Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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良かった、年内に揚げられたよ! (∩´∀`)∩わ~い♪

本編第十四話です。
黒子のバスケ×マスカレイドスタイル×仮面ライダーSPIRITSと言う多重クロスオーバー。

何とかエレヤン止められた―。
でも、次……頑張ろう、うん。

なお、この話は黒子のバスケと仮面ライダーSPIRITSの登場人物に、マスカレイドスタイルと言う同人TRPGをベースにした独自設定を付加した二次三次創作となります。
その為、原作の登場人物と家族設定などに改変があります。
また仮面ライダーの解釈にも、私家設定が前面に出てきます。
他にも作者設定のオリジナルキャラクターも何人か出てきますので、そう言うものがお嫌いな方はこのままbrowserbackをしてください。
キャラクター改変がお嫌いな方も同様に願います。

なお、この作品はpixiv、mixiにも掲載しています。


episode08  灰色の真実と絆と

 氷室辰也の振り回すバナスピアーは、本人の喧嘩センスと、素人ゆえの無軌道さで仮面ライダーキバ事黛千尋の手を焼かせていた。

 

「くそ、こいつっ」

「あはははは、どうした、殺す気で来いよ!」

「馬鹿言え、そんな事出来るかっての」

 

 そう、氷室の方はキバを殺すつもりで襲い掛かっているが、千尋の方は氷室を取り押さえ、腰から戦極ドライバーを奪う事が目的で、彼を痛めつけたり傷付けたりなど論外なのだ。

 だと言うのに、ドライバーの細工によって戦闘意欲が異常高揚している当人は、相手の気遣いにお構いなく嬉々として襲い掛かっているのだ。

 その様子を横目に、骸骨鎧の怪人がケラケラ笑う。

 

「あはは、いいねえ、歪んでるねえ、楽しいねえ」

「何が楽しいんだよ、糞が!」

 

 ファントム・レギオンの物言いに、わらわらと増えていくグールをダイスサーベルで叩き斬りながら仮面ライダービースト事福井健介が怒鳴り返す。

 彼らの背後では、合流した洛山、陽泉両校の生徒達が、じりじりと間合いを詰めようとするグール達と睨み合っていた。

 その時だった。

 

   HOPPER!

 

 頭上で響いた電子音声に、あっと思った次の瞬間にはライトグリーンの何者かがグール達を着地の衝撃で跳ね飛ばしていた。

 舞い上がった土埃から、腕で目を庇っていた赤司征十郎が見たものは、着地の姿勢から跳ね上がるようにして二体のグールを蹴り飛ばし、その反動で姿勢を取り直した骸骨にも飛蝗にも見える人物だった。

 その姿に、真っ先に声を掛けたのは陽泉主将、岡村建一だった。

 健介と一緒に、彼の東京にいる『家族』に何度か会いに行った事のある彼は、そこにいる『仮面ライダー』が『弟』の一人である事を知っていた。

 

「お前さん、『HOPPER』じゃろ? どうしてここにおるんじゃ!?」

「岡村さん、詳しい事は後で!」

 

 そう言うなり、仮面ライダーHOPPERこと灰崎祥吾はそこにいる中で一番小柄な赤司に掴み掛かろうとしていたグールを殴り飛ばし、ペールイエローのメモリをコールさせて腰のMAXIMUMSLOTに指し叩いた。

 

   LIGHTNING! MAXIMUMDRIVE!!

「親父から聞いた、《伝説》ストロンガーの技!

 エレクトリック、ファイヤー!!」

 

 HOPPERの声に、キバとビーストが慌てて相手を振り払い、宙へと飛び上がった。

 二人の行動に、反応が遅れたレギオンと氷室、そしてグール達はその直後に足元から流れた高圧電撃に悲鳴を上げた。

 HOPPERの殴りつけた地面から、彼の前面に向かって扇状に数十万ボルトの電撃が放たれたのだ。

 湿り気のあった赤土だった為に、電撃は地面を焼き焦がしながら地面に足を付けていた面々を襲った。

 下級ファントムであるグール達は次々と崩れ落ち、元となる魔石の欠片も電撃に耐え切れずに砕けた。

 勿論、自身の正面側へ扇状に電撃を走らせる為に、何十回と無く練習を繰り返した祥吾がいる。

 

「があぁぁっ!

