もう一度ここから ~ときめき青春高校野球部アナザーストーリー~   作:たまくろー

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久々の日常パートです。


第24話 決戦へ

『ときめき青春高校、逆転劇で初の決勝へ!』

 

「おいっすー」

「おー茶来、お前も朝練か!」

「なーんか体動かしたくてね!」

 

 

部室にて。

昨日の熱戦から一夜明け、明日の決勝に向けて調整する俺達。

今年からは休養日が設けられたらしい。

人数の少ない俺達からしたらラッキーだぜ。

それでも疲労を考えて今日の朝練は自由参加って事にしといたんだけどな。

 

 

「なにこれ?春っち新聞なんて読む系ー?」

「ああ、部室に一部置いとこうと思ってな」

 

 

「えーとなになに…パワフル高校は怪物スラッガー東條の二本のホームランでリードする展開も9回ツーアウトにドラマが待っていた。ダブルプレーの後、ときめき青春高校の打線がふ、ふんき?した。代打をコクげ…だめだ読めね」

「告げられな」

 

 

昨日の試合はそれなりに反響があったらしい。

なんせ9回のチャンスを潰してからの逆転劇、ニュースにもなったくらいだ。

しかし自分でも驚いてる。

まさかあんな場面で、俺が打てたなんて。

 

 

「おはよ~あっ!」

「おうおはよー!ってあれ?」

 

 

小山が部室に入ってきて、挨拶をしたかと思ったらすぐに出て行ってしまった。

 

 

「なぁ、なんかあいつおかしくないか?」

「そりゃあーんないいとこ見せたらそうなんじゃね?顔会わせて逃げるってそーとーよ?」

「まじ?」

「まじ!」

 

 

確かに昨日の帰りのバスから様子がおかしかった。

声かけようとしても逃げられるし、みんなで飯食べに行くって言っても来なかったしな。

 

 

 

「やばいやばいやばいやばい」

 

 

嘘?顔見れない!

昨日の事が頭から離れない!

負けなくない、まだ終わりたくない!

またグラウンドに立ちたい!

その一心で応援してたら稲田くんが繋いで、春君が決めて。

それで春君が打席に入る前「次の試合もあいつをグラウンドに立たせる!だから絶対に打つ!」って言ってたってみんなから聞いちゃったし!

 

「どうしよう。もうこのままじゃいけないよね…」

 

 

そうこう考えながら、ウォーミングアップを始める小山。

 

「おはよ~でやす」

「おーす、ってんだよお前もパワスポ勝ったのかよ!」

「おっす!光っち残念だったね~猛打賞なのに全然光っちのこと書いてねーよ?」

「まじかよ!?んだよチクショー勝って損したぜ」

「ワイの痛烈なレフト前は載ってたYOー!」

「良かったなお前ら、矢部のしょっぱいポップフライと左京の大暴走も載ってないぜ?」

「うっせーな!気にしてんだよ!」

「無安打の右京くんに比べたらまじでやんす!」

「んだとコラァ!俺だってそこ気にしてたんだよ!!」

 

 

またいつもの調子で騒ぎ出す。

昨日の勝利がいい勢いを生んでいる。

そして明日、いよいよ挑戦出来るんだ。

あのあかつき大附属と。

 

 

「よっしゃ!じゃあ今日は軽めに流すか!」

「「「おう!!」」」

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ山口君!荒波君!」

 

休み時間、俺達は教室で談笑していると、同じクラスの女子達が話しかけてきた。

 

「昨日の試合、二人とも凄かったねー!私達観に行ってたんだよ!」

 

「そうでやんす!昨日はオイラのヒットを皮切りに…」

「矢部はちょっと黙ってて」

「えっ…?」

「そうなの?居づらくなかった?(矢部くん…)」

「そうそう~なんか周りは相手の応援ばっかしてたから!」

 

矢部くんを除いて輪ができる。

 

「てか山口くんって野球上手かったんだねー!顔も良くて頭も良くて野球も上手いとか超かっこいいね!!」

「はは、ありがとう。でも昨日は出来すぎだよ」

 

軽くあしらってるようで嬉しそうだな。

昨日の投球で自信が付けられたかな。

 

 

「荒波君は顔は普通だし頭は悪いけど凄かったね!なんかー、んー、、意外だった!」

「それ誉めてんの!?」

 

