Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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 一月に一度、必ず私は《ホークアイ・ホールディングス》系列の医薬品会社に顔を出す。
 理由は幾つかある。
 まず、新宿の診療所で使っている薬品の発注の為。
 もう一つは、自分がモニターをしている薬のレポートの提出の為。
 その薬は、ぶっちゃけて言えば老化を緩和させる薬。若返りとかではなく、テロメア短縮の期間を延ばす事で、細胞老化を遅くさせる事を狙っているのだ。
 私以外にも、モニターを行っている人はいる。
 正直、何も知らない人が聞けばモルモットの間違いだろうと騒ぎ立てるだろうけど、薬品自体は厚生省に提示された試験その他をきちんとクリアし、もう少しで医療現場に出回る事になる、がん治療や異常細胞の治療に使われる予定だ。
 この薬のモニタリングは、私やハルミさん、アンリさんなど、仮面ライダーと関わった女性が参加している。
 未だに帰ってこない、良さん達を待つ私達に、Mr.ホークアイが勧めてくれたのだ。
 愚かと笑われるかもしれないが、好きな人の為に若々しく有りたいと思う女心に、逆らいようは無かったのだから。

Monologue by Rumi Ichijou.


08. 最悪の誕生

08. 最悪の誕生

 

 火神大我と香山閃、ウルフイマジンの三人は、天馬と剛、黒子テツヤ@レイヴをデンライナーに残し、一見すると川の傍にあるポンプ小屋か何かに見える、コンクリート製の建物の側に潜んでいる。

 黒地に白く骨を染め抜いた、所謂骨戦闘員が巡回する事、そしてこの近くに発信機を仕込んだ滝和也のバイクが隠されていた事から、ここでほぼ間違いないと睨んでいた。

 

『何か、空気が騒がしいな』

「恐らくは、仮面ライダーが侵入しているからじゃないか。ほれ」

 

 相棒のぼやきに、閃は奥から走って来る戦闘員を指差す。

 その伝令らしい戦闘員に連れられ、入り口を固めていた戦闘員達が基地の奥へと引っ込んで行く。それを見ていた三人は、頷き合い基地の入口を潜った。

 

「取り敢えず、閃兄ちゃん別行動しよう、仮面ライダー達が暴れている隙に、手分けしてメダルを探し出そう」

「危険だって、言いたいところだがメダルからどんな兵器を作られるか判らない以上、猶予はないに等しいか」

 

 弟分の言葉に、苦虫を噛み潰した顔で閃は了解した。

 そうやって別れたものの、ものの五分で大我も閃@ウォルフィも戦闘員に追われ、基地中央部へ追い込まれる形になった。

 戦闘員にしてみれば、上の命令に従い仮面ライダー迎撃へ向かっていたのだが、基地内をあからさまに無関係な人間が歩いていれば追い掛けるのは道理である。

 戦闘員に追いかけられつつ、大我は身に付けたドライバーにメダルを押し込み、スキャナーを滑らせた。

 

「変身!」

タカ、トラ、バッタ!

Ta,To,Ba, tatoba TATOBA!

 

 オーズに変身して、そのまま作戦指揮室らしい大きな部屋に飛び込む形になった彼は、岩盤を削って機材を設置したらしいある意味安普請なそこで、一〇数人の怪人と溢れるような戦闘員を相手に戦う二人の仮面ライダーを見出した。

 取り敢えず、抑え込もうとする戦闘員を振り払い、近くに来た蟻地獄の怪人を殴り倒したオーズに、体の横にラインが一本入ったライダーが気付いた。

 

「はあ!? 誰だ、お前!?」

「あの時に見た彼とは違うようだが」

 

 植物系怪人を殴り飛ばしたもう一人の声に気付いて、大我は慌ててこう名乗った。

 

「あの、俺、仮面ライダーオーズ、こいつらに持って行かれたメダルを取り戻しに来ましたっ」

「そうか、俺は仮面ライダー二号、こっちが一号だ」

 

 そう答えたのが一本ラインの方で、大我は内心「逆じゃね?」と思ったが、口に出さずに押し寄せる戦闘員を殴りに入った。

 そうこうしている内に、同じく戦闘員に押し込まれるように仮面ライダー電王も作戦指揮室へとやって来ていた。

 

「せ、じゃない、電王!?」

「オーズ、お前もか、悪い、殆ど調べられなくって」

「俺も、こいつらワサーって、いきなり湧いて出て来て、何も出来なくて」

 

 そう言いつつ、二人も飛び掛かって来る戦闘員を振り払い、殴り倒す。

 無限のような戦闘員の数だが、それなりに数を減らした頃、通気口の網を蹴り破って降りて来る人物が居た。

 物音に、咄嗟に振り向いたオーズと電王の視線の先にいたのは、煤塗れになった滝和也その人だった。

 

「「た、滝さん!?」」

「あれ!? 追い掛けて来たのか、二人共!?」

 

