それが、風見志郎を始めとした人と自分達との間に線引きした面子の、滝和也への印象だ。
猪突猛進に見えて、極短時間で現状で取れる最善の行動を決断し、味方は懐に入れる事に躊躇がないが、敵と見なした相手は徹底的に(相手に気取らせず)警戒する。
結城丈二は、極短い共闘で滝和也をそうプロファイリングした。
無茶な人で、優しい人。仮面ライダー二号が、散々扱き下ろしておいて最後に必ず「あいつがいたから戦えた」と、とても穏やかな眼で話す人。
筑波洋にとって、滝和也は慕っている先輩の思い出の一部だった。
笑ったり、怒ったり、泣いたりまた笑って、コロコロ表情の変わる人だ。殺意を向けた自分に怖じる事無く、またパーフェクトサイボーグである自分に戦闘訓練を付けるような無茶をする。あの人の笑顔に、俺もルミも救われた。
村雨良にとって、滝和也は師匠であり兄のような存在である。
東京で、SPIRITS隊と合流して以来、滝和也と言う人間を落ち着いて視る事になった。
ある日、 SPIRITS隊隊員同士で喧嘩が起きそうになった。
金髪碧眼の青年と、黒髪黒い目の青年は互いに相手の襟元を掴み、今にも殴り合う寸前にヒートアップしていた。
問題は、二人がマシンガンの如き勢いで喚き合うお国言葉を、ヒアリング出来る人間が居ないと言う事態だった。
否、片方は副隊長のアンリ曰く、ガスコーニュ州のかなり癖の強い、土地の人間でなければ聞き取りの難しいお国言葉であるとの事だ。そして残念な事に、アンリでは彼の言葉を聞き取り切れなかった。
問題は、もう片方の吃音の激しい言語を理解どころか、聞き取る事が出来ないのだ。
已むを得ず、ライダーならヒアリング出来るだろうとその辺を彷徨く暇ライダーが召喚されたのだ。
だがまず、城茂が真っ先に匙を投げた。一応大学生ではあったが体育会系だった彼は、純戦闘型であった事もあり世界共通語である英語やドイツ語、北京語辺りは自動翻訳機に突っ込んでいたものの、それ以外はさっぱり判らないのだ。
同じような理屈で、英語やドイツ語の専門用語辞書は充実させていたが特定地域独自の言語までは網羅していなかった沖一也もギブアップした。
神敬介は、ガスコーニュ語の方は辛うじて翻訳出来るものの、爆音のような舌鋒に食いつく暇がない状態だ。
「良く解りますね、神さん」
「ガスコーニュ語に似たビスケー語って奴がスペイン語のバリエーションにあったから、何とか。
でも、あんな勢いに割り込むには、翻訳速度がなあ……」
「ねえ、先輩、あの金髪の彼、音が跳ねるタイミングが、アマゾン先輩に似てませんか?」
こう言い出したのは、情報収集とハンググライダーの大会の為世界の山岳帯に良く行く筑波だ。
それなりに、辺境地の住人らと交流も少なくない筑波が指摘したことで、アマゾンを探せと言う騒ぎになったその時だった。
『おう兄弟、何の騒ぎだこりゃあよう?』
不意の声に、黒髪側が言葉を呑み込んだ。同じ声が、今度は吃音混じりで話し出す。
《なしてそだ人と揉めてンだ、おめ?》
《だども大将、こいつおらが飯取っちまっただで!》
『兄弟、こいつ他所のグループの者だろう。何してンだ、おら』
『だってこいつ、皿に泥盛ってやがったんですぜ、隊長!』
指差された先に、確かに粘土状の何かと乾燥ジャガイモらしい何かがあった。
《こりゃあ、家からの仕送りか?》
《だよ》
納得した様子で頷くと、黒髪の青年に向かってこう返す。
『こいつは南米の出でな。あっちはミネラル摂取の為ミネラル質の粘土を乾燥芋と一緒に食う食習慣があるんだ』
『えぇ‼』
『故郷の味って奴さね、兄弟。ガスコンの名物を余所もんに否定されりゃ、お前さんも腹立つだろうよ、なあ、兄弟』
『あ、』
《おめ、許せ。こん人は海向こうの人だで、おめのおっ母が気遣いわがんなかったがよ、おらが教えたで、赦してけれ?》
《ンだども……》
《おらに免じて、な》
『おら兄弟、こいつの為に怒ってんだろが、泥を盛るくらい疲れたのかってよ。
でもよ、間違ってンなら謝ろうぜ。そんくらいの懐の広さ、ガスコンの男なら持っててあたりめえだろよ?』
そうして二人に握手させると、滝和也は周囲でポカンと成り行きを見ていた隊員とライダー達に笑って言った。
「おう、騒がせたな、もう大丈夫だから」
「あの滝さん、二人が何で喧嘩してたのか、いや、二人の言ってる事、判ったんですか!?」
おっかなびっくり問い掛けた敬介に、けろっとした顔で頷いた。
「ガスコーニュの山側出身の兄ちゃんが、ウルグアイ山間部出の兄ちゃんの実家からの差し入れを見て、勘違いしただけさ。
お互いヒートアップしていたせいでお国言葉しか出なくなったから、引っ込みが付かなくなってたんだろうな」
そう言うと、ひらっと手を振り滝はその場を去った。
一文字隼人曰く。
「滝?
