もう一度ここから ~ときめき青春高校野球部アナザーストーリー~   作:たまくろー

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第4話 道程②

「俺なりに一晩中考え、出した結論だ。

何か不都合があったら言ってくれ」

教室にて同好会メンバー全員が春の席に集まる。

そこには1枚のA4用紙に書かれたポジション振り分けだ。

 

 

ファースト 神宮寺

 

 

サード 小山

 

ショート 荒波

 

 

レフト 左京

 

 

センター 矢部

 

 

ライト 右京

 

 

「もう決めんのかよ? まぁおれは外野しかやらねーけどな」

左京が問う。不満はなさそうだ。

 

「基本的にはこのポジションで行く。 野球部として認めてもらうまでは部員勧誘があるし、照明のない河川敷グラウンドしか使えない。限られた練習時間を効率よく使うために今日から俺が用意したポジション毎の練習メニューをこなしてもらう。 いいか?」

「さっすが春君はわかってるでやんす! 三森兄弟を差し置いてこのオイラをセンターにするとはやるでやんすねぇ」

矢部くん、有頂天NOW。

「おうメガネ。右中間のボールはこのときせーNo.1の俊足、三森右京が全部取るからな。ちんたら足引張んじゃねえぞ!」

「それは聞き捨てならねぇな! No.1はこの俺だ! センターの打球もライトの打球も俺が取る!」

「チッチッチッ、オイラの足はこの地区No.1でやんす!二人ともオイラに任せればいいでやんす!」

「ああん? 」

「やんのかコラ!」

外野3人組でワイワイやってる。仲が良いんだか悪いんだか。

 

 

「ちょっとまてぇーい! なんで俺様がピッチャーじゃねーんだ!」

神宮寺…お前ピッチャーやりたかったのか…。

 

「神宮寺、お前は攻撃の要だ。お前がピッチャーをやったら打撃練習に時間を割けなくなるぞ?その天性の打撃センスを無駄にしないためにもお前はファーストだ!」

「…え? やっぱり?」

神宮寺が嬉しそうに照れながら聞いてくる。

 

「やっぱり野球はいっぱい打つ人が目立つしかっこいいよね〜ミヨちゃんタイプかも~」

「私も神宮寺君くらい上手くバットを出せたらなぁ~」

「ハーハッハッ!!そこまで言うのなら引き受けてやらァ! おめーら俺の前にランナー出さなかったらただじゃおかねぇからな!」

 

お前…扱いやす過ぎるぞ…。

にしてもミヨちゃんと小山はわざと言ってるのか!?

だとしたらこの二人…恐ろしい。

 

 

「ていうかバッテリーいないってのはまずいでやんすね」

確かにマズイな…バッテリーは素人には荷が重いしな。

何がなんでも経験者が欲しい。

それにセカンドも難しいな、、俺がセカンドやってショートに新メンバーも考えられるが…

 

 

始業ベルが鳴り、皆それぞれの教室へ戻る。

神宮寺、右京、左京は練習には出ると言い残してどこかへ行ってしまった。

授業が終わり放課後。俺が難しい顔をして考えていると

 

 

「春君、ちょっといいかな?」

 

 

小山が俺の隣の席に座ってきた。

セーラー服…いいね!

ちなみに俺、矢部くん、小山は同じA組。神宮寺、右京、左京はB組。ミヨちゃんはC組だ

そーいや小山はポジション発表してる時から元気なかったな…。 何か考え事でもしてたのか?

