次で終わり、の筈。
本編第十五話です。
黒子のバスケ×マスカレイドスタイル×仮面ライダーSPIRITSと言う多重クロスオーバー。
バスケ成分は現在逃走中。仕方がないよね、緊急事態だし。
なお、この話は黒子のバスケと仮面ライダーSPIRITSの登場人物に、マスカレイドスタイルと言う同人TRPGをベースにした独自設定を付加した二次三次創作となります。
その為、原作の登場人物と家族設定などに改変があります。
また仮面ライダーの解釈にも、私家設定が前面に出てきます。
他にも作者設定のオリジナルキャラクターも何人か出てきますので、そう言うものがお嫌いな方はこのままbrowserbackをしてください。
キャラクター改変がお嫌いな方も同様に願います。
なお、この作品はmixi、pixivにも掲載しています。
港を一望出来る丘の上で、中村真也と宮地裕也とは高尾和成の護衛として偵察に出ていた。
目を休めた事を主張した和成が、偵察役を志願したのだ。
「骨戦闘員が二人一組で巡回してます。何か、使えそうな船は無いですね、ヨットとかクルーザーとか、みんなで乗れそうなサイズじゃないし。
何より、戦闘員多過ぎワロタwww。
後、あれ何処の怪人かな、頭に蠍乗っけたのと青色で黄色いマントみたいなの付けたのとが、灰色の鳥みたいなのと話してるっぽい。周囲に、それぞれの部下っぽいの従えてて目立つなあ」
「蠍だあ? あの糞女、此処まで来てやがるのか、○○○○てやろうか」
「物騒だよ、裕也。
だけど、灰色の鳥、ねえ。あのおばさんも気の毒に、所詮は社畜って事か」
《遠視能力(リモートビューイング)》を『鷹の目(ホーク・アイ)』と同時発動させて、和成は港湾施設内で動く影を見ている。因みに、本来《遠視能力》は離れた場所にいる知人の視界を借りる能力だが、和成は訓練の結果鳥や動物の視界を借りる事が出来る。
今、和成は港にいる海鳥の視界をジャックしている状態である。ただ、やはり人間と鳥獣では脳の作りが違う為、長時間維持するのは難しい――動物の方が負荷に耐えられないのだ――事から、大量にいる鳥達をどんどん乗り換えて視界を維持している。
和成の言葉に、二人はそれぞれ因縁の相手がいる事を悟り胸の内を吐き出すと、疲れたように目を閉じた和成の手を引いて移動した。
合流を果たした高校生達は、港から直線距離で一二〇メートル程の位置にあった拓けた窪地で休んでいた。
襲われると守るのに難しい場所だったが、位置的にも広さ的にも、ここしか四〇人余り居る彼らが集まって休める場所が無かったのだ。
偵察を出すにあたって、緑間真太郎を始め同年代や事情を知らない上級生達が反対したが、宮地清志、黛千尋、福井健介の三人が護衛役と行動を共にする事を条件に出る事を許した。
緑間は「高尾を危険に晒すなんて!」と、常になく逆上した面持ちで物騒と知られた上級生に詰め寄ったが、軽くいなされてしまった。
「危険に晒すのが嫌だから、真也と裕也をつけたんだ、それぐらい理解しろ!