そこですかさず矢部くんがグイッと輪に入り込み

 

「あの試合はやっぱりオイラの初回の盗塁で…」

「アンタホント黙っててくんない?」

「あんまりでやんす…」

一歩一歩、自分の席へ戻って行った。

 

「今度はクラスの皆で観に行くから!絶対勝ってね!」

「おう!頑張るよ!」

「それとね、あの…青葉くんの連絡先、教えてくれない?」

「青葉の?ああいいよ、多分彼もそういうの平気だろうし」

「(ま、待て山口!!)」

 

 

春はバレないようにドアの方を指差す。

そこには…

 

「ふ~~ん。青葉くんの連絡先をねぇ~」

 

ミヨちゃん!?

手めり込んでる!ドア壊れるから!

てか殺気がやばい!

こんな威圧的な覗き方初めて見たぞ!?

 

「あ、あー確かあいつ今スマホ壊れるって言ってたな、落として割っちゃったとかなんとか…」

「(いいのか勝手にそんなことにして!)」

「(あれ見たろ!今教えたら俺達の命はない!)」

 

二人でヒソヒソと話を合わせる。

するとミヨちゃんはいつも通りににこりと笑って自分の教室へと戻って行った。

 

 

「(なんで居たんだ…)」

「(てゆうかなんであの距離から会話が聞こえたんだ…)」

 

 

「そっかー残念。じゃあ山口くんの教えて!」

「僕かい?いいけどあんまりスマホを見る方じゃなくてね」

「いいの!あ、荒波君もついでに」

「君結構失礼だよね?」

 

 

これからも話は中々盛り上がった。

次第に趣味の話とか流行りのバンドの話になっていったけど

 

 

「(春君、実は結構女子と話してるんだよね…)」

むすっとしながら春達の方を見ている小山。

 

「雅ー?どうかした?」

「えっ、ううん、なんでもないよ!」

 

危ない危ない…。

いくらなんでも気にしすぎだったかな。

 

「大丈夫でやんす、、春君はそういうところはちゃんとしてるでやす、、、」

「矢部くん、ありがとう。矢部くんにもきっといいことあるよ!」

「そりゃどうもでやんす、、」

「ちょっと雅、あれ大丈夫なの?」

「うん、すぐ立ち直るから」

 

そうだよね。春君にとって私はなんでもない訳だし、クラスの女子と話すなんて普通の事だし。

わかってるけど…なんかヤダ。

想いを伝える?でも大事な大会中だし、そもそも一回失敗してるし。

あーなんかモヤモヤする。

 

 

 

~屋上~

 

「なあそういやよ」

「あ?どしたんYA」

 

こちらはサボり組の神宮寺に稲田、三森兄弟。

数学の時間は屋上でフケるのがすっかりルーティーンなっている。

 

「次決勝だよな?」

「そーだな」

「髪型だけじゃなく中身までおかしくなっちまったか?」

「うっせーな!」

「話進まんDE」

「おう、それでよ、二年目でここまで来たってすごいことだよな?」

「ああそうだな」

「そのチームの四番って俺だよな」

「まあな」

「四番って中心選手だよな」

「だろうよ」

「だから話見えへんYO~」

「じゃあ単刀直入に言うぜ、なんでこの俺様がちやほやされねぇの?」

 

 

少しの静寂が四人を包む。

 

「いやだっておかしいだろ!俺ここまで打率4割近いぞ!」

「まあそうだな」

「守備だって茶来の訳わかんねぇリズムに合わせられんのは俺だけだぞ!?」

「そりゃそうかもな」

「じゃあおかしくねぇか!青葉や山口や春ばっかりちやほやされてよ!」

「まーあいつら何だかんだ華があるからYO~」

「俺だってあるだろ!顔も悪くねぇし!」

 

 

またも沈黙の時間が流れる。

 

 

「…なんか言えよ!」

「まあNA~」

「目潰しでも食らった直後なら」

「イケメンに見えなくも…見えねえな」

「うるせぇ!てめぇらだって似たような面じゃねぇか!」

 

 

またいつもの喧嘩モードに突入、とその時に

 

 

「おい、あそこ見てみろよ」

部室の方を指差す。

 

「青葉とマネージャーじゃねえか」

「おい部室入ってったぞ」

「なんやろNA」

 