「…私っ 役に立つのかな? 不満はないけどサードやったことないし…」

そういう事か。 無理もないな。確かにいきなりコンバートは辛いよな。

でも…実力的な話でのコンバートじゃないんだぜ。

 

 

「お前の事を認めてない訳じゃない。ショートは運動量が多いからな。公式戦は中3日の連戦だ。お前にばてられたらウチの勝率はガタ落ちだ。」

小山の表情が少し明るくなった。

だがまだどこか不安げな顔してる。

 

「そ、それに…公式戦はのことだってまだ…。」

小山が涙ぐんでいるのがわかった。

何だろうこの気持ち。小山は大切なチームメイト。 それ以前にこの子にこんな顔させたくない。

小山はその華奢な体で俺達の練習に泣き言一つ言わずについてきている。

体力も一番ないだろう。 足も一番遅い。筋肉も一番ないだろう。

それでも野球が大好きだから、一緒に野球をしてくれる仲間がいるから!

その強い想いが錯綜し、肉体的ハンデを背負う自分の存在意義を疑いはじめたのだろう。

 

 

「そんなに思いつめる事無いんだぜ。皆お前の頑張りは認めてる。 それによ、役に立つかなんて気にする必要なんてねーよ。俺達の仲間がそんなこと気にすると思うか?」

小山はふるふる震え涙を流している。

仕方ない。シニアでは結構辛くて、寂しい思いもしただろうし。

だけど…まだ数日の付き合いだけど…多分あいつらはお前を悲しい気持ちにはさせないと思う。

 

「公式戦のことは俺が監督はに言っておいた。 今日大会本部に話してくれるそうだ。だから… そんな顔すんな。 お前は気にすることなんてなーにもねぇんだ。 ただ大好きな野球を俺達と一緒に楽しんでくれ! 一生忘れられねぇくらいにな! 」

のびのび、好きなだけ、もう嫌いになるくらい打ち込んでほしい。

もしそれでも気がかりな事があったら、新しく悩みが出来たら、俺に話してほしい。

死んでもなんとかするから。

野球でお前を曇った表情にはさせねぇから。

 

静寂が訪れる。

荒波は少しの間をおき、、

 

「一緒に行こうな…甲子園」

「…うんっ!」

 

小山は今までにない笑顔を俺に見せてくれた。

その笑顔は俺が今までに見たどの笑顔より、誰の笑顔よりも

眩く、輝かしかった。

 

「そ、それじゃあ練習行こーぜ、矢部くん達待ってるだろうし」

俺はなぜこんなにも動揺しているか自分でも分からなかった。

ただ、あの時の小山の笑顔、それを見れただけでも俺は頑張れる気がする。

 

「……春君… ありがとう」

 

小山が何かボソッと呟いたようだが俺には聞こえなかった。

俺と小山は着替えを済ませ河川敷グラウンドへ向かう。

 

 

「春君! 雅ちゃん! 何やってたでやんすか!」

「わりぃ、ちょっと小山とポジションの話してたんだ」

「なんか怪しいでやんすね…それよりビッグニュースでやんす! 」

矢部くん、やけに慌ててるな。

 

「おう、春、新メンバー連れてきたぜ!」

 

神宮寺が声を張って手招きをする。

まさか授業ほっぽり出して勧誘してくれていたとは!

色黒のラッパー稲田 吾作 (いなだ ごさく)と無口の大男鬼力 剛(きりき つよし)の二人、神宮寺、右京、左京が頼み込んでくれたらしい。

 

 

「俺達だって本気で甲子園目指してるからよ、このぐらいしねーとな!」

三森兄弟が自慢気に言う。

 

「ワイはラップホップマスター稲田吾作YA。やっぱ野球はええNA。 経験者やから心配いらんDE」

「ラップホップってなに!?というか語尾がなんか変な気がする!」

「春君何ごちゃごちゃ言ってるでやんすか! 稲田くんのバッティングは凄いでやんす! 守備に難ありでやんすが…」

当てるのが抜群に上手い神宮寺と違って稲田はパワーヒッターらしい。

 

 

鬼力はキャッチャーらしい。

しかしやけに無口だな…

表情もよくわからねーし。

とにかく神宮寺と三森兄弟に感謝だ!

 

 

あと一人、あと一人で野球部として活動できる。

本気で甲子園目指せるんだ!

 

 

「よっしゃ! 今日も練習がんばるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

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