毛利家に向う最中、ウィルは謁見後に起こるだろう力比べについて、考える。
ただ、本人は真剣に悩んでいるのだが、左右の腕に香華と吹雪がしがみ付いている。
「う~ん……元就様って、どんな人です?」
「えーと、人というか、幽霊ですね」
「はい? 幽霊?」
「そうです。身長が6メートル位ありますよ」
「……はぁ!?」
ウィルの質問に、香華と吹雪が答える。
その度にウィルは頭をかしげ、更には驚き叫ぶ。
その後、鈴夜や昴と菱も話に加わり、毛利家の一家の説明をされる。
元就はランス時代の幽霊残りで、呪い付き効果で巨大化した。
呪いを解かれ、前の身長へ戻って直に寿命が尽き、死亡した。
そして、何故か幽霊として、巨大化状態で幽霊となり今も存在してる。
元就の子孫で長姉、毛利てる子。
茶髪のウェーブがかかったショートヘアに、顔つきが鋭い。
実質的に毛利家の指揮を執っている。
長姉ではあるが、次女より小柄である。
戦闘が大好きの、掃除を趣味なメイドさん。
元就の子孫で次女、毛利きく子。
ピンクのショートスレートヘアで、先端が跳ねていて、目つきが鋭い。
長身で毛利家の食事全て、生きる糧を担っている。
姉と同じく戦闘好きな、男勝りな性格のメイドさん。
そして、不死人毛利ちぬ。
黄緑色のロングヘアで明るく笑っているが、常に右目を閉じていたらしく、今は眼帯を付けている。
毛利家の生神&邪神で、定期的に脳みそを吸わないと生きていけないらしいのだが、未だに健在。
毛利家の部下モヒカン達が喜んで志願し、脳みそを捧げてる。
実質、元就の実の娘。
てる子ときく子は元就の娘の子孫であるが、父と娘の間柄になってるのが毛利家の不思議。
説明を聞き終えると。
「つまり、巨大親分・掃除メイド・料理メイド・不死人の戦闘狂一家ですか?」
「そうです。つまり、元就殿とまともに戦ったら……ウィルが、ぺっしゃんこになります」
「うんわ~……どうしよう」
説明を聞いて大体を把握。
巨体からの豪腕と力加減をせずに問答無用な正確。
良い試合すれば良いかとおもいきや、戦うと死亡確定。
流石に、歩く足が止まるウィル。
そこに、鈴夜が黒い玉を取り出した。
「ウィル。煙幕を使うと言うのは、どうでござるか?」
「煙幕?……ちょっと、試してみていいですか?」
「無論でござるよ。二人とも、ウィルから離れるでござる」
「「はい」」
出された煙幕玉を受け取り、香華と吹雪が離れた後、使い方を聞いて地面に投げつける。
「……ぼふっ……ゴホッ、ゴホッ」
「大丈夫でござるか?」
足元に叩きつけ、黒い煙幕に包まれる。
当然の様に、煙にむせるウィル。
注意されていても、使いなれてなければ当然だろう。
鈴夜に心配されるが、煙が晴れるともう一個ねだる。
「……あ、もう一個いい?」
「にょ? 構わないでござるよ」
今度は目の前の樹に向って投げ、外から見る煙の範囲を調べる。
先程、煙の中からむせてる所為もあるが、何も見えなかった。
外と中の両方側から煙幕の効果を調べ、顎に指当てて考える。
その後、ウィルが何度か煙幕を使い、鈴夜にも色々試してもらう。
上手く行くかわからないが、何とか戦う方法は決まった。
「よし、行こうか」
「あ……ウィル、待って」
謁見後の問題は、なんとか解消されたので毛利家に向かい歩き出す。
そんなウィルに、香華が待ったをかけ俯き袖を掴む。
その様子に「可愛いな~」と思いつつ、真剣な香華の言葉を待つ。
「何? 香華姉」
「先に、言って置かないと。てる子さんときく子さん。十六夜さんと私と同じだから……」
「へ?……ああ、じーちゃん。凄いな……」
