Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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今一、話が進まなかったかな?

本編第十三話です。
黒子のバスケ×マスカレイドスタイル×仮面ライダーSPIRITSと言う多重クロスオーバー。

戦闘戦闘ばかりになるつもりが、何か停まっちゃったな、おい。
さて、エレヤンとの決着何処に着地させよう。

なお、この話は黒子のバスケと仮面ライダーSPIRITSの登場人物に、マスカレイドスタイルと言う同人TRPGをベースにした独自設定を付加した二次三次創作となります。
その為、原作の登場人物と家族設定などに改変があります。
また仮面ライダーの解釈にも、私家設定が前面に出てきます。
他にも作者設定のオリジナルキャラクターも何人か出てきますので、そう言うものがお嫌いな方はこのままbrowserbackをしてください。
キャラクター改変がお嫌いな方も同様に願います。

尚、この話はmixi、pixivにも掲載しています。


episode07  疾風の子供達

 突発的に始まった、『兄弟』喧嘩から一〇分後。

 

「落ち着いたか、ダアホ共」

「「へい」」

 

 灰崎祥吾と火神大我の二人は、誠凜高校主将日向順平の拳骨を喰らい、揃って草の上で正座していた。

 その頃には、崖の上から桐皇学園の面々も降りて来ており、『仮面ライダーHOPPER』の正体にそれぞれ驚いていた。

 まあ、純粋に驚いていた先輩同輩の中、狐に摘まれたような面差しで祥吾を見ていたのは、中学時代の同級生である桃井さつきだ。

 かつて、何だかんだ言いつつ女子マネージャー達に親切だった祥吾を知りつつも、他校の不良に絡まれていた彼を見た事があり、また主将である赤司征十郎からの接触禁止を受け、彼から距離を置いていた桃井は一番複雑な思いを抱えていた。

 また、情報戦を得意と自負していた彼女にとって、祥吾が仮面ライダーをしているなどと言う情報は欠片も拾った事が無く、それがまた彼女の困惑を深めていた。

 その横で、青峰大輝は並んで他行の主将に説教されるかつてのチームメイトと現状で最高のライバルの姿に、名状しがたいもやっと感を抱えていた。

 正直言って、中学時代は一番自分に近い位置にいただろう灰崎と言う男と、ライバルである火神大我が仲が良いと言うだけで、何処か苛立つものを感じるのだ。

 そんな、元同級生の思いを知ってか知らずか、祥吾はやっと自分を認識するようになった幼馴染みに笑顔を向けた。

 

「取り敢えず、良かったよ。火神のおじさんや、兄ちゃん達にも、後で知らせなきゃ」

「あー、うん。でも今は勝義島だっけ?

 ここから脱出するのが先だよなあ。黒子も幾らレイヴが身体維持してるとは言え、早く病院に担ぎ込まなきゃだし」

「え?」

 

 聞き返した祥吾は、大我が指差した方を見て思いっ切り吹き出した。

 釣られて、そちらを見た青峰と桃井、そして桐皇バスケ部の面々は、そこで面倒臭そうに彼らを見る水色の頭に赤いメッシュが入った赤い瞳の少年に気が付いた。

 

「え?」

「テツ?」

「ああ? 何だ手前ら、この身体の関係者か?」

 

 これまで聞いた事も無い、粗い言葉を吐く『黒子テツヤ』に青峰と桃井が顔を引き攣らせた次の瞬間、その後頭部を容赦なく大我は張り倒す。

 その行動に、驚く人々の前で二人の罵り合いが始まる。

 

「お前、もう少し目立たないように出来ねえのか、本当に!」

「うるせえな、俺の勝手だろうが!」

「カラスだからって大人しくしてろ、うろちょろしてたって、メダルなんか落ちてねえから!」

「だから俺様は鴉じゃねえって言ってんだろうが!」

「だからお前らは静かに出来ねえのか! こんのダブルダアホ共!」

「うぎゃ!」

「ぐが!」

 

