Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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月中に書き上がりませんでした。申し訳ない。

本編第十六話です。
この話はこれで終了です。もっとアクションさせたかったけど、これが今の私の精一杯。
次回から、やっと書きたい話に辿り着きます。

黒子のバスケ×マスカレイドスタイル×仮面ライダーSPIRITSと言う多重クロスオーバー。
バスケ成分は現在逃走中。仕方がないよね、緊急事態だし。

なお、この話は黒子のバスケと仮面ライダーSPIRITSの登場人物に、マスカレイドスタイルと言う同人TRPGをベースにした独自設定を付加した二次三次創作となります。
その為、原作の登場人物と家族設定などに改変があります。
また仮面ライダーの解釈にも、私家設定が前面に出てきます。
他にも作者設定のオリジナルキャラクターも何人か出てきますので、そう言うものがお嫌いな方はこのままbrowserbackをしてください。
キャラクター改変がお嫌いな方も同様に願います。

なお、この作品はpixiv、mixiにも投稿しています。


episode10 脱出。そして時は進む。

 ここにいるバスケ少年達の殆どは、『仮面ライダー』を知らなかった。

 映像作品としての『仮面ライダー』を知る者も、彼らの中では少数派であった。

 だが今、彼らの目の前で。

 

「変身」

ガブッ

 仮面ライダーキバが。

 

Driver on!

「変身!」

 仮面ライダービーストが。

 

Ready!

「変身!」

 仮面ライダーメテオが。

 

pipipi

   Standing by

「変身!」

 仮面ライダー555が。

 

HOPPER!

「変身!」

 仮面ライダーHOPPERが。

 

「変身!」

タカ、トラ、バッタ!

Ta,To,Ba, tatoba TATOBA!

 

 そして、新たに表れた仮面ライダーオーズと『ArmoredRider』改め仮面ライダー鎧武、併せて七人が、それぞれ眼の前の敵を薙ぎ倒しに掛かる。

 その後方、宮地裕也はヌンチャクらしきものをを取り出し、高尾和成はファーストフードの玩具にしか見えないガジェット達に、どんどんアストロスイッチを差し込み押して手放してゆく。

 

「裕也、無理はするな」

「大丈夫です、大坪さん。

 それより誠凛の面子に気を使ってやって下さい。あそこは大所帯だ」

 

 気遣ってくれる兄の親友にそう応え、裕也は構えを取った。

 そして、ガジェット達を放し終えた和成が、一見玩具に見える銃型ガジェットを取り出し構える。

 暖色系ツートンカラーに塗られたそれは、和成専用に調整されたガイアメモリ用ギミックだ。

 

「高尾、それは」

「護身用に持って来てたんだ、この合宿の後援者がきな臭いって聞いてたから。

 また、財団Xかなあって思ってたら、もっとトンデモナイ所だったから笑っちゃった」

 

 焦る緑間真太郎にヘラっと笑い掛けつつ、和成は近付く戦闘員へと銃をぶっ放す。

 怪鳥音と共に、振り回されたヌンチャクで戦闘員が二人纏めてふっ飛ばされる。その横で、同じく丸太を振るって陽泉の岡村建一が戦闘員を殴り飛ばす。

 

「モアラ!?」

「何時でも走れるようにしとるんじゃ、アギト達が来たと言う事は、直に救助船が着くからの!」

 

 焦る後輩に岡村が叫ぶと、それに応えるようにクウガが声を張り上げた。

 

「おう、安心しろ、今《S.A.U.L》のトレーラー積んだ船が港に強行着岸したとこだ!

 もうちょっとだけ頑張れよ、お前ら!」

 

 その言葉を裏付けるように、港の方角から爆音が轟いた。

 それは《S.A.U.L》到着の、派手な号砲であった。

 

 さて、時間は僅かに遡り、『仮面ライダー』達に三人が合流したその頃、《S.A.U.L》のGトレーラーを乗せた小型貨物船は、勝義島の港へと全速力で進んでいる途中であった。

 これは、見た目と積載量こそ貨物船だが、実際は海上自衛隊から貸し出し(て貰うよう脅しを掛け)て運用している特殊高速船である。

 その甲板の上で、三体のG-3Xがそれぞれ装備の最終チェックを終わらせようとしていた。

 一人は、警視庁に本部を置く《S.A.U.L》関東本部所属のGシステム装着者、本音京一郎警部補。

 残る二人は、《S.A.U.L》東海地区所属のGシステム装着者兄弟、各務正宗警部補、各務兼定巡査部長である。

 合宿前のLINEで、祥吾達の話題に上がっていた『東海の刀剣兄弟』とは彼らの事だ。二人とも所謂ノンキャリアだが、東海地区では対グロンギ戦が多い事もあり、三十前後の若さだがこの階級に上がっている。