 この、舐めた真似を、人間風情が!」

「はん、力を手にしたと思って、他の人間見下すと碌な事が無いんだぜ、元人間さんよ。

 こちとら特命捜査官三年目、奢り昂ぶって地獄に落ちた奴を引き摺り上げて、やらかした事を償わせるのがお仕事でね」

 

 がちがちと、骸骨の顎を鳴らすレギオンに向かって、赤心少林拳の構えを取りつつHOPPERが笑う。

 その両脇にキバとビーストが並び、各々構えを取る。

 

「っとに、技名言ってくれて助かったけど、お前氷室まで巻き込んじまったじゃねえか」

「大丈夫だろう、ほれ、起き上がった。まあ、敵認定されたかも知れないがな」

「あ」

 

 キバの指差した先で、地の底から響くような笑い声と共にArmoredRiderが立ち上がる。

 身体の端々から煙とも蒸気とも付かないものを漂わせ、ArmoredRider、いや氷室辰也はバナスピアーを杖にして立ち上がると、狂気を纏って闖入者に向き直った。

 

「くくっ!

 いいぜ、嫌いじゃないよ、この感じ。さあ、来い! 殺す気で来いよ!」

「ヾ(-ε-; )ォィォィ、向こうさん、すっかりテンションフォルティッシモだよ、どうする千尋アワワワワ(((゚д゚; )))ワワワワッ」

「落ち着けキバット、ここまで煽られてるのか」

「あちゃあ、マスカレイドドーパントを一掃するレベルのつもりだったんだけど、あれ、もしかして耐電能力低かったのか!?」

 

 救助対象である筈の相手の反応に、キバットと千尋、祥吾は蒼褪めたが、それに向かって健介と岡村、劉、紫原は思わず声を揃えていた。

 

「「「「いいや、ただの通常運転(アル)」」」」

「「「うおい!!」」」

 

 思わず気が抜けた相手に向かって、奇声を上げてArmoredRiderが飛び掛ったその時だった。

 

「わわわっ! どいてくれええぇええ!」

 

 悲鳴と共に、空中でバランスを崩したらしい存在が、背中から落ちる体勢でバナスピアーを突き出そうとした氷室の上に落ちた。

 余りの事に、ファントム・レギオンは腹を抱えて笑い出すが、学生達は事態に凍り付くしかない。

 

「あだだだ……。あ、でも辰也を抑えたから、まあ良いか」

「おい、その声、おま、大我!?」

 

 HOPPERの言葉に、オーズ事火神大我は片手を上げて見せた。

 そのオーズを己が背中から振り落とし、殺気を纏ってArmoredRiderが立ち上がる。

 

「Hey! 良い度胸だ、勿論殺り合うつもりで現れたんだよな?

 さあ! さあさあ!」

「落ち着けよ、辰也!」

 

 オーズは、がんっと殴って突っ掛かろうとした兄貴分を止めると、徐に戦極ドライバーに手をやった。

 開いていたロックシードを閉じて外すと、アーマーが外れ、変形しバナナ型に変わって天空の謎空間へと収容されていった。

 それと、そのまま崩れ落ちた氷室とをぽかんと眺める少年達の前へ、何かが空中から叩き落された。

 思ったより小柄なその存在に、ライダー達は身構えるが、最初にその正体に気付いたのはオーズだった。

 

「レイヴ!」

「くそがぁ!」

 

 オーズ事大我の声に応える事無く、跳ね起きたレイヴ@黒子は頭上を見上げ唸った。

 釣られて見上げた少年達は、そこにいる黒くて黄色い存在に文字通り息を止めた。

 洛山の生徒が降りて来たのとは逆の崖の上に、何者かが立っている。

 黒っぽく見えるのは、肉体の大半を黒っぽい包帯のようなものに包まれているからだ。黄色く見えるのは山吹色の毛並みの所為で、その存在は地上にいるレイヴ@黒子を見据え、くつくつと喉を鳴らして笑った。

 

「やあ、レイヴ。久し振りに会うけど、何か劣化の限りを尽くしてるよねえ。まあ、コアメダル一枚じゃ、そんなものかね?」

「へ、お前だってかすっかすに劣化してるじゃないか、リンク。察するところ、自身のコアメダルは二、三枚って所だろうがよ」

 

 見下した相手の言葉に、カチンと来たのだろう。

 猫型グリードは、セルメダルを数枚取り出した。

 

「はん、またオーズと組むんだ?

