ARMORED CORE -果て無き戦いの中に生きる兵器- 作:アナトリアの傭兵
あの後、記憶確認を行い、研究員は一旦立ち去った。立ち去る前に、余計な物を触らない条件で部屋の中の行動を許可してくれた。
私が目覚めた場所は、位置情報から見て、BFFの研究開発部の建物の開発室の一つ。
私が立つ場所の周りには、様々な機器が私を囲っている。形状からして、私を造る際に使われてたんだと思う。
次に、私の身体を見下ろす。
私の身体は、約2割の表面部分が人口的に作られた皮膚と銀髪によって、残りは強固な装甲によって構成されている。
何よりも特徴的なのは、腰部に接続された《
身長は165cm。女性としてなら、それなりにある方。
そして私は右足を動かし、始めて歩き始める。
右足を軽く浮かして前に出し、地面につける。次に左足を浮かして前に出し、そして地面につける。
(…これが、歩く感覚)
感覚、というのは不思議な物。そう思うのは目覚めたばかり、なのだろうか?
どちらにしても、感覚に慣れるようにならないと、戦いにも出る事が出来ない。研究員が研究室内の自由行動を許したのも、そういう理由の一つかも知れない。
適当に、けどしっかりと歩きながら、手を動かしてみる。
私の思考の通りに、手は動く。これも、感覚という不思議な物が走る。
感覚に慣れる為に身体を動かしている事、数分。さっきの研究員が、何人か軍人を連れて入ってきた。
「お待たせ。それじゃあ、ついて来てくれるかな?ここの所長に案内するよ」
「了解」
そして、私は研究室の外へと出て、広い通路を歩いてゆく。
私の周りを、軍人が囲うようについて来る。多分…いや、十中八九私の護衛なんだろう。
「質問がある」
「何かな?」
「一部の機能に制限やロックが掛けられているが、これは?」
「ああ、それは規則でね。許可が降りるまでは解除出来ないんだ。正直に言うと、プログラムに異常があった場合、君を抑えるのが大変だからね。他に何かあるかな?」
「今は無い」
「そっか。っと、ここが所長室だよ」
研究員がドアの前に立ち、ノックを2回した。
「所長、彼女を連れて来ました」
「入ってくれ。護衛は外して構わん」
「了解しました。じゃ、入るよ」
研究員がドアを開け、部屋に入室する。私もそれについて来る形で入室し、背後でドアが閉じる音が聞こえる。多分、研究員が閉めてくれた。
私の前には、今となっては希少素材で作られた机、その上にある書類の束。
そして椅子に座る、一人の男性。外見は、インプットされたデータから判断すると《イケメン》という分類に該当する。歳は恐らく40代前半。
「初めまして、だな。私はエイブラハム・ベアード。BFF社AC研究開発部所長だ」
「アーマードコア2番機、ホワイト・グリント」
そう言って、私はBernard and Felix Foundation社式の敬礼をする。Bernard and Felix Foundation社式とはいっても、国家陸軍の敬礼と全く同じ敬礼だ。
「私にはそう改まらなくてもいい。私にとっては、ここの所属…いや、BFF社の者は皆仲間だからな」
「了解」
「目覚めて早速の所悪いとは思っているが、2時間後にはメンテナンスの後、最終テストを行って貰う。そこで君の実力を示して欲しい」
「時間まではどこかで待機か?」
「いや、レイ…君をここに連れて来た研究員にここの案内をして貰う。短い間だが、知っていて損は無い」
「分かった」
「それじゃ、外してくれ」
所長の会話を終え、研究員…レイと一緒に所長室から退室した。
「さて…所長が言ってたけど、今から研究所を案内するよ。よろしく、グリント」
「よろしく、レイ」
その後、私は護衛とレイの案内の元、研究所を回った。とはいえ、殆どが作業中だったから中には入れず、場所だけの案内だったけど。
2時間後。時間通り、私は訓練の為メンテナンスを行う為、アリーナ前のメンテナンス室に入った。
私の身体の所々に機器が接続され、プログラム、ボディ、システムのチェックが行われている。
それを統括しているのはレイ。彼は私の開発計画の主任を勤めていたらしく、そのペースはかなりの物だ。
「グリント、どこか異常は無いか?」
「大丈夫」
「そっか」
「何故そんな質問を?」
「ACの開発当初、プログラムの暴走があって甚大な被害が出た事件があってね。その時はプロトタイプが異常を報告してたが、手遅れだったんだ。今は技術力が上がって、そんな事態が起こっても大丈夫だけど、確認は欠かせないから」
「…データにあったが、そういった事を臆病、と言うのか?」
「あはは…そうかもね。けど、それを決めるのは自分自身さ。君も、今も考え、決断して行動してるだろう?人に考えが理解出来なくても、結局は自分が自分の道を決めるのさ」
「自分が、自分の道を…」
「まだ君には難しい話だったかな…よし、メンテナンス終了。撤去を」
レイの指示が飛ぶと同時に、何人かの研究員が私からコードを外していき、自由に身体が動かせるようになる。メンテナンスがしっかりと行き届いているのか、さっきよりも身体の反応が良い。
「さて、次は最終テストだね」
さあ、次は私の性能を証明する最終テスト…一つのミスさえ出来ない。
レイには感謝する必要がある。目覚めて始めての山場の前に、私を診てくれたから。
「レイ」
「何かな?」
「…ありがとう」
レイは私の言葉に、一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔になった。
「どういたしまして」