インフィニット・ストラトス 首輪付き少女の学校生活 作:しじる
これもダクソと隻狼がいけないんだ!
あとブラック職場が!!
私は遅れはしても失踪だけはしないぞ!!
本当にお待たせして申し訳ありませんでした!!
炎を全身から上げて、主任のISが唸る。
その手にかついだ鉄筋コンクリート塊は、主任から伝わる電流を纏って、非常に危険な空気を醸し出していた。
一発でも貰えば死ぬ、その思考が、言葉にせずとも全員に伝わる。
「な、なんで生きてるのよ…」
鈴が口より漏らす、明らか死んでいるその肉体で動く主任は、さながら機械仕掛けのゾンビと言ったところか。
黒の液体と黒煙を巻き上げ、時折紫電が走る。
シールドエネルギーも尽きたはずなのに再起動し、今なお動き出す。
ISの想像の範疇を超えていた。
「っ、鈴!!」
呆然とする鈴へと急速に向かい、有無を言わさず抱きしめる一夏。
その行為に一瞬さらに鈴は思考が吹っ飛ぶが、それ以上にその瞬間、主任の柱が、鈴のいた場所を猛スピードで叩きのめしていた。
一夏の反応が遅れていれば、間違いなく、絶対防御でさえ防ぎきれずに、肉塊と化して死んでいただろう。
現にそれが振り下ろされた場所は、明らかおかしなレベルで大穴が開き、柱の大質量の破壊力を物語っていた。
『さぁ、止めてみせろォォォ!!』
実に楽しそうに、狂気じみた笑いを上げながら、主任はそれをぶんまわし迫る。
振るわれるたびに、周辺の物体が消し飛び、砕かれ、灰燼へと帰していく。
これに接近戦を挑むのはナンセンスだ。
しかし、あの状態の主任に当てようと照準を合わせようものならその隙にお陀仏だ。
一見脳筋思考の突っ込み特攻にも見えて、この攻撃は速度があり、故に引き撃ちと言う戦法でも凄まじく危険であった。
「くっ!」
ただただ下がるしかない3人、カスっても死ぬかもしれないこの大質量の暴力。
しかし無限に逃げ続けられるほどこの場所は広くない。
このままではジリ貧である、どうすればいいか思考を重ねて、一夏はある考えが浮かぶ。
「鈴、さっきラウラやったみたいに、俺の背中に衝撃砲を撃ってくれ!」
そう、それは先程も行った瞬間加速突撃、しかしそれしか方がないとはいえ、無謀にも程がある方法であった。
「一夏!?そんな無茶よ、あれを潜り抜けてなんて!!」
鈴の眼前にヴィジョンが見える。
それは主任の柱に巻き込まれて、見るも無残な姿へと成り果てる一夏の姿が。
戦慄する、その光景を現実にしたくない。
鈴はそれを伝えたく、叫ぶ。
「分かってる、でもそれしかないだろう!?下手に狙っても叩き潰され、逃げ回ってもいつか捕まる…なら!」
しかし一夏もそれでもと言うしかない、生き残るためにはこれしかないのだから。
それに嫌と叫ぶ鈴、だがという一夏。
しかし言い合ってても逃げはする。
そこは代表候補とそれレベルの人間の腕前か。
このままではお互いを思いやる心で話が決まらない、時計の針は左には進まないのにだ。
その状態を打開するため、ラウラ、口を開く。
「私が行く」
「なっ!?」
「あんた何言って!?」
2人の顔から血の気が一気に引く。
確かにラウラは軍人、そして乗ってるセラフも1級品どころでないIS。
確かに勝ち目はありそうだが、零落白夜のないセラフの月光で、絶対防御が発動しない相手とはいえ、一撃でやれるのかと言えば不安である。
それでもラウラの決意は揺るがなかった。
「このままでは押し問答だろう…それにお前達に比べて、私の損傷は軽微だ。仮に当たっても死なない可能性があるわけだ」
「それでもラウラ!」
「私がダメだったら…後は一夏に任せよう。あの武器の形状、1回振れば再度振るのに時間がかかる。その隙にやれ…」
「ラウラ、あんた!ラウラァ!!」
「もしダメだったら、私の代わりに御姉様に伝えてくれ…死してもなお、私は貴方のそばにいますと……」
「ラウラァァァァー!!」
2人の静止を振り切って、ラウラはセラフと共に、塊を構える主任へと突っ込んでいく。
早く、速く、夙く、疾風く、正しく今まで以上のスピードで。
もはや音さえも置いていく速度で主任の胴部へ。
「セラフ…付き合わせて悪かったな」
『これもまた、お前の選んだ使命……私は、並び立つ選択を選んだ。後悔はない』
「……そうか」
セラフが主任に迫る、主任のそれが迫る。
先に伸びるのは塊か、月光か。
淡い閃光が伸びる、爆音を唸らせ暴力が近づく。
空間が歪む、空気が揺らぐ。
目測切っ先、接触刹那。
先に触れたのは……ラウラ、しかし……
「……止めれないか」
月光は確かに主任の胸部を貫いた、しかし、頭部を破壊されてもなお動く主任、その頑丈さは桁が違った。
月光の高出力で焼かれてなお、まだ動いていたのだ。
『悪いな…
『気にするな
主任とセラフの言葉が混ざる、それは刹那のことで、誰にも知られることは無い、例え刹那でなくとも、その後に来る轟音に、すべてかき消されてしまった。
すべてを焼き尽くす暴力、そう言われても納得のいく凄まじい爆音と主に、セラフが殴り抜かれる。
装甲がひしゃげ、細かな部品が、ガラスが割れたように辺りにぶちまけられ、ラウラ自身も辛うじて絶対防御のおかげで死んではいないが…大質量で殴られた結果一瞬で意識が消し飛び、そのまま壁面へと叩きつけられてしまった。
そして、時間差を置いてセラフが解除され、地へとラウラは堕ちた。
それを目の当たりにして、一夏は理性を保てただろうか。
否であった。
「うわああああああああ!!」
怒りの咆哮と共に零落白夜を起動させ、ホワイトグリントの出力が最大で飛翔する。
大きな鉄骨を振り抜いたあとの主任に、それを回避するすべはなかった。
『そうだ、それでいい……ヒャハハハハァ!!』
零落白夜が主任を両断する。
今度こそ、確実に、真っ二つ。
遅れてやってくる爆発。
主任は今度こそ、その機能を停止した。
後に残るは静寂のみであった。
すぐさまラウラの安否を確認する二人。
生きてはいた。しかし彼女がこの場で目を覚ますことはなかった。