 たまたま今回、警視庁へ出て来ていた二人に、緊急要請が入った形で高校生達の救助作戦に参加している。

 彼らの周囲では、船の警備と高校生達が船に乗り込む際の警護要員として同乗した機動隊の一個中隊がおり、その隊員達がやはり装備の最終点検を行っている状態だ。

 

「おう、本音、こっちは何時でも出られるぞ」

「俺もいいぞ。着岸と同時に、兼定が上から威嚇も兼ねて05《ケルベロス》を掃射する。

 俺とお前が、01《スコーピオン》と02《サラマンダー》で子供の避難経路を確保する。一応この船に乗せるが、まあ50人足らずなら大丈夫か」

「兼定さん、誤射は無しにして下さいよ?」

「お前、俺がしょっちゅう誤射してるように言うんじゃねえよ」

 

 口を尖らせるこのアラサーに片足突っ込んだ男が、毎回必要以上に弾丸撒き散らしその都度始末書を書いている事は、《S.A.U.L》関係者によく知られた話である。

 彼らが纏っている強化服はブルーで纏められているが、左上腕に関東本部の本音は赤色、東海地区の二人は緑色でそれぞれの認識番号が記されている。

 ヘルメットを小脇に抱えたまま、そう打ち合わせていた三人のインカムに、ピッと通信が入った。

 

『《S.A.U.L》中央管制室(センターコール)TOP-Kより各員、現在、高校生達は港より一二〇メートルの地点にて戦闘員及び未確認生命体数名に囲まれている状態です。

 クウガ、アギト、電王、HOPPER、キバ、ビースト、555、メテオが交戦開始、尚、新たにライダーとして二人戦闘参加しています。データを転送するので、未確認と誤認しないよう注意して下さい』

「おいおい、又チビ共に戦わせるのかよ、警察のメンツ丸潰れって言わないか?」

 

 中央管制室からの通信に、真っ先に唸ったのは兼定である。

 それに向かって、先ほどの男性ではなく女性の声が答えた。

 

『生憎だけど、持ち込んだのは向こうさんの様よ。そもそも、異次元で入手した『ArmoredRider』ユニットのテストと適合者探しを兼ねて、高校生達を合宿と称して拉致したようだし』

「返すがえすも碌でもねえな、財団Xより酷いな、こんな組織なのか、SHOCKERって」

「俺が覚えている限り、真っ向から武力行使だったBADANよりはマシだが、餓鬼共が青春掛けているスポーツを利用して拉致した時点で話にならんな」

 

 主席オペレーターの声に兼定が頭を掻き毟ると、当時小学校一年生だったがBADAN戦役を覚えていた各務正宗が重々しく告げる。

 その時、格納スペースに警告ブザーが鳴り響いた。最初のブリーフィングで、着岸三分前に鳴らすと決めたものだ。

 それを聞いて、兼定が慌ててヘルメットを頭に当てつつ立ち上がる。

 

「おっと、向こうさんもこっちに気付いて着岸地点に群がってやがる。先に出てぶっ放してくるわ」

「岸壁まで壊すんじゃねえぞ」

「あいよ、兄貴」

「お願いします、各務巡査部長」

 

 ひらっと手を振り、G3-X.TK03とペイントの入った強化服姿の男は、階段を軽快に駆け上がって行った。

 それを見送り、本音も正宗とともに抱えていたヘルメットを被った。パシュッと音を立てて密着したヘルメット内に酸素が循環するのを確かめ、本音京一郎は大口径サブマシンガン、G01《スコーピオン》とその付属グレネードユニットであるG02《サラマンダー》を掴んだ。

 

 

 戦闘は、数で圧倒的に優勢な筈の大ショッカー側を、仮面ライダー達が押し返しつつあった。

 凄まじい勢いで戦闘員が薙ぎ倒され、各組織、各種族の怪人達もアギト、クウガ、電王の前にあっと言う間に爆散の憂き目を見た。

 その光景に、最初に部下達に撤退を命じたのはドーパント達を率いる《NAZCA》であった。

 

「これは酷い。まあ、こちらとしても、今更SHOCKERなんて遺物と組むのもどうかと思ったし、こちらのトップを格下呼ばわりするのにも我慢の限界だし、良い口実だねえ」

 