三森兄弟と稲田はそれとなく眺めていただけだったが

 

 

「青葉、あの野郎…ぶっ飛ばす!!!」

「おーちょっと待て!!」

怒る神宮寺を必死で抑える。

 

「うるせぇ離せ!部室でなにしようとしてんだ授業出ろコラァ!」

「どんな妄想してんだてめぇは!つかテメーも今サボりだろうが!」

「あの二人に限ってそんなことないやろNA~」

 

なんとか三人で神宮寺を抑え込んだところ

 

「お、青葉だけ出てきたぞ」

「なんか怒ってねぇかあいつ?」

「ミヨちゃんも出てきたDE」

「なんかへこんでんな」

 

テーピングでも頼んだのか?

そんなことを思いながらも気にとめはしなかった。

神宮寺を抑え込むのに必死で。

 

 

「男はなあ!一つの道を真っ直ぐ進むもんなんだよ!女に現をぬかすたぁ論外だ!俺は己の道を突っ走るぜ!!」

 

 

大声で高らかに宣言しているとガチャっとドアが開く。

 

 

「お、お前らここにいたんかー!今度合コンあんだけど行っちゃう?」

「連れてってくれ!!」

「コイツ殴っていいか?」

「かまわんDE」

 

 

 

 

 

「おい、何の真似だ」

そっと呟く。

 

 

「ごめん…でもいざって時にはきっと…」

 

チッと舌打ちをし

「お前、何もわかってねーよ」

「違うの!そうじゃなくてー!」

鞄を持ち上げ、勢いよくバンッとドアを開け、部屋から出ていく。

 

 

そんな彼を追うように部屋を飛び出すも、これ以上踏み入ることは出来なかった。

 

 

「ごめん。ごめんね…青葉くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

 

「よーし、んじゃはじめっか!」

部室に集合した俺達。

今日は準決勝のあかつき対帝王の映像を観ることにした。

次の対戦相手、絶対王者あかつき大附属戦の対策だ。

相手はあの猪狩を中心とした総合力No.1のチーム。

今度ばかりはラッキーだけじゃ勝てないからな。

 

「つーか青葉っち居なくね?」

「あ、ホントだ鬼力何か聞いてないか?」

 

首を横に降る鬼力。

すると少しの間があって

「あ、青葉くんは体のケアがあるからって帰ったよー!DVDはちゃんと渡したから観てくれると思うよー」

 

ごめん、本当は違うの。

ミヨちゃんがあんなことしたから…

 

「そうだったのか、まあ映像渡したなら問題ないだろ。んじゃ始めるぞー」

 

映像は整列のところから始まった。

先攻はあかつき。

帝王は友沢がマウンドへ上がる。

一番の八嶋に対して140前後のストレートでカウントを稼ぎ

締めは…

 

「うお!今の曲がったな~」

「青葉くんのと変わらないくらいじゃないでやんすか?」

このスライダー。投手友沢の絶対的武器だ。

 

「えっ、なんで…」

八嶋を三振に打ち取ったところで山口がぼそりと呟く

 

「どうした?なんか見つけたか?」

「いやなんでもない続けてくれ」

今確かにスライダーを。

どうしてだ?まさかあいつ、俺が居なくなったあとも…?

 

それから俺達は食い入るように映像を見た。

なにか攻略の糸口はないかと…必死に探した。

 

 

「つーか思ったこと言っていい?」

試合はゼロ行進。打線が一巡したところで

茶来が珍しく自分から意見を述べた。

 

「あかつきってさー皆すげぇのはわかっけどなんか怪物って感じはしなくね?特に野手」

 

それは…確かに俺も思うところがある。

正直俺も高校に入ってからこいつらの試合を真剣に観るのは初めてだ。

役者が揃っているのはわかるんだけど、

少なくとも野手にパワフルの東條みたいな守備走塁も上手いスラッガーとか友沢みたいな走攻守すべてが超高校級のやつはいない。

 

「でも、各々の得意分野については一級品だ」

山口が冷静に分析を述べる。

八嶋の外野守備と走力は高校レベルを超えている。

レフトの七井とファーストの三本松、サードの五十嵐は守備にこそ難があるがバッティングは凄まじい。

それに二遊間の四条と六本木は鉄壁な上連携が取れている。彼らで何個ヒット性の打球をアウトにしたか。

キャッチャーの二ノ宮やライトの九十九はバランスのとれたいい選手だ。

 