ああ、そう言えば昔から言語に堪能だったよあいつ。確か、エジプタスの事件の時、古代エジプト文字見てエジプタスってすぐ読んだし。
……え? あれってICPOの必須技能じゃないの?」
滝和也と言う男
14. 正義の味方
火神大我こと仮面ライダーオーズが駆け付けた時、《伝説》《新生》双方のライダー達は、赤い三角覆面の存在と対峙している真っただ中だった。
この怪人物がショッカー首領であるのを知るのは、一号二号を除けばライダーではオーズと電王こと香山閃だけであったが、その全身から発せられる異様な気配から、この存在が事の元凶であろうと容易に察する事が出来た。
「行くぞ!」
「「「「「「「おおう!」」」」」」」
最初に、首領に向かって突貫しようとしたのは仮面ライダーV3と《伝説》の七人だった。
だが、赤覆面を取った首領は、ゴルゴンの怪物を思わせるような一つ目に無数の蛇が絡んだ姿を曝すや、その巨大な一つ目から怪光線を発して、ライダー達の突進を阻んだ。
ならばと、仮面ライダーアギトの指示で散開した《新生》ライダー達が、銃や飛び道具での遠隔攻撃に出ようとした。
それを見透かしたように、絡み合う蛇達の中から伸びた四匹が、オーズと電王、V3とXライダー、クウガとHOPPER、そしてキバとスカイライダーを掴み上げ振り回して、慌てるライダー達へと投げ付けた。
慌てて抱き留める者、転がり息を詰める者へ駆け寄る者、様々なライダー達を見詰め、ショッカー首領は笑う。
そこへ、ショッカーグリードを倒した一号二号が駆け込んで来た。
「オーズ、電王!」
「皆、無事か!」
後輩になるライダー達を見回す二号と、ぎっと己を睨み付ける一号とを眺め、ショッカー首領は高らかにこう告げすっと宙に浮いた。
「お前達が守ろうとする人間が作ったもので、お前達を完全に滅ぼしてやろう。
見るがいい、これがショッカーが作る世界の秩序、正義の象徴である『キングダーク』だ!」
首領の言葉と共に、立っていられないほどの揺れが海浜公園を襲った。
波の動きに気付いたXライダーの指示で、ライダー達は慌てて公園内の遊具や建物の上に飛び乗った。
公園の目と鼻の先の海中から、黒い影がせり上がってくるのが見える。
そしてそれは、軽い津波を伴い海上に姿を見せた。一対の角を持つ、黒いその巨大な人型は、赤く光る眼をライダー達に向けた。
「キングダーク、だと」
「完全体と言う事か!?」
「俺が知っている奴と少し違う……」
Xライダーが呻く横で、二号とZXが呟く。
だが、その次の瞬間、三人は他のライダーと共に、キングダークからの迫撃を避けて飛び上がらねばならなかった。
機械故の間断なくばら撒かれるエネルギー弾の雨に、ライダー達は成す術無く逃げ回る事を強いられる。
「畜生、何か手はねえのか!」
「あんのデカ物!」
新旧双方のライダーが異口同音に吐き捨てる中、高笑いと共にショッカー首領はキングダークの中に消えた。
『さて、そろそろ終いにしようか』
そう言って、ゆっくりとキングダークは公園へ近付き始めた。
勝利を確信したショッカー首領は、ライダー達を踏み潰そうと巨体を進める。
ライダーを追い詰めたと確信した彼は、見落としている事に気付かなかった。
キングダークの姿を、別のビルの屋上から滝和也は睨んでいた。幸い、このビルは屋上に色々パネルやら給水タンクやらがあるお陰で、身を潜めるのに具合が良かったのだ。
滝の傍に、バラバラっと少年達が集まって来る。剛と天馬、そしてレジスタンスの少年達だ。