それと、こんな事は言いたくないが、和成はお前を無事に帰らせてやりたいから無理をしているんだ、大人しくしていろ!」
「宮地さん!?」
「黛さん、俺も幾ら何でも三人でと言うのは」
眉を顰める年下の主将に、千尋は言葉が見付からない様子で目を細める。
納得がいかない様子の面子に、答えたのは健介だった。
「気持ちとしては、俺も千尋も、そして真也も和成と一緒だ。だからこそ、後方支援要員の和成に出る事を許したんだ。
お前らを全員、無事に家まで帰す。一人も欠ける事無く、家族の許に帰らせる。
仲間を、家族を失うなんて、一度で充分だ」
「福ちん?」
「俺は小六の時、考古学者やってた父親に家族で会いに行って、その研究を奪いに来た強盗集団に家族皆殺しにされて、たった一人親父に保護された。俺と弟を可愛がってくれたキャンプの人間は、荷担ぎのおっちゃんに至るまで皆殺しにされてた。
尤も、《ジャバウォック》に出会わなきゃ、親父が来る前に俺も死んでたろうがな」
思わぬカミングアウトに、強制解除のショックから立ち直り神妙な顔で付いて来ていた氷室辰也を始め、劉偉、紫原敦と言った陽泉の面々が黙り込む。ただ、中学からの付き合いである岡村健一だけは、静かに目を閉じた。
続いて口を開いたのは、ジャージの中に入り込んだキバット五世を突いていた千尋である。
「俺は、小学校に入るくらい、かな。
俺の両親は、まあぶっちゃければロミオとジュリエットを地で行くような状態で結婚して、子供を作った夫婦だった。普通と違って、親父はファンガイアの貴族の出で、お袋は《素晴らしき青空の会》の構成員を輩出している家で、オミソ扱いされた末娘だった。
結果的に両方の家から両親は殺され、俺は母方の人間に殺される寸前に、親父に助けられた」
「黛、さん?」
「(´ε`;)ウーン… 千尋は、見た目は母親似だが、父親より魔力が強かったからなあ。それで存在がばれて、《QUEEN》の制裁を喰らったんだよ。父親のあいつは、敵わないまでも千尋と嫁を逃がす為に正面から討って出て、倒されたよ。
母親の方は、元々符術師でそれで隠形を駆使して逃げてたんだけど、霊力が続かなくて隠れて休んでいる最中に襲われてな。その後俺が千尋と一緒に一週間逃げ回ったんだが、飯を探してた俺がつけられて殺し屋を隠れ家に連れ込む形になっちまってなあ。
あの時滝が来なかったら、あの快楽殺人鬼に俺も千尋も殺されてたろうなぁハァ…( ;-ω-)=3」
あの時を思い出したのか、ジャージの下からキバットのうんざりしたと言いたげな声がする。
ハードどころではない、影の薄い先輩の過去に赤司征十郎と実渕玲央とは絶句している。
それに続いたのは、弟と後輩を送り出している清志だ。
他校の面々と違い、約一年半前に起きた事件の事もあり事情を知っている大坪泰介と木村信介の二人は、落ち着いて下級生の多い誠凛の面子を気遣っている。
「俺達兄弟は、拳法繋がりでこいつらと親しくなったが、それぞれの事情は昔から聴いている。
真也は、事故の振りした観光バスへのテロで両親亡くして、スマートブレイン社の研究所に拉致られ掛けたところを《SPIRITS隊》に助けられたそうだ。
高尾の奴は、父親の赴任先で犯罪結社に誘拐されて、家族全員目の前で殺されて、自分自身も脳味噌抉り出される寸前で《SPIRITS隊》に救出されたって曰くつきだ。
順……いや日向も似たような状況だったろう?」
「高尾や中村に比べれば、俺はめちゃくちゃ運が良かった事になりますね。
たまたま学校帰りに一人誘拐されて、些か怖い思いをして入院こそしたけど、自宅の家族は皆無事でしたし」