一瞬、香華の言葉が理解できなかった。
しかし、直ぐに何を意味したか理解し、祖父の幅広さを実感する。
同時に、香華の行動と思いが理解できると。
「大丈夫だよ、香華姉。その二人に、手出ししようとしたら。僕が元就様に殺されるよ……んっ」
「そ、そうよね……あ、んっ」
姉好きなウィルに前もって伝えることで、気持ちの整理と急な変化を起こさない様釘を刺そう考えた。
置いてかないで・取られたくないと言う思い。
香華が本当に言いたい事を理解したウィルは、心配を取り払うかのよう抱きしめ、触れるキスをする。
「……心配してくれて、ありがとう。大好きだよ、香華姉」
「はぅ……わ、私もウィルが好きです」
「「「「ジィーー……オッホン!!」」」」
「「!?」」
香華の言いたい事や、心配は理解できる。
しかし、自分達を無視して二人だけの世界を作っているので、鈴夜達は額に# を浮かべ咳払いする。
思いっきり忘れてた事と、恥ずかしさで顔を赤くして離れる二人。
何時もは強くでる香華も、今回ばかりは小さくなる。
圧力に負け、ウィルの横を鈴夜と昴に譲ることとなった。
「姫の気持ちは知ってます。ですが、アレだけ見せ付けられては、私たちも女です。今回は交代で……よろしいですね?」
「うっ……はい、その通りです……」
((ほんと、昴は凄い))
(流石……昴)
(昴。セディアみたいだ)
菱は説明が苦手、鈴夜と吹雪なら、嫉妬で上手く言えないだろう。
しかし、昴は一般的視点から先程の雰囲気に抗議し、自分達の気持ちを悟らせず丸め込んだ。
何故昴はこう口が上手いのだろうと、関心する二人。
一方ウィルは昴の雰囲気に、子供達や静やマリーを叱る、セディアを思い浮かべた。
本来、ウィルもこの場で昴に問い詰められそうなもの。
しかし、ウィルの口が上手く、行動力あるのは今更なこと。
昴の頭の中では、この場で香華の思考を鈍らせ、ウィルについては夜オシオキすればいいと考えた。
のんびり故郷の姉のようなセディアを思い浮かべているが、きっちり4人に夜シゴカれる事となる。
―毛利家、謁見の間―
謁見の間に案内されて、前もって聞いてなければ驚く巨体な幽霊がいた。
普段の様に香華が挨拶をし出す。
「このたびは「まてぃ」……はい?」
「あーなんだ……挨拶はいい。そっちのピンクの異人、こちゃー来い」
「あ、はい……(うんわー、イキナリかい!)」
(((((ウィル! ガンバ!)))))
香華の言葉を遮り、ウィルを自分の側に呼ぶ霊頭領の元就。
すると、ちぬ・てる子・きく子の3人が元就から離れ、香華達の方へ歩いていく。
わかっていたが、まさか挨拶すらとばして始まるとは思わず、返事しながら心の中で叫ぶ。
緊張気味に前に出るウィルに、心の中でエール贈る香華達。
元就の側までたどり着くと。
「小僧は、あのランスの孫だな?いっちょ、力を見せてくれんかのぅ?」
「ええ、ウィル・プラインです。ランスじーちゃんの孫ですよ……うひょっ!?」
「ふん……情けない」
「あー……こりゃ、ダメか?」
「キャハハ。まだ、わからないよー?」
「おおぅ、避けたか」
元就の言葉に答えるウィル。
元就は「力を」と言った時点で、ゆらりと立ち上がる。
右手に斬馬刀持ち、腕をゆっくり上に掲げる。
自己紹介しながら、上がる手を斬馬刀見上げ、咄嗟居にその場から横っ飛びする。
振り下げた斬馬刀を無造作に床に突き立てると、避けたウィルの方に向き直る。
一方、ウィル様子にてる子・きく子・ちぬが順に感想を述べる。
その手には既に各々の武器を手に、ちぬは爪を伸ばして香華の動きを制している。