「滝さん、みんなここから遠くへ逃げたよ!」
「最低でも、五百メートル以上は離れたと思います」
天馬の言葉を、相田リコが補う。それに頷き、滝はライフルを構え直す。
多少距離はあるが、キングダークの眼を狙う事は出来る。
カメラだろう箇所を潰して、少しでもライダー達の為に反撃の切っ掛けを作ろうと思ったのだ。
だが、そこに真っ赤な人物が飛び込んで来た。
急な事に、慌てて銃を向けようとした少年達に、待ったを掛けたのは滝だった。
「大丈夫、味方だ。
科学者達は脱出出来たか、ズバット」
滝の問い掛けに、一体化しているヘルメットのフェイス部分を開いた。
そこから覗く顔に、天馬と剛の目が丸くなる。彼は、ショッカーユーゲントから助けてくれた青年だった。
『ズバット』と呼ばれた青年は、にっと笑うと一枚の折り畳んだ紙を差し出した。
「ああ、皆無事に脱出している。
それから、これは科学者達からあんたに、『キングダーク』の重要部分の見取り図だ」
「すまねぇ!」
受け取った紙面を一瞥し、滝は少年達からライフルを二丁借りると、一丁には大振りなペイント弾丸、残りに徹甲弾を詰めた。
それを見届け、ズバットは再びフェイス部分を閉じた。
「じゃあ、俺はこれで」
「おう、助かった。だが、礼が」
「なあに、この先の活動資金分は、奴らの金庫からたんまり頂いておいた。
見取り図の配達は、アフターケアの一部だ、気にするな」
そう言うと、真っ赤な強化服を着込んだ流離いの名探偵、ズバットは百数十メートル下へと飛び降りて行った。
子供達が、言葉なく彼の人物が真っ赤な自動車で走って行くのを見詰める中、滝はライフルで、ライダー達を踏み潰そうとするキングダークのカメラアイに標準を合わせた。
民間人の安全の為、公園内を逃げ回るライダー達を踏み潰そうと、キングダークが陸上に上がって来たその時だった。
赤く輝くカメラアイが砕け、それに少し遅れて銃声が届いた。
パーーン! パーーン! パーーン!
両方の眼が潰され、三発目はキングダークの胸部、人間の心臓よりやや首近くへ黒い地肌に鮮やかに緋色の花が咲いた。
「何だ!?」
「ペイント弾!?」
《伝説》のライダー達がざわめく中、《新生》達は一斉に銃弾が飛んで来ただろう方角を見た。
彼らの予想を、仮面ライダー二号が噛み締めるように呟く。
「滝か。あそこが奴の弱点だと言うんだな」
「一号二号、あそこを狙います」
そう言い切ったのは、仮面ライダーアギトだった。
彼の背後で、新生ライダー九人がそれぞれの必殺技の準備に入る。
「おい、本気か?」
「もしかすると罠じゃ」
ストロンガー、スーパー1の声に、仮面ライダー一号が否を告げた。
「いや、我々も行くぞ!」
「俺達の仲間が教えてくれたんだ、キングダークを潰すぞ!」
二号も言葉を続けるに至り、伝説の面々も覚悟を決めた様子で態勢を取る。
そして、スキャナでカテドラルをなぞろうとしたオーズに、レイヴ@黒子テツヤの声が飛んだ。
『タイガ、これを使え!』
「レイヴ!? これって、孔雀とえっと?」
咄嗟に掴んだのは、赤い孔雀と鷹ではない猛禽の意匠の入ったメダルだった。
投げた方は、盛大に鼻を鳴らしてこう言った。
『俺様のとっておきだ、これでヘマしたら只じゃ置かないからな!』
「火神君、頑張ってください!」
「黒子、レイヴ、Thank you!」
二人?が離脱するのを見届け、大我ことオーズは虎とバッタのメダルを新しいものに入れ替え、改めてスキャナを滑らせた。
Taka! Kujaku! Condor!