 

「個の力で言ったら友沢や蛇島の方が上だろう」

 

 

しかし…チームバランスがいい。

例えるならそれぞれの刃をとことん磨きあげ、その鋭利な刃を相手だけに向け、背中は仲間に託すと言った感じだろうか。

そうしてできた大きな輪の中心にいるのが

 

『スイライーク!バッターアウト!』

 

猪狩という男だ。

 

「こいつすげぇ球投げんな」

「ああ、特に友沢と蛇島ん時はエグいぜ」

 

左腕ながらMax148km/hの直球。

カーブ、フォーク、スライダーと多彩かつ強力な変化球。

球種を問わず一定のリリースポイント。

 

そしてそれらを発揮するのが

 

「帝王、また残塁だな」

 

 

ランナーを背負ったとき、得点圏なら尚更だ。

人が変わったように力を入れてくる。

所謂ギアチェンジという投球術だ。

 

 

猪狩を個々の項目でみると

直球の速さだけでいったらパワフルの松田の方が速い。

コントロールなら橘や鳴沢に劣る。

球種の多さも鳴沢の方が上だ。

スライダーなら青葉や友沢

フォークならかつての山口の方が上であろう。

 

だけど猪狩には

他の追随を許さない圧倒的な総合力と、それを生かすゲームメイク能力に長けている。

試合の流れ、一つ一つの場面でやるべきこと、さほど重要でないこと、してはいけない事など場合分けをして確実に実行していく。

そしてギアが上がった時…それは手のつけようがない。

高校生でこんな芸当が出来るのは凄いことだ。

常に三振を狙い、抜いた球一つ投げないウチの青葉とはある意味対極だ。

 

 

俺達はフルイニング、全投球を見終わった。

出てきた感想は

 

「すげぇ奴らだな」

「ああ、個々の力を結集して戦う、こういうチームは強い」

「だけどよぉ」

「なんか楽しみだな!」

「ワクワクがとまんねぇYO~!」

「エリートは大嫌いでやんす!オイラ達が目にものみせてやるでやんす!」

 

 

決して臆することはなかった。

これまでの戦いが彼らの、チームの自信になっていた。

最高の相手と、最高の夢舞台を賭けて戦える。

野球人にとってこの上ない幸せだ。

 

「おっしゃー!!今から打ち込みじゃー!!!」

「やっちゃいますかー!」

「あ、ミヨちゃんがトスあげるねー」

 

試合を見終わるや否や一目散にグラウンドに飛び出す。

試合の後半からもうウズウズして仕方がなかったのだろう。

 

 

「さすがだなあいつら…」

 

部室に一人残った俺はバッグからグラブを取り出す。

パシパシと手でならしながら今までのことを思い出す。

 

 

「あの日のまぐれから始まったんだよな」

 

猪狩から放った逆転のホームラン。

そこから俺の野球人生は変わった。

実力のなさを露呈して、何もかも嫌になって

野球を辞めて。

野球を避けてときせーに入って

矢部くんと出会って

癖のあるチームメイトもできて

キャプテンなんて任されて

去年の夏はボコボコにやられて、1度はバラバラになって

でもそこからは皆が一つの目標に向かって突っ走った

秋冬の苦しい練習を乗り気って

春には新しい仲間が加わって

二回目の夏は強豪高をなんとか倒して

 

 

やっと手に入れた挑戦権。

 

 

「ふぅ…」

 

 

一息吐いて、気持ちを落ち着かせる。

大丈夫、大丈夫だ。

もう前みたいに迷ったりしない。

自分が出す結果とそれに伴って起こること

どうなっても…

 

 

「大丈夫だよ」

「…うお!?いつの間に!?」

 

 

小山だ。

「は、春君がいつまで経っても出てこないから!!」

 

あの試合以降初めて口聞いてくれた。

よかった。怒ってるとかじゃなさそうだ。

あれ待ってもしかして聞かれてた?

うっかり口に出してないよな俺!?

 

 

「大丈夫、もう前みたいにはならないよ」

 

もしかして俺を心配して…?

