Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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 雑然と並ぶデスク、鳴り響く黒電話、そして飛び交うのは耳慣れた広東語。
 懐かしい、香港尖油総警署の刑事部屋の光景。
 そして、必死にメモを取りつつ黄刑事の話を聞いている、若き日の滝和也。
 そうだ、これは昔の光景。彼がFBIの期待の俊英として、香港皇家警察に三ヶ月の研修に来た時。
 最初世話役の話が来た時は、良いようにからかってやるつもりだった。
 ところが、いざ当人に会った時、直感したのだ。上の連中の思惑通りに管理職に付けたら、こいつは部下を庇って早々に死ぬか、上に押し潰されて人格的に殺される!っと。
 だから、使えるコネを総動員し、また彼の持つFBIと言う肩書きを使えるだけ使い、ねじ込める捜査と言う捜査に参加させ、取れる資格を全て取らせ、睡眠と食事時間以外総て研修につぎ込んだ。
 三日持つかと思った新人君は、恐ろしい事にこのペースのまま三ヶ月の研修を終えた。
 最後は、私も教材の準備に追い立てられ青息吐息だった。
 土壇場になって、台湾警察に対マフィア戦略としてアメリカ政府を釣る為の、生け贄にされ掛けた彼を救出するべく奔走しもした
 だが、お互い傷塗れではあったが生還し、彼と再会を約束し握手して別れたのだ。

 私が台湾マフィアに捕まり、新型ドラッグの検体にされ挙げ句にとある特殊な改造人間にされるのは、そのほんの二ヶ月ほど後の事。

Monologue by ???



05. 再び1971年へ

05. 再び1971年へ

 

 前回より、一〇分程前の時間にやって来たデンライナーから、六人の人影が降り立った。

 仮面ライダー電王である香山閃とウルフイマジンのウォルフィ、仮面ライダーオーズである火神大我と黒子テツヤ@レイヴ、そして天馬と剛である。

 ぎりぎりと、大我の右手がレイヴ@黒子の後頭部を握り込む。

 

「普段あれだけメダルメダル言っておいて、セルメダル落とした事に気付かないってどう言う了見だよ!」

『うっせえな、お前に押し潰された所為でふらふらしてたんだよ!』

「か、火神君、痛い痛い」

 

 移動中に、レイヴが最初に来た時にセルメダルを落としていた事が判った。

 レイヴとしては、命と同等のコアメダルでは無かった為にあまり深刻には考えていなかったが、《S.A.U.L》で色々説明を受けていた大我の方は、セルメダルが高エネルギー結晶の一種である事を聞かされていた事からかなり不味いと思っていた。

 もしかすると、セルメダルをエネルギー源にした何か強烈な兵器を作り、それを使って仮面ライダー一号二号を倒し、洗脳したのではないか。

 それが、大我と閃の出した仮説である。

 

「取り敢えず、まずはセルメダルを回収しよう。

 事態を転がしたのがメダルなら、回収すれば多分それで済む筈だ」

『あれだけ激変した世界が、本当に戻るのか?』

 

 頭を擦りつつレイヴ@黒子が言うと、これはウルフイマジンの方が答えた。

 

『時間の修復力は大したものだ。

 今回は大きく歪んだからこそ、大きく戻る事になる。恐らく、何事もなかったように元の世界に戻っているだろう』

「バタフライ効果が怖いところですが」

 

 黒子@レイヴがそう呟くと、大我の方が頭を掻きつつこう言い放つ。

 

「起きなかった事は、無かった事だ。とにかくメダルを探すぞ。

 ……だけど、お前らは列車で待ってた方が良いぞ? 此処にも怪人居るんだからさ」

 

 言葉の後半は、年下二人に向けられたものだ。

 それに向かって、噛み付くように食って掛かったのは剛の方だ。

 

「お前らだけに任せられるかよ、俺達の仲間や家族が酷い事になったのは、そこのデカイのとメッシュの所為だって聞いてさ。

 探しものなら得意だから、取り敢えず手伝わせろよ」

「あの、ごめんなさい、じっとしているのが心苦しいんです、手伝わせて下さい」

 