Ta-ja-do-r!!
オーラングサークルが深紅に染まり、三種類の鳥をモチーフにしたものに変わると、頭部もより鷹らしく形状を変えた。
ばっと広がった三対の翼から、紅のオーラと共に熱を放射するとオーズタジャドルコンボは薄っすらと陽炎に包まれた。
その周囲で、クウガがアメージングマイティに、アギトがトリニティフォームに、555がアクセルフォームにフォームが代わる。
『小癪な、だがこの近辺にいるのは判っている、すべて踏み潰して』
視野を潰されたまま、キングダークは公園をエネルギー弾で焼き払おうとする。
だが、その前に二〇人の仮面ライダー全員が宙へと飛び上がる。狙うは、キングダーク胸部に存在する最重要装置。
エネルギー弾を掻い潜り、一号二号のライダーキックが、V3の反転キックが、ライダーマンのキックが、XライダーのXキックが、チャージアップしたストロンガーの超電子ドリルキックが、スカイライダーの大回転キックが、スーパー1のスーパーライダー月面キックが、ZXの穿孔キックが朱いペイント目掛けて放たれる。
そしてクウガのアメイジングマイティキックが、アギトのトリニティライダーシュートが、555のアクセルクリムゾンスマッシュが、電王の
そして、スキャニングチャージを行ったオーズは、真紅の不死鳥と化して他の仲間を追う。
インパクトの直前、赤い三つのメダルを潜ったオーズタジャドルコンボのコンドルレッグが、クロウ状に展開し炎を纏う。
「『行けえ、オーズ!(火神君!)』」
「せいりゃあああああ!」
オーズの攻撃――プロミネンスドロップによって、キングダークのメインシステムは炎と共に砕け散った。
その爆発音の中に、ショッカー首領の断末魔の声が聞こえたと思ったのは、オーズだけではなかった。
崩れるように海の中へ倒れていくキングダークを背に、ゆっくりと舞い降りて来たオーズが通常のタトバコンボに戻ると、クウガやビースト、HOPPERが駆け寄り揉みくしゃにする。
そんな仲間の様子を見て笑っている、他の《新生》の若いライダー達を何とは無く見ていた《伝説》の面々の中から、何かに気付いたように一号二号が踵を返す。
キングダークの攻撃を受け、あちこち燻ぶり設置されていた建造物も破壊された海浜公園へ、天馬と剛、レジスタンスの少年達と共に滝和也が近付いて来るのが見えた。
少年達が、オーズと電王、そして果物武者のライダーへと走って行くのを見送る滝に、二人は近付きそして変身を解いた。
その背中は、オーズこと火神大我と、電王こと香山閃があの日に見た、あの二人の青年の後ろ姿で。
一瞬だけ泣き笑いを浮かべ、滝は二人を抱き寄せた。
その次の瞬間、世界は光に包まれた。
寒さに目覚めれば、そこは一面雪化粧。
所謂雪山と言う奴で、服装と装備は雪山対応だったが、どえらく古いものになっていた。
厚みの割に熱が逃げ易い、重いばかりの外套に舌打ちする。
昔、そうショッカーと事を構えていた時分に、本郷と一緒に富士山中の基地を破壊しに行った事を思い出し、滝和也は改めてディエンドライバーとカードを確かめると歩き出した。
何となくではあるが、登山道らしい場所に出たので、後は山小屋目指して必死に歩く。
遭難者を見付けたのは、白い中に小屋らしいものを見出したその時であった。
察するところ、あそこを目指していて力尽きたか。
何とか息はあるので、背負って山小屋へと急ぐ。
二十代半ばと言ったところか、一応耐寒装備ではあったものの、荷物らしい荷物は持っていない。
途中で無くしたのか、はたまた自殺志願者か。
どちらかのような気がして、滝は取り敢えず青年に小屋の中にあったぼろ毛布を被せて横にさせると、自身の荷物を漁った。
幸いと言うか、二人で三日位余裕で食べられる食料と、耐水マッチにジッポーライター、野営用調理器具らしい鍋と携帯用ラジオがあった。
小屋の中は定期的に利用者がいるのか、そこそこの薪と火熾し用の古新聞があった。
水道はさすがに凍り付いたか止まっていて、滝は新雪らしい柔らかな雪を救って鍋に取り、火を入れた薪ストーブの上に置いた。