 家で寝ている筈の面子に驚きつつ、滝は戦闘員から庇うように側に来た二号ライダーに向かってこう告げた。

 

「悪い、あっちこっち調べたけど、何処にも目的のものはなかった、すまん!」

「気にするな、このアジトをぶっ潰すついでだ」

 

 そう言って滝の肩を叩くライダーの姿に、オーズこと大我は不意にここにはいない兄貴分二人の姿を重ね見た。幼い頃、似てない双子と思うくらいに何時も息のあっていた二人に。

 その時だった。

 

「捜し物はこれかね、仮面ライダーとFBIの犬、そしてイレギュラーの諸君」

 

 不意に掛かった低い壮年らしい男の声に、ライダー達は一斉に顔を上げた。

 鉄柱と鉄のメッシュ板で組まれた演壇の上に、赤い尖った覆面に赤いマントを纏った人物が立っている。その横で、軍装の老人――ブラック将軍が控えている。

 その、赤ずくめの人物の手に、銀色のメダルが握られている事にライダー達は気付いた。

 

「ショッカー日本支部へようこそ、反逆者と身の程知らずの諸君」

「貴様、大首領か!」

 

 仮面ライダー1号の声に、真っ赤なKKK団の如き人物が笑い声を上げる。

 その声に、腰を落として戦闘態勢を取ろうとした電王は、大首領を睨み付ける滝の眼に気付いた。

 閃はその目を覚えている。

 テロリスト集団から、自分を救い出した時、集団のボス――事もあろうに、そのテロ集団との徹底抗戦を叫んでいたその国の防衛大臣本人だった――を足蹴にし、見下ろしていた時の眼だった。

 大首領は、暫く手の中でメダルを弄んでいたが、何かを思い付いたようにメダルを握った。

 

「そう言えば、このアーティファクトに用があったようだな。

 では、こうしてみようか」

 

 次の瞬間、異様な輝きに包まれたメダルが、大首領の手の中から浮かび上がる。

 オーズが驚く内に、何処からともなく音を立てて、大量のセルメダルが金色に輝くメダルに集まって来る。

 そして、メダルの塊は一際輝くと、金色の羽毛の鷹のような頭部と翼を持つ怪人が現れた。

 その姿と気配に、オーズは相棒に取り付いた紅い鴉と、その同族である連中の事を思い浮かべ戦慄した。

 

「まさか、グリードをセルメダルから生み出した!? そんな、グリードはコアメダルで生まれるって!」

「恐らく、大首領の力で、セルメダルをコアメダルに作り変えた、って事だな。畜生、洒落にならねえな、この」

『噂に聞いていたが、どれだけ規格外なんだ、あ奴は!』

 

 オーズはトラクロウを、電王はデンガッシャーを構える。

 新たに生み出された怪人は、一声「ショッカーー!」と叫ぶや、オーズと電王へと突進する。そして構えていた二人を、ボディソニックよろしく弾き飛ばした。

 二人はそれぞれ剥き出しの岩壁に叩き付けられ、ついでに三十センチ以上の厚みがある岩をぶち抜き通路へと転がる。

 変身しているからこそ大怪我は免れたが、オーズは衝撃で軽い脳震盪を起こして立ち上がる事が出来ない。

 蹲っているオーズに、奇声を上げつつ襲い掛かる怪人を電王がデンガッシャーで抑えようとした。だが、怪人の振り下ろした腕の一撃に、ウルフイマジンの体力で底上げされている筈の電王が揺らぐ。一撃を受け止めたデンガッシャーが、圧力にギシギシと軋む。

 

「がっ!?」

『閃!?』

「せっ、いや電王!」

 

 そのまま電王を押し潰そうとする怪人に、滝和也が体当たりを掛ける。

 押し退ける事は出来なかったが、ぶつかった衝撃で怪人の力が緩んだ。それを幸いと、電王は怪人の胴体を蹴り上げてその腕から転がるようにして逃れた。

 

「「滝!」」

「ライダー、外へ行こう! ここじゃ不利だ!」

 

 飛び跳ねるようにして立ち上がった滝の言葉に、戦闘員や怪人を薙ぎ払ったダブルライダーが頷く。

 一号が何とか立ち上がったオーズを支え、二号が電王の腕を取り、滝の先導で基地の外へと走り出す。

 

「ふははは、逃げられると思っているのかね? 行け、ショッカーグリード、裏切り者どもを打倒し、あるべき姿に戻すのだ!」

 

 大首領の嘲笑とともに、新たに生まれた怪人、ショッカーグリードはライダー達を追い掛けた。

 

 

 その頃、デンライナーの外に剛と天馬、黒子@レイヴの三人は出ていた。

 大我と閃@ウォルフィが基地に潜入して、そろそろ三〇分程。天馬と黒子は「もう少し掛かる」と主張したのだが、剛が我慢出来ず「外で待つ」と言い張ったのだ。

 