 『前』みたいにまた裏切られるがいいよ、今度は腕すら残らないかもしれないけどさ!」

「リンク!」

 

 言い捨てて、リンクと呼ばれた猫型グリードはメダルを生徒に向かってばら撒き姿を消した。

 追い駆けようとしたレイヴ@黒子を自身の後ろに引き戻し、大我はメダルが撒かれた方へと頭を向けた。

 撒かれたメダルは三枚、実淵玲央、葉山小太郎、根武谷永吉の『無冠の五将』と呼ばれている三人に向かった。

 

「させん!」

「この!」

 

 咄嗟に、キバこと千尋と、HOPPERこと祥吾とが跳び付きメダルを叩き落した。

 だが、最後の一枚はカバーしようとしたビーストこと健介の手をすり抜け、実淵に飛び込もうとした。だが。

 

「実淵さん!」

「!? 征ちゃん!?」

 

 メダルは、実淵を庇った赤司に飛び込んでいた。

 そのまま崩れ落ちるように座り込む年下の主将に、二年生達が慌てて駆け寄る。

 

「ひゅー、カッコいいね坊や。結果は変わらないと思うけどぉ?」

「レギオン!」

 

 再び手を叩いて笑うファントムに、ビーストはダイスサーベルを握り直す。

 風を切るサーベルからぬるっと逃げて、骸骨鎧のファントムは笑い続ける。

 

「ほーら、出て来たよ。

 こちらとしてはゲートに使いたいのに、お前達中々折れてくれないなあ」

 

 その言葉通り、座り込んだ赤司の背中から、ぬるりと白いものが現れた。

 その姿はまるっきり、ホラー映画に出て来るミイラ男だった。だが、それは見る間に姿を変え、紅のライオンを思わせる姿になった。

 そいつを見て、レイヴが舌打ちした。

 

「ライオンヤミー、ね。こりゃまたプライドのたっかそうなのが出て来たな」

「レイヴ、どう言う事だよ!」

「セルメダルを人間に入れると、そいつの欲望に反応してヤミーが生まれるんだよ。こいつ、もう成体化するのか。こいつの親、かなり欲望が強いみたいだな」

 

 立ち上がったライオンヤミーは、背伸びするように背を伸ばし、学生達を見回すとエコーが掛かった赤司そっくりな声でこう言い放った。曰く、

 

「ズガタカイゾ」

「ブフッ」

 

 その言葉に、まず大我が吹き出し、その言葉に聞き覚えのある学生達が目を丸くし、ヤミーの親であるところの赤司はと言えば、赤面し小さくなっていた。

 

「スベテニカツ、ボクハタダシイ!」

「うわ!?」

「うぉ!」

 

 ぶんと、音を立てて振り回されたクロウを、HOPPERは飛び退き、オーズは自身のトラクロウで受け止めた。

 ギャリリッと、火花を散らしつつクロウを払い除けると、オーズはレイヴへ怒鳴った。

 

「おい、どうすればいいんだよ!」

「倒せ。それだけさ。

 大丈夫、こいつは宿主から離れて欲望を溜め込むタイプだから、倒したからって宿主には何の支障も無いからな」

「あ、そうか。だったら心配ないか」

「く、黒子?」

 

 先頃和解したと思っていた相手の口振りに、赤司は思わず目を白黒させるが、目の前の怪人に気を取られている状態の周囲は気付かない。

 そして、トラクロウを構え直すオーズの横で、HOPPERは銀色に金色の飾り文字が入ったメモリを取り出し、HOPPERメモリと差し替えた。情報検索用メモリの《COMPUTER》だ。

 途端に、HOPPERは白銀に金色のライン――よく見ると、そのラインそのものはIC回路を横に並べているように見える――が手足と胸部装甲を飾る姿に変わる。

 複眼(ホークファインダー)が数回瞬くと、HOPPERから指示が飛ぶ。

 

「大我、奴の弱点は顎だ!」

「よおし!」

「ボクニサカラウモノハ、オヤデモコロス!」

 