 顎の指を当てる仕草をして、青い鳥人型の怪人は灰色の梟型女怪人に視線を向けた。

 こちらの方は、事態に怖気付いたのか、ガクガクと震えている。

 

「スマートブレインは撤退しないのかい? 我々『Exhibition』は、これ以上大ショッカーとの共闘に価値を見出だせないのだがね」

「上層部から、撤退命令を受けておりません、ので」

「ふうん。それは大変だねえ」

 

 それだけ告げて、《NAZCA》はそのまま動かない女怪人に背を向けた。

 

「《NAZCA》様、よろしいので?」

「気にしなくていいよ、どうせSB社とは技術者の奪い合いでこの間に揉めたばかりだし、彼女、どうやら大ショッカーへの義理立て用に送り込まれた捨て駒らしいし、こちらに助ける謂れはないよ。

 彼女が助けを求めるなら、吝かじゃないんだけどね。

 何より、私は社長と会長から預かった君達を、『Exhibition』の利益に関わらない形で消費する訳には行かないからね。

 うちは既に、武闘派で鳴らしたMissHOPPERが退場しているんだ、これ以上の赤字はゴメンだね」

 

 戦闘員(マスカレード・ドーパンド)の戦闘班長にそう答えると、《NAZCA》は部下達に撤収を命じた。

 ドーパント達のように組織立ってはないが、同じように撤退を始めたのはファンガイア達である。元々、自分の欲に忠実であるが故にKINGから離れた面子である。そもそも、沈み掛けた船に長居するような連中ではなかった。尤も、血の気の多い者がキバにちょっかいを出しては、文字通り粉砕されていたが。

 ファントムの方は、元々自己判断だったのか参加者自身少なかった事と、ライダーとの戦闘後一応の指揮官であったレギオンが逃亡した為、逃げる者残る者バラバラで動き、結果残ったファントムは殆ど撃破されつつあった。

 そして。

 

「ふうん、やるねえ、あいつら」

「オーズの劣化品かと思ったけど、全く別物なんでしょうね」

「八百年俺達が眠ってる間に、良く解らない連中が増えたようだねえ」

「判らないって言うと、今度のオーズ、俺達の誰のとも違うメダル持ってるな」

「どうでもいいよー、そろそろどっか行こうよ、セルメダル集められるとこ」

「そうね。ここじゃ良い宿主もいなさそうだし。行きましょうか」

 

 そう声だけを残して、四つの影がすっと港湾施設の影に溶け込んで行った事に、気付いた者はいなかった。

 

 

 セロ少佐こと、蟷螂怪人は焦っていた。

 彼は、この世界の『改造人間ではない仮面ライダー』達を軽視していた。

 強化服を着込んでいようと、所詮は人間、しかも全員未成年と言う事から、この時空をすぐ制圧出来ると高を括っていたのだ。

 しかし今、周囲の戦闘員を薙ぎ払って、足手纏の高校生達を守りながら戦う他のライダー達へ指示を飛ばしていたアギトと呼ばれた存在は、それと同時に指揮官である自分との戦闘を行っているのだ。

 勿論、クウガと電王の的確なフォローもあるが、それを度外視してもアギトはセロが真剣にならざるを得ない程に強かった。

 

「はぁっ!」

「こ、これは」

 

 パンっと、オルタリングの右側に付いた赤いボタンを叩いたアギトの右腕が炎に包まれ、その炎を振り払うと赤くなったその腕に一振りの片刃剣が現れた。

 フレイムセイバーと呼ばれるそれを、アギトはブンっと一振りするや、蟷螂の首を狙い神速で振り抜いた。

 改造人間故の視力と神経加速ブーストで何とか躱した紅と金色の剣は、そのままセロの斜め後ろへとすっぽ抜けた。

 それを笑おうとしたセロの耳に、「超変身!」と言う叫びが突き刺さった。

 声の方を見ようとした複眼に、紫色の閃光が走りセロの片目が切り裂かれた。

 

「ちっ、浅いか!」

「貴様、クウガっ」

 

 すっぽ抜けたと見えたフレイムセイバーを、クウガが掴みそのまま紫のクウガ(タイタンフォーム)へとフォームチェンジしたのだ。

 元々タイタンフォームは、破壊力と防御力に長ける分、機動は低い。それを飛んで来た剣を宙で捉え、振り上げたところでフォームチェンジする事でスピードを落とさず攻撃に繋げたのだ。

 

「ば、馬鹿な、こんな偶然っ」

「さあて、どうなんだろうな」

 