話を振られて、つい答えた日向順平は、幼馴染と中学からの腐れ縁、そして同級生と後輩からのもの言いたげな視線に曝された。
特に、相田リコの視線は火花が飛びそうだし、伊月俊の方は死んだ魚より死んだ目なのに怪光線を発しそうだった。
誠凛の光と影を省いた面々が、じわじわと主将への包囲網を狭めているその横で、所謂キセキと呼ばれた面子が元メンバーの灰色に詰め寄っていた。
「おい、じゃあお前もか、灰崎」
「その、ショーゴ君も、家族亡くしたんすか?」
「きーちゃん、ストレート過ぎ!」
「確か、お前は母子家庭だったろう、その」
「崎ちん、もしかして」
「あ? ああ? お前ら何言ってんの?」
五人が言わんとする事がぴんと来なくて、首を捻る祥吾に代わって答えたのは、昼寝を始めてしまったレイヴ@黒子テツヤを背負った火神大我である。
因みに彼が何をしていたかと言えば、祥吾から借りた耐物理グローブを付けて、せっせと三つの戦極ドライバーに貼られた鷲マークのシールを剥がしているところだ。
「あー、祥は元々母子家庭。って言うか俺が聞いた話じゃ、祥が生まれる直前に祥の実の親?って人が事故で亡くなって保険金とか事故の賠償金とかが出て、お袋さんがちょっと金持ちになったんだと。
そしたら、それを目当てにした馬鹿がお袋さんに付き纏った挙句、金は横取りするわ、家に住み着いてお袋さんに暴力振るうわとめちゃくちゃな事してたって。挙句に、お袋さんの目の前で、アパートの二階からコンクリート目掛けて、まだ首も座ってなかった祥を投げたんだって」
「「「「「ええ!?」」」」」
予想と斜め上の内容に、キセキ達及び、周囲の学生達が絶句する。
周囲の反応に気付かぬまま、大我の方は兄貴分や大人達が話していた事を思い出す。
「で、コンクリートに叩き付けられる寸前、滑り込みで祥を助けたのが滝の小父さんだったんだって。
山崎さん言ってたもんな、急に持ってた書類入れ放り出して走り出すから何事かと思ったら、赤ん坊が落ちて来てて肝を潰したって。小父さんにしても良くあの時、間に合ったもんだって。
小父さん、傷まみれで祥抱えたまま、馬鹿がいるとこまで走って行ったと思ったら小母さんに祥を返して、逃げ出そうとしたその馬鹿を捕まえて、窓から片足掴んで逆さ吊りにしたんだってさ。で、命と引き換えに二度と小母さん達に関わらないって誓約書書かせて、破ったら死ぬより辛い思いさせるって念押しして追い出したんだって話だよ」
「「「「「オウフ」」」」」
「ただ、そのままだとその馬鹿が更に馬鹿引き連れて襲い掛かる恐れがあったから、小父さんがMr.ホークアイに掛け合って、会社の社宅に二人を匿ったんだってさ」
「ちょ、火神なんでそんな事知ってんの!?」
「火神っち!?」
チームメイトと黄瀬涼太の問いに、頬を掻きつつ大我は彼にとって当たり前だった事を語る。
「え?
だって、俺の親父、《ホークアイ・ホールディングス》の北米L.A支社の営業部長だもの。
俺んとこ、お袋が入院してたから、俺殆ど会社のベビールームが自宅みたいになってたからなあ。小母さんが大学通いつつ働いてたんで、やっぱりベビールームにいる事が多かった祥と一緒に、空兄ちゃん、海斗兄ちゃんに面倒見て貰ってたんだ。
幼稚園までは、四人兄弟だって本気で信じてたもんな」
「「「「「……」」」」」
「ごめん。でも、今までそんな事話した事無かったじゃん、なんでそんな」
思いも依らないどころか斜め上を極めた話に、キセキも上級生である小金井慎二も困り果てた顔になる。
それに向かっては、溜息と一緒に清志が答える。
「ああ、それな。
こいつ、アメリカにいた時分に事件に巻き込まれてな、それが原因で結構深刻な記憶障害と注意力散漫を患ってたんだ。