 そう叫ぶや、ライオンヤミーはかっと口を開き、立て続けに三発火炎弾を吐いた。

 吐き出された瞬間はピンポン球くらいだったが、それは一気に膨らみバスケットボール大の火炎球と化して襲い掛かる。

 オーズはそれを掻い潜ったが、メモリを入れ替えようとしたHOPPERは、間に合わないと踏んでそのまま前に飛び出した。その背後には、七人の学生達。

 生身の学生達を庇い、爆炎三つを自らの拳で叩き払ったHOPPERは、しかし三発目を諸に正面から喰らった。――それも、10数キロプラスチック爆弾並みの爆発を受けて、流石にロストドライバーとメモリシステムも悲鳴を上げた。

 結果、変身解除と共にHOPPERこと灰崎祥吾は、その場に崩れ落ちた。

 全身から、ぶすぶすと煙を纏い横倒しになった人間を見て、紫原敦と赤司征十郎の目が限界まで見開かれる。

 

「崎、ちん?」

「はいざき?」

 

 そこにいる筈の無い人物の姿に、元同級生二人は青褪める。

 その横から、灰崎を担ぎ上げ後ろに下がらせたのは、キバこと千尋である。

 

「馬鹿野郎!

 どうしてメモリを《HOPPER》に戻さなかった! 検索捜査用の《BOOK》と《COMPUTER》は装甲ぺらっぺらだろうに!」

「要救助者がいるのに、後ろに爆炎が抜けるかもしれない真似、出来ないでしょうが」

「!」

 

 小さな囁き声だったが、赤司には聞こえた。

 

「俺は、《仮面ライダー》だ、この三年間《S.A.U.L》に協力してきた『スカルライダーの息子達(Sons of Skull-Rider)』の一人だ。

 そうである以上、因縁があろうが無かろうが、危機的状況にある人間を危険に晒すなんて真似、出来ませんよ。

 父ちゃんに、恥じるような事なんて、出来ないよ」

「ばーか、その前に海斗が泣く、天馬が怒るし剛が泣き喚くわい。

 閃も呆れるだろうし、誰よりも空が切れるぞ、お前」

 

 この場にいない何人かの名を上げると、キバは痛みに引き攣る祥吾を後輩達の前に降ろした。

 事態が見えない凸凹コンビはともかく、実淵は居室から体育館に移る際に鞄に突っ込んでいた未開封のミネラルウォーターでタオルを湿らし、それで祥吾の腫れて熱を持った頬を抑えた。

 その横から、痛みに顔を顰める祥吾を、赤司は複雑怪奇に骨折した顔で見詰める。

 

「す、すいません、もう少ししたら自力で何とかするんで」

「大丈夫か、何じゃったら儂が運ぶが」

「そうしてくれ、《DOCTOR》は自分自身を治療する事は難しいんだ」

 

 祥吾の言葉に、傷の具合を覗き込んだ岡村が申し出るのに応えながら、キバはにじり寄って来たグールを殴り飛ばした。

 その間に、間合いを詰めたオーズはトラクロウを振るってライオンヤミーの顎を狙う。

 だが、オーズと変わらぬサイズのヤミーは、何故かするりするりとその攻撃をかわす。

 その動きにじれて、レイヴ@黒子の声が飛ぶ。

 

「ぼやっとするな、タカヘッドの広角度視野を無駄にするな!」

「広角度視野? っておおお!?」

 

 大我が考えたその時、ぱぱっと胸部に付いた円形プレートの赤い鷹のマークが点滅する。その途端、視界が急にクリアかつ広域でやや斜め上から見下ろすようになった。

 これが、所謂『鷹の目』『鷲の目』の視界かと、頭の端っこで思いつつオーズはライオンヤミーが動こうとする足の動きで移動先を見極め、ヤミーが動く筈の場所へとトラクロウを繰り出した。

 

「せいりゃああ!」

「ボクハ、ボクハ……アアアアアアーーーーー!」

 

 自身でトラクロウの切っ先に踏み込む形になったライオンヤミーは、顎から喉に掛けてを切り裂かれ、そのまま内側から破裂するように消えた。

 その跡に、ジャラジャラと十数枚のセルメダルを残して。

 

「勝ったぁ……」

「ち、もう少し育てたかったけど、仕方が無いか。あー、お前ももっと頭使えよ」

 