 再びの拳骨に、凸凹コンビが沈没する横で、日向順平は桐皇の面々に頭を下げた。

 殴られた場所をさすってやりつつ、祥吾が仕方が無いと言いたげに溜息を吐く。

 

「そう言えば、お前は順平兄ちゃんとは学校の先輩後輩としての付き合いしかないんだよな。

 兄ちゃん、うちでも指折りの鉄拳制裁派だし」

「え、ええっと、灰崎、は、キャプテンと知り合い、なの?」

 

 そのやり取りに、おずおずと口を挟んだ誠凜一年の問いに、少し考えた後祥吾は順平の方を見た。

 その視線に気付くと、本当に言い辛そうに順平は、自分と仮面ライダーとの関係をばらす事にした。

 言い辛いのは勿論、昔の誘拐事件をあまり詳しく言いたくないからだが。

 

「あー、昔、な。犯罪事件に巻き込まれて、怪我した事があったんだけど、その時助けてくれた人の義理の息子が灰崎で、その幼馴染が火神なんだそうだ。しょ、灰崎は、治療中に何度か会いに来てくれてな。

 まあ、俺は火神とは面識無かったんだ、こいつがアメリカに住んでた頃の話だから」

「父ちゃんは、世界中で犯罪組織ぶっ壊して歩いたついでに、そいつらの所為で身寄り亡くしてる子供を大勢引き取ってるからなあ。

 単身攫われた順平兄ちゃんは、レアなケースだって兄ちゃん達言ってたし」

 

 祥吾の言葉に、福田寛と桜井良の目の色が変わった。

 彼らにしてみれば、そんな犯罪組織を粉砕して歩くような人間など、一人しか思い当たらなかったからだ。

 

「あ、あの、日向さん、灰崎君、まさかと思うんですが、その、お父さんってまさか」

「疾風の都市伝説、十一人目の仮面ライダー、ですか?」

「あ? 骸骨ライダー(Skull-Rider)って祥の父ちゃんの異名だろ?

 USAじゃ『東海岸の百舌(Shrike of East Coast)』の方が、通りが良いらしいけどさ」

 

 さらっと、大我の投げ込んだ爆弾にライダーファン二人が座り込む。

 そして、普段糸目の今吉翔一が思わず目を開いて聞き返す。

 

「つまり、SPIRIS隊総隊長滝和也の、関係者なんかお前ら」

「「「うぃっす」」」

 

 間髪入れずの返事に、今吉は思わず天を仰いだ。

 何だかんだと言って、仮面ライダーに助けられた過去から少年仮面ライダー隊に所属し、BADAN戦役の折には仲間と一緒に被災者救援に走り回り、それが縁で母と結婚したなどと言う経歴を持つ父が聞けば、どんな騒ぎになるか判ったものではない。

 それ以上に、事態を知らなかったらしい誠凜桐皇両校の生徒達が、話題に置き去りにされてぽかんとなっているのに向かって、引き攣るこめかみを押さえつつ今吉は声を張り上げ、後輩一同に移動する事を告げた。

 

「詳しい事は、安全圏に移動してから質問大会と行こうや。

 ここから動くで、さっきの飛蝗の怪人だったケバイおばはんみたいなんがまた来られても困るし、他の学校の連中の事も気になるしな」

「ちょ、ちょっと待って下さい、今吉先輩。

 テツ君がこんな状態なのに、そんな訳の判らない状態で動くなんて」

 

 金切り声で、三年生の言葉を遮ったのは桃井だった。

 それに向かって、宥めようと声を掛けたのは相田リコである。

 現状として、事態に理解が追い付いていないのは彼女も一緒だが、バスケ部監督として部員を無事脱出させる事を第一義としている彼女は、足並みを乱そうとしている一年生を落ち着かせようとしたのだ。

 