特に、事件当時から二ヶ月分くらいしか記憶が残ってなくて、生活記憶は何とかあったものの関係者その他の顔と名前が判らなくなる事態でな。ついさっき迄、俺達の事も他校の先輩としか認識してなかったしな。
兄貴分がスパルタで名前覚えさせたけど、バスケットボール絡みじゃないとガンガン忘れるんだと。
氷室、覚えないか。バスケ以外の約束事、こいつ良くすっぽかさなかったか?」
顔色を変えていた氷室の顔が、あからさまに引き攣るのを見て、大我自身が頭を掻き「sorry」と呟いた。
時間経過と共に、じわじわと戻る記憶に、何でこんな事をと頭痛を覚えているのは大我自身なのだ。
「今んところ、まあ事態ははっきりしないけど記憶障害は収まってるんで、色々思い出してるらしいんだ。
戻ってから検査受けてみないとだが、取り敢えずそこら辺の事も含めて俺達は、無事にここから脱出したいと思っている。
……戻ったな」
健介の言葉にそれぞれ振り向けば、確かに和成を背負った裕也とその背を守るように走る真也とがいた。
すわ、また調子を崩したかと青褪める緑間に、降ろして貰いつつ和成は慌てて己がエースと認めた相手に声を掛けた。
「あー違うからね、真ちゃん。
パルクールモドキに俺ついてけないから、背負って貰ってただけだから」
「は?」
「ああ、高尾はともかく、俺らや真也は兄貴さん達に付き合って、パルクールって云うダイナミック障害物走をやってるからな。ちょっとした岩場とか飛び越えて走れるけど、こいつはそうも行かないから俺が背負った」
「はぁっ? ダイナミック障害物走!?」
裕也の答えに、大半は想像が付かない様子で首を傾げたが、知っている一部の面子が驚いたり、目を剥いて二人を見た。
相田リコが、マジマジと裕也と真也の身体を見ているのを見なかった事にして、和成は三年生三人に見て来たものを伝える。
戦闘員が巡回していると聞いて、三人は表情を険しくする。
横で聞いていた祥吾も、話に出て来た『青色で黄色いマントみたいなの付けたの』に思い当たる存在がいたのだろう、大きく眉を顰めた。
「マジか、《NAZCA》じゃねえか、それ」
「知ってるの、祥ちゃん」
「中身が違うかもしれないが、《NAZCA》はガイアメモリ密売組織のエージェント、それも幹部格が使ってるT-Oメモリでも上位の奴だ。
まあ、大ショッカーとの折衝を行う為に来てるとしたら、幹部のあの兄ちゃんだろうなあ」
何度か対戦経験があるのだろう、苦虫を噛み締めたような祥吾の言葉に、同じく《S.A.U.L》に協力している健介と千尋とが眉を顰める。
「マジか」
「色々面倒な組織が入り込んでいるようだからな。先程非主流派のファンガイアがいたし、誠凛の方にはやはり『ホロスコープス』の怪人が来てたと言うし」
「逃げ出す為の船は難しいって話だし、ここで非戦闘員は警備残して待機させて、俺達で向こうに切り込んで時間稼ぎする方が安全じゃねえか?」
同輩二人の言葉に、こちらは身元保証として《S.A.U.L》に名を連ねているが、あまり実戦参加はしていない宮地兄が言うと、戦歴的には祥吾に次いで回数が多い健介が応える。
「余力を考えると、ちょっときつくないか?
少なくとも、まだ変身してない清志と、さっきは警戒に当たってたんで変身しなかった真也の二人に前面に出て貰う事になりそうなんだが」
年長者のやり取りに、これは心外だと言いたげに祥吾が食い付いた。現状現場にいる『仮面ライダー』の中では、年上の面子が複雑な思いをする程度には戦歴豊かであるのだ。
「待ってくれよ、健介兄ぃ、俺もしかして待機っすか!?