 潰れた複眼を押さえ、慌てふためく蟷螂怪人に向かってクウガが平坦な声で答える。

 もちろん、偶然でも何でもなく、二人はテレパシー能力でコンタクトを取り合っており、クウガが間合いに入ったところでアギトがセイバーを飛ばしたのだ。

 クウガとアギトが指揮官を抑えている間に、電王の指揮下で仮面ライダー達は高校生の一団を守って港へと移動を始めていた。

 電王と共に宮地清志こと仮面ライダーメテオ、中村真也こと仮面ライダー555が戦闘員達が作る壁に穴を穿ち、黛千尋こと仮面ライダーキバと福井健介こと仮面ライダービーストがその穴を押し広げ、そこを灰崎祥吾こと仮面ライダーHOPPER、火神大我こと仮面ライダーオーズ、日向順平こと仮面ライダー鎧武が庇いつつ六校のバスケット部員達を港へと誘導する。

 無論、逃がすまいと大ショッカーの骨戦闘員も追いすがろうとするが、飛び回るガジェットと裕也のヌンチャク、和成の銃器ガジェットによる牽制射撃で近付く事が出来ない。そして何より。

 

ブドウアームズ!

龍・砲・ハッハッハッ!

「先輩達に、指一本触れさせないっすよ!」

 

BANANAARMS!

KNIGHT of SPEAR!

「Hi! 邪魔するなら吹っ飛ばす! O.K?」

 

DORIAN ARMS!

Mr. DANGEROUS!

「征ちゃんに、指一本触れさせないんだから!」

 

MANGOARMS!

FIGHT of HAMMER!

「邪魔だ、道を開けろーー!」

 

 残り四つのベルトを持ち出した高校生達が、各々の武装を振り回し、ぶっ放して戦闘員を吹き飛ばしているのだ。

 最初に戦極ドライバーを持ち出したのは、黄瀬涼太だった。

 止めようとした自チームの先輩達に向かって、黄瀬はこう言った。

 

「幾ら経験があるって言っても、中村先輩だって高校生なんすよ!

 それに、ショーゴ君ばっかり良い恰好させるの嫌っす!」

「おい、黄瀬!?」

 

 海常勢がそうやってもめている横で、同じくドライバーを手に取ったのは、先程大ショッカーの小細工によって暴走した氷室辰也だった。

 それを見て、紫原敦が慌てて制止しようとした。

 

「室ちん、また何する気!?」

「勿論、逃げる為に邪魔する奴らにどいて貰うんだよ」

「ちょ、おま、氷室! さっき大騒ぎ起こした事もう忘れたアルか!?」

「覚えているさ。だが、福井先輩が戦っていて、タイガまで仮面ライダーとして戦っている現状で、俺が守られてる立場って言うのは間違ってるような気がするんだよ」

 

 同級の留学生に、きれいにそう笑って言い放ったエレガントヤンキーは、迷う素振りも見せすドライバーを腰に当てた。

 その横で、赤司征十郎の手の中から戦極ドライバーを取り上げたのは実渕玲央だった。

 

「お!?」

「あー、玲央ネエ何するの!」

「実渕さん!?」

「さっき、征ちゃんが私を庇ってくれたから、今度は私が征ちゃんを守るわ。

 私も、あの木の実から変わった錠前、持ってるのよ」

 

 そう言って、実渕はドリアンらしいごつごつした木の実を思わせる意匠の付いた、ロックシードを見せた。

 ぽかんと見ている同級生の大きな方に荷物を預け――実は、根部谷永吉は既に千尋の荷物を抱えていたのだが――、氷室に倣ってドライバーを腰に当てた。

 そして、最後に青峰大輝の荷物からマンゴーロックシードと戦極ドライバーを取り上げたのは、諏佐佳典だった。それを見て、桃井さつきは悲鳴を飲み込んだ。

 

「須佐先輩!?」

「青峰、お前は桃井と背中の奴の面倒見ていろ、こいつは俺が使う」

「な、何言ってんだよ、須佐さん!」

「須佐先輩、待って下さい」

「先輩、それなら俺が!」

 

 三年生の、しかも良心と言われた寡黙な先輩の言葉に、暴君と言われた一年生も、隠れライダーマニアであった一年も言葉を失う。

 慌てて二年生が名乗り出るが、それに向かって首を振ったのは、元主将であるもう一人の三年生だった。

 

「若松、お前は桜井見とらなあかんで。

 須佐、初心者やさかい、無理するんや無いで?」

「何だ、今吉。止めないのか?」

「お前が、見た目を裏切る強情者なんはわしが一番知っとる。

 わしには仮面ライダーなぞ、真似事でも務まらん、せいぜいお前の荷物を代わりに運ぶくらいやしな」

 

 そう言って苦笑する相棒に小さく礼を言って、須佐はドライバーを起動させた。

 結果として、盲滅法な乱射や長柄を利用して振り回すだけの武具でも、犇めく戦闘員達を打ち払うには十分だった。

 それらを掻い潜って近付く者を、電王やメテオ、ビーストの広範囲攻撃が弾く。

 

FULLCHARGE!