「それらも含めて、安全な場所に行こうと言っているのよ、落ち着きなさい」

「第一、仮面ライダーが何だって言うんですか、学校じゃ不良だったくせに、学校の外で喧嘩ばかりしていたくせに、私達は何の関係もないじゃないですか!」

「馬鹿だなあ、関係ないのはそこの眼鏡やこっちの白い連中で、お前とそこの青黒いのは元凶じゃねえか、履き違えるなよ女」

「おい、レイヴ!」

 

 だが、そんな彼女を言葉で張り倒したのは、彼女の思い人の姿をした赤い鴉だった。

 レイヴは大我を顎で示すと、小馬鹿にしたような声でこう言い放った。

 

「俺は、こいつを探す間に、あの珍妙な連中が話しているのを聞いたからな。

 『キセキの世代』なら、『ArmoredRider』システムに適合するだろう。勝つ筈の消化試合に負けて、良い感じに歪んでいる筈の子供だ、ちょっと突いてやれば簡単にこちら側に転がるだろうだとさ。

 上手く行けば、そいつらの学校仲間の中にも、不平不満を抱えた良い素体がいるかもしれないとな。

 で? お前は『キセキの世代』に巻き込まれた他の人間に何を、ガフ!?」

 

 皆まで言う前に、ほっそい体が吹っ飛んだ。

 ぎょっとなった周囲の中、事態を察したのは祥吾と大我の二人だけだった。

 

「マジか、テツヤの奴、自分にイグナイトかましやがった」

「何つうか、まさか心臓に刃物刺さった身体でやるとは思わなかったなあ。

 おい、大丈夫かよ、黒子」

「……事態を把握しようと思って黙って聞いていれば、女の人に向かって何言っているんですか、このカラスは」

 

 ぎりぎりと顔を持ち上げたのは、何時もの水色の髪に瞳の、黒子テツヤであった。

 だが、パチッと瞬きした途端、髪に一房赤いメッシュが走り、盛大に眉を顰めてレイヴが立ち上がる。

 

「ったく、精神力だけは褒めてやるが、人が生命力底上げして傷塞いでる状態だってのに、死ぬ気かこいつ。

 一瞬落ちた所為で、皮膚の下で傷が開くところだったぜ」

「おいレイヴ、黒子は?」

「ああ?

 宿主なら、気絶したよ。死に掛けてた癖に、あんなボディブロウ放つは喰らうはで、二重の意味で余力使い果たしやがって」

「あー、テツヤらしいけど、おいマジか」

「死なせはしないから安心しろ、俺は義理堅いんだ」

「これっぽっちも信用出来ないけど、ちゃんと守れよ、黒子の事」

 

 呆然としているさつきに向かって、メッシュ入りの水色頭を軽く叩いた大我は改めて向き直った。

 

「事態が判らなくて、顔見知りに八つ当たりしたいんだろうってのは判るが、今は我慢してくれねえか?

 俺もキャップも、戦力としては二の線で、経験値って意味では祥しか頼れないんだ。

 こんな何が起こるか判らないところで、怪人に怯えながら現状の不安に当たり散らすのは唯の自殺行為だと思うんだが、桃井はそう思わねえのか?」

「え、あ……」

「おい、火神、戦力って」

「あ? 何だ、青峰、お前もキャプテンと同じもの持ってんのか」

 

 思い切って話し掛けようとした青峰の、手の中にあるマンゴーロックシードと戦極ドライバーに気付いて、大我はドライバーをひっくり返し、順平のものと同じところに貼られたシールに眉を顰めて見せた。

 ライバルと思っている男の、青峰には良く判らない行動にいらっとなり、取り返そうとしたその手の先から更に取り上げたのは祥吾だった。

 

「こいつ、ドライバーだな」

「あ、祥、そこのシール剥がしてくれ、キャプテンも剥がしてたから」

「これ……。なるほど、ショッカーの派生組織だから鷲のマーク、ね。趣味悪いぜっと」

 

 ビッと剥ぐと、順平の時と同じく、パシュッとシールは爆ぜる。

 グローブ故に火傷はしなかったが、手の中で癇癪玉よろしく爆発したシールに、祥吾は更に眉を顰めた。

 

「嫌な感じだなあ、自爆かよ」

「キャプテンが言うには、こいつの所為でこの錠前みたいなのから普通より強い悪意とか毒電波みたいなの?

