Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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 最後に見たのは、見開かれた眼の、男の子の顔。
 やっと、「お父さん」と呼んでくれるようになったあの子の、泣き出す寸前と事態に惚けたのを足して割った顔。
 幸せにしてやれなかった、唯一人血を分けた子供。

 次に見たのは、青年の顔。
 あの子の面影が色濃く残るその青年は、涙を流す事無く慟哭していた。

   ごめんなさい。
   助けられなくて、ごめんなさい。

 泣かなくていいんだよ。
 お前は何も悪く無い。
 そう伝えてやりたいのに、私は何も出来ない。
 でも。
 もしも、もう一度、機会があるなら。

「悪魔の手から逃げ出したいんですが、手を貸して貰えませんか?」

 そう言って来た、何時の間にか背中に立っていた青年。
 今更だなあと思いつつ、彼に手を差し出した。

Monologue by  ??


11. hurry up!

11. hurry up!

 

 幸いと言うのもおかしいが、火神大我や黒子テツヤの持つスマートフォンは普通に使う事が出来た。

 流石に登録している電話番号に掛ける事はしなかったが、地図アプリで臨海公園の位置を調べると、直線距離でもさほど離れていな事が判った。

 物陰を縫うように移動を繰り返した五人?は、普通に歩けば一〇分ほどで辿り着く場所に、三〇分掛けて近付いていた。

 本来なら、ストリートバスケや、コンサートなどのイベントが開かれただろう公園には、戦闘員によって無機質な金属製の十字架が建てられようとしている。

 一本ではなく、二本、三本と建てられるのを眼にして、香山閃は眉を顰めた。同じように物陰から公園内を見ていたレイヴ@黒子が舌打ちする。

 

『はん、俺達を捕まえる事を前提に、処刑場の準備をしてやがるな』

「ああ、俺とウォルフィ、大我とレイヴ、いや黒子君かな」

「僕ですか。まあ、右腕だけのレイヴを吊るすなら、わざわざ十字架でなくても、柱一本でいいですものねえ」

『おい』

 

 傍目には一人漫才みたいになっている黒子に、大我は思わず溜息を吐いてしまう。だが、公園の中に飛び込もうと制服のポケットに突っ込んでおいたドライバーを取り出そうとして、そのまま凍り付いた。

 

「あれ? 兄ちゃんどうしたの?」

「えーと」

「にいちゃん?」

「ドライバーが、無い」

 

 真っ青になった大我の言葉に、中学生二人が青褪め、閃の顔が引き攣り、レイヴ@黒子が襟首を掴み上げた。

 

『てめえ! 何やってやがる!』

「せ、先輩達に会った時には、ポケットにあったんだ、だから、落としたんだとしたらさっきの倉庫かなって」

「火神君ぇ……。すみません、フォローしようがありません」

 

 焦って答える大我の言葉に、暫く額を抑えていた閃は、こちらに近付く複数の存在に気付き周囲に警告を発した。

 

「不味い、戦闘員が来る!

 大我、お前はドライバーを拾って来い、こっちは俺が食い止める、天馬、剛、レイヴに黒子、後は頼む!」

 

 そう言って、閃はこちらに気付き殺到する戦闘員の集団へ向かって走り出した。

 考えたのは一瞬、大我は相棒の肩を掴んでこう告げた。

 

「悪い、黒子、レイヴ、ドライバー拾ってきてくれ、頼んだ!」

「か、火神君!?」

 

 言うなり、戦闘員相手に乱闘している閃に加勢に入った大我を、黒子テツヤはなんとも言えない顔で見た。

 だが、それを振り切るように中学生二人の背を叩いたのはレイヴの方だった。

 

『あの馬鹿。

 さっさと取りに行くぞ、このままじゃ話にならん』

「レイヴ!」

「そうだね、急ごう!」

「だあもう、世話が焼ける兄ちゃんだな!」

 

 そう言い合いつつ、四人?はもと来た道を戻るべく走り出した。

 

 