「『Kriegsbeil Boomerang!』」

SaturnSorcery!

「おら、吹っ飛べ!」

Jabberwocky,Flame,Flame,Cloak Go!

SaberStrike!

「合わせ技でドーン!、って三つかよ!?」

 

 電王の手から放たれたハルバートが、まさしくブーメランと化して弧を描きながら戦闘員を吹っ飛ばし、メテオの右手に土星の輪をイメージした光の輪が生じ、それを戦輪(チャクラム)宜しく周囲の戦闘員達を薙ぎ払い、赤いショルダーケープを纏ったビーストの振るうダイスサーベルから、炎で形作られたドラゴンが三体飛び出し戦闘員を巻き込み爆ぜる。

 そうやって、学生の一団が港に辿り着いた時、貨物船が接岸している周辺には既に戦闘員の姿はなく、クリアニング中と思しいG3-Xが二人、急げとばかりに手にしたサブマシンガンを振って見せた。

 赤色でG3-X.PH005と書かれているG3-Xに向かって、電王が声を張り上げた。

 

「本音さん、こいつら頼みます!」

「おい、何する気だ、お前!」

「殿(しんがり)っすよ、解ってるでしょ!」

 

 特殊シールドを構えた機動隊の隊員が壁を作り、その隙間から高校生達を通らせ、後方の貨物船へと移動させる。

 キバ、ビースト、メテオ、555、HOPPERの五人は、居並ぶ機動隊員達と学校の仲間達が船に乗るのを警護するべく周囲に散開する。そして、オーズと鎧武、他のArmoredRider達に船内と周辺を警戒するよう伝え、電王は島の方へ向き直る。

 ハルバートモードのデンガッシャーをガンっとコンクリートに突き立てたかと思うと、電王は追い縋る戦闘員達を睨み付けた。

 

「ああ、もう。嫌だなあ」

『閃、私が代わろうか。そろそろ辛いのだろう?』

「そう言う訳にはいかないよ。これから、こう言う組織がまた現れたら、同じ事で躓く事になる。

 それじゃあ駄目だ。それ言っちまったら海斗はどうするよ。

 あいつにしてみれば、乳飲み子の頃から可愛がってくれた人達の、これはあったかもしれない未来なんだ。それと戦う事を覚悟の上で《仮面ライダー》になったあいつと付き合うと決めた俺が、今ここから逃げられるもんか」

 

 殺到する戦闘員の波を前に、仮面ライダー電王はガンと己の額に拳を打ち付け、改めてデンガッシャーを掴んだ。

 

 

 その頃、仮面ライダーアギトとクウガは目の前で起きた事に絶句していた。

 二人は蟷螂怪人セロ少佐を追い詰め、あと一撃と言うところまで来ていた。

 

「クウガ!」

「おう!」

 

 二人の足元に、それぞれを象徴する紋様が光で形作られ、その光を纏ったまま同時に渾身のキックを放った。

 だが、インパクトの瞬間、セロ少佐は近くにいた梟女を掴み自身の盾にした。

 

「え!?」

「何だと!?」

「あ、ああ、そんな、死に、たくな、あああアアアアッ!!」

 

 悲鳴と共に燃え尽き、灰となって砕け散ったオルフェノクの姿に、ライダー二人は一瞬セロから意識が逸れた。

 それ幸いと、セロは動きの止まった二人に向かって、光弾十数発を撃ち込みその場から遁走した。

 が、その光弾を、二人は鏡写しの如く並んで構えを取るや、全て弾き飛ばした。

 赤心少林拳の奥義の一つである、『梅花』を共に習得しているからこそ可能な技である。

 

「あんの、卑怯者があ!」

 

 肩で息をしながら、クウガが唸る。その横で、大きく息を吐きながらアギトも呟く。

 

「ああ、もう、話に聞いたヨロイ元帥とか、呪博士とか、指揮官として二の線三の線って奴だね、あれは」

「ったく、行こうぜ、多分もう皆船に乗った筈だ」

「ああ。

 って、待って、クウガ。あれ、コアボイルダーだ」

 