 へたり込んだオーズの横で、レイヴ@黒子はせっせとメダルを拾い集める。

 そのレイヴのメッシュ入りの頭を、クロウを畳んだ手でガッツリと握り込む。先輩の得意技よろしく、ぎちぎちと圧を掛けてオーズこと大我は唸った。

 

「お前な、俺はさっきのジャンプ力の事もホークアイみたいなのも何にも知らないんだよ。

 知らない機能を計算に入れて動くなんて出来るかよ!」

「け、聞かなかったのはお前だろ?」

「お前なあ!」

 

 現状そっちのけで口論を始めた二人(?)の向こう側では、仮面ライダーキバがトゥルーアイを使ってファントム・レギオンを見ていた。

 蝙蝠に見える複眼状の仮面キバ・ペルソナ越しに翼竜の骨と鎧を掛け合わせたような相手を見詰めた千尋は、それが所謂『式神』や『傀儡(くぐつ)』と言った存在で、本体ではない事を理解した。

「ビースト!

 そいつは本体じゃない、蹴散らせ!」

「な!?」

「ありゃ、ばれた」

 

 キバからの指摘に、ケラケラと笑ったレギオンの声にぎっとビーストは睨み、握り締めたダイスサーベルにリングを押し当てダイスドラムを弾いた。

 ガララっと、回ったドラムは5を示した。

 

「喰らえ、くそ骸骨が!」

 

 横に振るうと、銀色に光る八本足と翼を持つ竜の形をしたエネルギーの塊が五体、更にグールを増やそうとしたレギオンの影に向かって飛び出した。

 看破された事で戦意を無くしたのか、レギオンの影は至極楽しげにセイバーストライクの光弾を浴びて消滅した。

 

「畜生、舐めやがって」

「少なくとも、HOPPERのエレクトリックファイヤーモドキを喰らってダメージを受けていたようだからな、あの後傀儡に入れ替わったんだろう」

 

 変身を解きつつ唸った健介に、同じく魔皇甲冑を脱いだ千尋が溜息と共にぼやく。

 振り向いた二人の視線の先には、劉と紫原に引き分けられた状態の大我とレイヴ@黒子の姿と、実淵に火傷を冷やして貰いつつ手持ちのファーストエイドから塗り薬を引っ張り出して塗り付けている祥吾の姿がある。

 何とか、耐久性の高い特殊素材のライダースーツのお陰で、実際に火傷に至ったのは顔の一部と手の甲程度で済んだが、爆圧を身体で持ち堪えようとしたのが過負荷になったらしい。

 軋む身体で何とか薬を塗り終えた祥吾の前に、もの言いたげに近付いて来たのは赤司だった。

 

「んあ? どうした、セイジューロー」

「灰崎、お前は、ずっと、こんな風に戦っていたのか、こんな危険な事を、三年も」

「征ちゃん」

 

 何か言おうとした実淵を、止めたのは千尋だった。

 祥吾の方は、軽く頭を掻くとこう切り出した。

 

「俺が、仮面ライダーになったのは、お前に強制退部を言いつかるほんの一週間前だ。

 俺の兄ちゃんが、やっぱり高校生のうちからライダーやってて、未確認に負けた事があった。俺は、その敵を討ちたい一心でこいつを父ちゃんの部屋から持ち出した。

 自画自賛じゃねえが、初陣としちゃあまあまあだったと思うぜ、撃破には至らなかったけど、未確認の一体を一度は行動不能に追い込んだものよ」

 

 そう言いつつ、祥吾が見ているのはT-1《HOPPER》メモリだ。

 

『敵は、鉄で身体を置き換えた、様々な動植物の力を持たされた怪物達。

 普通に銃弾を打ち込んでも、けろりとしてやがる。

 そんな怪物達と戦ったのが仮面ライダー、飛蝗の力を与えられた、風の戦士達だ』

 

 夕食を食べながら、ビールを飲みながら、くしゃくしゃの笑顔で父が語った『伝説』の戦士達。

 その言葉に憧れて、何時かそんな男になりたいと願い、そしてあの日仇討ちの為に掴んだ『力』だった。

 多分、父には怒られるのだろう。それでも祥吾は、あの時倒れた兄の代わりに戦うと決め、全力で立ち向かった。

 倒れた兄の為、あの日一緒にその場にいて泣いた和成や剛、天馬の為に。

 