 壊れた倉庫まで、後数十メートルという所まで来て、四人は足を止めねばならなかった。

 彼らを、ショッカーユーゲントの一団が待ち構えていたからだ。

 

「見つけたぞ、アンノウンの幼生体」

「幼生体?」

 

 赤毛の少年の言葉に、黒子@レイヴが首を捻ると、吐き出すように剛が答える。

 

「あいつら、天馬の事そう呼んでんだ。意味判んねえけど」

『……成程、普通の子供(ガキ)と空気が違うと思ったがな』

「レイヴ?」

「僕達を無視するのは止めて貰おうか!」

 

 ビシっと、音を立てて黒子の肩が裂けた。

 はっと身構えた四人の目の前で、赤毛の少年は革製らしい長鞭を束ねた状態でこちらを指した。

 

「お前達に選択肢はない。大人しく我々に付いて来て貰おう」

「トゥーマッチ過ぎます、赤司くん」

『おい』

 

 思わず呟いた宿主に、レイヴが小さく突っ込む。

 その様子をバカにされたと取った少年が、天馬目掛けて大きく鞭を振るった。

 風を切って襲い掛かる皮の鞭に、剛が天馬を庇い身を固くした、その次の瞬間。

 パンっと、大きな音を立てて赤司の繰り出した鞭は弾かれた。

 

「「「「「え!?」」」」」

「何っ!」

「……え?」

 

 驚く青少年の集団の前に、一人の男が現れた。

 テンガロンハットに赤いシャツ、黒のウェスタンルック。見た事もない男の姿に、黒子@レイヴ、天馬と剛は途惑いを隠せず、ショッカーユーゲント達は胡乱なものを見る目を向けた。

 それに向かって、ウェスタンルックの男は芝居がかった仕草で手にした鞭で帽子を上げると、周囲を見渡し赤毛の少年に目を留めてこう言った。

 

「赤司征十郎クン。

 ショッカーに協賛する日本企業の最大手、赤司コーポレーション会長の一人息子。

 文武両道、カリスマ故にショッカーも期待を寄せる天才児。

 子供にしては鞭の腕もまあまあだ。

 

 だが」

 

 男は軽く口笛を吹いた。

 敵を怒らせる為ではなく、駄々を捏ねる幼子をからかう、いや、諭す様に。

 

「日本で二番目にも程遠い」

 

 男の言葉に、ユーゲント達の大半は馬鹿馬鹿しいと言う表情を浮かべ、赤司の周囲にいるカラフルな面々は不愉快そうに顔を歪めた。

 

「あんだよ、テメェ」

「赤司っちは、ショッカーでも一番の鞭の名手が絶賛したんスよ!?」

「赤ちんの事馬鹿にするなら、捻り潰すし」

「得体のしれない人間に、仲間を侮辱される覚えはないのだよ」

「貴方、何者ですか、私の情報網に引っ掛からないなんてっ」

 

 黙っている赤司の周囲で、青髪、金髪、紫髪、緑髪の少年、桃色髪の少女が喚く。

 それに対して何も答えず、男はすっと何かを取り出し、天馬の手に握らせた。それは大我が落としたメダルドライバーだった。

 

「これ!?」

「これを取りに行こうとしていたんだろう? 早く、どじな兄ちゃんに届けてやりな」

 

 男の言葉に一瞬目を見合わせ、天馬と剛は男に一礼して駈け出した。一瞬遅れたが、黒子@レイヴもきちんとお辞儀をして二人を追った。

 その三人を追い掛けようと、青峰、黄瀬、紫原が動こうとしたその次の瞬間、男は腕を大きく振るった。

 ただそれだけに見えた腕の一振りで、うねるように翻った鞭の先端が三人のみならず赤司と緑間、桃井の胸元に付けられていた翼を広げたショッカーユーゲントの記章を弾き飛ばし、空中で纏めて手近な壁へと叩き付けた。

 

「生憎だが、ショッカーで一番だろうが、日本一じゃないなら、俺の敵じゃないね」

 