 そう言うのが出て、ウォーモンガーとか破壊魔? そう言うのになるみたいだぜ」

 

 大我の言葉に、真顔になったのは上級生達だ。

 

「ほんまか、日向」

「確証はありません、でも明らかに後付されたシールに見えましたし、さっき見掛けた奴の話しぶりだと、このドライバー自体はこことは異なる世界から持ち込まれたものらしいので」

 

 そう言うと、順平はちらりと祥吾を見た。

 

「それこそ安全を確保出来れば、祥、いや灰崎の持っている機材で簡単にですが解析して貰えるんですが」

「灰崎が?」

 

 周囲の視線に、順平はどう言葉を繋げたものかと言葉に詰まる。

 それに答えたのは、当の祥吾だった。

 ロストドライバーから抜いていた、T-1《HOPPER》メモリを掲げて見せながら、こう自己紹介をした。

 

「あー、どうせ、後で判る事っすから、白状しときます。

 俺は、警視庁対未確認生命体対策班通称《S.A.U.L》の民間協力者の一人で、世間で《仮面ライダーHOPPER》と呼称される『対ドーパント特命捜査官』と言う肩書き持ちです。尤も、これでもキャリア三年なもんで、《未確認》と付く相手には大抵駆り出されてんですがね。

 俺が使っているガジェットが、このガイアメモリって奴なんですがね、こいつはメモリ一つ一つに『地球の記憶』って物が納められているんですよ。この中の、《COMPUTER》や《BOOK》を使えば、ちょっとした研究所で調べる程度の事なら一〇分程で判ります。

 ただ、精度を求められると、やっぱりそれなりに解析時間が欲しいんで、三〇分絶対安全な箇所でって条件を付けさせて下さい」

「そんな事が出来るのか?」

「俺は、《クウガ》や《アギト》と違って、ガジェットありきのライダーっす、基本的に持っているT-1メモリの内容によりますが応用が利くんすよ」

 

 桐皇三年生にそう答えると、祥吾は困ったように桃井の方を見た。

 

「俺の事、調べてもライダーだって判らなかったって?

 そりゃあ、俺も曲りなりに警察関係者に数えられるし、《S.A.U.L》側ではライダーの素性は秘匿情報になるからな。

 俺や他のライダーに関する情報は、専用回線からのアクセス以外じゃ弾かれるようになってるらしいから、一般人のサツキちゃんやセイジューローが調べても、何も出てこなかったと思うよ」

「あ」

「あー、梓小母さんを引き抜こうとした製薬会社が、お前を誘拐する為に近隣の不良嗾(けしか)けてお前を学校から追い出そうとしたと言う。

 確か事態を知った小父さんが、日本警察に自力で捜査した事と犯人一ダースほど引っ括って持ち込んで、そのまま上層部総入れ替えに持ち込んだあの騒ぎか」

 

 祥吾の言葉に、桃井と青峰があっとなったその横で、あの当時の騒ぎを思い出し順平が額を押さえる。

 その内容に、『滝和也』を知る三人が「あー」と思う。

 それに向かって、リコは手を叩いて意識を現実に引き戻した。

 

「ほらほら、移動しましょう、そうじゃなくても大人数なんですもの、こんな狭い道でまたあんな連中とぶつかったら怪我人が出ちゃうでしょ!」

「せやな、ほれ皆、動くで」

 

 リコに続いて今吉も号令を出した為、学生達は漸く歩き出した。

 