《NAZCA》がいるのに!?」
「バカタレ、さっき火炎弾の直撃食らって倒れたの誰だよ。
それに、今日変身したばっかりの順平や大我と、変身ツール持ってないカズや裕也だけに、この四〇人近くを守らせる気か?」
それには流石に、祥吾も言葉がない。
黙った弟分の額を、健介がポンと小突いたその時だった。
真っ青な顔で和成が警告するのと、悲鳴が上がるのは同時だった。
「後ろ、怪人が出て来た!」
「きゃあああ!」
「そんな事気にしないで、大人しく捕まればいいのに」
「「「カントク!」」」
赤黒い装甲に包まれた腕が伸びて、相田リコを捉え引き寄せる。
誠凛高校の面々が気付き、手を伸ばした時には彼女は羽飾りを背負い、両足が微妙に大きな馬型の怪人に抱き抱えられ、その顎を掴まれている状態だった。
「あいつ!?」
「テメエはペガサス!? どの面下げて現れやがった!」
宮地兄弟が吠える横で、秀徳高校三年生達が顔色を変える。
当の怪人の方はと言うと、宮地裕也の方を見てくつくつと笑った。
「よう、ハウンド。まーだお兄ちゃんの後ろ張り付いてんだぁ?
そんなんだから、何時まで経っても「変身!"Orange!"」って、え?」
嗤って揶揄ろうとした怪人のセリフをぶった切る声とともに、『LOCK ON!』と電子合成音が響き、それと同時に何処からとも無く法螺貝のような音が鳴り響く。
OrangeARMS!
ソイヤ!
花道、OnStage!
そして呆気に囚われた馬型怪人の横っ面を、大橙丸の刀背(みね)の方ではあったが全力でぶん殴る『ArmoredRider』の姿があった。
「「「「「「日向!?」」」」」」
「「「キャプテン!?」」」
「薄汚え手で、うちのカントクに触ってじゃねえぞ、この糞馬野郎がぁ!」
既にクラッチタイムに突入している順平の罵声に、慌てて健介、清志、千尋の腕に覚えがある三人がフォローの為に飛び掛かる。
それを避けようと大きく片足を振り上げた馬怪人ことペガサス・ゾディアーツは、だが懐に飛び込んで来た昆虫型のドローン達に気を取られたところを、拳法段位持ち三人掛かりで殴り掛かられた。
かろうじて三連撃を避けたものの、止めとばかりに『ArmoredRider』に今度は無双セイバーの柄で思いっ切り顎をかち割る要領で殴り上げられ、折角の人質を奪い返された。
「おっま、卑怯だz」
「ああん? 後ろから忍び寄って、確実に非戦闘員だろう女子高生人質にとったテメエに、卑怯呼ばわりされる筋があるか、ボケェ!」
「そりゃそうだ」
「順が正しいわ」
「これだから『ホロスコープス』はよぉ」
仮面越しの筈(ついでに言えば、自分自身仮面を被ってるも同然)で、にも関わらずペガサスは詰め寄る『ArmoredRider』に憤怒の表情を透かし見て言葉が詰まる。
かてて加えて、『仮面ライダー』三人からも呆れたようにぼやかれ、元秀徳高三年生(現在は自主退学後行方不明)はギリッと牙を食い縛る。
そのペガサス・ゾディアーツの背後に、ぬるりと黒い蠍が現れる。
「何を焦っているの、ペガサス」
「スコーピオン様!」
「! 澤崎!」
清志の声に反応し、裕也が兄の荷物の中から取り出した小型アタッシュケースを投げる。
同じく、真也と健介、祥吾、千尋もすぐ変身出来るよう態勢を作る。
その更に後ろから、蟷螂の化け物が現れた為に一般人である学生達に緊張が走った。気が付けば、少年達の周囲を何十人と言う、黒地に骨模様の戦闘服を纏った戦闘員達が囲んでいる。
蟷螂の方は、変身し完全に戦闘態勢に入っている――ついでに言えばクラッチタイムに突入して落ち着く様子もない――日向順平の姿に、軽く拍手しつつこう言った。
「これは大したものだ、これまで何度か試したが戦極ドライバーをここまで完全に使い熟(こな)している人間は貴様が初めてだ。
しかも、一番癖が強く誰も受け付けなかった《鎧武》のドライバーがなあ。
どうだ、小僧。我が大ショッカーの一員になるのであれば、望むものは全て与えてやろう」
蟷螂男の言葉に、ペガサス・ゾディアースが物言いたげに身じろいだのを、蠍怪人が身振りで抑える。
それに対して、順平はきっぱりと拒絶を返した。
「断る。
俺はここにいる仲間達と又次の大会を目指して切磋琢磨して行きたいと思ってるし、今の生活を捨てるつもりは毛頭無い。
第一、何で他人(ひと)の生活を踏み躙るような事をしなきゃならない?
