インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
あの嗤うISを撃墜し、蜘蛛ISのパイロットを保護してから数日後。
まず蜘蛛ISのパイロットことオータム。
彼女は未だ口を割らない。
正確には知らないと言うべきかな。
彼女の口から出たことは【企業】と【財団】。
宣戦布告した【財団】はともかく、【企業】と言うのが何を示すのか。
自分たち亡国企業とは違うと言った。
そして亡国企業は、私たちが入学した時期に【財団】によって潰されていたとのこと。
亡国企業のIS操縦士以外は殺され、IS操縦士は【財団】の駒として死神部隊の下っ端となったこと。
それ以外は知らないの一点張り。
【財団】と【企業】が何を目的に動いてるのかは全くわからないとのこと。
【財団】は、あの宣戦布告通りなら、【人間の可能性の否定】ということだったかな?
神様が考えたと言ってたけど、神様なんでいるの?
そんな疑問が湧く。
さて、何故私がこんな内容を知っているのか。
それは簡単、尋問に立ち合ったから。
この攻撃で、IS学園も【財団】への敵対を決断。
交戦した私たちにも知る権利が与えられた。
これで本当に【財団】は世界を敵に回した。
それでも【財団】の本拠地が判明しないし、【財団】も不気味に沈黙を貫いている。
「一体どうなってくんだろうね…アリサ」
「私はあなたがどうなってそうなったのか知りたい…簪、いや、
そうそう、ずっと生徒会長がやられてから引きこもってた簪が登校。
しかし名前が楯無に変わっていてびっくりした。
何がどうして改名したのか、私にはさっぱりだ。
しかもお姉さんの名前に。
「それは……話せない」
やっぱり、そう言って話してくれない。
でも、簪の顔は前よりスッキリしていて、良かったのかなと思ってたりする。
のほほんさんは分かってるみたいだけど。
それから、簪の……んん!
楯無の専用IS、白式の制作によって停滞していた【打鉄二式】は、楯無の名前になった途端に開発再開。
明日には完成するとか。
…本当に何があったんだろう。
そうそう、祖国に戻ってた鈴、セシリアが学園に戻ってきた。
まだ代表候補生だから、死なせるわけには行かないとのことで、戻ってきたと言うより強制送還らしい。
招集した理由も、元はと言えば、ご家族友人との安否確認の面が強かったらしいし。
そんなこともあってか、IS学園は夏休みであるにもかかわらず、いつもと同じ喧騒になってた。
当然だけど、他の生徒達も強制送還された。
国家代表は流石に帰ってきてないけど。
あるものは夏休みを奪われた怒りに、あるものは祖国への不安、またあるものは未来への恐怖。
この先どうなって行くのか、全く想像出来ない。
私と簪は、そんな皆を見て、ただただここにいる皆が安全であれることを望んだ。
「なあセラフ、お前はどうしてそう排除にこだわるんだ?」
私はIS学園の屋上で、自身のISに問いた。
ずっと不思議だった。
VTシステムの代わりに導入されていたこいつが。
あの時こいつは、排除と謳って御姉様や嫁を殺そうとした。
シャルロットもその巻き添えを食らった。
2人を力を持ちすぎたものとも言った。
何故そこまでして殺そうとしたのか…
私にはわからなかった。
だから聞いた、ずっと力を貰って疑問に思わなかったからこそ。
『私の使命は…人類の再生。荒廃した世界を、人類を救済する』
セラフが答えた。
意味がわからなかった。
世界は荒廃というほど荒れていないし、救済されるほど人類も危機に瀕していない。
「だが、それが何故御姉様達を殺すことになるんだ」
『【
イレギュラー、例外か。
御姉様は銀の福音と戦う前に解除してくれてたな。
だがすべて焼き尽くす?
たしかに新しい御姉様の機体の単一能力は【灼滅】。
味方以外はすべて焼き尽くすが…
『だが、私は最近考える』
セラフが呟く。
それは無機質無感情の筈なのに、どこか寂しそうな…
だけれども嬉しそうに聞こえた。
『ここは既に平和であって、荒廃もしていない。管理する必要が無い』
何を管理するのかは大体想像がついた。
続けてセラフは語る。
『私は、私の残骸から、ある男に【
時折見せていたあの排除と連呼していたのはそれでか。
そして、書き込まれた状態で私のISに仕込まれたのか。
『だが、男は間違えていた。【黒い鳥】は既に死を告げない。【私たち】のように、人類を護ろうとした。偶然とはいえ、排除対象の命も救った。世界も荒廃していない。管理せずとも、人は自由に生きて行ける』
『ラウラ・ボーデヴィッヒ、教えてくれ。この世界に、【
「…………不要、なのかもしれない」
考えに考えて、私はそう答えた。
人は管理されずとも生きていける。
私はそれを知っている。
御姉様が教えてくれた。
教官が教えてくれた。
失敗作として管理されてたわたしは教官に救われ、そして御姉様に人として救われた。
そうだ、管理せずとも、人は手を取り合って生きている。
管理が必要になるのは、それでも世界が滅びそうな時だけだろう。
少なくとも、この世界はそんなことは無い。
【財団】の起こした紛争はあるが、いずれは収まる。
沈まぬ太陽がありえないように、昇らぬ太陽もありえないんだ。
だから、管理はいらないと思った。
「だが、【管理者】は不要でも…【
私の言葉が理解できないか、疑問と言った感覚が伝わる。
「セラフという、そんな感情を抱えたお前は、替えのきかない存在だから…不要とか、そんな悲しいことは言わないでくれ」
そうだ、換えが効かないんだ。
私という個がそうであるように、セラフという個もそうである。
付き合いこそ短いが、セラフが消えるのは嫌だった。
もしこのまま何も言わなかったら、セラフはこの世界から消えてしまう気がしたから…
『……了解した』
静かに、いつものようにセラフは答える。
感情はないが…それでも、どこか嬉しそうに聞こえたのは、私の思い込みだろうか…
夏風が、私の頬を撫でる。
紛争中とは思えぬ、爽やかな午後の話…
『不要か…やっぱり俺たちは』
『……能天使、私たちは、間違えていたのか?』
『私は、あれが最善だと思っています。今も、これからもずっと』
『人は、管理せねば滅びる…自らを滅ぼす。救済のための管理』
『……俺はそうは思わん。人に、俺たちはいらない』
『能天使……ええ、そうでしょうが……我々は、我々の存在意義が、これであるのです。私には、自身を、いまだ完全に否定できません。もっと時間が必要です…』
『……なあ熾天使、お前はどう思うんだ?…今は』
『私は…………』