優しいなぁ小山は

 

「前はさ」

グラブをベンチに置き、静かに語りだした。

ああ、こんなことも、もう人に言えるようになったのかな

 

「猪狩からまぐれムラン打って、注目されだしたとき、記者たちはよく俺を『三拍子揃った~』って表現してたんだよね」

人からそんな評され方をしたのは初めてだった。

そして、嫌いだった。

 

「なにが三拍子だよ。ない取り柄を頑張ってなんとか探したって感じじゃん。ってずーっと思ってた」

自覚は死ぬほどしていた。

俺が三拍子揃ったなんて、どの面下げて言えるかよ。

同じチームに友沢がいて、こういう奴がそう言われるもんだとずっと思ってた。

超低レベルでの三拍子とか、なにも揃ってないからこその三拍子って、チームメイトに馬鹿にされてるのも知ってたし。

 

 

「あの頃はそう言われんのが嫌で、『誰だよ最初に三拍子なんて言った奴、責任とってくれよ!』なーんて思ったりもした」

軽く、冗談を言うかのように笑いながら話す。

 

「そんな、めっちゃ嫌な思い出でもさ、あの時は思いもしなかった悔しさとかが、今に繋がってんのかなーって」

高校に入って、矢部くんに感化されて、それからキャプテンの難しさとか、強大な力を前に完膚なきまでに叩きのめされて、そこで初めて、『悔しい、上手くなりたい』って思った。

それからは昔あった事を毎日のように思い出してた。

夢に出てきた日もあった。

そして、『このままじゃだめだ、もっと頑張ろう』ってなった。

 

「そして今まで頑張ってきた。んで明日は…その成果が問われる」

今の俺の全てのはじまりとなった相手、猪狩との再戦。

その結果次第で、俺はどうなるんだろう。

 

 

「怖い?」

「正直な、でも前みたいなことにならないかっていう怖さじゃない」

 

 

そう、俺が怖いのは

 

 

「自分がどれだけ通用するのかっていう期待みたいなもんかな。今までこんな感情出てこなかったし、そこがなんか怖いな」

 

あんないい投手が俺との対決を待ち望んでるなんて光栄なこった。

だから俺は猪狩には負けたくない。

完璧に抑えられたらそりゃへこむし、絶望するかもしれない。

 

 

「でも俺は負けてもいい!チームが勝ちさえすればな!

俺は俺なりにあいつとの対決に望むつもりだ」

そう、野球は個人スポーツじゃない。

因縁のある相手だからって勝負に固執する必要はない筈。

 

 

 

「ねえ…」

「打って。」

 

 

「猪狩くんから打って!!!今度は一生自慢できるくらいすごいの!!」

もう春君は弱くなんかない。

弱さと向き合って立ち向かう強い春君だもん!

偽物のライバルなんかじゃないもん。

猪狩くんに見せてあげて

 

 

「俺は負けてもいいなんて言わないで!」

この前みたいに打って欲しい。

そして試合にも勝って、春君だって頑張ってるって、昔騒いでた人達に知って欲しい!

 

 

「小山…」

そこまで俺の事を考えてくれてたのか。

やべぇ…なんか嬉しい。

 

 

「わかった、打つ。俺は猪狩から打つ!!!」

春が宣言したあとににっと笑った。それをみて小山も曇りのない笑顔をみせた。

その笑顔を崩さない為に…俺は負けない。

 

 

「打てたらご褒美あげるからねっ」  

「えっうそ!?」

 

ご褒美…何かな?小山の事だし甘いものかな。

とりあえず欲しい!凄く欲しい!!

 

 

「そうと決まれば練習だ!!やってやるぜぇ!!!」

 

春はバットとグラブを抱えてグラウンドへと駆け出す。

絶対打ってやる!

打って、もう前までの俺じゃないって、あいつにわからせてやるぜ!!