「その後すぐ、《S.A.U.L》、警視庁の対未確認生命体対策班に登録される事になったから、もしあの時お前に退部を言い渡されなかったとしても、俺は早晩自主退部してた。

 だから、お前が気にするような事なんざ何もねえよ」

 

 そう言って、軽く手を振って見せた祥吾に、おずおずと大きな体を縮めるようにして言ったのは、これまで黙っていた紫原だった。

 

「でも、﨑ちん、中一からずっと、喧嘩なんかして無かったじゃん。

 不良に絡まれて、いなして逃げてたけど、喧嘩なんかしてなかったじゃん。襲われてる奴抱えて逃げても、自分自身喧嘩する事無かったじゃん、なのに喧嘩してるから退部って、俺何信じて良いのか判んなかったし」

「ああ、そりゃあ困ったなあ」

 

 そう言って、俯いた紫原の頭を撫でたのは、彼の先輩である福井健介である。

 その向こう側で、溜息交じりに口を開いたのは黛千尋である。

 

「赤司、お前はこいつが喧嘩していると誰から聞いた?」

「それは、学校の上級生や、父の部下で身辺調査に詳しい人に聞いて」

「そうか。

 じゃあ、お前は自身で調べた訳じゃないんだな。

 赤司。お前、自分に逆らうものは親でも殺すとか、物騒な事言っていたようだが実際は親父さんの部下達に良いように使われたようだな。

 祥吾のお袋さんは、とある世界企業で働いている研究員で、ついでに特許も幾つか持っている。そのお袋さんをヘッドハント、もしくは特許を買い上げる交渉材料としてこいつを誘拐するに当たって、学校から連れ出すより学外にいるのを連れて行く方が、実行側もリスクが低いだろうからな」

「ちー兄ぃ!」

 

 顔色を変えて、止めようとした祥吾を察した岡村と健介が抑え込む。

 同じく、「そんな場合ではない」と止めようとした実淵に、千尋は再び溜息を吐きつつこう続けた。

 

「実淵、悪いが俺は無事に戻れば、多分卒業式に出ずに《S.A.U.L》に出頭して、大学が始まるまでそっちに掛かり切りになる。

 祥吾も、お前らと話が出来るのはこれが最後になる可能性が高い」

「そんな、次の大会で」

 

 言い募ろうとした赤司に、首を振って応えたのは健介だった。

 

「今回、たまたまWC参加校の生徒へストーカー行為を行っている人間が、禁制品のT-0ガイアメモリを使用している事が割れたから、ガイアメモリの専門家である祥にお鉢が回った。

 そもそも、祥は一応バスケ部員だが、《S.A.U.L》への協力を優先している所為で本来はスタメンじゃなかったんだ。

 福田総合の連中は、学校近くで起きた未確認事件に巻き込まれて、祥吾に助けられた事があったからこいつの事情をまるっと知ってるからな、《S.A.U.L》からの依頼を受けて、こいつをスタメンに突っ込んでくれたんだ。

 こいつは、週二回部活に参加出来るかどうかって状態だからな、部活では二軍のプレイイングコーチってのが本来の立場だ」

 

 上級生の言葉に、何時ぞやのように両目をかっぴろげて見て来る赤司から、祥吾は気拙い事この上なく目を逸らす。

 それに、聊かの怒りを込めて問い質すのは紫原だ。

 

「じゃあ、試合の前に室ちんに喧嘩吹っ掛けたり、試合で黄瀬ちんの足踏んだり、あれは何だったのさ!?」

「あの兄ちゃんに喧嘩売ったのは、不良だって言う印象付けだ。

 黄瀬の足を踏んだのは事故だったけど、会場にストーカーがいるのが判ってたから、向こうを釣る為に咄嗟に芝居を入れたんだ。

 あのストーカー、要するにリョータに尽くしたいってのが捻じれて暴走した挙句に、あいつと試合中に接触した選手やそいつ目線でリョータに迷惑掛けてるファンとかに、メモリを使って暴力を振るってたんだ。