 

 山道を、港があるだろう方向へ歩き始めて二〇分程経った頃だろうか。

 緩やかな下り道から、十一人の学生達が上がって来るのを伊月俊が見出した。

 

「日向、海常と秀徳が上がってくる!」

「え!?」

 

 それを聞いて、祥吾は複雑そうな表情で列の後ろに回ろうとしたが、その腕を大我が掴んだ。

 

「? おい」

「とっとと話してしまえよ。

 どうせ、その後レイヴ乗っけた黒子見せれば、黄瀬(あいつ)なら同時に二つの事考えられないだろ?」

「……お前、何か黒くなってないか、その、昔はそんなんじゃなかった気がするんだけど」

 

 汗かきつつの祥吾の言葉に、思わず桃井と青峰もこっそり頷く。

 こう言っては何だが、火神大我と言う男はお馬鹿と紙一重の素直さが特徴だった筈なのだ。

 だが、それに向かって大我はしれっと、こう切り替えして来た。曰く、

 

「あ? あー、辰也がそんなノリだったから、その所為?」

「恨むぞエレガントヤンキー」

 

 WC(ウィンターカップ)の際、DQNとしての印象付けの為に目立つ相手に絡んだら、実は幼馴染みと拗れた義兄弟関係を抱えたヤンキーだった事を思い出し、思わず祥吾は天を仰いだ。

 そんな事をやり取りしているうちに、海岸線から上がって来た秀徳、海常組の中から、祥吾に気付いた高尾和成がぱっと走り出した。

 その後ろから、高速で眼鏡のリムを上げ下げしている緑間真太郎が、常に無いズカズカと言う歩調でついて来ていたが。

 

「祥ちゃん、良かった、怪我無い!?」

「カズ!」

 

 跳び付いて来た幼馴染みを受け止め、怪我も無い様子に祥吾は思わず安堵の溜息を吐いていた。

 尤も、それはその次の瞬間に起こった、「あーー!」と言う、大声ですぐ手放さねばならなかったが。

 

「ショーゴ君!?

 何でこんなとこにいるんすか!?

 もしかして、あの良く判らない灰色だったり黒い全身タイツだったりする連中の仲mあだだだだだ」

「笠松、後輩の躾がなってねえぞ、圧殺すっぞ」

 

 黄瀬涼太が皆まで言う前に、その身長との対比で更に彼を高く見せる小さな頭を、宮地清志が音を立てんばかりに握り込む。

 それに向かって、額を押さえた三年生が口を開くより先に、庇うつもりらしい中村真也が静止しようと声を掛ける。

 

「キヨ先輩、一応これはうちの人員ですから、こっちに渡して下さい」

「ああ?

 こう言うのは口だけじゃ判らんと思うぞ、真也」

「判ってますよ、あれだけ散々笠松先輩にしばかれて怒られても、部員以外には終ぞ改める気が無かったようですから。

 ですが、来年度からは俺と早川と二人でチームを率いる立場になりますから、これからは他のチームの人間に突進したりさせないよう、徹底的に躾けますから」

「あれ? 何か俺に死亡フラグが立った!?」

 

 立てた親指を、びっと下に向けた真也の発言に黄瀬は蒼褪め、学校の先輩と同輩はおおっと感嘆の声を上げる。

 だが、頭の痛みに握られた場所を摩りつつも、問題児(きせ)は祥吾に噛み付く事を止めようとしない。

 

「大体、ショーゴ君は合宿参加者じゃ無いっすよ!

 それなのに何でこんな所にいるんすか!」

「ああ、黄瀬、それ、俺の所為。忘れ物持って来て貰ったんだ。

 て言うか、もしかして真兄ちゃんにきー兄ちゃんにゆー兄ちゃん!?