 相棒が指さした方を見て、クウガもおやっと言うように首を捻った。

 そこには、どうやら何処かに運び出すべく梱包しようとして、その直前で投げ出しましたと言う感じに放置されたコアボイルダー水上高速航行形態があった。

 

「あー、なある、祥のこいつを見つけて、闖入者がいるのに気付いて計画を早めたって事か」

「ある意味ありがたかったかもな。きっと、一週間の中日くらいに行う予定だったんだろうけど、その場合、千尋達の負担が洒落にならなかったろうし、下手打てば、死傷者も出ていたかも」

「不幸中の幸いと言う奴かね。まあ、やる事は変わらなかっただろうけどさ、大した被害を出さずに済んだって事は良しとして良いんだろうな」

 

 相棒の言葉に「違いない」と返し、アギトはコアボイルダーに近付き状態を調べ始めた。

 クウガの方も、コアボイルダーを固定する途中だったらしい木材を外しに掛かった。

 ホテルのある、島の奥の方から火の手が上がったのはその時だった。

 ちょうどその頃、戦闘員との連戦が途切れ、息を吐いた電王と他のライダー達が集まり退避を始めようと話したその時、どんっと足元から振動が伝わり、同時に電王とHOPPER、キバとビーストとは《S.A.U.L》からの通信を聞いて動きを止めた。

 

『《S.A.U.L》中央管制室(センターコール)TOP-Kより各員、勝義島西岸より火災発生、ホテルとみられる施設群が爆発炎上中。

 証拠隠滅の為、施設自爆を図った可能性が高いです、速やかに脱出を。

 《S.A.U.L》隊員は、保護した高校生の安全を第一に行動して下さい。《仮面ライダー》も、民間人保護をお願いします』

「まじか……」

 

 通信を聞いて、思わずそう漏らしたのはキバである。

 思わず背後を振り返り、そのまま走り出そうとしたビーストを、HOPPERが慌てて引き留める。

 

「ちょ、ビースト! 何処へ!?」

「ホテル! 監督達が!」

 

 ビーストの声に、他のライダーもはっとなる。

 だが、それに向かって「落ち着け!」と一喝し、電王は弟分でもある面々に向かってこう言った。

 

「大丈夫、海常と秀徳、陽泉と桐皇、洛山の監督さんやコーチの人達は、眠らされて小舟に詰め込まれて漂流させられてるところを、《ホークアイ・ホールディングス》のクルーザーが保護したよ。

 乗船してたお医者さんが命に別状ないってっさ、だから、俺達も撤収だ」

「小舟って、」

「釣り船より大きいくらいの奴に、拘束なしで放置されてたそうだ。尤も、監督さん達の中にまともに操船出来る人間がいないと嵩を括っていたようで、船そのものに故障とかは無かったらしいよ」

 

 実は、無事に戻る事で世間の非難を全て、指導者の彼らに被せるつもりだったのではないかと何人かは睨んでいたが、電王こと香山閃は高校生の弟達にそれを伝えるつもりはなかった。

 取り敢えず、G3-Xが腕を振るのに答え、電王は仲間達を促し貨物船へ乗った。

 最後に緑のナンバリングが入ったG3-Xが乗り込むと同時に、船とも思えない速度で岸壁から離れた。

 乗り込んだ面子の中に、アギトとクウガがいない事に気付いて、慌てた声を上げたのは誠凛の福田寛だった。

 

「あ、あの、クウガとアギトは? いないみたいなんですが」

「え?」

 

 後輩の言葉に、まだアーマーを脱いでいなかった鎧武が周囲を見回した、その次の瞬間。海上から見える港の倉庫が爆発炎上した。

 それなりに陸地から離れていたものの、仕込まれていた爆薬が洒落になっていなかった様子で一瞬船体が揺れるほどの衝撃が襲い、高校生と新人らしい警官からくぐもった悲鳴が上がった。

 

「うお、マジか、奴ら!」

「清々しい悪役っぷりだが、洒落にならん!」

 

 装備を脱ぐ為にGトレーラーへ乗り込もうとした各務兄弟が、タラップから落ちそうになって慌てて手すりに縋り付く。

 機動隊の班長と話していた本間も、爆音と衝撃で蹈鞴を踏んだ。だが、それでも咄嗟に操舵室に速度を上げるようインカムで怒鳴っていた。

 軽くパニックなっている高校生達に、落ち着くように声を掛けていた555が、島の方から回り込む小さな影に気付いた。

 

「あれは!?」

「水上バイク?」

 

 555の声にそちらを見たオーズが、高速で近付くそれに首を捻る。

 その声に通路に出たHOPPERが、近付く存在を見て喜色満面に飛び上がった。

 