 だから、衆人環視の中あれだけ悪態をついて怪我までさせれば、確実に出てくると思った。事実、俺が一人になったところを、ホイホイ出て来てくれたしな」

「それ、どういう事っすか!」

 

 一際大柄な元同級生へそう答えた時、噛み付くような一声が飛んだ。

 振り返れば、金髪の少年が顔を赤くして、上級生二人に抑えられているところであった。

 

「リョータ」

「俺の周囲で、何か起きてたのは知ったっす、WCの途中で中村先輩からもう大丈夫って聞いて、でもそれにショーゴ君が関わってるなんて聞いて無いっす!」

「黄瀬、それは」

「《S.A.U.L》による、情報規制だよ。

 特に、お前みたいなスキャンダルめいた情報が流れたら拙そうな奴に、話せる訳ないだろう」

 

 噛み付くように吠えた黄瀬に、眼鏡を直しつつ答えたのは、中村真也である。

 彼らの後ろには、海常、秀徳、桐皇、そして誠凛の面々がいる。

 まだ喚き合っていた誠凛の凸凹コンビは、走って来た主将に二人揃って鉄拳制裁を受けて沈没した。

 一瞬言葉に詰まり、しかしそれでもと黄瀬は食らいつこうとする。

 

「だって、あんなこととか、その、」

「人の物だから欲しいとか、俺のもんだとか、色々言っていたじゃん」

 

 黄瀬をフォローしようとした訳では無いだろうが、そう食い付いた紫原に答えたのは、彼の先輩である。

 携帯を取り出し、動画を一つ再生して見せた健介に、これはげっそりした顔で祥吾が言う。

 

「健兄ぃ、そのデータまだ持ってたの? 機種変したじゃんか」

「皆で集まって、ウノやった時の罰ゲームを5W1Hで決めたら、『昼食時に学校で、部活仲間の前で厨二病を披露する』ってのになって、でぼろ負けした祥吾が実践したんだよね。偉いだろ、こいつ、クラスの奴に頼んで、ちゃんと撮影して貰ってんだから」

「は!? 罰ゲーム!?」

「崎ちーん」

「言うない、兄弟内ヒエラルキー№2の言葉には逆らえねえよ」

 

 祥吾の言葉に、キセキの世代の一人っ子と兄四人は良く判らないと言う顔になったが、末っ子二人はあーと言う顔になった。

 特に、姉二人にパシラれる事も少なくない黄瀬が。

 

「あ、あの、じゃあはーちゃんは不良でも何でもなくて、あのじゃあ何時かの試合をサボったのも」

「あ、あれか、成長痛で熱出してた時」

「女性陣が、祥が病院から行方不明になったって、号泣しながら帰って来て」

「うっかり空と閃が、近場の暴力団事務所壊滅させたあれか」

「あーあー、薬待ちで隣りのゲーセンで待ってたら、バスケ部の奴に拉致られたっての。

 しかも帰ってきたら五、六発殴られた痕があって、それ見てブチ切れた海斗見て、空と閃が我に帰ったって言う」

「確か、親父が帝光中に抗議したらのらくら逃げられて謝罪が無かったってんで、色々調べたら上層部が真っ黒だったってあれな」

「それだけじゃねえだろあの学校、それこそ小母さん引き抜きたいカス企業に金積まれて、祥吾が登下校中に何度も誘拐され掛けて遅刻したり何なりしてんのに、警察に届けずにあいつが悪いで済ましてたんだよな」

「捜査の途中で、親父が別件に移っちまったんで、警察がのたくらしちまって向こうに変な工作の時間与えちまったって話しな。それでも、理事会は全員懲戒免職になったそうだけど。

 会長さんに、捜査の不手際詫びに警視総監が来たって言うし」

「ああ、だから去年、帝光中は対外試合全自粛だったそうだしな」

「赤司んとこは、子会社の暴走って事で、《ホークアイ・ホールディングス》には詫び入れたけど、灰崎家には書状一枚送って来なかったってんで、会長があそことの取引の全面見直しを命じてたっけなー」

「だーー! ストップ、何を何処まで喋る気っすか、あんたらは!」

 

 桃井の問いに、事情を知っている三年生+αが話の花を咲かせるのに、頭を抱えつつ祥吾は話を止めようとする。

 その向こう側では、帝光中卒業生達が表現しようのない顔で、彼らをガン見している。

 そんな面子の話の腰を折ったのは、鉄拳制裁から復活した大我だった。

 

「なあ、そう言うのは、ここから脱出してからゆっくり話そうぜ?