 うわ、俺本気で記憶おかしかったんだ!?」

 

 だが、黄瀬にあっさりとそう言った大我は、そこに立つ面子の中から昔馴染みの顔を見出し、ツートンカラーな頭髪を思いっ切り掻き混ぜた。

 190センチの大柄な優勝校のエースの反応に、はぁ?っとなる面々の中で、宮地裕也が大我に近付き、思いっ切りその頭をもしゃぐった。

 

「こんの馬鹿野郎、やっと思い出したか。この三年間、こっちがどんな気持ちでいたと思ってやがる!」

「あ、裕也手前、抜け駆け!」

 

 そう言うなり、黄瀬を棄てた清志も、大我の頭をもさもさと撫で始める。

 小学校二年までの極短い間ではあったが、星心大輪拳と赤心少林拳の交流試合の際、赤心のエースと言われた三人に弟として愛されていた大我の事を、宮地兄弟も可愛がっていたのだ。

 ストレスなのか、高速で眼鏡のブリッジを上げ下げする某『キセキの世代』の攻城兵器と、他校上級生のその行動にぽかんとなる黄色いモデル、先程からのアップダウンの激し過ぎる状況に付いて来れていない事が丸出しの各校の面々が見詰める中、眼鏡を掛け直した中村真也がぽんと大我の胸を叩いた。

 

「そうか、俺達が判るか。

 ……やっと言えるなあ。お帰り、大我」

「おう、こんな時に言う事でも無いと思うけど、ただいま、兄ちゃん」

「全くだ、何暢気に挨拶してやがる。

 この島から逃げんじゃねえのか、余裕か?」

 

 ぶっきらぼうでぐれた物言いに、「あん?」っと、振り返った宮路兄弟を初めとした上級生集団が見た先には、水色の髪に赤いメッシュを入れた黒子テツヤ()が、つまらなさそうに足をぶらつかせて木の枝に座っている光景だった。

 その光景に、誰かと言う誰何の声より、元同中の疑問の声より、一際大きな声で警告を出したのは和成だった。

 

「キバとビーストが戦って……あれ?

 これ、仮面ライダー? 何でキバとビーストに襲い掛かってんの!?」

「高尾!?」

 

 打って変わった、あせりまくった和成の声に、戸惑う面子の中で何人かが表情を険しくする。

 

「キバとビースト、ってことは洛山と陽泉だな」

「もしかすると、こいつを使った誰かが、暴走しちまってるんじゃないかな」

 

 唸った真也に、バッグに突っ込んでいた戦極ドライバーを取り出してこう言ったのは順平だ。

 その言葉に、同じものを後輩が持っている他校の上級生達が、怪訝そうに順平を見る。

 幼馴染みの警告に、先程の喧嘩の際に外していたロストドライバーとレモンイエローのメモリを手に、祥吾が少年達を振り返った。

 

「先輩方、俺、先行します。

 大人数になりますが、お願いします!」

「判った、気を付けて行けよ!」

 

 清志の返答に頷き返すと、祥吾はドライバーを腰に巻き、手にしたメモリをコールさせた。

 

   LIGHTNING!

「変身!」

 

 頬に、雷をデザイン化したらしいラインが隈取のように入ったかと思うと、その全身をペールイエローの強化服が覆う。

 その姿を、同中組がぽかんと眺める中、仮面ライダーは《LIGHTNING》メモリの力で、和成の指し示した方へと一気に突進した。

 その後ろで、大我がメダルドライバーを片手に、レイヴにもう片方の手を差し出していた。

 

「レイヴ、メダル!」

「本気か? 逃げた方が良くないか?」

「メダル出す奴がいるかもしれないぞ?」

「はあ、まあ、いいか。無くすなよ」

 

 ポンッと、投げ渡された三色のメダルをドライバーに差し込み、「変身!」っと、大我はスキャナーを滑らせた。

 

   タカ! トラ! バッタ!

   タ・ト・バ、タトバ、タ・ト・バ!!

