アリサ?」

 

「えっと……誰の名前かしら?」

 

知らぬ人の名前が出たことに困惑する蒼の女性。

それは当然であると、簪は慌てて謝罪する。

 

「わぁぁ!!ごめ、ごめんなさい!お、お隣どうぞ!!」

 

パニックになりながらも、ベンチの端に移動して、場を広くする。

若干女性は苦笑しながらも、隣に座る。

そこで簪はようやく気づく。

彼女の左腕に。

肘から先に、腕が……ないのだ。

さらにはそこに、生々しい傷跡がいくつも見て取れる。

それを見てしまい、何も言えなくなってしまった。

視線をそらし、自分は何も見ていないと言い聞かせるが…

 

「ん?あぁ、ごめんなさい。悪い気にさせるつもりはなかったの」

 

流石に気づかれて、逆に気を使われてしまった。

その事に自己嫌悪しつつも、同時に不思議に思う。

なぜ私の側にと。

 

「どうして、私の隣に?」

 

その言葉を聞いて、女性は少しキョトンとするが、すぐ表情を戻して答える。

 

「何か、悩んだり、後悔してるみたいに見えたから……かしら?」

 

その言葉に驚き、しかし何故か相談したいと、簪は思ってしまった。

そうして簪は語り出した。

流石に家がどういう存在か、姉が何故足を失ったかなどの極秘は伏せつつ、自身の悩みを打ち明けた。

簪はその事に驚きつつも、何故かこの人には話したいと思うのであった。

 

「なるほどね……あなたは、どうありたいの?」

 

女性の言葉に困惑する。

自分がどうありたいなど、簪には想像出来なかった。

 

「私は……」

 

「……まあ、今決めなくても大丈夫だと思うわ。あなたはまだ学生」

 

しかし続く彼女の言葉は、何故か心に大きく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きなように生きて、好きなように死ぬ。それが1番いいことよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸の中のモヤが消えていくような気分だった。

私は何を悩んでいたのだろう。

そうだ、私は私なんだ。

私の好きなように生きて、何が悪いんだろう。

なんでお姉ちゃんが「無能に生きろ」と言ったか、わかった気がする。

言い方があるでしょと思ったけど…

でも、この人の言葉で、救われた気がする。

 

好きなように生きて、好きなように死ぬ。

 

何にも縛られず、誰かへの嫉妬や不安も、私自身が望んで選んだものじゃない。

なら、もう好きなように生きたい。

私は、お姉ちゃんの影じゃないって、力に固執する必要ない。

それ以外で証明するんだ。

お姉ちゃんにできないこと、それで私を証明すれば良かったんだ。

 

「気持ちは晴れたかしら?」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

私は彼女に、今できるだけの全霊の感謝を伝えた。

それに彼女はふっと微笑んで、ベンチから立った。

 

「ならいいわ、良かったわね。私はもう行かないと…」

 

そう言って、背を向けて行く彼女に、私は声をかけた。

 

「お、お名前聞いても……いいですか!!」

 

そう言うと、彼女は私に振り返り、こう伝えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マグノリア、マグノリア・カーチスよ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。