 

 

「大丈夫、言いたい事は言えた」

一人部室に残る小山。

君なら絶対。

そして私も…。   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではミーティングを始める。資料を配るから試合映像を見ながらでも目を通しておいてくれ」

 

 

こちらはあかつき大附属の寮。

下級生がベンチ入りメンバーに対して四条自作の冊子を配る。

 

 

「ときせーってあの青葉がいるとこだろ?」

「帝王の山口もいるらしいぜ?」

「それに荒波ってやつも、ほら、猪狩さんの…」

 

ベンチ入りの数人が話をしていると。

 

 

「おい、もうミーティングは始まっているんだ、わかりきっている話はよせ」

「は、はい!すいません猪狩さん」

 

 

遂に上がってきたか荒波春。

フフ…待ちわびたぞ。

僕にとっては君に勝たないと気がすまないのでね。

 

 

 

「パワフルの松田も悪いピッチャーじゃない」

「この地区なら5本の指に入る好投手だ」

 

 

冊子資料と試合映像に沿って、さらにはパソコンで投球チャートまで準備し、レギュラーである四条自ら解説をする。

 

 

「その松田のストレートに振り負けない。ヒットの殆どは完全に捉えた打球だ」

「警戒すべきは3、4、5番。おおよその得点はこの三人によるものだ」

「彼らの前にランナーを出すのは危険だ。従って1、2番の出塁を許しては向こうのペースになる」

 

四条はときせー打線各人のコース別、球種別の打率をスクリーンに映し出させる。

 

「特徴といえば、長距離ヒッターが乏しいことだ」

「荒波は球種、コース別に分けて考えても特に苦手はない。しかし長打に関しては真ん中の失投とインコースに偏っている」

「なのでオーソドックスな外攻めをしていれば痛打を食らうことはないだろう」

「対照に鬼力はー」

 

 

 

四条が解説をしている最中、ガタッと席を立つ。

 

 

「おい、まだ序盤だぞ、目を通しておいて損はないだろ」

「フッ、ボクにとってわかりきってる事ばかりなのでな、ボクは調整に入るとするよ」

 

「おい!…ったく少しは団体行動しろよあの野郎」

「さっき自分で後輩に注意しとったやん…」

二宮と九十九が不満げにぼそりと呟く。

 

「大丈夫ですよ、ああ見えてちゃんと研究してますから」

すかさず猪狩進がフォローに入る。

兄さんは待ちきれなくてうずうずしてるんだ。

こうなったら誰も言うこと聞かないだろうし

 

 

 

「まあいい、続けるぞ。次に恐らく先発するであろう青葉だが~」

 

 

 

 

 

「ふっ、ふっ、」

専用グラウンドにて、ジョグで軽く汗を流す猪狩。

沸々と沸き上がる闘争心を鎮めるために。

ここまで来たからには奴も覚悟は出来てるのだろう。

彼に見せてやる、ボクの生まれ変わった姿を。

 

 

 

 

この左腕で抑え込んでやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめえこんなとこでなにやってんだ?」

「うるせぇ、ただの投げ込みだ」

 

河川敷グラウンド。

対峙する二人の男。

 

「けっ、愛想わりーな。」

ポケットからガムを取り出し口へ。

長い髪を掻き分ける。

 

「お前こそロードワーク抜けてきていいのかよ」

「うるせぇ、すぐ戻んだよ」

 

愛想がないのはお互い様のようだが。

 

「じゃもう行くわ、まー決勝頑張れよ、次は潰してやっからよ」

 

 

 

「待て!」

「あ?んだよ」

 

 

 

男を呼び止める。

そしてに2.3秒、躊躇いながら

 

 

 

「聞きたいことがある」

 

 

 

 

 

 




☆能力紹介 
登場キャラをパワプロ2018風に紹介します。
2年生時点での能力ですので、もちろんこれからの成長も劣化もありえます。
高校レベルとしての査定という位置付けで考えてみました!
とりあえず今回は今大会で対戦したオリキャラのこの二人です!


○荒波春 (遊、二、三)  
弾道3
ミートC
パワーC
走力B
肩力D
守備B
捕球C

チャンスB、走塁B、対左投手E、逆境○、対エース○、意外性、インコースヒッター、固め打ち

※荒波一年時はEEDEDDくらいのイメージです(一応)

○鳴沢怜人
130km/h
コントロールA
スタミナD
カットボール2
スライダー3
ドロップカーブ3
シンカー2
シュート2

ノビE、対左打者A、回復A、リリース○、緩急○、牽制○、低め○、対強打者○、逃げ球、内角攻め、短気、力配分、スロースターター、軽い球、負け運、調子極端、変化球中心




他のキャラについては次回以降、不定期ですが紹介していきます!
また、この選手の~などご要望があれば紹介します!
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