お前らみたいな見るからに不審人物の集団に、何で俺が加わらなきゃならないんだよ、ふざけんな!」
「全くだ。大体、何処の何方様かは知らないが、この世界じゃ四〇年近く前に『SHOCKER』なんて組織は滅ぼされたんだ、寝言にしか思えねえよ」
清志が言葉を続けると、蟷螂怪人の様子があからさまに不快気になった。
それを取り繕おうと、スコーピオン・ゾディアーツが慌てて言葉を紡ぐ。それが、そこにいる『仮面ライダー』と名乗る者達全員と、彼らと縁深い面子の逆鱗と神経をタワシで刮(こそ)ぎ上げる事になると知らず。
「セロ少佐、この子達は『骸骨(スカル)ライダー』等と言う偽善者を正しいと信じる可哀想な子供ですの。
私どもの高尚な思想も全く受け付けず、何もかも否定する愚か者ですもの。きちんと教育して」
「ふざけんな、そこの怪人蠍女!」
真っ先に声を張り上げたのは、秀徳生である和成だ。
それに、同じく感情剥き出しで祥吾が噛み付く。
「父ちゃんが偽善者だと? 言ってくれるじゃねえか」
「偽善はお前らじゃねえか、嘘で何もかも塗り固めて、お前らの括りに入らなかった人間皆に迷惑掛けて苦しめておいて、さも自分達が正しいみたいにほざきやがって」
『ホロスコープス』に振り回された裕也が、下を向いたままギリッと歯を食い縛る。その背を叩いてやりつつ、兄である清志は腰に簡易アストロドライバーを押し当て吐き捨てる。
「親父が偽善なら、俺達が偽善でも仕方ないじゃん、蛙の子は蛙だもんよ」
「そうだな、生憎だが、俺達はお前らの糞下らない選民思想より、美辞麗句でゴテゴテに飾られた良く解らない御高説よりも、親父が体を張って見せてくれたものの方が良い」
健介が目だけ笑っていない笑顔で指輪を嵌め直す横で、千尋が何時も以上に無表情に構える。左手に掴まれているキバットは、己の体が立てるミシミシという音に声にならない悲鳴を上げているが。
そして、コアシステムを巻いた真也と、レイヴ@黒子を降ろして青峰に預けた大我も、オーズドライバーを掴んで向き直る。
「俺達は、普通を失う恐ろしさを知っている。
その俺達が、『普通の生活』を棄てろと言うあんた達を受け入れられると思うか?」
「俺は、これからもバスケがしたい、キャプテンと、学校の皆と、ここにいる奴ら全員と。
それが、俺にとっての日常だ。祥のお父さんが、幸せになるのに必要だって言ってたもんだ。
あんた達が言ってる事なんて殆ど判らないけど、ここから皆で帰るのを邪魔するって言うなら、俺は抗うぞ」
そして、大橙丸を構え背にリコを庇ったまま順平が唸った。
「二年前なら、お前らの言いなりだったかもな。
お前らの言う通り、バスケで思うように成績を出せない事、勝てない事に鬱屈を溜めて、世の中に拗ねて後ろ向きになってた頃だったからな。
だが、今は無理だよ。俺は諦める事を諦めた。そしてこのチームで勝てた。
そうである以上、俺は次の勝利の為に努力しなくちゃならねえんだ、テメエらみたいなのに従って、馬鹿する暇なんざあるかってんだ!」
「威勢は良いな、餓鬼共が。
だが、ここは我ら大ショッカーの基地であり、お前達は我々の手の内に居ると言う事を忘れて貰っては困るな。
たかだか七人で、四〇余人を守って逃げ切れると思っているのか?