 ホークアイ会長が何か手を打ってくれてるのは判るけど、このまんま助けて貰うのを待つって言うのは、却って危ない気がするしよ」

「かがみ?」

 

 何時もなら、バスケか空腹を訴えるかの二択である大我の言葉に、チームメイトとキセキの面々が微妙な顔になる。

 だが、それを受けて順平が、『身内』ではない三年生達に向き直る。

 

「俺も、火神に同意見です。

 救援は必ず来ます、おそらく《S.A.U.L》は動き始めているでしょうし、俺や祥がお世話になった《ホークアイ・ホールディングス》は《S.A.U.L》とも『SPIRITS』隊とも関わりのある大企業ですから、俺達を助け出す為に何かしらの準備を進めてくれている筈です。

 取り敢えず、この人数で休息のとれる場所、あるいは港に行きたいと思います」

「おい、それ、本気で言っているのか!?」

「本当に、救援が来ると?」

 

 順平の言葉に食い付いたのは、諏佐佳典と笠松幸男の二人だ。

 それに答えたのは、カバンの中から大振りで旧式のトランシーバーに似たものを取り出して見せた、宮地裕也だった。

 

「携帯やスマホのアンテナが立たなかった時用に、祥吾が身内に渡されてた特殊通信機なんだが、こいつがたまたまあの大ショッカーとか言う連中が、東京に襲撃を掛けている通信を拾ったんだ。

 それに、祥吾は本来今朝早くにこっちを出て、向こうに戻ってる予定だったのにもう昼が近い。その意味でも、俺達の方へ様子見に来るのは確実だ」

「いいとこ後三時間、いや二時間踏ん張れば必ずクウガとアギトが来る。そう言う意味でも、港で待機しようと思う。

 当然、向こうも港で張ってるだろうが、な」

 

 弟の言葉に宮地清志が付け足すと、仮面ライダーにカウントされる面子の表情が引き締まる。

 そんな面々を一部は頼もしげに、大半は不安そうに見ていた。




和成:ねえ、俺空気? 空気なの!?
大我:緑間に手を引かれてたから、こっちに気付かなかったんじゃねえ?
祥吾:ヾ(-ε-; )ォィォィ
裕也:実際問題として、目を閉じて歩くの大変だろ? 阿保共の騒ぎ気にしてられないってか?
和成:うー、次回は活躍してやる。
祥吾:目を休めてる最中なんだから、おとなしくしろよ。

*どう言う順で滝家にお邪魔するようになりましたか?

祥吾:順番って、
大我:少なくとも、俺と祥は生後半年から10か月ってとこか?
裕也:あー、俺、兄貴と一緒に海斗さんと空さんに抱っこされてる涎魔神のお前らの写真、見た事あるわ。
祥吾:物心付いた頃には、千尋さん居たよなあ。かくれんぼの達人だと思ってたけど、影を薄くしてたとは。後、姉ちゃん格の徹子さんに芽衣子さん、閃さんもこれくらいだったかな?
大我:幼稚園に通ってた頃に、真兄ぃ引き取られたよな。その後ぐらいに、赤ちゃんだった天馬が来て。
和成:宮地さん達と知り合ったのは?
大我:小一の赤心少林拳と星心大輪拳の交流会でだった。
祥吾:兄ちゃん達はもっと前だったらしいけど、俺らは交流会に出たのがその時だったから。
大我:それから、二年の俺がアメリカ行く前に霧子ちゃんと剛が引き取られたっけな。
祥吾:大我が出掛けて半年後に、カズが来たんだ。トラウマであの頃殆ど笑わなかったんだよなー、今じゃ誰も信じないだろうけど。
和成:養父さんが言ったんだよ、「笑う門には福来る。但し、おべっかじゃなく心の底からな、面白いって思う事があれば笑って良いんだ」って。
祥吾:能力の関係で殆ど病院暮らしだったけど、順さんが来て、俺らが小五になる時に健兄ぃが来たんだよ。
和成:他にも五、六人いるけど、あの子達は半年ほどで家から出ちゃったしね。

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