艦これ-4分の1の鎮守府-   作:Poteto305

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艦これ、始まります!

 

「司令官さーん!司令官さーんっ!どこなのですかー!」

 

遠くから、自分のことを呼ぶ声がする。

この間新しくわが鎮守府にやってきた駆逐艦。『電』の声だ。

 

「提督~。くちくが呼んでるよー?」

 

後ろ髪を後頭部にまとめている可愛らしいその姿が右往左往。

それほど焦っているのだろう。可愛いと思うのはいけないことか。

 

「ん~。電はけっこうサボりを許してくれると思ったんだけどなぁ」

「いやいや、誰だって提督いなかったら探すに決まってるでしょ」

 

屋上。

自分よりも先にサボりに来ていた軽巡洋艦、『北上』が下の電を見下ろす。

 

「北上だってサボってるだろ。俺だってサボりたいときはある」

「まー、分からないでもないけどさー。提督の場合毎日じゃん、それ」

「…………仕事、ヤメタイ」

「提督って、ほんとクズだよねー。ほら、行ってきなってば」

「…………後10分だけ」

「…………んじゃーアタシ寝るから。10分したら起こしてねー」

「はいはい……」

 

ごろんっと、硬いコンクリートの床だというのに北上は寝に入ろうとする。

かなり寝にくいと思うが、大丈夫なのか。

 

「はぁ……」

 

ため息をつく。

平和、のんびり、そんな言葉が死ぬほど好きなのだ。提督は。

だから優しそうな電を秘書官に置いたのに、まさかあそこまで必死に自分を探すとは思っていなかった。

下を覗き込む。

涙目な電が自分のことを探している。

 

「いなづまー」

 

提督が上から声をかけると、ビクッとその声に反応した電がきょろきょろと辺りを見渡す。

 

「上だー、上ー」

 

ぱっと顔を上げる。目が合う。

電の顔が、怒りや喜びや驚きや、色んな感情の混ざった変な顔になった。

 

「あ、あーっ!司令官さん!見つけたのです!」

「電も一緒にどうだー。ひなたぼっこー」

「し、司令官さんとなのです……?それはとても楽しそう……じゃなくて、ダメなのです!遠征書類がたまってるのです!」

「あっはっはっは!そこからここまで来れるかな!」

 

どうしても10分の休み時間が欲しい提督。

むーっと電が頬を膨らませているのがここからでもよく見える。

 

「もー。提督うるさいー」

「あ、すまん。……さて、電が上ってくるまで俺も寝るかな」

 

提督も北上と同じように寝転がろうとしたその時。

屋上の扉が音を立てて開かれた。

電にしては早すぎる。北上を探して誰かがやってきたかとそちらを見ると。

 

「はぁっ……!」

 

息を呑む。

 

「あら~。ここにいたのね~」

 

そこにいたのは、北上と同じ軽巡洋艦『龍田』だった。

にこにこと、おだやかなその見た目とは裏腹に、とてつもなく。

とてつもなく、怖い。

 

「ダメよ~。秘書官の子を困らせたら~」

 

カツッ、と音を鳴らして一歩、提督の下へ近づく龍田。

ガクガクガクガクと提督のひざが笑う。

 

「お仕事しないのなら~。その腕、落ちても知りませんよ~?」

「いっ、いや!休憩!休憩中なんだ龍田!後10分したら戻るから!」

「あら~、そうなの?じゃあ、私も一緒に休憩しようかしら~」

「あ、そ、そう?」

「うん。提督の隣に寝てもいいかしら~?」

「お!?え、いいけど、どうした龍田。今日はやけに積極的じゃないか」

 

ひざ立ちのままの提督の隣に、龍田がころんと寝転ぶ。

軽巡洋艦にしては豊満なほうの胸がたゆたう。

 

「よーし、じゃあ俺も――――」

 

ガキィンッ!

頭を龍田の横に並べた瞬間、甲高い音が耳を襲った。

隣。龍田とは逆のほうを見る。

そこには、龍田がいつも持っている鎌が突き刺さっていた。

 

「あらあら。ごめんなさい提督。私、寝相悪くて~」

「は、ははっ……はははっ……」

「わざとじゃないのよ~。…………ごめんなさいね?」

「き、北上……助けてくれ……北上……」

 

助けを求めた後で気づいた。

ああ、北上もう先に逃げてるわ。

 

「じゃあ、提督?後10分。……ゆっくりしましょうね~」

「い、電ー!早く来てくれー!!頼むー!」

 

泣きながら電に叱られる提督の姿は、ただの子どもにしか見えなかったという。

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