 ペコっと頭を下げた天馬の頭を撫でてやり、閃の号令でそれぞれ行動を起こした。

 

 

 暫くすると、あの時、モールイマジンを追って来た列車が六人の頭上を通り過ぎた。

 それを見上げつつ、閃@ウォルフィが唸るように呟く。

 

「来た。大我、どの辺りでレイヴを捕まえた? その近くで待機しよう」

「お、おう。えっと、こっちだったかな?」

『違う。こっちだ』

 

 歩き出そうとした大我の襟首を掴み、レイヴ@黒子が全く逆の方向を指差す。

 そんな周囲のやり取りに、剛はあからさまに「大丈夫か?」と言う顔になり、天馬も力無く笑った。

 倉庫街の外れで待っていると、ギャイギャイと大声で喚き合いながら走ってくる大我と赤い片腕が現れた。

 そのまま高みに上って逃げようとする赤い腕を、足元の木箱を蹴って飛び付いた大我が叩き落とす。ついでにその上に大柄な身体が落ちて、予期せずプレスする事になった。

 その瞬間、チャリンと一枚メダルが弾き出されたが、赤い腕も追い掛けて来た方の大我も気付いていない。

 

「ぐへっ!」

「この、やっと捕まえたぞ、この野郎!」

 

 呻いている腕を掴んで、ぶんぶん振り回しつつ戻って行く過去の自分を眺め、大我は頭を押さえる。

 その大我の肩を、閃@ウォルフィが叩く。

 

「さ、今のうちにメダルを拾ってしまおう。それでミッションコンプリートさ」

 

 その言葉に頷き、メダルの転がった先を見た大我は、「うわっ!」と言った。そのまま走り出そうとしたのを強く肩を叩いて止めて、閃@ウォルフィが飛び出す。

 メダルの転がる先に、骸骨模様の黒繋ぎを着込みナイフを持った戦闘員がいる事に気付いたからだ。

 足先にメダルが当たり、屈んでそれを拾い上げようとした戦闘員の蟀谷に、閃@ウォルフィの手から飛んだビー玉が突き当たった。

 指弾の要領で飛ばされたビー玉は、イマジンの力と拳士のコントロールとで見事に喰い込み、戦闘員を昏倒させた。

 

「うわ、すっげ!」

「ふわあ」

「火神君、あの人一体」

「あー、閃兄ちゃんは昔っからダーツとか手裏剣とか好きだったからなあ。アンキっての集める趣味あったし」

『あの狼怪人の力も借りての事だろうが、今ならあいつ、ガラス玉でベニヤ板くらいぶち抜くんじゃないか?』

 

 興奮する年下二人の横で、高校生+αが囁き合う。

 だが、メダルを拾い上げようとした閃は、次の瞬間自らの足でメダルを踏み込み構えを取った。

 あっと思った時には、彼に向かってナイフで斬り掛かる二体の戦闘員を手の返しだけで投げ飛ばし、三人目の腕を掴んで止めていた。

 踏んでいたメダルを、踵で大我達の方へ飛ばし、閃が叫ぶ。

 

「メダルを持って、デンライナーへ戻れ! 俺もこいつらをいなして逃げるから!」

「兄ちゃん!」

『早く! 大我、レイヴ、黒子、二人を守るんだ!』

 

 急な事に、動きが止まった三人を振り切るように、メダルと天馬の手を掴んで剛が走り出す。

 

「剛!」

「逃げるぞ!」

 

 脱兎の如く走って行く二人に、顔を見合わせた三人?は慌ててその後を追った。

 五人を追おうとする戦闘員を掴んで引き倒し、閃はターミナルバックルを腰に巻いた。

 閃の動きに、一〇数人の戦闘員が集まって来た。彼らを惹きつけるように、閃はライダーパスを翳した。

 

「お前らの相手は俺だ。行くぞ、ウォルフィ!」

『オウ!』

「『変身!』」

   SLASHFORM!