「クウガだ! 俺のコアボイルダーに乗って来てる!」

「「「「「「ええ!!」」」」」」

 

 ドドドッと、ライダーとその他何人かが同じ場所に殺到し、HOPPERが勢い宙へ押し出されそうになる。

 その様子を見上げ、スプラッシャーを軽快に操りつつクウガが手を振る。その横へ、空中を赤銅色のホバーボード――これが、変形したバイクと思う者は、初見ではいないだろう――、トルネイダー高速滑空(スライダー)モードで滑りながらアギトが並ぶ。

 

「∑(゚д゚ノ)ノウワッ、カッコいい!」

「アギトもクウガも無事だった!」

「さっすがぁ!」

 

 思わず警官の一人が漏らした声を耳にして、桜井と福田が手を取り合う。

 クウガのハンドサインを見て、アギトも船の通路甲板に居並ぶ人々に手を振って見せた。

 そして海上を走る二人は、貨物船を追い越し先に進んだ。

 二人が進むその先に、一隻の大型クルーザーが見えた。

 その甲板では、学生達に見覚えのある人物達が一杯に手を振っているのが見えた。

 

「監督だ!」

「どうしてあそこに」

「どうやら、邪魔者って事で船に乗せられて流されていたらしい。ここに向かっていたあの船が、途中で見付けて保護したんだ」

 

 何人かの三年生に、電王が説明してやる。

 騒ぎで皆聞きそびれたが、貨物船と大型クルーザーが近付く頃には最後の爆発が起こり、勝義島を包んだ炎は殆どの建築物と植物とを燃やし尽くしていた。

 こうして、《S.A.U.L》の事件記録のみに記録され、世間には火災事件としてのみ公表された事件は終結した。

 

 

「あら? 何かしら、これ」

 

 東京に戻って、《ホークアイ・ホールディングス》が手配してくれたホテルで健康診断と事情聴取を受けた後、説明大会と称してホテルで全員一泊した――クウガとアギトは、《S.A.U.L》での報告書作りがあるからと帰ってしまったが、素顔の二人は片やベビーフェイスの美少年、こなた隣のお兄ちゃん的好青年と言う取り合わせで、実渕と一部面々がどぎまぎしていた――、バスケ部員たちはそれぞれの家、または学校へと戻っていった。

 そうやって、自宅に帰った相田リコは、号泣する父を宥めつつ自室に入り、荷物を広げていた。

 殆ど広げる事無く持ち歩くだけだった荷物の中身を、元のタンスの戻そうとしていて彼女はそれに気付いたのだ。

 

「金色の、果物。なんだかリンゴみたいだけど、本物じゃあ、無いわよね?」

 

 手に持ち、何度も角度を変えつつ眺めるが、金色のリンゴのようなもの、としか思えなかった。

 暫く悩んで、リコは深く考える事を止めた。何となくだが、危ないものと思えない事と、明日日向順平に相談すれば良いと思ったからだ。

 

「ま、生物じゃないようだし、此処に入れておけば良いわよね!

 明日、順平に検査して貰うよう頼めば良いし、うん」

 

 飾り棚の上の段にそれを置くと、リコはそのまま片付けを再開した。

 彼女が、その金色のリンゴの事を思い出し検査に持ち込むのは、これからずっと後の事になる。

 

 

 そう、これが異次元のとある世界に存在する『ヘルヘイムの森』に生じる『禁断の果実』であり、彼女はそれを『王』に授ける《始まりの女》に選ばれた事を、彼女自身もまだ知らない。

 

 

 

 

 ほぼ同じ頃、赤司征十郎は東京の自宅にいた。

 自宅は、現在大騒ぎであった。

 何しろ、提携したばかりの会社が犯罪結社のダミー会社だったのだ、警察からのあれやこれやで本社に捜索が入ったのだと言う。

 大人の騒ぎに背を向け、征十郎は自室に入ると、扉に鍵を掛け、ベッドに座って息を吐いた。

 正直、事件の渦中にあって命の危機を感じた身からすれば、その元凶に騙され事態のお膳立てに片棒を担いだ父親の顔など正面から見たいと思わなかったし、会社の長として取るべき責任は取って貰わなければ、同じように巻き込まれた先輩や同輩達に申し訳ないとも思った。

 そして何より、今征十郎はやりたい事があった。

 スマホを取り出し、電話帳に記録したまま長らく触っていなかった番号を呼び出す。

 まだ就業時間だったが、相手はすぐに出てくれた。

 そして、征十郎は声が震えないよう、気を配りつつこう声に出した。

 

「大変ご無沙汰しています、鴻上の伯父さん、征十郎です。

 不躾で申し訳ありません、でも、以前伯父さんが仰った事を覚えていらっしゃいますか?」

『やあ、元気そうだね、征十郎。お前が言っているのは、今年の正月に会った時の事だね。

 勿論、覚えているとも!