 

 突然の音声に、誠凜以外の学校の面々が振り返り、そして黒地に三原色が映える新たなライダーの出現に驚いた。

 

「は? 何だ、こいつ」

「え? まさか、大我?」

「こら、火神、お前!」

「多分、暴れてるのは辰也だと思う。祥にあいつの相手させるのは荷が重いと思うんで、行ってきます!」

 

 そう言って、姿勢を低くした大我(オーズ)の足が、バッタそのもののような形に変形する。と、思った次の瞬間、一気に数十メートルを一歩で飛び越え、先行した仮面ライダーを追って小さくなった。

 ぽかんと、その姿を見送った大半の生徒達の中で、曲がりなりにも『ライダー』の称号を背負った面子の回復は早かった。

 

「順、あれはどう言う事だ?」

「黛さんと福井さんが言っていた、火神の中の変な力って奴です。確か、昨日祥吾が検索した何とかって言う」

「ああ、【欲望のメダル】、か」

「どうも、黒子に取り憑いてる奴がそれに係わる存在らしいんですが。って、あいつ、まさか火神を追っていったのか!?」

「日向、どうしよう、あいつはともかく、黒子は怪我してるのに!」

 

 上級生へ説明している途中で、件の片腕怪人が憑依先の後輩共々いなくなっているのに気付いて、順平と副主将の伊月は蒼褪める。

 額を押さえて唸ったのは少しのことで、次期主将と副主将である裕也と真也とが判断を下した。

 

「ここで雁首揃えてても仕方が無い、俺達も移動しよう」

「そうだな。人数は多いが、俺と清志さんとで警備しよう。カズ、一旦休め、代わりにフードロイド達に警戒させろ。お前、逃げ出してからずっと《鷹の目(ホークアイ)》を最大範囲で使っているだろう」

「っ、はい」

 

 真也の言葉に一瞬詰まった和成が、観念したように目を閉じると、そのまま手探りでスポーツバッグの中からハンバーガー型のギミックと、『6』とナンバリングされた何かのスイッチを取り出した。

 目を閉じ、開く様子の無い和成を気にして、緑間がその横に近付いたのを見て、これは大坪泰介が元主将として声を掛けた。

 

「緑間、どうやら高尾は今まで無理をして広範囲を見続けていたらしい。

 目を開けられるようになるまで、暫く手を引いてやれ」

「! わ、かりました」

「え!?」

「高尾、お前もだ、無理しやがって。今は目を閉じてろ、俺達がいるから」

「あ、あはは、ありがとうございます」

 

 緑間の返事を受けての、木村信介の声掛けに礼を言うと、和成は手探りでギミックにスイッチを差し込み、起動させた。

 ハンバーガー型フードロイド『バガミール』は、和成の手の中から飛び降りると自走形態に変形して、先行するように細い山道を進んでいく。

 その後ろを、学生達はおっかなびっくり歩き始めた。

 何人かは、事態に対応出来るよう、それぞれの変身ツールを片手に握り締めながら。




清志「後書き何か書いてくれっとさ」
和成「何を!?」
祥吾「何をって、俺達に何しろと?」
大我「子供の頃の思い出とか?」
真也「何それ黒歴史」
順平「言えないような事が多いんですか、あんたら」
裕也「子供の頃って、俺と兄貴は交流会の時に会う事が多くて、付き合いが深くなったのって、兄貴が高校進学してからって感じなんだが」
清志「それな。俺がライダーになった話は、そのうち本編でエピソードとして出すつもりらしいし」
裕也「俺にとっちゃ、それこそ黒歴史だし」
――この面子で、拳法を習ってないのは順平だけですか?
順平「あー、そうなるのか?」
大我「親父の転勤でLos Angelesに行った俺も、中途退会って形になった。あの当時、まだ赤心少林拳の道場はNew Yorkにしかなかったもんだから」
祥吾「去年、高弟の一人がロスに道場立てたからなあ」
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