 

 オーラスーツ上にアーマーが展開し、閃@ウォルフィが仮面ライダー電王になる。

 見知らぬ超人に、戦闘員達がどっと押し寄せる。それに、電王はデンガッシャーを取り出し迎え撃った。

 身の丈ほどもある武器を片手に、電王は湧き出すように増える戦闘員を相手に大立ち回りを演じる。

 その状況を物陰から見詰める視線があった事を、戦闘中の閃は気付く事が出来なかった。

 

 

 その頃滝和也は、愛車のスズキハスラーTS400で街を流してパトロールを行っていた。

 昨日から、おやっさん事立花藤兵衛が町内会の温泉旅行に弟分の少年とお嬢さん達の一部を伴って出掛けた為、立花レーシングクラブは三日間の休みになっている。

 滝も旅行に誘われたものの、書類提出を理由に断った。

 おやっさんは渋い顔をしたし、弟分には「兄ちゃん駄目だなあ!」と笑われたのを苦笑いでごまかし、一行を見送り、そのままパトロールを行っている。

 実際は、書類はとっくに提出している。だが、仕事そっちのけで遊びに行く事は出来なかったのだ。

 これまで、何度かレーシングチームの面々と共に遠出をしたが、その時は事前に出先にショッカーに関する情報があったからこそで、今回はそう言う情報が無かった為に滝は東京に残る事にしたのだ。

 幸いと言うか、一文字隼人と先日海外から戻って来た本郷猛の二人も、朝から用事と称して出掛けている。

 そもそも、彼は秘密結社ショッカーの調査殲滅を任務とする、ICPOへ出向中のFBI特命捜査官である。

 現状、『仮面ライダー』の協力によって戦果を上げているものの、滝和也はそれを良しとは決して思ってはいなかった。

 

「世は並べて事もなしってね。だけど、何か引っ掛かると言うか」

 

 一通り街を流し、港近くの倉庫街へとやって来た滝は、見掛けた自動販売機で缶コーヒーを買おうとバイクを止めた。

 だが、小銭入れを出そうとしたその時、「イー!」と言ううんざりするほど耳慣れた叫び声に、滝は顔を跳ね上げた。

 

「ち、何をやるつもりだ、ショッカー!」

 

 大きく舌打ちすると、滝は足一本で車体を支え、大きく振り回すようにして方向転換させると声の方へとバイクを走らせた。

 




 もしかして、カブトムシ型仮面ライダーは皆俺様か?
 電気カブトムシを思い浮かべ、そうでもないかと思い直す。城茂は先輩格には礼儀正しかったし、後輩には何だかんだ世話焼いていた。
 そんな事を思いつつ、滝和也は赤カブトムシを従える、傲岸不遜に天を指す所謂ニートを眺める。
 ここが滝自身の世界じゃない事は、色々調べてはっきりした。BADANに色々破壊されたが、滝の覚えている限り渋谷に隕石なんて落ちてないからだ。

「しかし、この世界の怪人、一体何なんだよ、一気に加速して追い付けねぇ! それに対抗する為のマスクドライダーシステムって話だが、どうやって造り出したんだよ、判らねぇ」

 そうぼやいて頭を掻く。
 この世界の敵は、《ワーム》、または《ネイティブ》と言った。
 恐らく悪い意味合いであろう、『虫』と呼ばれる敵に物想う。
 人間に擬態し、人間と共存を望む別種もいると言う。
 そう考えると、こいつらがどんな生き物なのかこれっぽっちも判らないが、ある意味こいつらも人間なのだろうと思う。
 細(ささ)やかな幸せを求める者もいれば、身の丈に合わない野心を持つ。

(……ああ、息子達の顔が見たい)

 仮面ライダー――この世界ではマスクドライダーと呼ばれるらしい――によって爆散したワームを見ながら、滝は強くそう思った。
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