 そうやって言って来てくれると言う事は、お前にもどうしても叶えたいが、自力では難しい夢が出来たと言う事だね、素晴らしい!』

「ええ、伯父さん」

 

 そう言いつつ、征十郎が思い浮かべたのは三人の仮面ライダーだ。

 一人は、迷惑を掛け通しだった先輩であった黛千尋が変身した、《仮面ライダーキバ》。

 中学時代、不要と切り捨ててしまったが実は誤解ばかりだった灰崎祥吾が変身した、《仮面ライダーHOPPER》。

 最後は、自分を守る為に『ArmoredRider』のベルトを手にした実渕玲央。彼、は戦極ドライバーの被験者として、《S.A.U.L》に仮登録してベルトの実験を手伝う事になった。あくまでも、ベルトの性能テストの為であり、仮面ライダーそのものになる予定はないとの話だったが。

 

「伯父さん、俺は仮面ライダーになりたい。

 世界平和なんて大それた事は言わない、それでも、傍にいる友人達を守れるだけの力が欲しいのです」

 

 少し間が開いた。

 だが、すぐにスマホ越しでも響き渡るような『HappyBirthday!』が飛び出した。

 

『征十郎、お前の新しい欲望を祝福しよう。

 近いうちに私の会社に来なさい、見せたいものがある!』

「判りました、春休みには必ず」

 

 通話を切ると、征十郎は窓から外へと目をやった。

 庭の木々は一見すると冬枯れたままのようだったが、幾つかの木の芽は確かに大きくなっていて、やがて来る春を待ち望んでいるかのようだった。

 

 

 




 時間は、少しだけ巻き戻る。

 勝義島が燃え尽きようとしていたちょうどその時、セロ少佐は地下施設の最奥にある、時空移動装置の設置された部屋へと逃げ込んでいた。
 勿論、本拠地へ帰還しようとしていたのだが、しかし幾らパネルにコードを打ち込んでも、装置は一向に立ち上がらない。
 焦るセロの背後に、ふらりと人影が近付いた。振り向こうとした蟷螂怪人に、だが剣状の物体が怪人の心臓を貫いたのはほぼ同時だった。

「んな!?」
「やれやれ、前線基地はパアにする、せっかく作った人脈その他も台無し、しかも部隊もほぼ壊滅で、何おめおめ帰って来ようとしてるのさ。馬鹿じゃね?」

 振り向いたセロの見たものは、ピンク色の影に、そのさらに後ろに立つ二十歳前後の青年だった。
 青年の方は、べっと舌を見せて笑う。その片頬には、翼を広げ地球に留まる鷲の刺青が入っている。

「我等が大ショッカーは、無能はいらないんだよ、セロ少佐。
 あんたが一番知ってるよねえ、そう言って、一杯同輩を蹴落として来たんだから。尤も、今度はあんたが蹴落とされる番だけどね」

 ケラケラと笑う青年に、セロは最後の矜持として鎌を振り上げようとした。
 だが、ピンク――マゼンダカラーの仮面ライダーを思わせる存在は、ライドブッカーソードモードを相手から引き抜き、突き飛ばしてガンモードに切り替えセロに向かって十発ほど光弾を撃ち込んだ。
 言葉にならない呻きを上げると、セロ少佐は床に崩れ落ち爆散した。
 床の上に残った煤を踏み躙って、青年は笑う。

「ウフフ、せめて《仮面ライダー》に倒されてたら、二階級特進でゾル大佐と並べたのに、粛清じゃあ、少佐のまま据え置きだね、ざーんねん」
「……行くぞ、名無し。お父様に報告だ」
「チェー。自分だってつい最近まで名無しだった癖に」
「文句は、ディエンドドライバーを盗まれた警備と科学班に言うんだな」
「は、そいつ等なら、とっくに血祭りに上げちゃったよ。無能を買う余地なんて無いもの。
 じゃあ、システム動かしてよ、ディケイド。俺はお前がいないと移動出来ないんだから」
「判っている。行くぞ」
「はいはーい、だ」

 明るく話す青年とマゼンダカラーの人物――ディケイドが銀色のオーロラに飲み込まれると、まるでそれを待っていたかのように部屋の中は紅蓮の炎に飲み込まれた。
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