香華達は予想してた行動におとなしくして、ウィルの行く末を見守る。
「元就様。さっきの手加減してましたか? 今度は、本気で来て下さいよ」
「ほっ? がっははは!! いいだろう! 望みどおり、
体勢を立て直したウィルは、剣を構え元就を挑発する。
ウィルの言葉に大笑いし、斬馬刀を持つ手に力を入れ軽く軋む音と腕の血管が浮き上がる。
本気になったのを確認すると、素早く懐から黒い玉を取り出し、足元に投げつける。
「む! 煙幕か!…………そこじゃぁぁ!!」
「「決まった!」」
「あっれー?」
「「「「「……」」」」」
ウィルを覆う黒い煙幕。
目標を失うも、冷静に斬馬刀を構える。
煙から飛び出し、ピンクの髪をなびかせた人影を斬馬刀が捕らえ、床に押しつぶしめり込ませる。
てる子ときく子はヤッタと歓喜し、ちぬはなにやら期待はずれな様子。
しかし、香華達の表情は真剣そのもの。
畳を破壊し、埃が舞うソコを眺める一同を他所に、煙幕の中から新たに人影が飛び出した。
「あっけないのぅ……! ぬわにぃ!?」
「はぁぁぁ!」
元就の振り下ろした斬馬刀を蹴り、腕を駆け上がるウィル。
驚き腕を振り上げようとするも、床にめり込み斬馬刀が抜けない。
あいた左手で殴ろうとするのを見て、肘を越えた所で、持ってた剣を元就の目に向って投げつける。
「……やぁ!!」
「むぅ! 甘い!……む? 下か! ん? 上じゃ! お? 何処……行った?」
「……はあぁ!!」
「!? のごおおぉぉー!!」
顔や額に飛んできても気にならないが、流石に目に向って来た剣に反射的に腕で防ぐ。
その一瞬に肘の所に居たウィルを見失い、降りたかと顔を下・左・上と動かす。
ウィルが何処に行ったかと首をかしげる。
そして、気合と共に拳を元就の耳の中に叩き込む。
幽霊に神経があるのか不明だが、耳に突っ込まれた拳に痛みを感じたのか、手を耳に当ててドゴン、ゴロンとのた打ち回る。
振り落とされ、畳の上に飛ばされたウィル。
何とか立ち上がると。
「あの……幽霊に痛覚って、あるんですか?」
「のおおぉぉ!……おっ? 痛みは無いのぅ」
「「だぁぁ!」」
「アャハハ!おとたま、面白い~☆」
「「「「「……はぁ~~……」」」」」
ウィルの言葉にピタリと元就が止まり、痛くないとけろっとする。
そんな元就を見て、てる子ときく子がすっこけた。
ちぬは、そんな元就を見て大笑いし、楽しんでいた。
一方、香華達は安堵のため息をする。
「がっはははは! まさか、儂がまた、鼓膜を破られ。まけ、る、と、わ?……!?」
「キャハハ! ウィルたま、すごーい☆」
「まったくだ。忍びでもないのに、煙玉つかうたー思わなかったぜ」
「まさか、元就が負けるとは……やるな、ウィルとやら……しかし、最初の人影はなんだ?」
「い~や、ギリギリでしたよ……ああ、あれはピンクのカツラをつけた、カカシですよ」
力試しが終わると、香華達の束縛はなくなる。
元就が胡坐をかいて座り込み、膝を叩いて大笑いしながら負けを認めるが、後半様子がおかしかった。
一応・毛利3姉妹は、それぞれ、ウィルの拳闘を称える。
てる子の問いにカカシを初めとした、今までの流れを全て説明する。
城に来る前に、元就の性格や身体の事を聞きまとめた事。
煙幕の効果を調べ、変わり身に使われる姿木に服とカツラを付けた事。
挑発し床をぶち抜けさせ、目潰しと同時に魔力身体強化し、速度を上げ襟に掴り視線をやリ過ごした。
幽霊なのに皮膚が硬いなら、内膜に近い目・鼻・口内・鼓膜で狙い易い鼓膜にしたと。
