ARMORED CORE -果て無き戦いの中に生きる兵器- 作:アナトリアの傭兵
メンテナンスを終えた私は、テストアリーナへと案内され、私の武器と弾薬を受け取り、アリーナの端で開始を待っていた。
腰部に接続されている翼の先端には、分裂ミサイル SALINE05が接続されている。他の兵器は、戦闘訓練開始前に支給される、との事だ。
私の視界の端には、レーダー、ECM濃度、火器残弾数、ダメージ情報、その他多数の情報が表示されている。
『聞こえるかい、グリント』
「問題無い、聞こえる」
通信から聞こえてきたのは、レイ。今回はレイから訓練の説明をして貰うことになっている。
『まずは機動テストからだ。ブースターのロックを解除するよ』
《Booster unlock confirmation》
『それじゃ、今からルート情報を送信するから、その通りに飛んでくれ』
「了解」
《Data reception. Show details for information》
私の視界に、新たな一本の線が現れる。線には一定の間隔で四角によって結んでいて、その上にメートル単位で距離が表示されている。
私は、僅かに腰を落とすと同時にブースターを起動。
脚部と腰部の通常ブースターユニットに青い光が灯ると共に、急速加速。僅か0.5秒後には500km/hを突破した。
テストアリーナのアスファルトを削りながら、私はルート上を走って行く。ただ真っ直ぐに進む訳も無く、幾つかの難所もあったけど、難なくクリア。
すると、線は上に逸れて空中を飛行するルートを示している。
ブースターの噴射方向を修正し、私の脚は地面を離れ、空中へと飛び立つ。
『ここからは君の真骨頂の一つ、空中機動だ。
《Quick Boost and Overed Boost unlock confirmation》
『さあ、存分に
その言葉と共に、私はOvered Boostを起動。Glint Wingの展開が始まり、約20個の超高出力ブースターがその姿を現し、エネルギー収束を開始。甲高い収束音が、噴射音を隠す。
そして、爆発。エネルギーの翼を形成し、一気に音速を突破。2460km/hで突き進む。
714m先に、線が右方向に一回、すぐに左方向に一回、直角に曲がるのを確認。到達は約0.957秒後。
到達まで、0.012秒前。その瞬間、Quick Boostを発動。
ジェネレーターから供給されるコジマ粒子(※1)をブースターにチャージ。そして、噴射方向を右方向へと修正と同時に、一気にプラズマ化して推力を獲得。830km/hの速度で右方向へと飛び、ルートを外れる事無く飛行。
ルートの難易度は急激に増してゆく。Overed Boostを停止し、超高速機動へと移行。Quick Boostを耐えず発動して、様々な角度へと曲がっていく。
それを繰り返す事、2分。機動訓練の終わりが見えた。
《About to reach 500m》
最後は、直線。下降しながら地面に着地するルート。
再びOvered Boostを発動し、音速突破。噴射方向を”前方”に修正して、急速下降を開始。
50m地点でOvered Boostを停止。同時にQuick Boostを前方方向に発動。瞬間的な急減速を行った後、地面に着地。残り5mは通常出力で進み、到達。
ブースターを停止し、次の通信を待つ。
『これで機動訓練は終了だ。次は戦闘訓練に移行…する前に、君の武器を送るよ』
前方2mの地面がせり上がり、中が開く。その中には武器と弾倉が入っている。
武器を手に取る前に、予備弾倉を脚部にある弾倉入れに収納。
そして、右手にライフル 051ANNR、左手にはアサルトライフル 063ANARを持つ。弾倉は既に装填済み。
051ANNR、063ANAR、SALINE05。これが私の通常兵装であり、私の為に作られた専用兵器。人間でも持てるサイズでありながら、圧倒的な火力を持つ。しかし重く、反動が大き過ぎて、人間では扱えない。だから私でしか扱えない兵器。
『それじゃ、ロックを解除するよ』
《Fire control system unlock confirmation》
《All Primal Armor waveform shaping equipment unlock confirmation》
《Assault Armor unlock confirmation》
『今からターゲットを出現させるから、君にはそれを全て破壊して欲しい。攻撃方法は問わないよ。ただし、アサルト・アーマーを必ず一回以上発動する事』
「了解」
『ああ、それとターゲットも攻撃するから、注意してね。勿論実弾だから。カウント開始』
──Start counting。
アリーナのアナウンスが入る。私は
──3。
全兵器の安全装置を解除。残弾数を確認。
《051ANNR 30/150》
《063ANNR 50/300》
《Right SALINE05 36》
《Left SALINE05 36》
──2。
緑色の発光と共に、プライマル・アーマーが展開。私の周囲に不可視の膜が張られる。
──1。
引き金に指を掛け、レーダー出力を最大に上げる。
──Start。
その瞬間、私は空へと駆けた。
同時刻、アリーナ管制室。
「所長」
「どうだ、グリントは」
所長が入室し、手が空いている物は敬礼をする。所長はレイへと声を掛けた。
「良好です。現段階で、既に我々の想定以上のスペックを記録しています」
「何?」
レイの目は、アリーナのカメラ画面と計測器から離れていない。
「グリントは”彼女”を上回る、”AC”の素質を持っています。”彼女”と同等に、BFF社の新たな切り札になるでしょう」
その時、画面が緑色の光に染まる。同時に、計測器に新たな記録が表示される。
そして、管制室に警報が響き渡る。
「これは…何て事だ!?グリント!!!!」
「どうした!!」
「アリーナ中央にて、ホワイト・グリントのアサルト・アーマーによって、半径70mのコジマ爆発が発生!!高濃度のECM及びEMPが発生し、全ターゲット及びホワイト・グリントの反応消失!!」
「何だと!!?」
「計算上ではこんな規模のコジマ爆発は起こらない…まさか、機構に問題があった?それともコジマ粒子の過剰供給か?いや、過剰供給を確認すれば自動的に供給は強制停止する。ならジェネレーターの暴走──」
『────』
突然、管制室にノイズが走る。ノイズが荒く、何も聞こえなかったが、すぐに収まった。
『こちら、ホワイト・グリント。管制室、聞こえるか』
「「「「!?」」」」
「グリント!?無事か!!」
『問題無い。ただ、外部損傷は無いが、レーダーがEMPにやられた。誘導を頼む』
「あ、ああ。こっちから君が捕捉出来ていないから、とりあえずそこから離れてくれ」
『了解。オーバー』
グリントからの通信が切れ、管制室に静寂が訪れる。
「…レイ」
「はい」
「例の件を君に任せたい。どうやら、君以外には務まりそうにないらしい。ここを離れる事になるが、構わないか?」
「お任せ下さい」
(※1)コジマ粒子
国家解体戦争の7年前に発見された緑色の粒子。主に軍事転用に活躍しているが、広域かつ長期的な環境汚染を及ぼす欠点がある。