ここが海に浮かぶ孤島だと言う事を忘れているのではないか?」
ギチリと、鎌を振り上げ嘲笑う蟷螂怪人に、『仮面ライダー』達の何人かがぐっと言う顔になる。
不安そうな他の面々を背に、それでもと真也と祥吾が変身しようとしたその時だった。
「やだねえ、大幹部だかなんだか知らないが、子供いじめて楽しいかよ」
「この程度の男が、幹部の時点で『大ショッカー』と言う組織の程度も知れたものだな」
『然り。組織の品格は、構成員の質に現れるものだ』
不意の声に、一瞬そこにいるもの全員、敵味方関係なくポカンっと立ち竦んだ。
次の瞬間、真っ赤な存在と、青に差し色のように鮮やかに赤い複眼を持つ存在が、飛び降りて来たと同時に戦闘員を薙ぎ払う。
そして、黒い身体に金の角を持つ者が、蟷螂怪人セロの頭蓋を砕かんと跳び蹴りを放って来た。
僅差で、両腕の鎌で食い止めたものの、全くの不意打ちとなった蟷螂男は、ざざざっと数メートル後方へ、地面を抉りつつ下がった。
その姿に、何人かの歓声が上がった向こう側で、悲鳴じみた声を上げたのは澤崎彩芽ことスコーピオン・ゾディアーツだった。
「く、クウガ、電王、アギトですって!?
お前達、どうやってここへ来たの!」
「そんな事、俺の知った事かよ」
赤い装甲の存在――仮面ライダークウガが笑いながらそう言い放つや、飛び掛かろうとしたダスタードを回し蹴りで三体同時に薙ぎ倒す。
その反対側では、仮面ライダー電王SLASHFormがデンガッシャーをハルバートモードにして、戦闘員達を切り払っている。
そして、空中で軽やかに後方宙返りと共に降り立った仮面ライダーアギトが、大きく構えを取って周囲の『敵』に向かって静かに告げた。
「高校生達を、返して貰う。
生憎だが、この世界に犯罪結社である『SHOCKER』の居場所は、疾うの昔に無い」
それは正しく、『新生仮面ライダー』の中心である三人が揃い踏みした瞬間であった。
そして、これ幸いと携帯で三人の写真を撮りまくる、歪みないライダー信者が約二名存在していた事を、ここに記しておく。
健介:うわー、やっとここかあ。
千尋:本当になあ。
空:やっと合流出来たので、お邪魔するぞ―。仮面ライダークウガこと、一文字空、城南大一回生だ。
閃:仮面ライダー電王こと香山閃、同じく城南大学の一回生だよ。
海斗:滝海斗、仮面ライダーアギト。城南大一回生。実は、三人の中で一番生まれ月が遅いんだよね。
(空、9月生まれ、閃、5月生まれ、海斗、2月生まれだが早生まれ)
健介:だけど、一番発言力高いのは海斗なんだよな。
千尋:まあ、この中で、オヤジの実子なのは海斗だけだしな。
海斗:千尋、それ聞いたら父さん泣くよ?
空:俺が苗字変えるって言った時も、ドツボのように落ち込んだものなあ。
閃:仕方がないよ、育英会の人達とかも俺達からすれば良いおじさんなのに、会うたび子供相手みたいに頭もしゃぐってたものなあ、親父さん。
健介:まあ、子供というか、人類皆愛してる人だからね、父ちゃんは。
千尋:その人類の範疇に、周囲と仲良くする気のある未確認生命体や《伝説》達も含まれているところが、オヤジの懐の深さと言うか。
??:全く、早くお会いしてみたいものだ。
千尋:?
健介:あれ、来てんだ?
閃:ああ。紹介は次回になるけどな。