今回の戦闘について、策を説明し終える。
「と、いうわけで。29LVなので、こうするしかなかったんですよ」
「なんと、元就や我よりも大分LVが低いな。うむ! 気に入った! 今度は我と
「37のあたしと8差かー。うっし! あたしとも
「ウィル、大丈夫しょうか?」
「うーん……お二人に、手加減と3本勝負の説明。キチント試合形式にすれば、良いのではござらぬか?」
体格とレベル差を埋める作戦。
ソレを聞いててる子ときく子は、ウィルの両肩に手を置き、物騒なもの言いをしだす。
折角元就から命を繋げたのに、また窮地に陥りそうなウィルを心配する。
引っ張りだこ状態のウィル。
ワイワイと騒いでると、思考の渦から抜け出した元就の言葉によって解放された。
「おめぇーらー!! 大宴会の準備だああぁぁ!!!」
「「「おおぉー!!!」」」×(モヒカン連中)
「ぬっ! 仕方ない、明日だな」
「おっしゃー! 料理は任せろ!!」
「助かった……」
元就の叫びに、モヒカン達が歓声の雄たけびをあげる。
てる子ときく子も準備に取り掛かる。
情報通りなら、元就同様二人は加減を知らない。
そんな戦闘狂二人を相手をせずに済み、安堵した。
―大宴会後―
あの後、大量の料理や酒が運び込まれた。
ウィルや香華をはじめ、忍び全員を会場に呼ぶよう元就に言われた。
鈴夜の合図で、くのいち全員が宴会会場に集合した。
そして、元就は問答無用に全員に酒を飲ませた。
ただ、ウィルは小僧と言う事で、酒は飲まされなかった。
昼過ぎから始まり、常に料理と酒が運び込まれ、日が沈むまで大宴会は続いた。
「うぅ~……トイレっと」
((((……ん?……ウィル、何処へ?))))
皆が酔いつぶれる中、美味い料理にトロピカルジュースやうし乳を飲みすぎ、トイレに向かった。
実は宴会最後辺りに出た酒は睡眠薬が入っており、くのいち達は不信に思い寝たフリをしていた。
もし政治的利用ならば、香華が危ないと他の11人が警護し。
ウィルの警護に気を張っていた4人が、部屋を出るのを察知する。
ウィルは厠で用を済ませた後、宴会場に戻ろうとすると後ろから声を掛けられた。
「小僧、まて。ちょっと付き合え」
「え?……誰です?」
呼ばれて振り向くと、小さい老人が立っていた。
暗がりでよく顔が見えないが、こんな小さな老人は見た事がない。
誰だろうと考えてると「付いて来い」と言って城を出て行く。
後を追うと老人は森に入り、どんどん進んで行った。
一方、ウィルが城を出るを感知すると、4人も後を追う。
「コレは……言うしか、ござらんな……」
「は? 何をですか?」
森に入ると、鈴夜が急に言葉をもらし、吹雪が何の事かと聞く。
今まで皆に内緒にしていた、ウィルの秘密の一つを話す。
ウィルの視線感知。
気配を消そうと、見るだけで監視してる存在が分かる事。
逆に気配があろうと、ウィルを見なければ、目を瞑るとばれない事を。
「まさか、そんな事が可能とは」
「あ!……なるほど。だから風呂場で、私の存在に気が付かなかったのか」
「そうでござるよ。ウィルが何故、何処に行くのか分からない。ソレゆえ、鈴夜達の存在を知られるわけには、いかないでござるよ」
昴がウィルの感知能力の性能に驚き、菱は巫女機関の風呂場での出来事を思い出す。
気配を察知や消すことを覚えてないウィル。
故に、多少距離が有っても気配が簡単に察知できる。
距離を取り、後を追って、目視できそうな距離になったら目を瞑ると言う事を伝えた。
更に、ウィルと鈴夜達を追う者が……もう一人。
「あん? あいつ等……宴会ほかって、何処行くんだ?」