『はあ、じゃあ、この列車から離れない位置で待つって事で良いんじゃねえか?』

「レイヴ、それは」

『中でじっとしているのが嫌なんだろう? 待つくらいさせてやればいいだろう』

 

 そう言う事で、列車から降りて帰りを待っていた四人?が、体感で一〇分程外でウロウロしていた。

 急に、騒がしくなった空気に気付いたのは天馬だった。はっと顔を上げた天馬に吊られて、他の面々が小屋の方を見たその次の瞬間、青年と異形が四人、金属製の扉を蹴り開けつつ転がり出て来た。

 

「火神君、閃さん!?」

『おい、大我!』

「「滝さん!?」」

「四人とも、デンライナーに戻れ!」

 

 四人に、そう叫んだのは電王だった。

 その声に、レイヴの体力を借りて黒子は天馬と剛を抱えてデンライナーへと走る。

 それを見届け、電王はダブルライダーと滝に向かってこう言った。

 

「一旦退避しましょう、あの列車に乗って下さい!」

「あ、あれ? 列車って?」

 

 あからさまに河原に停車している、デンライナーを見て流石に滝は面食らった様子で足を止めた。だが、その滝に向かって一号二号がオーズと電王を押しやった。

 あっと思った時には、一号二号は追い縋ってきたショッカーグリードを抑え込もうと二人掛かりでその胴を捉えていた。

 

「ライダー!」

「済まない、滝の事を頼む」

「馬鹿野郎、お前ら何考えてっ」

 

 そう叫んで戻ろうとした滝を、電王が肩に担ぎ上げて走り出す。

 

「え、な、ちょっと!?」

「すみません、貴方に死なれる訳にはいかないんです!」

『済まん、だが、この後の悲劇の回避の為に、貴殿には生きていて貰わねばならんのだ!』

 

 電王がデンライナーに向かって速度を上げる横で、オーズがショッカーグリードに向かって走る。

 メダルの専門家として、グリードの亜種を何とかするのは自分だと思ったのだ。だが。

 

「行くんだ!」

「え!?」

「ショッカーグリードは俺達が倒す!」

 

 二人は、デンライナーへ向かおうとするショッカーグリードに組み付きつつ、オーズに向かって叫ぶ。

 躊躇するオーズに、グリードに喉輪を掴まれつつ伝説のライダー二人は叫ぶ。

 

「私達は、決して悪には屈しない!」

「どんな手を使ってでも、最後には悪に打ち勝つ!」

「だから、」

「だからあの子達を、滝を」

 

 立ち竦むオーズは、だが川の中から飛び出して来た怪人に気付き、慌ててデンライナーの方へ走り出した。

 亀の怪人らしいその存在の背には、一メートル程の砲身が背負われていた。

 

「カーメーーー!!」

 

 一声叫ぶや、その怪人は四つん這いになった。そして立て続けに二発、甲羅の上の迫撃砲でデンライナーを攻撃した。

 二発はデンライナーの後方車両に着弾し、大きく車体が揺れた。

 

「火神君、戻って下さい、列車を発車させるってオーナー代理が、うわぁ!」

「わーー!」

 

 乗車口にいた剛と黒子@レイヴの悲鳴が上がる。

 その横に、滝を担いだ電王が飛び込んだ。乗り込むなり、変身を解いた閃からウルフイマジンが離れる。

 

「ウォルフィ、緊急発進、頼む!」

『判った!』

 

 赤い狼の怪人が、運転席側へと走るのを横目に、香山閃は列車から飛び降りようとする滝を羽交い締めにして止めた。

 

「離してくれ、二人が!」

「滝さん!」

 

 そうやって揉み合う内に、動き始めた列車にオーズが飛び乗った。

 振り返ったオーズは、ショッカーグリードに捻じ伏せられた二人の姿に、ギリっと仮面の下で歯を噛み締めた。

 だが、それも次の瞬間起きた爆発音と大きな揺れ、年少者の悲鳴で脇に置かねばならなかった。

 亀型怪人、『カメバズーカ』による爆撃は、激しさを増していたのだ。

 

 




 滝和也と、神代剣が出会ったのは、割と早い時期であった。
 滝からすれば、時代錯誤甚だしい人物ではあった。それでも、俺様道をど真ん中突っ切っている何某よりはマシだと思っていた。
 言動は突飛だが、まだしも天の道云々とこちらの話を聞いているのか判らない誰かさんより、会話が理解し易かったのだ。
 亡くなった姉の敵を討つのだと、頑なな姿は嘗ての村雨や風見を見ているような気分になったものの、彼らよりずっと若いその青年はそれでも恋をして、没落した家を復興しようと空回りしつつも頑張っていて。
 能力はともかく、人間としては二の線である『MaskedRider』適合者を見てきた滝にとって、彼と加賀美の二人の事は非常に好ましく思っていたのだ。


 だから、気になっていたのだ。
 爺やさんが神代に向ける、複雑な視線が。
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