 バチンッと、大きく火花と共に砕けた記章と、ぱらりと手のひねりだけで鞭を纏めた男とを見比べ、後ろに控えていたユーゲントの少年達はわっと蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 

「こ、こら、逃げるな! 逃げたらお前達は」

「みどりん、駄目」

 

 事態に凍り付いていたものの、逃げた班員に気付いて振り返った緑髪の少年が何かを言い掛けたのを、慌てて桃色髪の少女が止める。

 だが、テンガロンハットの男の言葉に、六人は飛び上がる事になる。

 

「盗聴器は叩き壊しておいた。

 六人とも、もう本音を零しても大丈夫だぜ?」

「気付いていたのか?」

 

 目を細めつつそう問うた赤司に、男の方はにっと笑って応える。

 

「俺は探偵でね、とある人物の依頼でこの街とショッカーの調査をしていた。

 お前さん達が候補生と言う名の人質である事も、ショッカーに忠誠を誓う振りをしつつ同年代の人間に武器を横流ししていた事も、お前さんが仲間三人への改造命令を撤回させる交換条件の為に、あの赤毛の坊主を捕まえようとしていた事も、全て調べさせて貰った」

 

 男の言葉に、今まで張り詰めたものが切れたように桃井と黄瀬が座り込む。

 二人を労る仲間を横目に、赤司征十郎は男を見る。

 二十代後半、いや三十代くらいか。

 しかしあの鞭の腕と言い、幹部と自分達しか知らない筈の事を調べ上げた手腕と言い、目の前の人物は彼が今迄出会った事の無いタイプの人間であった。

 赤司の思考を他所に、男は何処からともなく取り出したギターを肩に担ぎこう宣った。

 

「さて、そろそろ次の仕事だ」

「次の仕事?」

 

 聞き返した赤司に、男はテンガロンハットの位置を直してこう答えた。

 

「ああ、これから上がる汚い花火に合わせて、ショッカーに無理やり協力させられている科学者達を脱出させると言うお仕事だ」

 

 そう言った男の背後に、物凄い爆音と共に、巨大なファンを背負った真っ赤なオープンカーが一台突っ込んで来た。

 あっと思う間もなく急停車したその車――どうやらオートドライブだったらしい――に飛び乗り、男はあっと言う間に走り去って行った。

 

「赤司」

「行こう、真太郎。どうやらこれから、大事件が起こるらしい」

「大事件って、赤司くん」

 

 近付いた長身の補佐役と、顔を上げた紅一点に向かって、赤司征十郎は仲間達すら久方ぶりに見る笑顔でこう言った。

 

「僕、いや俺の手でないのは残念だが、これからショッカーを揺るがす何か大きな事が起きるらしい。

 見に行こうじゃないか、何が起きるのか」

 

 その言葉に顔を見合わせ、そして頷き合った五人は、リーダーとともに何処かへと身を隠した。

 そんな彼らの頭上を通り、ショッカーの広報用飛行船はゆっくりと海へと進んでいた。

 

 




 神代剣こと、仮面ライダーサソードのライダースラッシュによって、隕石誘引を試みたネイティブを倒して一週間。
 滝和也は長らく世話になった洋食店“Bistro la Salle”の店長に暇乞し、大して多くなかった荷物もその大半を処分して店を出た。
 何となくであったが、この世界から離れる気がした為だ。
 その前日、滝は加賀美新と会った。
 怪我が治ったら、警察学校に入って街のお巡りさんになるのだという加賀美に、滝は笑顔とともにエールを送った。
 加賀美と別れ、滝が尋ねたのは神代剣の爺やさんの元だった。
 ネイティブ戦で出現したカードを、爺やさんに渡そうと思っていたからだ。
 しかし、爺やさんはカード滝に返した。

「坊ちゃまからの、滝殿へのお礼だと思いますので、どうかお持ち下さい」
「……判りました。
 もう、お会いする事もないと思いますが、どうかご健勝で」
「おや、何処かへ行かれますかな?」
「ええ。息子達に会いに帰ろうと思っています」

 こうして、滝和也は新たなカードと共にその世界から立ち去った。
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